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カテゴリー: アメリカ

6人の女性プログラマー

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 キャシー・クレイマン 、 出版 共立出版
 コンピューターが誕生したとき、そのプログラマーは6人全員が女性だったのです。
 ところが、彼女らはコンピューターが世間に披露されるとき、その功績を紹介されませんでした。祝賀会に招待されることもなく、せいぜい接待係として下働きさせられたのです。
 コンピューターを発案し、つくりあげたのは確かに天才的な男性たちでしたが、そのコンピューターを動かしたのは、女性たちだったのに、その功績が隠されたというわけです。
 本書は、その点に光をあて、女性プログラマーの活躍ぶりを具体的に詳しく明らかにしています。ところはアメリカ、そして第二次大戦中のことです。大砲の軌道計算を素早く、正確にしてほしいというのが、アメリカ陸軍の要請でした。つまり、コンピューターは軍事利用目的でつくられたのです。そして、プログラミングを担当したのは数学に強い若い女性たちでした。
 ペンシルベニア大学ムーア校電子工学科に女性たちが集められた。
 ムーア校の計算手チームは昼夜交代制で電気機械式の卓上計算器を使って弾道計算を数年間にわたってしていた。
 世界最初のコンピューターであるENIACは、1946年2月に公開された。大砲から打ち出された砲弾が砲口を離れてから標的に命中するまでの軌道を計算することが求められた。しかし、標的が何マイルも離れていると、天候も軌道に影響を与える。風や雨、気温もそうだ。微分方程式が大砲の精度と命中率に革命を起こした。砲手がどの角度で砲を構えたらいいのか、確実に分かるようになった。
 大砲には後座効果というものがある。砲弾を撃ったときの反動にともなう大砲の後ずさりのこと。大砲の後座は砲弾の速度を低下させ、傾きを変化させるため、砲手が標的を外す原因になった。また、赤道直下の砂漠の空気の温度や密度は、アメリカの通常状態をもとに計算された表の値とは異なっていた。なーるほど、そうなんでしょうね…。弾道計算が複雑なわけがよく分かりました。
 真空管は1904年にフレミングが発明し、1939年の万国博覧会のころには大量生産されていた。
6人の女性は、カトリック、ユダヤ教、クエーカー教、長老派とさまざまだった。
 ENIACで使われた真空管は1万8千本あった。ENIACの高さは2メートル半、長さは24メートルあり、広い部屋に収まるよう巨大なU字型に配置された。ユニットが左右に16台ずつ、真ん中に8台がそびえ立つ。壮大で威圧感があった。
ENIACは並列プログラミングができた。人間は並列では考えない。直列で考える。本を読むのも、文章を書くのもみな直列。しかし、コンピューターは並列で計算できる。
 ENIACは、世界初の汎用プログラム可能電子計算機であり、地球上のいかなる計算機より1000倍以上も高速だった。
6人の女性プログラマーは、複雑な軌道計算を「エラーなく」走らせ、しかも、どの部品が「エラー」を起こしたかを診断できた。
ENIACは、1週間分の仕事をわずか20秒以内で計算した。世界が一変した。
 ところが、ENIACも盛大なオープンセレモニーにおいて、6人の女性プログラマーはまったく無視された。このとき無視されたプログラマーに光をあてた本です。なるほど、「寅に翼」ではありませんが、先駆者の女性は、日本でもアメリカでも大変な苦労をしたのですね…。貴重な本です。
(2024年7月刊。2860円)

法廷弁護士

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 リチャード・ズィトリン 、 出版 現代人文社
 サンフランシスコに住み、40年以上活動している弁護士が自らの活動を振り返っている本です。
 アメリカでは裁判官は弁護士のなかから指名または選挙によって選任される。カリフォルニア州では、裁判官の候補者は、弁護士会および知事所轄の委員会の審査を受けたあと、知事によって指名される。
 アメリカの実態は、その司法制度は、全体として、社会を性格づけている不平等にみちあふれている。大多数の被告人は貧乏であり、かつ、圧倒的に有色人種である。黒人が白人よりも重い刑罰を受けていることは疑問の余地がない。
貧困であるほど保釈される可能性は少なく、事件が係属中、身柄は拘束されたままで、身体の自由を求めるあまり、有罪の答弁をする圧力にさらされる。
 有罪の答弁は、しばしば有罪後の保護観察や仮釈放制度へとつながることを意味する。
法廷弁護士はストレスに満ちた仕事である。
 陪審裁判はまったくの重労働であり、休日なしで16時間労働ということもよくある。
弁護士の自信過剰な傾向にもかかわらず、多くの法廷弁護士は、勝利の喜びのために長時間働いているのではない。そうではなく、敗訴の恐怖から逃れるために働いている。
 この本のなかに、「17ヶ月間を事実審理に要し、陪審員の評議は100日を超えた」(67頁)という記述があります。事実審理が1年半かかるのは、日本人の弁護士にとって何ら驚くことでもありませんが、陪審員の評議が3ヶ月以上もかかったというのはまったく想像できません。評議の秘密、そして生活・仕事の補償はどうなるのでしょうか…。
 日本とアメリカの法廷の違いの最大は、日本で被告人尋問は当然ありますが、アメリカではほとんどないらしいことです。この本でも次のように記述されています。
 多くの被告人は証言台に立つことを望む。しかし、被告人が証言台に立つのは例外に属する。著者の場合は、わずか2件のみとのこと。陪審員は、常に被告人から直接話を聞きたいと願っている。しかし、被告人が自らを弁護するため証言台に立つことは、自己に都合のよい弁明とみなされ、いろんな意味で、本人の証言は簡単に瓦壊してしまう。
 多くの場合、依頼者の側から見た「真実」は、結局のところ、「警察官が書いた報告書ほどには重要ではない」というのは紛れもない事実である。弁護人は手持ちの道具で弁護する。その道具が警察官の書いた報告だけであることは珍しくない。
 もっとも重要な教訓の一つは、良い弁護士というのは強さにもとづいて裁判をするのではなく、弱さにもとづいて裁判をするというもの。とくに刑事事件ではそうだ。
 アメリカでは、冒頭陳述は、最終弁論とは異なって、事実にもとづくこととされている。
この本には、ひどい裁判官にあたったとき、どう対処したかも紹介されています。それは日本もアメリカも同じようです。原則にしたがい、法律的に筋の通った主張なら、恐れることなく行動すべきだということです。
この本の訳者は刑事法分野で有名な村岡啓一弁護士です。
(2024年11月刊。5500円)

ドキュメント・民営刑務所

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 シェーン・バウアー 、 出版 創元ライブラリー
 2020年に発刊された「アメリカン・プリズン」が改題し、文庫本になりました。
 アメリカのジャーナリストが刑務官として民営刑務所で働いた4ヶ月間の体験が生々しく語られています。刑務所内に隠しカメラとマイクを持ち込んだのです。
 アメリカの刑務所や拘置所に入れられている人は220万人(2017年)、過去40年間で500%の増加率。アメリカの人口は世界の総人口の5%しかないのに、囚人数では全世界の25%を占めている。そして、150万人の受刑者(拘置所の収容者70万人を除く)のうち、民営刑務所に13万人が収容されている。
 アメリカでは、8万人が独房に入れられている。そのなかには10年以上、20年以上も独房で生活させられている囚人がいる。
 アメリカの歴史の大半を通じて人種差別と人の自由を奪うことと、利益の追求とは常に結びついている。奴隷制が廃止されたあとは刑務所の囚人がそれに代わった。
潜入取材をしたのは、ウィン矯正センター。警備が中程度の刑務所のなかではアメリカ最古の民営刑務所。経営する会社、CCAのCEOの年収は400万ドル(2018年)。
 潜入取材の用具として、録音機付きのペン、そして蓋の部分に小型カメラが仕込まれたステンレスの保温マグを持ち込んだ。結局、4ヶ月間、バレることはなかった。
刑務官の心得。囚人としゃべりすぎないこと。囚人は、刑務官の性格や反応を探っている。
 刑務官には精神力が大切。
CCAは受刑者ひとりにつき、1日34ドルをもらっている。州の運営する刑務所では受刑者ひとりにつき52ドルの費用がかかっている。
CCAは売上高18億ドルで、2億2100万ドルの純利益を計上した(2014年)。
州にとっては民営刑務所にすれば15%もコストが低い。ところが、逆に公営刑務所のほうが14%だけ安上がりだという調査結果もある。結局、民営刑務所は、実は、それほどの費用節約にはならない。
働いている刑務官の大多数はアフリカ系黒人で、その半分以上が女性、そして多くがシングルマザー。
 監獄はジェイルで、刑務所はプリズン。
刑務所内では自殺未遂は処罰できない。しかし、自傷行為と認定すれば処罰は可能となり、CCAは受刑者に損害の回復を求めることができる。
 刑務所は白人の優越性を脅かすものではなく、むしろそれを後押しするものだ。
民営刑務所では囚人の更生よりも収益性が重視される。これは、どこでも同じこと。
 平均で3分の1の刑務官がPTSDに悩まされる。刑務官の自殺率は一般市民より2.5倍も高い。刑務官の寿命は短い。
一般的な刑務所では、医療費が人件費に次いで多い。ルイジアナ州の刑務所は予算の31%を医療費に充てている。カリフォルニア州の刑務所では、予算の31%を医療費が占めている。というのも、ウィンの受刑者の40%が糖尿病・心臓病そしてぜん息などの慢性疾患をわずらっている。
 全米で、男性受刑者の9%で、獄中で性的暴行被害を受けている。実際には、もっと多いとみられている。ゲイの受刑者の3分の1以上、トランスジェンダーの受刑者の3分の2が刑務所で性的暴行を受けた。刑務所での性的被害の訴えの半分近くに職員が関与している。
民営刑務所は、公営刑務所より受刑者どうしの傷害事件が28%も多い。また、民営刑務所の受刑者は、公営刑務所の受刑者の2倍近く武器を持っていた。
 奴隷と同じく囚人も金もうけの手段になっているのですね。大きく目を見開かされる本でした。
(2024年8月刊。1300円+税)

アメリカ連邦最高裁判所

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 リンダ・グリーンハウス 、 出版 勁草書房
 日本の最高裁の裁判官の国民審査で、10%以上の人々が不信任を突きつけたのは異例でした。めったにありませんが、たまに良い判決を下すこともあるものの、たいていは三下り半の、無内容のうえ、しょっちゅうひどい判決を出している裁判官に対する国民の不信感のあらわれだと私は思いました。今の日本の最高裁判事の名前を知ってる国民は、ごくごくわずかでしょう。私も長官の名前くらいをうっすらと知っているだけです。
 その点、アメリカの連邦最高裁判事は国会で激しい審判を受けて選任されますので、かなり周知されていますよね。
アメリカの連邦最高裁は、20世紀半ば近くまで、専用の土地を持っていかなかった。それくらいの位置にあったということ。いやあ、これには驚きましたね…。
 最高裁判事は終身制なのに、40台、50台で任命されることが珍しくない。なので、20年も30年も判事を続けることが少なくない。日本だと、64歳くらいで任命されるので、せいぜい6年ほどの任期です。
 アメリカの連邦最高裁は上訴された事件のうちの1%だけに判決を下している。
 歴代の判事は全員が法律家であるが、実は正式な資格要件は定められていない。当初は、全員が白人男性で、プロテスタントだった。その後、カトリック系も出て、ユダヤ教徒もいるようになった。女性も9人のうち4人を占めるまでになっている。出身地の地理的要素は問題になっていない。なお、その前職は、大半が連邦控訴審判事がほとんど。
 黒人女性判事が任命されたのは2022年のこと。
連邦最高裁判事になったあと保守側からリベラルに変わった判事は何人もいるけれど、在任中に保守化した判事は、ほんの数人にすぎない。
連邦裁判所の組織には、1200人の終審裁判官、それ以外の850人の裁判官、3万人の職員がいて、80億ドルの予算をもっている。
 日本の司法予算は3000億円で、ほとんど増えないどころか、むしろ人件費を含めて減っています。
毎年数千件もある上訴申立事件のなかから連邦最高裁は数十件しか受理しない。それを選別しているのは、若くて精力的なロー・クラークたち。
 連邦最高裁は、判決言い渡し期日は事前に発表しない。しかし、判決文は、言渡後の数分以内に最高裁のウェブサイトにアップされる。
 連邦最高裁の法廷内はテレビにもカメラにも撮影は許されていない。
 裁判官が世論を意識するのは避けられないというだけでなく、実は望ましく必要なことだと述べられていますが、私もまったく同感です。神のみぞ知る、なんてこと言って唯我独尊に陥るより、世論の動向を踏まえた常識的な判決のほうが、害は少ないと私は考えています。
 上訴申立書には、9千字という字数制限があるそうです。上訴が受理されたあとの本案趣意書も1万3千字内という制限がある。私は、これはこれで理解できます。格別な案件については、例外措置を設けておけば目的は達成できるのです。
 アメリカの連邦最高裁と日本の最高裁の違いを考えさせられました。
(2024年7月刊。3200円+税)

トランプ、再熱狂の正体

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 辻 浩平 、 出版 新潮新書
 トランプがアメリカの大統領に返り咲くなんて、まさかの出来事が起きました。まさしく地球の未来にとっての悪夢です。多くの心ある人たちが、この先に何が起きるのか大いなる不安を感じています。私もその一人です。
この本は、トランプ本人ではなく、トランプを熱狂的に支持しているアメリカ国民をNHK記者として取材したレポートです。
 アメリカを再び偉大に。
 Make America Great Again  これをMAGA(マガ)と呼ぶ。
 保守的なトランプ支持者の中には、自分たちが慣れ親しんできたアメリカが変わっていくことへの反発や焦り、不安を覚える人が少なくない。
 トランプ支持者の中には、日常生活で白い目で見られたり、陰口を叩かれたり、疎外感を感じている人もいる。
 トランプ支持の理由の一つが、公的機関という社会を構成するシステムへの信頼の低下にある。
 アメリカではミドルクラス(中産階級)の地盤沈下が顕著だ。トランプのナラティブ(話)は「被害者の物語」であり、支持者は、そこに自分自身を重ねることで引き寄せられている。
陰謀論を信じている人々にとって、いくら政府機関や裁判所が否定したところで、まったく意味をなさない。同じことが日本でも兵庫県知事選挙で起きました。パワハラ自殺なんて嘘だと信じてしまったのです。
共和党の議員がトランプに反旗を翻(ひるがえ)したとき、殺害予告をふくめた脅迫が相次ぎ、果ては落選させられる。
アメリカは車社会なので、ラジオは今も影響力のあるメディアだ。
アメリカの一つのメディアの実際が紹介されています。驚くべき実情です。そこは毎日500万本という大量の記事を配信しているのですが、記事1本を作成するのにかけるのは、わずか7分ほど。記者は70人しかいない。読者(外部の人)が投稿してきたらAIがニュース記事のスタイルに仕上げる。いやはや、そこではフェイクニュースかどうか、まるで問題になりません。まさしく砂をかむようなニュース砂漠です。
 アメリカ社会が極端なまでの分断に行きついているようで、本当に怖いです。
(2024年8月刊。840円+税)
 日曜日、庭のサツマイモを全部掘り上げました。前に試し掘りをしたとき、立派なイモが出てきたので、安心して掘り進めました。見事に大きなサツマイモが次々に土の中から姿を現してくれました。いくらか小ぶりのものもありましたが、大人のふくらませた両手をあわせたのよりも大きいイモが30個ほどもとれました。大豊作です。これまでサツマイモは失敗ばかりでした。なにしろ小さかったのです。しかも、数もちょっとでした。今年豊作だったのは、11月も半ばまで待ったこともあるのでしょう。昨年までは10月に入ってすぐ掘り上げていました。早すぎたのです。
 そして、今年は、チューリップ畑のあとに植えたのが良かったと思います。サツマイモは栄養満点の土地ではよく育たないというのです。不思議ですが、どうやら本当のようです。昨年までは、専用の区画に苗を植えつけていました。この区画には何度も生(なま)ゴミをすき込んでいますので、黒々としてフカフカの土地、つまり申し分のない栄養土だったのです。
 早速、イモを食べてみました。本当は何日か放っておいたほうが甘味が増すということなんですが、ともかく我が家の味を知りたかったのです。
 鳴門金時ほどの甘さはありませんでした。まあ、それでもイモはイモです。とても美味しく食べることができました。

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