弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2024年1月18日

憲法を変えて「戦争のボタン」を押しますか?

社会


(霧山昴)
著者 清水 雅彦 、 出版 高文研

 戦前、「日の丸」を国旗に、「君が代」を国家にするという法律はなかった。事実上、国旗、国歌としていただけ。
 元号制度は、中国のまねをして導入したもので、日本独自の制度ではない。また、一世一元制(1人の天皇に1つの元号)は明治になってからのもの。それまでは同じ天皇のもとで、何度も元号の変更があった。
 自民党の憲法改正草案には、「国防軍」を保持する目的として「国民の安全を確保するため」が入っている。「国」だけではなく、「国民の安全」を新たに入れているのは、在外邦人の保護のために国防軍が国外展開することを可能とするため。
 なーるほど、そうなんですね。日本人は海外にいくらでもいますから、その海外在住の日本人を保護するためなら、どんな外国であっても自衛隊を派遣することができるというわけです。これって、いかにも悪知恵が働いているってことですよね...。
 また、同じ改正草案には「国防軍に審判所を置く」としています。しかし、現行の日本国憲法は、「特別裁判所はこれを設置することができない」と明文で定めています(76条2項)。にもかかわらず、自民党は戦前の軍法会議に相当する軍事審判所を設置しようというのです。とんでもないことです。
 改正草案には「新しい権利」を盛り込んだと自民党は説明しています。しかし、それらの規定はすべて主体の規定ではなく、客体の責務を規定したにすぎません。したがって、行政の場でも裁判の場でも使える権利にはなっていない。そうなんですよね、これもゴマカシなんです。
 安倍首相が殺害されて1年半たちましたが、岸田首相は評判悪いなかでも、アメリカ軍の高価な兵器等(たとえばトマホーク)を次々に買いあさっています。まるで、日本はアメリカの属国のようです。そして、その総仕上げが、まさしく憲法改正です。
自民党の考えている憲法改正案がいかにひどいものか、この本を読んで、改めて再認識させられました。
(2018年4月刊。1200円+税)

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