法律相談センター検索 弁護士検索
カテゴリー: アメリカ

ナイトフォール

カテゴリー:アメリカ

著者:ネルソン・デミル、出版社:講談社文庫
 ニューヨークのJFK空港を飛びたった民間飛行機がミサイルによって撃墜される。テロリストの仕業か。しかし、そうではないらしい。では、一体誰がした・・・。
 飛行機が墜落していく情景をたまたまビデオ撮影していたカップルがいた。しかし、それは不倫のカップルだったため、名乗り出ることができない。でも、そこをなんとか突きとめないと真相に迫ることができない。ところが、真相究明しようとする一線の捜査官に対してFBI上層部から、なぜか圧力がかかる。一体どうなってるんだ、この国(アメリカ)は・・・。
 上下2巻の文庫本ですが、上巻の出しを読んでしまったら、いったいこのジレンマを乗りこえて、どうやって解決にたどり着くのか。その謎ときはどうなるのか。ついつい最後まで引きずりこまれてしまいます。実は、1996年7月17日に実際に起きたTWA800便墜落事故で乗客、乗員230人が犠牲になった話が、ついにはあの2001年9月11日のWTC崩落事故に行き着いてしまうのです。著者の構想力のすごさに、思わず、うーんと唸ってしまいました。
 暗転する大国アメリカの闇を描く大傑作小説というオビの文句も、あながちウソではありません。
 5月の半ばとなり、雨が降ったあと、蛙の鳴き声を聞きました。下の田圃もそろそろ田植えの準備が始まります。田圃に水をはると、蛙たちが一斉の鳴きはじめます。求愛の歌だそうですので、やかましいけれど我慢するしかありません。わが家の門柱のくぼみに小さなミドリ蛙が棲みついています。インターフォンを押す横にいて、顔だけのぞかせています。まるでわが家の守り蛙みたいです。

軍産複合体のアメリカ

カテゴリー:アメリカ

著者:宮田 律、出版社:青灯社
 ブッシュ大統領の一族は、軍産複合体の出身である。ブッシュ大統領の曾祖父のサミュエル・ブッシュはオハイオ州の企業であるバッキー・スティール・キャスティングス社を経営していたが、この会社は兵器を製造していた。1917年にワシントンに移り、連邦軍事産業委員会の小型武器・弾薬・兵站部門のメンバーとなった。サミュエル・ブッシュは、アメリカの軍産複合体の創設に深く関わった人物だった。また、ブッシュ大統領の祖父にあたるプレスコット・ブッシュもアメリカの兵器製造を行う企業に関与していた。
 ロッキード・マーティン社がアメリカで最大の軍需産業である。従業員16万5000人という巨大企業だ。1998年の国防総省からの受注額は123億ドルでトップ。第二位はボーイング社の108億ドル。ロッキード・マーティン社は世界最大の軍需産業で、核兵器や弾道ミサイル防衛の分野が主要な企業活動の分野である。2000年には国防総省から150億ドルの契約を得た。さらにエネルギー省から核兵器の開発のために20億ドルの予算を獲得している。
 冷戦が終わっても、アメリカ政府が「ならず者国家」「イスラムの脅威」「悪の枢軸」など、「敵の脅威」を強調するのは、軍需産業の価値の低下を恐れるからである。アメリカは、経済構造自体が戦争によって支えられているといっても過言ではない。だから、アメリカは常に「次の敵」を探すことに躍起となっている。
 アメリカの軍需産業は、9.11のテロによって多大の恩恵を受けた。その株価が9.11以降、上昇したことにも示されている。巨大な軍需産業のほかに「テロとの戦い」で利益を上げたのは民間の警備会社である。警備会社は、国防総省と関わりをもち、また退役軍人たちが主導的役割を果たし、アメリカの同盟国の軍隊に対する訓練や警察官の養成を行っている。
 MPRIは、警備会社の代表的なものであるが、世界中の軍隊の訓練を行い、また、国防総省と契約している。MPRIは元陸軍参謀長のカール・ヴォノによって設立された会社で、20人の元軍幹部が取締役になっている。9.11のあと、このMPRIを所有する会社の株は2倍にはねあがった。
 ベクテル社は、イラク復興で最大の恩恵を受けた企業である。戦後18ヶ月間に、6億8000万ドルの契約を確保した。
 チェイニー副大統領がCEOをつとめたことがあるハリバートンは2004年に、その株価が3000%も上昇した。ハリバートンはブッシュ政権によるイラク占領と復興事業で数十億ドルの利益をあげた。
 アメリカの政府高官が軍産複合体の幹部になることは、アメリカ政府と軍産複合体の癒着ぶりを如実に示している。
 アメリカのテロ戦争開始後の軍事費の増加で潤ったのは、ロッキード・マーティン、グラマン、レイセオン、ボーイングといった巨大軍事産業である。
 増額された軍事費は、アフガニスタンでの戦争につかわれたというよりも、新鋭の
F/A−18E、F−22戦闘機、現在は消滅したソ連の潜水艦を追跡する目的で計画されたヴァージニア級の潜水艦、トライデントD5潜水艦発射型の弾道ミサイルの購入に用いられた。これらの兵器が対テロ戦争とは何の関係もないことは明らかである。
 アメリカの軍需産業は、農業に次いで多額の政府補助金を受けとっている産業である。そして、アメリカ製武器は世界各地に売却され、アメリカ製武器の購入国10位以内に中東の5ヶ国が入っている。エジプト、クウェート、サウジアラビア、オマーン、イスラエルである。
 1976年以来、イスラエルはアメリカの経済的・軍事的援助の最大の受領国となり、2003年までに受けた援助総額は1400億ドルにもなった。イスラエルは毎年30億ドルの援助をアメリカから得ているが、それはアメリカの対外援助総額の5分の1を占める。このイスラエルは、アメリカからの経済援助の25%をその国防産業に投資している。イスラエルの労働力の5分の1は軍事関連の産業に雇用されている。イスラエルからイランへの武器売却額は毎年5億ドルから8億ドルであった。
 中東は世界でもっとも武器を輸入している地域である。1950年から1999年までのあいだ、アメリカの武器売却先の38%が中東諸国であった。
 2005年のアメリカの軍事費支出額は世界全体の48%、1兆1180億ドルだった。
 アメリカが軍事力を行使しようとしたとき、私たちは戦争で巨利を得る軍産複合体の存在を想起し、戦争に対して疑義や反対の声を上げ、アメリカの戦争の不合理さを説いていかなければならない。
 著者は最後にこのように強調しています。まったく同感です。資料にもとづく説得力ある明快な論理に思わず拍手を送ってしまいました。日本がアメリカに引きずられると、とんでもないことになってしまいます。クワバラ、クワバラです。

もう戦争はさせない

カテゴリー:アメリカ

著者:メディア・ベンジャミン、出版社:文理閣
 ブッシュを追いつめるアメリカ女性たち、というサブタイトルのついた本です。アメリカの「平和を求める女性たち」の運動は、コードピンクとも呼ばれています。
 イラク戦争に送られて戦死した息子をもつシンディー・シーハンの次のような訴えが紹介されています。ブッシュ大統領がハード・ワーク(つらい仕事)と言ったことを受けて、シーハンは次のように言ったのです。
 あなたは、テレビで見ているし、毎日、戦死者と負傷者の報告を受けているから戦争のつらさはよく知っていると言ったわね。でも、本当のつらい仕事がどのようなものか、分かってなんかいないわ。つらい仕事というのはね、かけがえのない自慢の勇敢な息子が、現実には何の根拠を今も持っていない戦争に連れ去られてしまって、二度と戻ってはこないことを思い知らされることよ。・・・。
 でも、なかでも一番つらい仕事はなんだか分かるかしら。それは、家族が何世代にもわたって忠誠を誓い命がけで戦ってきた国家の指導者が、ウソをついて国民を騙していたという事実を受けとめなければならないことよ。
 次は、自爆テロによって一人娘を失ったイスラエルの平和活動家(女性)のロンドンでのスピーチの一部です。
 世界のすべての人々は、はっきりした二つのグループに分かれています。平和愛好グループと戦争屋グループとに。いま、地上では悪の王国が支配しています。指導者と名乗る人たちが、民主的手段をもって、神の名において、国家の利益の名であれ、あるいは名誉や勇気の名においてであれ、殺し破壊する権利と好むままに卑劣と不正をおこなう権利、そして若者を殺人屋にしたてる権利を得てきました。
 私の娘は自分を殺した若者とならんで眠っています。騙された二人が眠っています。少女は両親と国が自分を守ってくれているから、良い子には誰もひどいことをする人はいないから、安全だと信じて町を横切ってダンス教室に行こうとしたのです。
 パレスチナの若者は、自爆テロでは事態を何も変えることはできず、天国に行くこともできないのに、騙されて行けると信じていたのです。
 うーん、そうなんですよね。若者を騙し、その未来を奪う大人たちの責任は重いですよね。
 ブッシュ大統領は記者会見が嫌いだ。強いられなければ開かない。彼は、記者の座席表をあらかじめもらっていて、それを見ながら、お気に入りの記者を選んで質問させている。
 記者たちは、大統領選挙の遊説中に取りこまれ、ごほうびとしてホワイトハウス詰め記者となっていく。選挙中に点数を稼いで、人脈をつくり、親しくなっておく。だから、相手の言うことに挑戦するような質問を避け、初めから自己規制をしている。
 アメリカでは、黒人の子ども100万人が貧困生活をすごし、黒人の成人男女100万人が刑務所にいる。毎晩25万人をこえる退役軍人がホームレスとして路上に寝ている。
 いやあ、なんど読んでもすごく悲惨な現実です。こんなアメリカを日本が見本とすることのないようにしたいものです。
 アメリカでの女性運動の前進に大いに期待します。日本でも負けないように取り組まないと、アメリカみたいに可愛い息子たちを戦死させることになってしまいます。

人が人を裁くとき

カテゴリー:アメリカ

著者:ニルス・クリスティ、出版社:有信堂
 裁判員のための修復的司法入門というサブ・タイトルがついています。ノルウェーの学者による本です。ノルウェー事情も少し知ることができました。
 日本とノルウェーは似ている。日本の人口10万人あたりの囚人は60人。ノルウェーは69人。いずれも極めて低い。ヨーロッパは通常、人口10万人あたり100人前後で、ロシアで569人という多さ。アメリカは、それよりもっと多くて、なんと763人。アメリカの刑務所人口を増やし続ける犯罪政策は、ナチスのホロコーストに類似していると厳しく批判しています。
 ノルウェーでは、民事事件は、市町村における調停を経なければ裁判所に訴えることができないという調停前置主義がとられている。これは江戸時代の日本と同じですね。
 ノルウェーでは、市町村ごとに刑事調停委員会がつくられており、主として少年犯罪を対象とし、一般市民から選ばれた調停員が斡旋することにより、加害者と被害者とが面談し、双方の合意が成立すれば起訴しないという刑事調停委員会が機能している。
 アメリカでは囚人は210万人いる。このほか、保護観察や仮釈放など監視下にある人々が470万人いる。それを加えると680万人となり、これは10万人のうち2267人にもなる。これは人口の2.4%を占める。青壮年の男性(18〜44歳)に限って比率をみると、なんとその12人に1人が刑罰法令の監視下で生活している。
 ロシアは囚人が減っている。2003年1月の囚人は86万人であった。
 なぜ、アメリカでこのように爆発的に囚人が増えているのか。その原因の一つに、アメリカ中産階級の功利主義的な世論がある。
 アメリカが犯罪が増加しはじめたのは1975年ころから。
 アメリカでは、ここ15年間ほど、毎年1000人規模の刑務所が1000ヶ所ほど増設されている。それにともない、刑務所関連の建設・給食・警備などの刑務所依存産業が急成長し、それが囚人数増加への加力団体となっている。
 刑務所が民営化すると、刑務所の公共的機能よりも、事業収入が刑務所産業に対する事業評価の基準となる。できるだけ少ない人員、経費、設備で、できるだけ多くの囚人を収容し、それを効率的に管理することが刑務所産業の目標となる。囚人数の減少は経営を悪化させる。犯罪があるから刑務所があるのではなく、刑務所があるから囚人が増加する。判断基準となるのは、犯罪人を放任した場合の犯罪取締の費用と、それを刑務所に収容した場合の費用との比較なのである。犯罪は、もはや矯正の対象ではなく、戦いの対象となり、隔離すること自体が目標となっている。
 犯罪処罰手続は効率化され、刑罰量定表がつくられている。そこでは刑罰を緩和する事情は一切考慮されず、逆に犯罪状況はすべて刑罰を加重する事情として考慮される。
 アメリカには選挙権をなくした成人が390万人いて、そのうち140万人は黒人である。これは黒人男性の13%にあたる。彼ら貧困層は選挙権を行使できないため、政治に対する影響も行使することができない。
 アメリカでもイギリスでも、自らを、あるいは自分の党を、犯罪と戦うリーダーであると誇示するための激しい競争がある。通常、政治家や政党は、お互いにより厳しい手段を主張しあうのが政策になっている。ほかに残っている見せ場がほとんどないからである。犯罪との戦いが政治家の正当性を主張するのに不可欠となっている。
 アメリカは世界でもっとも富める国である。にもかかわらず、福祉の代わりに刑務所を用いる国である。たえず自由について語る国でありながら、世界最大の刑務所を有している国である。
 アメリカみたいな国に日本をしてはいけないとつくづく思います。悪いことをした連中はどんどん刑務所に入れてしまえばいいんだ。こういう考えを持つ国民は多いと思いますが、それはすごく危険です。だって、みんないずれ出てくるんですよ。お隣さんが社会への復讐心に燃えていたらどうしますか。やっぱり、いろんな人がいるわけなんですから、それなりに折りあいをつけて生きていくしかありません。
 わが家の庭のチューリップは終わりかけ、今はアイリスがたくさん咲いています。青紫と白がほどよく調和した心優しいアイリスのほか、元気溌剌な真っ黄色のアイリスも咲き出しました。ジャーマンアイリスもようやく咲きはじめました。青紫の気品のある花です。アイリスより一段と豪華な雰囲気です。福岡県弁護士会館の通用口のそばに咲いているのは、わが家の庭から持ってきたものです。今が見頃ですから、ぜひ見てやってくださいね。朝、自宅を出るときにはフェンスに咲くクレマチスに向かって、行ってきますと挨拶しています。赤紫色の花です。春はいろとりどりの花が咲いて、いい気分です。

不都合な真実

カテゴリー:アメリカ

著者:アル・ゴア、出版社:ランダムハウス講談社
 地球環境は人間が悪化させていることを視覚的に訴えた写真集のような本です。アル・ゴアはクリントンが大統領のときの副大統領で、現ブッシュ大統領と接戦の末、当選できなかった人物です。アメリカの団塊世代の一人でもあります。
 映画も公開されましたが、私は見ていません。世界的に評判になったあと、アメリカでは、ゴアも自宅ではエネルギーの無駄づかいをしていると問題にしたグループがいました。事実かもしれませんが、アル・ゴアが告発している資源の乱費、そして地球環境の悪化は事実だと思います。みんながライフスタイルを見直すべきだというのは、まさにそのとおりです。
 ただ、アル・ゴアはアメリカ保守層のチャンピオンとしての限界があるせいなのか、マックなどのファースト・フードそして世界的大企業が環境悪化を加速させている促進要因であることを問題にしていないのが残念です。
 地球の温暖化の例証として、写真がいくつも紹介されています。キリマンジャロの山頂に山岳氷河がなくなってしまった。スイス・アルプス、アラスカなどの氷河がすっかり消えたり、大きく後退している写真には息を呑みます。
 巨大ハリケーンが次々に発生してアメリカを襲った。
 地球全体の降水量は20世紀に20%増加した。しかし、逆にアフリカのサハラ砂漠などでは降水量がひどく減っている。
 温暖化のため、北極も南極も氷が減っている。
 南極の皇帝ペンギンを描いたドキュメンタリー映画「皇帝ペンギン」は実に感動的でしたが、実はこの50年間に70%も減ったという。恐ろしい。
 地球を夜、衛星からとった写真が紹介されています。日本は夜でも明るい。もちろん、北アメリカも明るい。ところが、アフリカや南アメリカなどでは、火が燃えて赤くなっている。森林の破壊がすすんでいることを意味している。
 アメリカは京都議定書を今なお批准していない。先進国ではアメリカとオーストラリアのみ。アメリカの我がまま勝手は許せませんよね。
 庭に植えているタラの木の芽を初めて食べました。昨年は、芽がぐんぐん伸びているのを、あれよあれよと見守っていて食べ損ないました。タラの芽を天プラにして食べたのですが、柔らかくてとても美味でした。少しばかりえぐみも感じましたが、それがかえって春を感じさせてくれました。アスパラガスもついでに天プラで食べてみました。わが家の庭のチューリップは相変わらず毎朝、目を楽しませてくれます。2週間はたっぷり楽しめます。

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.