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カテゴリー: アメリカ

チョコレートの真実

カテゴリー:アメリカ

著者:キャロル・オフ、出版社:英治出版
 私はチョコレートが大好きです。といっても、それほど食べているわけではありません。高級チョコのおいしさはなんとも言えません。それにしてもバレンタインデーが私の子どものころになかったのは良かったと思います。だって、あれって露骨に差別を見せつけるじゃありませんか。私は嫌いです。いえ、もらったチョコレートは喜んで食べます。
 この本はチョコレート生産現場の苦い真実を伝えています。
 世界のカカオの半分近くが、高湿な西アフリカの熱帯雨林に生まれている。カカオの木とは神々の食べ物ということ。熟した実をナタで切り落とし、割って中の宝物を取り出す。パルプと呼ばれる淡黄色の果肉に包まれて、くすんだ紫色をした、アーモンド大の種が数十個ある。向こうを見ると、バナナの葉を敷いた台の上に、取り出した種を果肉ごと積み上げてある。そうやって数日間、湿気と熱気の中で発酵させると、驚くべき錬金術が行われる。熱帯の強い日差しにさらされるうちに、果肉から甘くとろりとした液が浸み出し、種がその中に浸る。強烈な臭いを発しながら、微生物が働き出す。これが何の変哲もない豆を魔法のように、世界でもっとも魅惑的なお菓子に欠かせない原料に変える。異臭の中で、5、6日発酵させたあと、台に広げて乾燥させる。さじ加減の難しい、こうした手作業の積み重ねとチョコレート製造技術のおかげでチョコレートがつくられている。
 1万5000人のマリ人のこどもたちが、コートジボワールのカカオ、コーヒー・プランテーションで働いている。多くは12歳以下で、140ドルで年季強制労働に売られ、一日12時間、年に135ドルから189ドルで働く。
 『ブラッド・ダイヤモンド』という映画がありました。2003年にクリーンダイヤモンド貿易法が出来て、奴隷労働が規制されています。同じような規制がカカオについても必要だと思いました。
 フェアトレード運動は、途上国の農民に恩恵を与えるよりも、先進国の人々の罪悪感をなだめるためのものだった。それでも、途上国の人間に多少なりとも公正になるようにはした。
 有機食品運動は、現在では、ほぼ全面的に市場原理主義に吸収されてしまった。この原理がアグリビジネスを動かし、世界中で農民を貧困に追いやった。
 コストは最小に、利益は最大に。この風潮を招いている本当の要因は消費者だ。安全性、手軽さ、手頃な値段がある限り、消費者は、生産者が誰なのか、原料が何なのか、あまり関心を持たない。
 駅にあるケンタ、赤坂交差点にあるマックに群がって買い求めている人々を見るにつけ、地球環境の保全は道遠しだな。私はつくづくそう思います。
(2007年9月刊。1800円+税)

ワーキング・プア

カテゴリー:アメリカ

著者:ディヴィッド・K・シプラー、出版社:岩波書店
 アメリカの下層社会、というのがサブ・タイトルです。日本は相変わらずアメリカを手本として同じような社会になることを目ざしていますが、この本を読むと、アメリカのような社会になってはいけないと、つくづく思います。
 アメリカは経済的に繁栄したあげく、富める者と貧しい者の格差は拡大する一方だ。上位10%では、世帯平均83万ドル以上の純資産があり、下位20%では、わずか   7900ドルしかない。アメリカの平均寿命は短く、乳児死亡率は高い。
 アメリカ政府は大人1人と子ども3人の家族で年収が1万8300ドル以下の家庭を貧困と定義する。2002年には、その貧困率は12.1%となった。4240万人である。
 アメリカで働くためには、ソフトスキル、つまり仕事に就くために必要な、簡単なスキルを教える必要がある。そのスキルに欠けている人々の脱落率は高い。
 たとえば、バスの乗り方を知らないため、遅刻ばかりしている若い女性従業員がいた。時刻表が読めないし、バスに乗ったことがないため、バスの乗り方も知らなかったのだ。
 アメリカの成人の37%は、計算器をつかっても、値段の10%引きの計算の仕方が分からない。同じく10%の人々がバスの時刻表を読めず、クレジットカードの請求額の誤りに関するクレームの手紙一本も書けない。
 アメリカの大人の14%は預貯金入金票に記入した額を合計できないし、地図上で交差点の位置を探しあてることも、家電製品の保証書を理解することも、薬の正しい服用量を判断することもできない。
 親のなかには、ただの一度も自分の子どもたちを一緒に遊んだことのない人たちがいる。そうした子どもたちが親になったとき、親に遊んでもらった経験がないため、自分の子どもたちと一緒に遊ぶことが重要な仕事とは気づかない。
 私たちの大半は、親であるとはどういうことか、明確なレッスンなど受けることはない。私たちが知っていることは、すべて自ら少しずつ学んだ結果である。たとえば、両親から無意識のうちに吸収したり、ときには彼らと同じ失敗をくり返したり、ときには両親を反面教師にして彼らの過ちを逆手にとったりしている。
 最貧困層においては、子育てという仕事は、多くの困難があいまに起こる破壊的な相乗効果のダメージにさらされやすい。
 自分自身が愛に包まれていなければ、子どもにも多くの愛を捧げることができない。子どもたちを傷つけている親たちは、そうした状況にある。燃え尽きている。彼らは子ども時代に燃え尽きてしまった。人間として、親と良好な関係を築こうとしたにもかかわらず、親からあまりかわいがってもらえなかったからだ。だから、心を閉ざしてしまった。ストレスがたまりすぎていると、思考力が働かなくなってしまう。
 アメリカ人は、所得と学歴が低くなればなるほど、投票が重要だと信じる割合が低くなっていく。個人生活の試練に疲れ、権力機構について冷笑的であり、選挙はつまらなく、政治家は信用できないと考えている。
 アメリカ人は自分自身の階級的利害に即して投票しておらず、投票率が高まったときでも、貧しい人々は、階級的利害にそって投票はしない。
 投票は、不満よりも願望によって動機づけられている。アメリカ人の19%は賃金労働のトップ1%に入っていると考え、次の20%は将来はそうなると思っている。
 今の日本でも、年収300万円以下の労働者が全労働者のほぼ半数を占めている。貯蓄残高ゼロ世帯は1981年の5.3%から2003年の21.8%に増加した。
 日本の貧困層の増大も深刻です。ところが、自・公政権は相変わらず医療費や福祉の予算を削っています。アメリカ軍がグアムに基地をつくるのに3兆円も出してやるという「気前の良さ」があるのに、日本人に対してはこれだけ冷酷になれる日本政府って、いったい何なのでしょうね。
(2007年1月刊。2800円+税)

神は妄想である

カテゴリー:アメリカ

著者:リチャード・ドーキンス、出版社:早川書房
 神が実在するのか、と考えたときに一番に思い浮かべるのはナチス・ドイツによるユダヤ人の大量虐殺です。神が実在するのに、それを防ぐことができなかったなんて、私にはとても理解できません。カトリックとプロテスタントの殺し合い、イスラム教徒とキリスト教徒との殺し合い、どうして、それぞれの神が止められないのでしょうか?
 むしろ、宗教を強く信じている信者のほうが憎悪にみち、いや単に憎しみあうだけでなく、殺しあうのですから、一層たちが悪いのです。
 そのような私の疑問を、この本は、あますところなく裏づけてくれます。だから私は、昔も今も、無神論者なのです。といっても、苦しいときの神頼みは今もしていますが。
 ヒトラーは、カトリック教徒の家に生まれ、子どものころはカトリックの学校と教会に通っていた。スターリンは、神学校をやめたあと、ロシア正教を捨てた。しかし、ヒトラーは、自らのカトリック信仰を公式に放棄したことはなく、むしろ生涯を通じて信仰を持ち続けたのではないかと思われる。ヒトラーは、キリスト教徒としてユダヤ人を非難する長いキリスト教の伝統に影響を受けていただろう。
 マルチン・ルターは、激烈な反ユダヤ主義者だった。すべてのユダヤ人は、ドイツから放逐すべきだと、議会で語ったことがある。
 ヒトラーは、マルクスと聖パウロが二人ともユダヤ人であるとしつつ、イエス自身がユダヤ人であったことは頑として認めなかった。
 宗教的信念が危険なのは、その他の点では正常な人間を狂った果実に飛びつかせ、その果実が聖なるものだと思わせることにある。
 未遂に終わったパレスチナの自爆犯は次のように語った。
 イスラエル人を殺すように自分を駆りたてたものは、殉教へのあこがれであり、復讐したいなどとは決して思ってはいなかった。私は、ただ殉教者になりたかっただけだ。
 私は、もうすぐ永遠の世界に行くのだという気持ちのなかで、ふわふわと漂い、泳いでいた。何の疑問もなかった。
 キリスト教、そしてイスラム教でもまったく同じことだが、疑問を抱かない無条件の信仰こそ美徳であると、子どもたちに教えこむ。
 世論調査によると、アメリカの全人口の95%が自分は死後も生き続けるだろうと信じているという。もし本当にそう思っているのなら、年老いて、あるいは病気のため臨終を迎える人に対して、「おめでとうございます。これはすばらしい報せです。私もおともしたいくらいです」となぜ言わないのか。それは、本当は、死後について信じているふりをしているだけで、実は信じていないということを証明するものではないのか。
 ホント、そうですよね。死後に永遠の平和な世界があると子どもたちに語り聞かせる大人は、もしそれが本当なら、自分こそ真っ先に「やるべき」でしょう。ところが、彼らは「卑怯にも」そんなことはしないのです。それは、彼らの「宗教心」が実はホンモノではないから、ということではありませんか。私は、この本を読んで、そのことにますます強い確信を抱きました。
(2007年5月刊。2500円+税)

世界を不幸にする原爆カード

カテゴリー:アメリカ

著者:金子敦郎、出版社:明石書店
 ルーズベルトはなぜ、原爆投下の目標を早い段階でドイツから日本へと転換させたのか。そこに人種差別があったことを否定することはできない。
 トルーマンは、原爆投下を非人道的だと批判されたとき、野獣には野獣の扱いをしたと言い放った。結局のところ、日本への原爆投下が人種差別によるとか、あるいはその背景に人種差別意識があったと判断する材料はない。しかし、黒人差別が当たり前だった時代である。アメリカ指導者の意識の底流にそれがなかったとは言い切れないだろう。そこには報復・懲罰の意識もからんでいた。
 原爆の威力を確認するためには、空からの目視と写真撮影が不可欠だった。そのため、原爆投下には晴天が条件になっていた。7月25日の原爆投下命令には、原爆の威力を観測、記録するため科学者を搭乗させることが盛りこまれていた。実際、広島に原爆を投下した「エノラ・ゲイ」には科学者を乗せた観測機2機が同行していた。
 皇居も原爆投下目標の有力な候補のひとつとして検討された。原爆投下が日本に対して最大限の心理的効果をあげること、最初の原爆使用を十分に「見せ場効果」のあるものにすることが委員会内で合意されていた。皇居は心理的効果は大きいが戦略的効果は一番小さいとして除外された。そこで、最終的には、目標を京都、広島、新潟の3都市に絞りこんだ。次いで、広島、小倉、新潟、長崎が目標となった。
 小倉の上空が天候不良のため、長崎に目標が変更されたようです。
 原爆投下は、軍事的にみて必要なかったし、アメリカ軍将兵の生命を救うという意味でも必要はなかった。アメリカ政府の首脳陣は、これを分かっていた。それでも原爆をつかった最大の理由は、ソ連を扱いやすくするためだった。原爆投下は軍事的というより、政治的な理由によって決まった。トルーマンがポツダム会談を引きのばしたのは、原爆実験の結果をもって臨みたかったからである。
 アメリカは原爆の開発に20億ドルもの巨額の資金と資源を投入した。
 アメリカが第二次世界大戦で兵器生産に投じた金額は120億ドルだった。
 アメリカの軍事産業は、産軍複合体とも呼ばれ、アメリカが戦争をしかけるごとに肥え太っていきました。肥大する軍事産業のおこぼれにあずかるような会社とか、それに寄生するような法律事務所であってはならないとつくづく思いました。
(2007年7月刊。1800円+税)

世界がキューバ医療を手本にするわけ

カテゴリー:アメリカ

著者:吉田太郎、出版社:築地書館
 キューバ憲法の第9条には「治療を受けない患者はあってはならない」と明記されているそうです。国民に医療を保証することを国に義務づけているわけです。すごーい。
 キューバでは人々は医療費はタダ。医科大学もタダ。6年間の研修期間中の授業料、下宿代、食費、書籍代、衣服代のすべてを国が負担し、一切の経費がかからないうえ、毎月100ペソの奨学金が支給される。ただし、成績は求められる。全部の学科試験で平均 90点以上とらないと入学できない。それと、条件として、卒業したら、貧しい農山村や先住民のいるところで働くことを誓わなければならない。今、キューバの医科大学には世界の27ヶ国から、1万人以上の留学生が勉強している。そのなかには、アメリカのハーレム地区など、黒人もいる。学生の51%は女性である。はて、日本人の留学生はいないのでしょうか?
 キューバの人口は1126万人。100歳以上の長寿者が2800人以上いる。日本には2万8395人いるが、人口比ではキューバは日本と同じくらいの長寿国だ。
 キューバは長寿国である。1960〜65年には平均寿命は65.4歳だった。1980〜 85年には73.9歳に、1995〜2000年には76.0歳、2006年には77.5歳にまで伸びた。
 キューバでは、2000年9月に全小学校で20人学級が達成され、多くは15人学級になった。中学校でも15人学級だ。
 医科大学の教授陣は、英語などを除いて、80%は第一線で働く医師である。医師になるには、知識とともに人格形成が必要だという考えによる。
 うむむ、これはすごいことです。
 キューバでは医師は特権階級ではない。キューバの平均月給は334ペソだが、医師のそれは575ペソ。
 キューバの医療で重視されているのはファミリー・ドクター。ファミリー・ドクターが120世帯、700〜800人と、顔が見える範囲で各家族の健康状態をチェックし、増進することにある。2005年にはキューバの医師7万6000人のうち、3万4000人がファミリー・ドクターで、ほぼ同数の看護士とともに全国民をカバーしている。
 これって、本当にいいですよね。安心して生活できますからね。
 キューバがユニークな医薬品を開発し、外貨を大いに稼いでいることを初めて知りました。たとえば、PPGという抗コレステロール剤がある。その副作用とは、なんと性欲を高めてしまうというのです。ええーっ、すごーい。私もぜひ・・・。
 1日1錠、5ミリグラムを飲むだけで、動脈硬化や心筋梗塞が治るうえ、性欲減退にも威力を発揮するというのです。ところが、アメリカが認定しないため、日本でも売られていません。損な話です。
 キューバの医療を受けたいために、世界各国からヘルス・ツアーがやって来るといいます。マイケル・ムーア監督の最新作の映画『シッコ』にも、アメリカから、9.11の被害者がキューバに渡って高度な治療をタダで請け、安い薬を大量に買って帰るというシーンが出てきます。キューバで治療を受けようというヘルス・ツアーだけで、年間6000万ドルの外貨をキューバは獲得しているというのですから、すごいものです。
 キューバの医師たちは、全世界に出かけて行って活躍しています。これまだ偉いものです。日本は、この面でもすごく遅れています。青年海外協力隊はありますが、医師を世界派遣するシステムはありません。
 2005年現在、2万5000人のキューバ人医師が世界68ヶ国で働いている。人口1100万人しかいない国でこんなことが出来ています。日本ならその10倍の25万人の医師が海外で貧困者のために活躍しているということに相当します。
 これから始まろうとしている日本の後期高齢者医療制度なんて、あれは本当にひどいものです。75歳以上の高齢者に医療費を負担させようという考え方そのものが間違っています。国は、お金がないから仕方がないと言いますが、ウソッぱちですよ。軍事予算はどうですか。アメリカ軍に巨額の思いやり予算を提供してますよ。大型公共工事なんて、ひどいものです。つくりはじめたとたんに沈みはじめた橋があります。あれって、医療費を削ってまで必要なものだと言うんですか?できたら赤字必至の九州新幹線の工事がすすんでいます。それでも、お金がないから、医療費負担を上げるのは仕方がないと言うんです。エエッ、ウソでしょ。もっと私たちは政府に対して怒るべきではないでしょうか。
(2007年9月刊。2000円+税)

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