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カテゴリー: アメリカ

そのとき、赤ん坊が私の手の中に

カテゴリー:アメリカ

著者:アレン・ネルソン、出版社:K9MPなんで、なんで、ブックレット
 私と同世代の元アメリカ海兵隊員の体験談を本にしたものです。何の体験記かというと、私たちが20歳前後ころにあっていたベトナム戦争の体験談です。この本を読むと、戦場の悲惨さがかなりの実感をもって想像することができます。若い人たちにぜひ読んでもらいたい本です。
 沖縄で小学4年生の子がこんな質問をしました。大人はしない質問です。
 ジャングルで、トイレに行くときは怖くなかったの?
 戦争映画にカッコいい主人公がトイレに出かけることはまずない。
 私は二度ほど、トイレに腰かけるシーンのある映画を見た覚えがあります。でも、それは基地の中のトイレでした。ドラム缶にたまったものを重油をかけて焼かされる兵隊を描いた場面も見たことがあります。でも、ジャングルの中ではありません。著者は次のように答えました。
 そう。戦場でトイレに行くときほど恐ろしい瞬間はない。仲間の兵士と離れてジャングルに入って、そこで武器を降ろし、ズボンをおろす。これほど心細い瞬間はない。
 昨年暮れにベトナムへ行ったとき、ホーチミン市(旧サイゴン)の郊外にあるクチへベトナム戦争のときの状況を見学に行ったことがあります。まさにジャングルのなかで、アメリカ兵をだまし打ちにして殺す仕掛けをいくつも見ました。
 著者は海兵隊員として、13ヶ月のあいだベトナムのジャングルで戦闘に従事しました。敵のベトナム人を大勢殺し、また、仲間の海兵隊員が殺されて死んでいくのを見た。そこで思い知ったことは、本当の戦争は、映画の中の戦争とは、まったく別のものだということ。カッコいい主人公なんかいない。正々堂々ということもない。戦場で女性や子どもを助けることもない。本当の戦争にはルールなんか何もなく、敵と思えば、見つけ次第に殺すだけ。食事中であっても、トイレしていても、その格好のまま撃ち殺してしまう。
 殺したら終わりではない。死体を集めて、数をかぞえなければいけない。ジャングルの中にある死体探しも仕事のひとつ。その方法は二つある。その一つは、ジャングルの中に入って、ハエのとぶ羽音に聞き耳をたてること。ブーンというハエの音をたどっていくと、そこに死体がある。
 その二は、鼻でにおいを嗅ぎまわること。死体の腐る臭いが漂っている。腐乱死体の臭いのすさまじさといったら、思わず胃のなかの物がこみ上げてきて、ゲロを吐いてしまうほどひどい。目に涙がたまり、鼻汁がたれ、全身の力が抜けてしまう。それほど強烈だ。
 もし、戦場の臭いをそのまま伝える戦争映画ができたとしたら、観客は二度と戦争映画なんか見ようとは思わなくなるだろう。戦争の臭いとは、死体の腐る臭い、死体の燃える臭い、血の臭い、そして弾薬・硝煙の臭いだ。
 著者は、ベトナムのある村を攻撃し、人家の裏手にある防空壕に入り、ベトナムの若い女性の出産現場に直面してしまいました。思わず両手を差し出したところ、赤ん坊が生まれ落ちたのです。そこで、ベトナム人も同じ人間だと初めて自覚したというのです。
 今の日本は、アメリカの一つの州みたいで、ブッシュ大統領の言いなりになっている。著者はこのように主張します。本当にそうですよね。
 カッコイイ戦場にあこがれている日本の若者に、本当の戦場の様子を自分の体験にもとづき伝えたいという著者は、日本全国を話して歩いています。その講演料は10万円以下だということです。すごい安さです。私の知人はネルソン氏の講演会を企画して本当に良かったと言っていました。
 講演の初めと終わりに、著者はギターでひき語りと歌ってくれるそうです。これも素晴らしいとのことです。ぜひ私も一度、著者の話を聞いてみたいと思いました。

イラク占領

カテゴリー:アメリカ

著者:パトリック・コバーン、出版社:緑風出版
 イギリスの勇気あるジャーナリストがイラクのバクダッドで取材を続けていて、アメリカによるイラク戦争後のイラクの実情をレポートした貴重な本です。思わず居ずまいをただして読みすすめました。本当に悲惨な現実がそこにあります。こんなひどいイラク占領に日本は加害者として加担しているのです。情けない話です。いったいテレビや大新聞のジャーナリストはどうして沈黙を守り続けるのでしょうか。イラクで日本の航空自衛隊が何をしているのか、ぜひとも報道してほしいと思います。
 1991年の湾岸戦争でパパ・ブッシュが国連の支持を背景に多国籍軍を率いて完勝できたのは、中東をイラクのクウェート侵攻以前に戻すという、いわば保守的な戦争だったことが大きい。それは世界が慣れ親しんでいた原状回復のための戦いだった。だから、支持は世界中から、中東の内部からも集まった。しかし、20年後、息子ブッシュが始めた戦争は、とんでもなくラジカルな企てだった。世界の権力バランスを変えてしまうものだった。アメリカは単独で産油国を征服しようとした。アラブ世界でもっとも強大な国だったイラクを植民地として支配しようというものだった。
 ブッシュの終戦宣言(2003年5月1日)から3年たった。アメリカ軍はこれまで2万人もの死傷者を出しているが、その95%がバクダット陥落以降である。今でも毎月  100人以上のアメリカ兵が死んでいます。前途あるアメリカの青年たちが、イラクの民衆の憎しみを買って殺されているのです。しかし、イラク人の死者が桁違いに多いことも忘れるわけにはいきません。
 イラク戦争がベトナム戦争とよく似ているものの一つにゲリラ戦法がある。即席爆発装置(IED)は、重砲弾を数発、ワイヤでつないで、路肩に埋め、有線あるいは無線でリモートコントロールして爆発させるものである。アメリカ軍の死傷者の半数はこの犠牲だ。
 アメリカはイラク人の基本的な生活レベルの向上に失敗した。
 サダム政権下ではイラク人の50%が飲料水にありつけたが、2005年末には32%。電力供給も、石油生産も同じ。労働力の50%以上が失業している。仕事のない数百万の怒れる若者たちは、絶望のあまり、武装勢力に入るかギャングになるしかない。
 アメリカの統治者のいる安全なグリーンゾーンに入るためには8ヶ所もの検問所をくぐり抜ける必要がある。グリーンゾーンとそれ以外のイラクとの違いは、サファリパークと本物のジャングルの違いだ。
 イラク社会とは、中央政府への忠誠以上に地域的な忠誠心の網の目である。スンニ派、シーア派、クルドの三大社会がある。しかし、イラクの人々は部族とか氏族とか血縁の大家族とか、村や町や都市にも強い忠誠心を抱いている。
 イラクの人口2600万人。うちシーア派1600万人。スンニ派とクルド人がそれぞれ500万人ずつ。イラク人のほとんどが自動化された近代兵器で武装している。
 ジョージ・ブッシュはイラクで実際起きていることに対し、知識もなければ、関心も持っていない。同じく、イラク暫定統治機構(CPA)のブレマーも、イラクのことなど何も知らないと自分で認めた男だった。アメリカのイラク当局者は、イラク人が考えていた以上に無能で、官僚主義だった。アメリカは世俗的なイラク人指導者の影響力を誇大視し、宗教指導者の力を軽視した。サダム後のイラクで勝利をおさめたのは、伝統宗教ではなく、宗教民族主義である。
 イラクの自爆者とは一体、何者なのか? 自爆攻撃するには、ゲリラ戦と違って、軍事的な経験や訓練を必要としない。必要とするのは、ただひとつ、死を覚悟したボランティアがいればいい。そして、そのボランティアは常にありあまっている。
 当初は、イラク人よりサウジアラビア人、そしてヨルダン、シリア、エジプトから来ていた。しかし、今ではほとんどがイラク人であり、スンニ派アラブ人だ。
 イラクを破壊しているのは、次の三つだ。占領とテロと汚職。
 アメリカ軍の2004年の犠牲者は、戦死848人、戦傷7989人。2005年は戦死846人、戦傷5944人だった。
 自爆攻撃があるのは午前7時半から10時までのあいだ。自爆者はペアか三人でチームを組んで攻撃するようになった。最初の一人が少し離れたところで自爆して注意をそらしたすきに、二人目がホテルのコンクリート防壁に突っ込んで自爆、それによって出来た防壁の開口部に爆薬を満載したトラックの三人目が突進していく。
 スンニ派の88%がアメリカ軍への攻撃を容認(うち積極的が77%)。シーア派でも、攻撃容認が41%。 アメリカ軍は、イラク軍に供与した新鋭兵器が自分たちにつかわれるのではないか。武装抵抗勢力に売り飛ばされるのではないかと恐れている。
 イラク復興のため、過去3年近くに数十億ドルもの巨費が投じられたはずなのに、バクダットに工事用クレーンは一つも見かけない。月に20億ドルもの石油収入は一体どこに行ったのか。ブレマー指揮下に、88億ドルが使途不明となった。アラウィ首相の政府の下で、20億ドルものお金が消えてしまった。アメリカの再建事業経費のなかで警備費が占める割合は、全支出の4分の1を占めるまでになった。
 バクダットは平穏な日でも、1日に40体ほどの遺体が死体保管所に運びこまれる。バクダットは、殺戮が増えているのかどうかさえ見当のつかない、異常な暴力の街と化している。こんなイラクにしてしまったアメリカとイギリスの責任は重大です。そして、それを強力に支えている日本政府は、それを黙認している私たち日本人の責任もまた決して軽くないと思います。
 こんなイラクの殺伐としたなかで子どもたちが育っています。いったい彼らが大人になったとき、イラクに平和な社会は実現するのでしょうか・・・。

アメリカを揺り動かしたレディたち

カテゴリー:アメリカ

著者:猿谷 要、出版社:NTT出版
 著者には大変失礼なのですが、どうせアメリカのファースト・レディたちを天まで高く持ちあげるばかりの本かなと思って全然期待しないまま読みはじめたのでした。ところが、意外や意外、大変に面白いアメリカのレディーたちの話が満載でした。
 帝国主義国家、世界の憲兵気取りのアメリカのなかでも、人種差別に反対し、民主主義と弱者のために全身全霊うちこんでたたかう女性たちの伝統が、昔も今も根強く生き続けているのですね。読んで、うれしくなりました。
 ポカホンタスというアメリカ先住民の女性の名前は聞いたことがあるだけでした。
 ときは1603年です。日本では関ヶ原の戦いが終わり(1600年)、徳川家康が江戸に幕府を開設した年です。イギリス人がアメリカにやって来て、餓死寸前の状態になったとき、先住民のインディアンが救いの手を差しのべました。そのときの首長の娘がポカホンタスです。やがて逆にイギリス側に捕らえられ、植民地のなかで英語を教えこまれ、キリスト教を信じるようになり、名前もレベッカと変えるのです。そして、ポカホンタス19歳のとき、イギリス人青年と結婚し、子どもを生みます。イギリスに渡り、国王とも会見します。ところが、天然痘にかかって、わずか22歳でなくなってしまいます。
 アメリカ大陸の先住民は、天然痘やチフス・インフルエンザなどへの免疫力をまったくもっていなかったため、次々に死亡し、人口が激減したのです。
 ストウ夫人の『アンクルトムの小屋』は、私は小学生のころ、ラジオの読み聞かせ番組で聞いていたように思います。この本にはストウ夫人も紹介されていますが、同じころ、奴隷救出に生命を賭けていたハリエット・タブマンという黒人女性をここでは紹介します。ハリエット自身も奴隷の生まれでした。そのころ、アメリカ南部から北部へ黒人奴隷を逃亡させるための地下鉄道が組織されていました。ハリエットも、その車掌に救われたのです。地下鉄道といっても、地下鉄ではなく、線路を走る鉄道でもありません。秘密裡に黒人を安全な北部へ脱出させる人々のことです。
 そして、ハリエットは、今度は救う側にまわります。10年間にメリーランドに潜入すること19回、あわせて300人もの奴隷の救出に成功したというのです。たいしたものです。当時、メリーランドの奴隷所有者はハリエットの首に4万ドルの賞金までかけていたそうです。
 フランクリン・ローズヴェルト大統領夫人のエレノア・ローズヴェルトも注目すべき女性だと思いました。エレノアは幼いころに両親に死別し、厳しいしつけを受けたので、内気でおどおどした、愛情に飢えた少女だったというのです。
 ローズヴェルトは、小児マヒにかかり、脚がマヒした。そのうえ、秘書との浮気もあった。しかし、エレノアは離婚せず、大統領である夫を支えた。たとえば退役軍人たちが政府に抗議行動を起こしたときには、エレノアはそのなかに乗りこみ、話し合い、一緒に歌をうたった。エレノアは国連のアメリカ代表の一人になり、国連の人権委員会の議長にもなって、広島の原爆被災地をはじめヨーロッパの戦禍の跡はほとんど見てまわった。
 すごいものですね。日本でいうと、三木元首相の奥さんが平和憲法擁護という革新的立場で活躍しておられるのを知っていますが、ほかに誰かいるのでしょうか?
 同じくフランクリン・ローズヴェルト大統領を支えたもう一人の女性が紹介されています。フランシス・パーキンズです。
 フランシス・パーキンズは大学を卒業したあと中学校の教員となった。しかし、それにあき足らずにシカゴへ向かった。貧しい人たちのセツルメントで働くようになったのです。私も大学生時代、セツルメント活動に没頭していましたので、とても共感を覚えました。そして、ここでの経験を生かして、労働長官に指名され、就任するのです。アメリカで初めての女性閣僚でした。フランシス・パーキンズは、1935年に社会保険法を成立させた。このときまで、アメリカには養老年金や失業保険の制度がなかった。彼女は、シカゴでのセツルメント運動をしていたときの夢を実現することができた。
 フランシス・パーキンズは、アメリカ史上に残る不況時代の労働長官として、12年間FDRの下でがんばった。すごいアメリカ女性がここにもいました。アメリカの民主主義はこういう人たちに支えられてきたのですね。
 1870年に憲法修正15条によって黒人に参政権が認められた。しかし、それは男性だけだった。黒人奴隷の解放をめざしてたたかった白人女性には、まだ選挙権が認められなかった。女性の選挙権は、第一次大戦が終わったあとの1920年のこと。
 レディー・ファーストは偽善的な性格をもつもの。強者である男性が弱者である女性へのいたわりと庇護なのである。アメリカは、今も昔も、完全に民主主義が貫いている国ということでは決してないのです。もちろんアメリカに学ぶべきところは多々あります。しかし、アメリカ一辺倒というわけにはいきません。

陰謀論の罠

カテゴリー:アメリカ

著者:奥菜秀次、出版社:光文社
 9.11テロはアメリカの自作自演だというビデオは私も見ました。全面的に信用したわけでは決してありませんでした(アポロが月世界には実はおりていないという説については、一時、まんまと信じこまされてしまったのですが・・・)が、どうもおかしいところがあるとは思っていました。でも、この本を読んで、なーんだ、そういうことだったのかと、納得できました。9.11がアメリカの自作自演でないこと、そして、この陰謀論は反ユダヤ団体がかきたてているものだということを知りました。実に説得力ある本です。
 著者は日本で最強のオタクを自称しています。いったい本業は何なのでしょうか。9.11に関する報告書全文を読んだというのですから、それだけでもすごいものです。
 WTC(世界貿易センター)の残骸はスクラップとして外国に輸出された。しかし、それは証拠隠滅工作ではない。大事な部分は保管されている。そして、瓦礫のなかから、ボーイング機の残骸、乗客の遺体や持ち物が見つかっている。
 陰謀論はWTCに衝突したのは軍用機だというけれど、ボーイング機だということです。この点は、私も信用していませんでした。
 WTCをつくった設計者はボーイング707を想定して、707が衝突したくらいでは大丈夫だと考えていた。しかし、767は707よりも、タテも横も1割長く、重さで2割も重い。だから、767の満タンのガソリンが燃え上がったこともあってWTCが崩壊したのは合理的な説明が可能なのだ。
 ペンタゴンに突っこんだボーイングの残骸がなく、開いた穴と機の形状があわないという指摘がある。実は、この点を私も疑ったのです。しかし、実は、ペンタゴンに開いた穴はボーイングの形どおりだったし、機の残骸はそこらじゅうに散らばっていた。機長を殺めたカッター、自分証明書、お金、宝石、遺体の一部も見つかっている。子どもの靴、小さなスーツケース、動物のぬいぐるみ、制服を着た搭乗員の遺体の一部も見つかった。そして、ボーイングの機体にみあう穴があいていたのです。
 ユナイテッド93便については、回収された遺体のうち、10数人は身元が判明した。これは遺体の指紋や歯科治療記録にもとづく。単に穴があいているだけではない。
 乗客は携帯電話ではなく、機内電話をつかって地上へ電話をかけて話した。
 テロリストたちが飛行機を操縦できた理由については、通常のハイジャックと違って、着陸とか離陸という高度のテクニックを必要としなかったことがあげられています。
 目を開かせる本でした。うかうか騙されないようにしないといけませんね。

借りまくる人々

カテゴリー:アメリカ

著者:ジェイムズ・D・スカーロック、出版社:朝日新聞社
 アメリカのクレジット依存症社会の実情を紹介した本です。
 かつてのアメリカでは、黒人や移民といったマイノリティが質素に倹約をして生活しているコミュニティが存在し、倹約と勤勉によって強い絆で結ばれた中産階級の地域ネットワークを作りあげていた。ところが、この地域コミュニティやネットワークは、「お手軽な」クレジットが怒濤のように流れこんできたために、わずか数年で崩壊してしまった。それほど豊かでない地域では銀行に代わって、小切手換金所や質屋といった消費者金融と小口の高利貸しが軒を連ねている。
 借金の文化の基本は恐怖の文化である。秘密にせず堂々とさえしていれば恐怖を感じないですむなどとは、現実を知らない単純な考え方である。
 取り立て業は消費者の愚かさを利用する。回収代行業界には100万人もの業者がいる。その数は10年間で2倍に増えた。この業界の転職率は非常に高い。月末にノルマを達成できない場合は即座に解雇される。クレジット会社が年に何度も取り立て業者を代えるのもまれでない。
 最近のテクノロジーは革新的で、債務者が電話に出ると、回収代行業者の手元のスクリーンには、債務者のクレジットの明細が自動的に表示される。これによって業者が債務者の困窮状態を知ることができるし、また債務の完済に利用できる別のクレジットカードも画面に示される。回収業者がまず探すのは、限度額に達していないクレジットカードで、まだ残高があれば、それで借金を支払ってもらうことができる。大部分の人は急病や失業などの不測の事態にそなえて、この残高には手をつけないようにしている。それを回収業者から隠しおおせるものではなく、確実に取り立てられてしまう。回収業はどうやっても債務者を追いつめ、支払わせる。
 取り立て業で成功するには、相手をいかにたくみにだますかにかかっている。電話の相手に対して返済の義務があると思わせることである。経験のある回収代行業者なら、相手に返済の倫理的義務を追及しているものと思いこませることができる。回収代行業者は、自分が実際の債権者であるかのように振る舞う経験を積んでいる。取り立て屋の手取りは回収分の20〜50%だ。
 秘訣は、相手をどこまで追いつめられるかだ。甲板の端まで追いつめれば、彼らは恐怖からパニックに陥る。そこで引き戻してやれば、欲しいものは何でも手に入る。狙いは債務者がひた隠しにしておいた貯え、つまり緊急時に備えて貯えておいた資金である。
 アメリカの連邦破産法の改正は、債務から解放されたいとする人に、一律に資産調査を義務づけている。これによって申請者の半分以上が排除される。また、破産を検討している者は、申立前の6ヶ月間は自費でクレジットの相談を受けなければならなくなった。
 破産は基本的には中産階級のためのセーフティネットのはずだった。
 アメリカ人の2000万人から4000万人が銀行口座を持っていない。
 アメリカでは年間150万人もの中産階級が破産申立をしていました。それを止めようとするのが今回の連邦破産法の改正です。そんなに政府の狙いどおりうまくいくものか、しばらく様子を見守りたいと思います。

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