弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2023年11月22日

男たちの部屋

韓国


(霧山昴)
著者 ファン・ユナ 、 出版 平凡社

 韓国の「遊興店」とホモソーシャルな欲望。こんなサブタイトルのついた本です。状況を告発し、鋭い問題提起がなされています。
 韓国の男性たちは、カラオケ、団らん酒店、遊興酒店といった遊興店のどこへでも女性のキャストを呼び出すことができる。女性が男性を楽しませるべきという論理が、社会文化的に当然視されている。
 女性をタダで入店できるという誘い文句で引き寄せ、ウェイターは女性がナイトクラブに入店するやカバンを奪い、女性客が帰りたくてもクラブから出られないようにする。タダ酒を飲めるという口実で、女性はウェイターの手に引かれ、そのウェイターが管理する男たちの部屋を転々としなくてはならない。
 遊興酒店は、多くの女性従事者を抱え、女性を「チョイス」する権利を男性客に支える。女性従事者は男性客に「チョイス」されることで収入を得ることができるため、男たちの部屋で発生する暴力やセクハラやわいせつ行為に耐えることは、女性たちが収入を得る「機会」のための必須条件となる。
 営業日の夜10時、「組版会議」が開かれる。どの客をどのテーブルに配置するが、MDたちが集まって議論する。大金(高額)を提示した客ほど良いポジションに座れる。テーブル競争に勝つため、客は数百万ウォン、数千万ウォンを超える酒を注文する。
 何も知らない女の子が、江南のそんなクラブに入ったことで、人生を棒に振ってしまった子が少なくない。これは要注意ですよね。
 MDは、自分が周旋したVIP席のテーブルチャージの10~20%を手数料として受けとる。そして、店の経営者とバックにいる投資者が罪に問われることはない。すべてはMDと客たちの責任になる。
 男性の呼び出しに応じて女性が男性を接待する遊興店は全国に4万2千店以上あり、女性従事者は14万人ほどいる。
 遊興店の「接待」は「一次」であり、「二次」つまり性売買につながっている。
 日本では、一次と二次が必然という店は、少なくとも公然と存在することはあまりないように思うのですが...。
 遊興店に来る男性客は、自身の力を誇示し、気分を良くする。
 男たちは、女性が自分より惨(みじ)めな状況にあることを知って優越感を覚える。
 男は、上下関係をはっきりさせたがる。
オレは金を稼いでいて、頭もいい。お前は顔は良くても家は買えないし、学歴もない、といった...。
女性たちは、実年齢にかかわらず店では常に「アガシ」と呼ばれる。アガシとは保護されるべき未熟な存在。
警察は遊興店の擁護者となっていて、両者は、まさしく癒着している。
男性は、職場で、上司のご機嫌とりに奔走し、疲弊し、たまったストレスを発散すべく女性(アガシ)のいる遊興店でつかの間の「目上になる」経験をし、こんな上下関係を相互に贈りあって、男性連帯を結ぶ。
これって、日本のサラリーマン社会と共通しているのでしょうか...。なんだか違う気がしていますが、よく分かりません。
日本の現況のレポートをよく読んだことがないので、対岸の話なのか、此岸でもあるのか、一部にとまどいを感じながら読みすすめました。ぜひ、日本のことも誰か教えてください。
(2023年6月刊。2600円+税)

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