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2024年8月 の投稿

大陸の誕生

カテゴリー:宇宙

(霧山昴)
著者 田村 芳彦 、 出版 講談社ブルーバックス新書
 大陸を形成するには、大量の安山岩が必要。混合マグマで大陸はできない。
 地殻の下のマントルは、かんらん岩で出来ている。その厚さは2900キロメートル。その下にコアがある。コアには外核と内核があり、外核は液体の金属鉄、そして、内核は固体の金属鉄で出来ている。
 体積でいうと、マントルは83%、コアは16%を占め、地表の地殻はわずか1%だけ。これを質量でみると、マントルは67%、コアは33%、そして地殻はたった0.5%。
岩石は鉱物の集合体。岩石は、そのでき方によって、火成岩、変成岩そして堆積岩に分類される。
岩石は、なかなか解けない。プレートは、地表を覆う岩板。
 日本列島には、111もの活火山がある。いやあ驚きますよね。こんなところに原子力発電所をつくるなんて、気が狂っています。目先の金もうけと便利さだけを求めるという短絡的思考が優先しています。残念です。
 南海トラフ大地震の予報が先日なされましたが、大地震は関東直下型地震だって間近だといわれているのですよ。それなのに耐震型タワーマンションだから大丈夫だなんて、考えが足りなさすぎると思います。水や電気などのインフラが大丈夫だという保障はありますか…。
 海底火山が噴火して軽石を大量に噴出することがあります。それは、もとになるマグマに溶け込んでいたガス成分のふるまいで決まる。
 大陸が移動すると初めて提唱したウェーゲナーは1930年に、グリーンランド探検中に遭難死した(50歳)。私は、そのプレートテクトニクス説を知ったときは、単なる固形のはめ絵クイズみたいなものと小馬鹿にしていました。もちろん、今では違います。でも、海底を含めて、大陸が動いているなんて、発想できるものではありませんでした。それはちょうど地球が太陽の周囲をまわっていて、自転もしているなんて信じられないのと同じことです。だって、見えないんですから…。
 アフリカ大陸は裂けつつあるそうです。ただし、年に数ミリです。数十キロも分裂して海が出来るのは数百万年も先のことです。そのころ、恐らく日本列島は海の底に大半が沈み込んでいるのではないでしょうか…。
 福島第一原発の放射能のデブリは880キロもあるそうです。もちろん、まだそのままの状態です。近く、東電は、そのうちの3グラムを試験的に取り出すとのことです。それもうまくいくかどいうか不明だそうです。もし、うまくいっても、まだ3グラムというレベルなのです。本体は880キロもあるのですよ。ところで、いったい、そんな放射能のかたまりを取り出してどこに置くというのですか…。日本中、どこにも置くところはありませんよ。
 私は前から半ば本気で、東電の取締役全員が住める超高級マンションを福島のどこかにつくって、その隣か地下にデブリを保管したらいいと考えています。それで初めて、東電は他人事(ひとごと)ではなく、原発デブリ対策に取り組むと思うのです。これは、決して冗談ですまされることではありません。これが出来ずに原発再稼動なんてとんでもありません。
(2024年4月刊。1100円+税)

素粒子論はなぜわかりにくいのか

カテゴリー:宇宙

(霧山昴)
著者 吉田 伸夫 、 出版 技術評論社
 素粒子を粒子とみなす原子論的な発想を捨て、場の考えを習得する必要がある。
 素粒子は粒子ではなく、量子論の性質によって、場が粒子のように振る舞っているだけ。移動するエネルギー量子が素粒子なのだ。素粒子は、場が励起した状態。場とは、至るところに存在し、あらゆる物理現象の担い手となるもの。空間と一体化し、空間に対して移動できないことが、場の特徴。
 素粒子は粒子ではなく、内部空間に形成された定在波によるエネルギー量子が、バネの連結を通じて外部空間を移動するもの。
光は粒子であると同時に波である。
ボーアは、実際には、粒子でも波動でもない、別の何かだとする。これに対して著者は、素粒子の実体は波であり、波が粒子のように振る舞っていると考えている。
質量とは、物質の量ではなく、質量エネルギーというエネルギーの一種なのである。
20世紀まで、質量がエネルギーの一種だという認識はなかった。
素粒子反応では、質量は一般に保存しない。素粒子の中には、生成・消滅するだけでなく、何かの拍子に別の素粒子に変わるものもある。
 素粒子が生々流転するのは、その正体が場の振動が伝わる波だからである。
ニュートリノは、スーパーカミオカンデなどで得られたデータから、現在では質量をもつことが現実視されている。
この本は数式を主体としていませんので、まったくの門外漢である私にも、分からないながらも、素粒子論について、おぼろげながら、なんとなくイメージをもつことができました。
 それにしても、ヒッグス粒子を見つけたCHCという施設を建設するのに5000億円もかかったというのです。まことに想像を絶してしまいます。
(2023年10月刊。1580円+税)

古墳

カテゴリー:日本史(古代)

(霧山昴)
著者 松木 武彦 、 出版 角川ソフィア文庫
 日本全国、いたるところに古墳があり、その数、なんと16万基。これには驚きました。
 数だけではありません。その規模も相当のものです。長さ525メートル、高さ40メートルとなると、エジプトのピラミッドや中国古代の皇帝陵に匹敵します。
 いったい、なんで、日本全国にそんなに古墳が多くあるのか、古墳は何のためにつくられたのか、この文庫本を読んで、少し分かった気がしました。
 筑紫野市にある五郎山古墳は装飾古墳です。あの世への旅が絵になっています。死者は舟であの世へ渡ります。鳥が先導し、馬がお供します。楯や弓や矢筒で守護してもらいます。それは、山鹿市の鍋田横穴墓群も同じです。石室の壁に絵が描かれています。
 山口県柳井市の茶臼山古墳には、埴輪(はにわ)が頂上にずらりと並んでいます。楯、矢筒(靭)、家、など。
奈良の明日香村の石舞台古墳には私も行きました。今では、なんともでかい巨石が地上にむき出しですが、かつては一辺50メートルという大型方墳だった可能性が高いそうです。その巨大さは巨石の下に入ってみないと実感できません。ぜひ現地まで足を運んでみてください。
 熊本の和水(なごみ)町の江田船山古墳は大刀が出土したことであまりにも有名です。
前方後円墳は、6世紀が終わって7世紀の飛鳥(あすか)時代に入ると、なくなってしまう。それからは、巨大な古墳ではなく、個人向けの華美なものになったようです。
 5世紀になると、実用性の高い鉄製のよろい、かぶとが副葬品として出土しています。やはり戦争していたのですね…。
 古墳の最後、7世紀後半の大王のためのものは八角形墳だというのも初めて知りました。たくさんの古墳がカラー写真で紹介されています。現地にまで行った古墳がほとんどないことを改めて知って愕然(がくぜん)としました。
天皇陵の一般公開、少なくとも学者の発掘調査はすぐにでも認めてほしいと私は思います。それによって万世一系という神話も化けの皮がはがされると思います。
(2024年6月刊。1650円)

戦争語彙集

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 オスタップ・スリヴィンスキー 、 出版 岩波書店
 ロシアのウクライナへの侵攻戦争が始まって2年半がたちました。毎日毎日、戦争の報道が続き、ときに原発(原子力発電所)に火の手があがって心配させられます。同じようにイスラエルのガザ地区への侵攻戦争でも、すでに死者4万人、その4割は子どもだといいます。本当に、一刻も早く、どちらも停戦してほしいです。
 この本は、ウクライナの詩人が、ウクライナの人々の戦争体験をまとめたものです。戦争の悲劇と悲惨さが十分に伝わってきます。読んで、悲しくなります。
 占領軍(ロシア軍)から家を追い出され、地下室に住まわされたあと、孫が、突然、尋ねた。「おばあちゃん、奴らの言葉(ロシア語)で、『僕を殺さないで』って、どう言うの?」
 「スイーツとは、恐怖を覚えるときに食べるもの。次にいつ食べられるか分からないから。カロリーが必要だ。ミサイルが頭上を飛びかうことのなかった平和な子ども時代に戻りたくて、スイーツを食べる」
 「戦争が始まって間もないころ、目一杯泣くだろうと思っていた。私は泣き虫だから。けれど、涙は一滴も出ない。泣いたのは一回だけ。長いシェルターでの生活のあと、戸外に出ると、陽が燦燦と降り注いでいる。一気に涙があふれ出た」
 「子どもたちを劇場に招待して、劇を見せた。子どもたちが受けたトラウマを繰り返させることによって、子どもたちからトラウマを分離させた。そのトラウマに形を与えて視覚化した。劇の中では、すべての人々が生き返り、立ち上がる。そうすることで、子どもたちのトラウマは書き換えられた。子どもたちは、もうトラウマと共に生きる必要がなくなった」
 広島、そして長崎にイスラエルを招待しなかったので、アメリカは原爆記念式典に欠席しました。おかしなことです。ロシアもイスラエルも同罪ではありませんか。イスラエルは防衛戦争をしていると強弁しています。かつての帝国日本もABCD包囲陣との防衛戦争と言っていました。同じでしょ。「防衛」とは便利なコトバです。敵基地攻撃論だって防衛のための戦争行為なんです。
 岸田首相は、まったく見かけ倒しの典型でした。いつだって、何だってアメリカの言いなり。新しい自民党総裁(首相)だって、マスコミが「新しい、新しい」と言うだけで、旧態依然の古い自民党そのものであるに決まっています。
 大きく目を見開いて、ごまかされないように、騙されないようにしましょうね。
(2024年1月刊。2200円)

別れを告げない

カテゴリー:韓国

(霧山昴)
著者 ハン・ガン 、 出版 白水社
 済州島4.3事件を扱った韓国の小説です。
 著者は、アジア人で初めての国際フッカー賞を受賞したとのことです。でも、フッカー賞なるものが、どれほど価値ある賞なのか、申し訳ありませんが、私は知りません。著者の光州事件を扱った『少年が来る』は、私も7年前に読んで、このコーナーで紹介しています。
今回の済州島4.3事件は、1948年に起きた朝鮮半島の現代史上最大のトラウマというべき事件です。その2年後の朝鮮戦争の序章ともいうべき悲劇です。
この済州島四・三事件において、島民人口の9分の1にあたる3万人近くが犠牲となり、その8割は軍と警察によって殺害された。
 当初の蜂起に参加した人は、350人ほどで、武器は、旧式銃のほか、竹槍、斧、鎌だった。これに対して、中山間村に対しては「疎開命令」が出され、残った人々は命令一下、全員殺害されてしまったのでした。しかも、1950年6月に朝鮮戦争が始まると、政府に反抗しそうな人々は「予備検束」され、各地で次々に全員が処刑されていきました。
 済州島の若者は、山に入って「武装隊」として戦うか、軍や警察の「討伐隊」の一味になるか、ソウルや日本などに逃れるか選択を迫られた。いやあ、これはいかにも苛酷な選択ですね。どれを選んでも生命がけです。
 代殺というコトバを初めて知りました。ひどいコトバです。ひどすぎるというか、耐えられないむごさです。軍人が一軒ずつ住民名簿と照らしあわせて、家に男がいないことが判明したら、その男は山に行って武装隊に入ったとみなして、残った家族を殺害した。いやあ、これはひどいですね。とんでもないことです。これでは、残った人々はみんな「アカ」になるしかありませんよね…。
 アメリカ軍の司令部は、済州島民30万人を皆殺ししても共産化を食い止めろと命令し、それを極右の青年団員(西北青年会。西青)たちが実行していった。このときは遺体の収容すら許されなかった。
 済州島から日本へ逃れてきた人たちの相当数が大阪にたどり着いて生活したようです。このような悲劇を小説にして現代に生きる人々にどうやって読んでもらい、事実を知らせるか、現代に生きる私たちの責務だと思いながら、辛さのなかで読みすすめていきました。
 ちなみに、済州島で話されるコトバ(済州語)は標準韓国語と大きく異なっているというのを初めて知りました。世の中は、実に知らないことだらけです。また、この本が日本ですでに五刷というのにも驚かされました。
(2024年6月刊。2500円+税)

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