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2022年8月 の投稿

「小倉寛太郎さんに聞く」

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 小倉 寛太郎 、 出版 全日本民医連共済組合
 『沈まぬ太陽』(山崎豊子。新潮社)の主人公である恩地元(はじめ)のモデルである小倉(おぐら)寛太郎(ひろたろう)氏が今から20年以上も前、2000年ころに話したものをテープ起こしした、40頁ほどの小冊子です。
書庫を断捨離しつつ整理していたら、ひょっこり出てきました。『沈まぬ太陽』は本当に傑作です。いかなる苦難・困難にも耐えて、不屈にがんばり続ける主人公の恩地元には、大いに励まされます。まだ読んでいない人は、ぜひぜひ、私から騙されたと思って、明日からでも読んでみてください。決して後悔することはないと断言します。
 私は第1巻を1999年8月28日に読了し、完結編の第5巻を9月15日に読み終えました。速読をモットーとする私が5冊を読むのに珍しく2週間以上もかけたのは、あまりに素晴らしく、泣けてきて、読みすすめるほどに胸が熱くなるので、読み飛ばすなんて、もったいなくて出来なかったからです。それは今でもよく覚えています(少し前に読んだ、アメリカの本『ザリガニの鳴くところ』もそうでした・・・)。
 小倉さんとは、私も一度だけ会って挨拶させていただきました。大阪の石川元也弁護士の同級生だというので、日弁連会館2階「クレオ」でのパーティーのときでした。いかにも古武士然とした風格を感じました。
 「私も辞めたくなるときがあった。でも、私が辞めると喜ぶ奴がいるし、反対に悲しむ者がいる。そして、私が喜ばしたくない奴が喜び、悲しませたくない者が悲しむのだったら、やはり辞めないほうがいい」
 「子どもに知られて困るようなこと、子どもに見られて困るようなことはしたくないと思った」
 「何も特別のことはしていない。ただ、愚痴ってもしょうがない。こそこそ陰で恨んでもしょうがない。そして、どんな所へ行っても、胸はって、そこの土地のもとを糧(かて)にしていけばいい」
 「次の世代のためにも、自分があとで考えて後ろめたく思うような心の傷をもってはいけない」
 「余裕とユーモアと、ふてぶてしさとで生きていかなければいけない。とくに働く者は、ふてぶてしくなければいけない。転んでもただでは起きない。何か拾って、立ち上がったという生き方、そんな生き方を伸び伸びとしたい。いつも悲壮な顔をしていたら、ほかの人はついていきようがない」
 「人間に必要なのは冷静(クール)な頭脳と温かい心(ハート)だ」
 「JALに来るような東大卒はクズかキズものだ。頭がよくて人柄もいい。そんな人間はJALには来ない。JALには頭は良いけれど、人柄が良くないのが来ることが多い。一番困るのは、頭の悪さを人柄の悪さで補うという者。こんな人間が、けっこう世の中にいる」
 いやあ、さすが苦労した人のコトバは重みがありますよね。
 小倉さんはナイロビ支店長に飛ばされたあと、1976年に、戸川幸夫、田中光常、羽仁進、渥美清、小原英雄、増井光子、岩合光昭の諸氏らと「サバンナクラブ」を結成しています。また、8年間のナイロビ勤務を通じて、アフリカのケニアやウガンダ、タンザニアなどの国の首脳陣とも親密な交流をしたのでした。まことに偉大な民間交流です。
 20年以上も前の、わずか40冊ほどの小冊子ですが、ひととき私の心を温めてくれました。
 (2022年3月刊。非売品)

亜鉛の少年たち

カテゴリー:ヨーロッパ

(霧山昴)
著者 スヴェートラーナ・アレクシエーヴィッチ 、 出版 岩波書店
 ソ連時代、アフガニスタンの戦場へ送られ幸いにも帰還できた将兵の証言集。
著者は『戦争は女の顔をしていない』の作家でもあります。苛酷すぎる戦争体験を聞きとり、活字にする作業をすすめていったわけですが、そのあまりの生々しさは反戦記録文学とみることもできます。なので、それへの反発から、誰かが黒幕となって、聞き取り対象となった兵士や遺族の母親から、自分はそんなことは言っていない、アフガンで戦った兵士の名誉を侵害したとして、ロシアで裁判になったのでした。
 著者が法廷で、あなたはあのとき私に本当にそう言ったのではありませんかと追及されると、彼らも全否定はできず、いや、そのつもりではなかったんだ、と話をそらそうとしたのです。裁判所は、結局、事実に反するとは認めなかったものの、一部は兵士の名誉を毀損しているとして、著者にいくらかの損害賠償を命じました。
 銃弾が人間の身体に撃ち込まれるときの音は、一度聞いたら忘れられないし、聞き違えようがない。叩きつけるような、湿った音だ。
 戦場にいる人間にとって、死の神秘なんかない。殺すってのは、ただ引き金を引くだけの行為だ。先に撃ったほうが生き残る。それが戦場の掟だ。
 オレたちは命令のとおりに撃った。命令のとおりに撃つよう教え込まれていた。ためらいは
なかった。子どもだって撃てた。男も女も年寄りも子どもも、みんな敵だった。オレたちは、たかだか18歳か20歳だった。他人が死ぬのには慣れたけど、自分が死ぬのは怖かった。
 アフガンでの友情なんて話だけは書かないでくれ。そんなものは存在しない。
 なぜ、相手(敵)を憎めたのか。それは簡単なこと。同じ釜の飯を食べた、身近にいた仲間が殺される。さっきまで、恋人や母親の話をしてくれていた仲間が全身、黒焦げになって倒れている。それで即座に、狂ったように撃ちまくることになる。
 罪の意識は感じていない。悪いのは自分たちを戦場に送り込んだ人間だ。
兵隊になって、オレはなにより味方に苦しめられた。古参兵たちのいじめだ。
「ブーツをなめろ」。全力でぶちのめされる。背骨が折れそうなくらいズタボロにされる。
ヘロインは文字とおり足元に転がっていた。でも、オレたちは大麻で満足していた。
 戦場で生き残るもうひとつの秘策は、なにも考えないこと。将校は自分では女や子どもを撃ちはしない。撃つのは自分たち兵士だ。しかし、命令するのは将校。なのに、兵士がみんな悪いって言うのはおかしいだろ・・・。兵士は命令に従っているだけなのに。
死体はさまざまだ。同じ死体はひとつとしてない。
兵士が死ぬのは、戦地に到着して最初の数ヶ月と、帰国する前の数ヶ月がいちばん多かった。最初のうちは好奇心が旺盛だからで、帰国前は警戒心が薄れてぼんやりしているからだ。
 著者を訴えた兵士や遺族は、「息子は殺されたというのに、それを金もうけのタネにしている」「裏切り者」「あなたは、私の息子を殺人犯に仕立てあげた」と強調した。
 死んだ兵士は亜鉛の棺に入って自宅に届けられる。一緒に届けられるのは、歯ブラシと水泳パンツの入った小さな黒いカバンひとつだけ。
 ソ連によるアフガン侵攻の戦争は1979年から1989年まで10年間も続いた。そして、ソ連は侵略者でしかなく、しかも勝利はしなかった。今のウクライナへのロシア(プーチン大統領)の侵略戦争と同じですよね。一刻も早く、ロシア軍が撤退して、ウクライナに平和が戻ることを願うばかりです。
(2022年6月刊。3520円)

聞くだけの総理、言うだけの知事

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 西谷 文和  、 出版 日本機関紙出版センター
 一見ソフトな「聞くだけの岸田」は、選挙前、あたかも新自由主義と決別するかのようなウソをついた。国民に寄りそうフリをして当面の選挙を乗り切り、あとですべてをホゴにする作戦に出たので、自民党は選挙で負けなかった。 
 「言うだけの吉村」は、分かりやすい。コロナ対策に「イソジンがいい」と明らかなウソを言ってのけた。これで塩野義製薬の株価が上がった。松井と吉村をトップとする維新の目玉はカジノと大阪万博。これには吉本興業と維新そして大阪財界がカジノ利権で結託している。吉本興業はカジノに隣接する劇場の運営利権を手に入れる予定。そして万博の大使(アンバサダー)に吉本の会長が、マネージャーのダウンタウンが就任。芸人が権力にすり寄っている。その代表格がダウンタウン。コロナによる死者は大阪が日本中で最悪。
 橋下徹は大手サラ金・アイフルの子会社の弁護士で、吉村知事はサラ金最大手だった武富士の弁護士だった。サラ金の顧問弁護士だから悪いということではありませんが、そんな仕事をしていたことは広く知られていいことです。
 大阪テレビ局の朝・夕のワイドショーに吉村知事がずっと出ている。大阪では「へつらい」がまかりとおっている。
 パソナの竹中平蔵は公共・切り崩し作戦。公務員を削って、パソナがもうかる仕組み。水道も鉄道も民営化して、パソナと竹中平蔵がもうかる仕組みをつくろうとしている。
 橋下徹の1回の講演料は200万円。年に何回もするので数千万円になっている。その原資は維新の会なので、結局のところ、私たちの税金。
維新の汚れた部分は報道されないので、なんとなく維新が改革者だと誤解している人が多い。でも、本当は違う。
 ロシアのウクライナ侵攻戦争で、1日2.5兆円の戦費がかかっている。それでもうけている人たちがいる。そんな人は戦争が早く終わるのを決して望んでいない。
 安倍首相はロシアのプーチン大統領と27回も会って、会食もし、3000億円を渡した。
 「ウラジーミル(プーチン大統領)、キミとボクは同じ未来を見ている。ゴールまで駆けて、駆けて、駆け抜けようではありませんか」。よくもまあ、こんなことを臆面もなく、言い切ったものですよね、聞いているほうが恥ずかしくて思わず赤面します。
 漫然とテレビも新聞も見ずに、好きなネット情報だけに頼っていると、維新を改革政党だなんて、とんでもない誤解をしてしまう。ホント、そうですよね。わずか160頁ほどの小冊子ですが、ぜひ多くの、とくに若い人に呼んでほしいと思いました。
(2022年6月刊。税込1430円)

ジャカルタ・メソッド

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者 ヴィンセント・ベヴィンス 、 出版 河出書房新社
 国際勝共連合・統一協会は日本の支配層にがっちり喰い込み、日本の政治を自分たちの思う方向に動かそうとしてきました。ただ、非武装の団体ですから、不幸中の幸いにも大量虐殺とは無縁(少なくともこれまでは)です。しかし、本家本元のアメリカ(CIA)は、それこそ世界中、いたるところで共産主義者の大量虐殺を敢行してきました。
 この本は、1965年にインドネシアで起きた大量虐殺がアメリカ(CIA)の差し金によるものであること、その方法(方式)はじゃカルト公式(メソッド)として、世界各地であてはめ、実行がなされ、今なお「ジャカルタ」と言えば共産主義者を有無を言わさず大量虐殺し、その国の民主主義を圧殺するものとして「活用」されているという恐るべき事実を実証しています。
 著者はまだ若い(38歳)アメリカのジャーナリスト。ロサンゼルス・タイムズの特派員やワシントン・ポストの記者として活躍中です。
 1965年10月、インドネシア在のアメリカ大使館は、CIA分析官と協力して、数千人の共産主義者および共産主義者と疑われる人物の名前を記載したリストをインドネシア軍に手渡した。それは、リストにある人物を殺したら印をつけられるようになっていた。このリストにもとづき軍と反共団体が大量虐殺を実行していった。
 バリ島では、住民の5%にあたる8万人が殺害された。人々が虐殺された現場の浜辺には、今、高級ホテルが建っていて、痕跡も見あたらない。
 虐殺されたインドネシア国民は100万人。それ以外に100万人が強制収容所に入れられた。虐殺の間接的犠牲者は数百万人にのぼる。なぜ、こんなに多数を占めるのか。それは、当時、インドネシア国民の約4分の1がインドネシア共産党(PKI)と関わっていたから。連行された囚人の15%は女性だった。
 PKIは、インドネシアで、もっとも有能かつ本格的な政党だった。PKIは、清廉(せいれん)潔白だと評判だった。農村部で農民のニーズにこたえる活動をしていた。PKIは武装闘争を否定していた。PKIは、しばしばモスクワの指示を無視し、スカルノ大統領に接近していた。
 PKIは国内の資本家階級と手を結び、反封建的な「民族統一戦線」を目ざした。
 スカルノ大統領は「ナサコム」と命名し、PKIも包含する政治をとろうとした。スカルノ、軍部そしてPKIという三つの政治勢力のバランスをうまくとっていた。
 PKIは300万人の党員をかかえ、系列組織として、労働者機構、農民戦線、人民青年団のほか、婦人団体のゲルワニを擁していた。ゲルワニには、2000万人もの会員がいた。
 PKIはあくまで平和的に活動していた。毛沢東は中国を訪問したPKIのアイディット議長に対して警告した。アイディットは、武装闘争を否定した。
 インドネシア軍による民衆の大量虐殺の主導権を握っていたのはアメリカ政府だった。途方もない圧力をかけ、作戦を進行させ、規模を拡大させた。アメリカ大使館は一貫して軍を焚きつけ、より強硬な態度をとり、政権を乗っとるように仕向けた。
 インドネシア軍の将校たちは、人を殺せば殺すほど、左翼は弱体化し、アメリカ政府は喜ぶと知っていた。
 このとき、ソ連はスカルノの失脚とPKIの滅亡をほぼ黙認した。すでに中ソは対立状態にあり、ソ連政府は、歯に衣着せぬ中国の盟友(PKI)の成功を望んでいなかった。
 アメリカ政府関係者は、ほぼ一様にインドネシアでの大量虐殺を称賛した。そして、アメリカの財界エリートは、インドネシアがアメリカの企業に門戸を開いたことを大歓迎し、さっそくインドネシアを次々と訪問した。
 インドネシアとブラジルでは反対勢力の存在は許されなかった。買収と暴力が日常茶飯事で、国民は恐怖に口をつぐみ、汚職は劇的に増加した。
 1960年代、インドネシアには、ソ連の最悪の時代に匹敵する規模の強制収容所が存在した。そして、アメリカが、そのシステムを支援していた。
 チリのアジェンデは、社会主義者でありながら、洗練されたサンティアゴのエリートだった。
 ニクソン大統領はCIA長官を呼び出し、アジェンデの大統領就任を阻止せよと命じた。
 ブラジルで「ジャカルタ作戦」が始動した。それは、インドネシアと同じく、大量殺人だった。
 1973年にチリのクーデターは成功し、アジェンデは失脚し、死んだ。ピノチェトとその部下は、独裁政権を誕生させて数日間のうちに3000人もの市民を殺害した。
 アメリカは世界各地で、インドネシアを重要なモデルケースとして、暴力すなわち「絶滅」プログラムを実行していった。一般市民に対する残忍きわまりない暴力を頂点とするアメリカ政府の反共十字軍の「成功」が現代国際社会を形成している。
 このアメリカ化の構築に役立ったのが、インドネシアで敢行された大量殺人プログラム(ジャカルタ・メソッド)だった。
 お手本であるアメリカの現状はどうか。アメリカは総体としてみると、並はずれて豊かで強力な国だ。しかし、その内実は、社会の最上層に他国から入って来る富がますます蓄積される一方で、底辺にいる多くのアメリカ市民は、旧第三世界の人々と変わらない貧しい暮らしをしている。
 1965年で起きたインドネシア国民100万人もの大量虐殺事件が日本で話題となることはほとんどありません。でも、これを主導としたアメリカ政府(CIA)の冷酷そのものの政策(「ジャカルタ・メソッド」)は、決して日本人の私たちに無縁ではないことをしっかり認識しておく必要があると、つくづく思いました。お盆休みに、喫茶店をハシゴして360頁もの大著を、重い気分に浸りながらなんとか読み通しました。あなたも、ぜひ手にとってご一読ください。
 なお、『インドネシア大虐殺』(中公新書、倉沢愛子)を前に、このコーナーで紹介しています。あわせてお読みください。
(2022年4月刊。税込4180円)

沖縄美ら海水族館はなぜ役に立たない研究をするのか?

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 佐藤 圭一 ・ 冨田 武照 ・ 松本 瑠偉 、 出版 産業編集センター
 前に、このコーナーで紹介しました『寝てもサメても。深層サメ学』の続編です。むずかしい記述もありますが、そんなところは読み飛ばして、とても面白い、ハラハラドキドキの研究が紹介されているのに目が強く惹かれます。
 なにしろ、ガラパゴス諸島に出かけて、その近海で1週間も潜水調査するのです。お目あては、かの巨大なジンベイザメ。巨大ザメに取りつき、注射針を刺して採血し、また水中エコー機で腹部をスキャンするのです。いやあ、すさまじい、涙ぐましい努力ですよね。興奮のあまり録画ボタンを押し忘れるなどの失敗もしながら、見事に血液サンプルを確保し、腹部エコー画像もとったのでした。しかも、それをしたのは日本人研究者の男女です。もちろん、現地の人たちがサポートします。なにしろ水深30メートルほどもあり、水中でエア切れになったりするのですから、サポートなしでやれるものではありません。
 本職が看護師の村雲さんは、採血するにあたって、胸ビレには針が刺さらないので、背ビレの付け根に針を刺して成功した。このとき、ジンベイザメのヒレにつかまっているので、そのまま海の向こうに連れていかれないよう、サポーターが見守っている。いやはや、怖いこと。
 美ら海水族館で独自に開発した健康管理の技術がガラパゴス諸島の周囲に生息する野生ジンベイザメの生態研究に貢献したというのです。すごいことです。
 水族館は、博物館などと比較して、運営コストが群を抜いて高い。というのも、水中にすむ動植物を多数飼育しているから、その飼育水を維持するには、ライフサポートシステムを24時間、絶えることなく稼働させる必要がある。沖縄美ら海水族館は、年間1000万キロワットの電力を消費している。これは一般家庭2800世帯の年間消費量に相当する。そのほか、エサ代そして人件費が必要となる。
 水族館のスタッフは研究する必要がないのか、研究成果の発表なんて不要なのか、という問いかけがなされています。いやあ、必要ですよね。見物客に向けたショーをやっているだけでいいなんてことはありません。
 でも、その研究って、いったい、何の役に立つのか…、と声を低めてしまいます。
 でもでも、目先の役に立てるものばかりが人類に真の意味で役に立つのかどうかは別ですよね。生物の多様性、多様な生物の形態を保持・維持することは人類の生存の保持にもつながるものです。
 沖縄美ら海水族館には、私も2回だけ行きました。年間入場者200万人を記録したとのことですが、コロナ禍の下では、入場者も激減したのでしょうね。だけど、沖縄に行ったら、ぜひ行ってみたいところです。ただ、那覇から遠くて、バスかタクシー、レンタカーしかないのが難点です。早く地下鉄を延伸してくれませんかね…。
 この水族館では、サメの人工子宮をつくっています。人為的にサメの子宮内環境を再現した装置で胎内の胚発生を観察し、サメを産み出すのです。そのため、人工子宮の中を満たした水「人工羊水」を開発しました。サメの体液生成に似せた液体を人工的につくって、本物の羊水の代わりを果たさせるのです。そして、サメ人工出産に成功したのでした。いやあ、すごいことです。
 そして、著者(の一人)は、こう書いています。
 私には、自分の研究の重要性を他人に認めてもらいたい一方で、自分の研究の重要性が他人に分かってたまるかという気持ちがある。お前は、いつから「人に役に立つ研究」なんぞするような研究者に成り下がったのか…。研究者とは、かくも我がままで、矛盾に満ちた生き物なのだ。
 いやあ、面白い本です。挑発的なタイトルもいいですね。こんな問いかけをする研究者がいるからこそ、世の中は発展するわけで、それを阻害する政府の日本学術会議の任命拒否は、ますます許せないという気持ちが強まりました。一読を強くおすすめします。
(2022年6月刊。税込1980円)

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