法律相談センター検索 弁護士検索
2024年12月 の投稿

あした出会える昆虫

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 森上 信夫 、 出版 山と渓谷社
 庭に来る昆虫が少なくなった気がします。なにより残念なのは、フジバカマの群生をつくって、アサギマダラ(蝶)を迎えようとしているのに、今年も来てくれなかったことです。それでも、いつかきっと来てくれるはず、来年こそはと思ってフジバカマをせっせと育て、増やしています。
 ときどきクロアゲハやアゲハチョウがやってきてくれます。キアゲハやアオスジアゲハも見かけたことはありますが、ジャコウアゲハは見たことがありません。クロアゲハは地面で吸水するのは、すべてオスだそうです。不思議ですね。メスはどこで水を飲んでいるのでしょうか…。
 アオスジアゲハはクスノキと花壇があれば、都市のなかでも育つそうです。同じく、ツマグロヒョウモンも花壇を利用して増えているそうです。
モンシロチョウは、日本の春の公式アンバサダーとされています。幼虫はキャベツの害虫です。昔、私も庭でキャベツを育てたことがあります。春になると、毎朝、割りバシをもってキャベツの葉、裏側まで青虫を探してつまみ出していましたが、ついにかないませんでした。毎朝とっても、必ず翌朝は青虫がいて、どんどんキャベツがかじられてしまうのです。いやあ、キャベツは農薬をふんだんに使うことがよく分かりました。
テントウムシは、わが家の庭にはなぜかあまり見かけません。日本には190種のテントウムシがいるそうです。肉食、草食、菌食など、いろんなものを食べています。ナミテントウは、アブラムシを食べます。驚いたのはその色彩の多様性です。赤地に黒い斑紋、黒地に赤い斑紋という基本ルールの中で、あらゆるパターンがあるのです。同一種だとは思えないほど色とりどりです。
 子どものころ、オニヤンマやギンヤンマを捕まえるのは夢でしたね。ほとんど捕まらないのです。ギンヤンマは、腰のあたりに白い部分があり、そこがほんのり光って銀色に見える。
 オニヤンマは日本最大のトンボで、体長10センチをこえるものがいる。育ち切るまでに3~4年かかる。トンボって、長生きするんですね。
わが家の庭には、モグラ、ヘビ、ダンゴムシそしてアリがいます。小さいアリが台所にまで侵入してきたことが何度もあります。
 大きくて黒いクロオオアリも見かけます。それより少し小さくてグレーなのはクロヤマアリ。サムライアリは見かけません。
空を見上げると、とんでもないところにクモの巣がかかっています。5メートルほども離れた木を結んでクモが巣をつくっているのには驚かされます。コガネグモ、ジョロウグモがいます。でも、クモは昆虫ではないそうです。昆虫は6本脚。クモは8本脚。この違いは大きいようです。
今年の夏はあまりの暑さに、セミがあまり鳴きませんでした。我が家にいるのはアブラゼミがほとんどで、お盆過ぎたら、パッタリ鳴かなくなりました。ニイニイゼミ、そしてヒグラシやツクツクボウシにも鳴いてほしいのですが、クマゼミもふくめて来てくれません。
今年は、アメリカ・シカゴで11年ゼミと17年ゼミが同時発生して、街中セミだらけになったようですね。テレビの『ダーウィンが来た』で紹介していました。
写真がたくさんあって、楽しい小型の昆虫図鑑になっています。
(2024年8月刊。1760円+税)

ウォークマン、かく戦えり

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 黒木 靖夫 、 出版 ちくま文庫
 今ではソニーって、あまりパッとしない会社になってしまいました(今もありますかね…)が、かつてのソニーは、それこそ飛ぶ鳥を落とすほどの勢いがありました。そんなソニーの商品の一つが世界の話題を集めたウォークマンです。それまでのカセット・レコーダーと違い、録音できず、再生するだけの小型・ポケットタイプのものです。爆発的な人気を集めました。
 ウォークマンの原型ができたのは1978(昭和53)年11月のこと。売り出すとき、事業部は5万円にするというのを盛田昭夫会長は3万3千円にしろと注文した。ところが、今度は販売部門から反対の声が上がった。「録音もできない機械が売れるはずはない」という。
 そこで、売れるかどうか、中学・高校そして大学生を100人集めて視聴させた。すると、いける反応が出た。それで、2万台を売り出して市場の様子をみてみようということになった。
 さて、名前をどうするか…。はじめウォーキィ・ウォッチという案があったけれど、すでに登録されていてダメ。そこで、ウォークマンになった。しかし、これは英語ではない。ウォーキングマンにしたらどうか。いや、それは名前として長すぎる。
 そして、ついに1979年6月、ウォークマンが発売された。すると、人々は争って買い求めた。全国一斉といっても、実は、東京、大阪、名古屋だけで、7月1日から売りに出したが、反応が鈍い。ところが、8月に入ると急に売れだした。口コミと雑誌が紹介記事を書いたことによる。
小柳ルミ子そして西城秀樹が「明星」などでウォークマンとともにグラビアで紹介されると、品切れ店が続出した。そうすると、品切れ店続出が話題になって、みんなが買いたいという気になる。
ソニーは増産に次ぐ増産。そして、二代目のウォークマンが売り出されたのは1981(昭和56)年2月。ヘッドフォンが28グラムという驚異的軽さのものになった。
 1986年9月、ソニー・アメリカはアメリカで1000万台のウォークマンが売れたと発表した。1986年11月、ソニー本社は、2500万台のウォークマンが売れたと発表。1日1万台も売れたという、とんでもないヒット商品になった。
 1987年の1年間で、ソニーは850万台のウォークマンを生産、月産70万台になる。
 私ももちろんウォークマンを購入し、聴いていました。といっても、あまり音楽を聴く習慣はありませんので、フランス語の勉強を兼ねてシャンソンを聴いていました。私のお気に入りはパトリシア・カースです。フランス語の先生にそう言ったら、おっ、渋い趣味だなと驚かれてしまいました。今は、もちろんスマホ全盛時代です。スマホでは日本は遅れをとっているようですね、残念です。日本の技術力は、今のように大企業のなかも非正規社員ばかりだと伸びないということでもあるのでしょうね。同じ課で懇親会をしようとしても、非正規(パート、派遣など)がいろいろいて、出来ずに、結局、意思疎通が難しくなっていると聞きます。大企業の経営者が近視眼症状になっているようです。もっと若者を大切にしないと、日本の明日はありません。
(1990年2月刊。500円)

きょう、ゴリラをうえたよ

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 水野 太貴(文) 、 吉本ユータヌキ(絵) 、 出版 KADOKAWA
 いやあ面白い、子どもって、ホント、天才です。
 私が一番気に入ったのは次のコトバ。お葬式で、お坊さんがお経をあげているのを見て…。
 「あのおハゲ、なんでわけわからないことを言ってるの?」
 「お坊さん」というコトバを知らない。でも、失礼のないように「お」をつけた。思わず笑ってしまいますよね、悪気のないことがアリアリですから…。
この質問に対して、「魂が天国に行けるようにしてるんだよ」と笑えると、「魂には足が何本ついてるの?」と子どもはさらに尋ねたとのこと。いやあ、鋭い質問ですよね。
 さて、この本のタイトル。何を植えたかというと…。パンジーです。なんでパンジーがゴリラになったのか。パンジーがチンパンジーになり、それを思い出せなかったので、サルに近いゴリラになったというわけ。連想ゲームもここまで来ると、たいしたものです。
 子どものころ、トウモロコシを「とうもころし」というのはよくある間違い。私の子どもは「ヘリコプター」を「へーくりっぱ」と言っていました。まあ、なんとか分かりますよね。
 「ひいばあちゃん、しんぱくないー!」
寒いの否定は寒くない。眠いの否定は眠くない。だったら、心配の否定は「しんぱくない」。「心拍ない」ではありません。
 「みず、いりたいです」
これは、水がほしいということ。「水がいる」と言ったので、ちゃんとお願いしなさいと言われて、「いる」に「~したい」がくっついて、「いりたい」になりました。なるほど、そうきたか…。
 「セミが鳴いているね」「セミさん痛いの?」
 鳴いているを泣いてると受けとめたのですね。
 「パパ、いらなかったよ!」
 これは家の中でかくれんぼをしていたとき、なかなかお父さんが見つからないので言ったコトバ。「いる」の否定なら、「いらない」。
 「また、よごれたラーメン、食べにこようね」
 このラーメンは、ドロドロしたこってり系のスープです。それを「汚れた」と表現しただけで、なんの悪気もありません。
子どもの言いまちがいには、コトバの本質が詰まっている。記憶のメカニズムのような認知能力も映し出している。
 思わず吹き出しながら一気に読んでしまいました。おかげで、ほっこりした気分に浸ったひとときになりました。おすすめの本です。
 
(2024年10月刊。1650円)

ナチスに抗った教育者

カテゴリー:ドイツ

(霧山昴)
著者 對馬 達雄 、 出版 岩波ブックレット
 ヒトラー・ナチスと戦い、刑死した教育者がいたのですね。私は知りませんでした。
 名前は、アドルフ・ライヒヴァイン。反ヒトラー市民グループの主要メンバーであり、ヒトラー暗殺が成功したあと、ナチス後のドイツの文部大臣に予定されていた。
 1944年7月20日、ヒトラー暗殺を企画した事件が起き、失敗した。同年10月20日、ライヒヴァインは国家反逆者として処刑された。遺体は焼却され、遺灰はばらまかれた。遺族に死亡を公にすることも禁じられた。享年46歳。
 ドイツの大学教師の3分の1がナチスによって職を奪われ、2000人以上が国外に亡命した。しかし、ライヒヴァインは国内にあえてとどまった。
ヒトラーは学校の教員が大嫌いだった。
 「教師になろうとする者は、独立した職業では成功がおぼつかないタイプの人間。他人の助けを借りず、自分の努力だけで成功をつかめると思う者は、まず教師になろうとはしない」
 これって、いかにも浅はかな考えですね…。
 ライヒヴァインは大学の教授職を奪われ、ベルリンから40キロ離れたところの小さな村(ティーフェンガー村)の農村学校の校長として赴任し、6年間つとめた。学童は40人前後。
学校は、毎朝、歌を歌いながらの体操から始まる。時間割はないけれど、数ヶ月間、一貫しておこなわれる総合的な「計画学習」が設定された。この「計画学習」には、村の祭りも組み込まれた。夏季の野外中心の自然学習。植物の内的循環の観察、動物世界の生態の観察、郷土の地形図作成もある。人形劇の制作と上演。そして、午後は、工作の時間。温室を大人(大工)の手伝いを受けながら、つくりあげた。その温室で植物栽培をし、観察したのです。
 もっとも注目すべきは、夏休み中の2週間もの大旅行です。これはすごいですね。自転車を使った旅行です。学童12人に大人が3人、付き添っての旅行です。
 貧しい家庭には、村役場が補助し、みな小遣い銭なしの旅行です。
 いやあ、これは、子どもたちにとって最高の思い出になったことでしょうね。
 干し草置き場で眠り、星空のもと徹夜でたき火をしながらの生活です。子どもたちは、それまで海を見たことがなかった。初めて見る海。そして、船に乗るのです。
 「地球は丸いことがよく分かります」と、感想文に書かれました。
 子どもたちに、開かれた世界への視野を育てようとした旅行でもありました。
 子どもたちは、興味の火花を点火されることで、学びを喜ぶ存在だとライヒヴァインは確信していた。いやあ、すばらしい教育実践をしていますね。
86頁の薄いブックレットですが、ライヒヴァインの子どもたちへの熱い思いがひしひしと伝わってきました。
(2024年9月刊。680円+税)

吾妻鏡

カテゴリー:日本史(鎌倉)

(霧山昴)
著者 藪本 勝治 、 出版 中公新書
 「吾妻鏡(あずまかがみ)」は鎌倉幕府の歴史を詳細かつ生き生きと記録している。しかし、実は、これはすべてフィクションであることが今では判明している。
 ええっ、そ、そうなんですか・・・。誰が、いったい、何のために、虚構のストーリーを考えたというのでしょうか。それを解明している本書の著者は、なんとかの有名な灘(なだ)中、高校の教員なのです。さすが灘の教員のレベルの高さに恐れ入ります。
徳川家康も「吾妻鏡」の愛読者の一人だった。
「吾妻鏡」は、一見すると正式な記録のようだが、実は意外に杜撰(ずさん)である。有名な以仁王(もちひとおう)の令旨や義経の腰越状も偽文書の可能性が高い。
 「吾妻鏡」は、北条貞時による得宗(とくそう)政権がいかに正当なものであるか、いかに絶対的なものであるかを、歴史的に裏付けるための過去像を創出した物語である。
 そもそも貴族と武士とは対立関係でとらえられるものではなく、幕府のアイデンティティは、貴族社会の中心たる王権を守護することにあった。
 「吾妻鏡」の主眼は、京都に対する東国の主張というところにはなく、あくまで得宗家の歴史的正当性を裏付けるところにある。
 頼朝が以仁王の命により挙兵したというのは虚構である。頼朝の挙兵は、清盛に幽閉されていた後白河院の密命によるもの。そして、義経が頼朝の同意を得ずに任官したというのも「吾妻鏡」の創作で、実際には頼朝の合意があったと考えられる。
 頼朝の妻・北条政子が嫡男・頼家を産むと、北条時政にとって義経は鎌倉殿の外戚になるうえで邪魔な存在となっていた。
 頼家が頼朝を継いで鎌倉殿になったが、この二代目将軍の評価は低い。しかし、実のところ頼家は有能で意欲的な政治家だった。訴訟も論理的かつ公平に裁許していた。
 そして、梶原景時は頼家政権にとって不可欠の有能な幕臣だった。
 これを此企能員(よしかず)と北条時政が危惧し、協力して追い落としたと考えられる。
 「北企(ひき)氏の乱」と呼ばれる事件の実態は、むしろ「北条氏の乱」というべきもの。自家のため、北条時政が此企能員を謀殺し、北条政子が我が子・頼家を押し込め、北条義時が一幡・頼家を暗殺したというもの。
 このとき、一幡が廃され、実朝が将軍に就いたことこそが、その外戚の北条氏の立場を確立させ、執権政治そして得宗専制の時代を導いた転換点であった。
 和田義盛が挙兵し、結局、討たれてしまった「和田合戦」は、侍所と政所の別当を兼ね幕府最高職としての「執権」という地位を誕生させた事件である。
 三浦氏は北条氏に匹敵しうる強大な御家人であった。
 すごいです。鎌倉幕府の内実をことこまかく分析し、認識していなければ、とても書けない詳細な記述に圧倒されてしまいました。
(2024年8月刊。1100円)

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.