弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2023年11月21日

引き裂かれた海

社会


(霧山昴)
著者 吉崎 健 、 出版 論創社

 福岡高裁が開門を命じ、その判決は確定したのに、国がその判決を無視して、結局、開門しなくてよいという判決を別にもらって、こちらも確定したという、日本の裁判史上、初めての奇想天外な出来事が起きました。
 現在、諫早湾干拓は開門されないまま、深刻な漁業被害が今も続いています。そして、国は漁業被害と干拓事業との因果関係を肯定も否定もせず、ずっとずっと不明だとして、開門しないことを前提とする協議を求めているのです。
 国って、冷たい権力そのものなんだと実感させられる話なんです。
 諫早湾干拓は2008年3月に完成し、4月から営農が始まった。672ヘクタールの広大な干拓農地で、現在35経営体が営農している。当初41事業体でスタートして、13事業体が撤退した。
 諫早湾を閉め切った「ギロチン」は、1997年4月なので、すでに26年たっている。
 ギロチンのあと、有明海では赤潮が頻発し、タイラギ漁が不振となり、養殖アサリもたびたび死滅した。「ギロチン」のとき、漁業が続けられなくなる8漁協には202億の補僓金が、その外側の4漁協には41億円が支払われた。
 干拓の目的は当初は稲作のための耕地づくりだった。でも、全国的に減反政策が進むなかで、ここだけ稲作のためというのはおかしい(ありえない)ので、途中から「畑作」に変わった。つまり、もともとが「食糧増産」という目的ではないのです。
 ところが、ここに2530億円もの事業費(税金)が投下されました。ともかく、大型公共事業をしたかったというホンネを元長崎県知事(高田勇)が吐露しています。全国各地ですすめられている新幹線の延伸、リニア新幹線そして地方の飛行場の新増設と同じです。ゼネコンの仕事づくりなのです。「国民の利便」は、あとから取ってつけた口実でしかありません。
 そして、農水官僚の「天下り」先の確保でもあり、大手の受注企業に次々に「天下り」していきました。ひどいものです。許せません。そのとき、事業は「官製談合」が常態化しました。
 福岡高裁(岩本宰裁判長)は、「抜本的解決のために話し合い解決をするよう」文書で勧誘しました。ところが、国は問答無用として、話し合いのテーブルにつきませんでした。沖縄の辺野古基地建設をめぐる国の態度とまったく同じです。ひどいものです。ひどすぎます。
 国はゼネコン優遇、自分たちの「天下り先」の確保しか念頭になく、有明海がどうなろうと知ったことではないという無責任な態度に終始しているのです。こんな国のあり方は是正されるべきです。司法がそれをしないとき、いったい国民はどうしたらよいのでしょうか...。
(2023年9月刊。1800円+税)

 日曜日、朝から仏検(準1級)のペーパーテストを受けました。午後1時に終わったときは、へとへと、まさしく疲労困憊でした。この1ヶ月ほど、朝と晩、いつものNHKラジオとCDの勉強に加えて、過去に受験した問題冊子をひっぱり出して復習しました。この5年とか10年ではありません。もう30回近く受験しているので、2往復はできません。
 頭をすっかりフランス語仕様に仕立てて臨んだつもりですが、いやはや難しいのです。つくづく自分は語学の才能がないと悲観してしまいました。単語は覚えられないし、仏作文もつまづきばかりです。自己採点したら71点でした。120点満点で6割が合格ラインですから、今年は危いです。さて、どうなりますか...。
 帰宅して、庭いじりで気分転換を図りました。チューリップの球根を60個ほど植えつけたのです。

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