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2017年6月 の投稿

ハヤブサ

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 ヘレン・マクドナルド 、 出版  白水社
ハヤブサは史上最速の動物だ。時速160キロで飛び、いや時速320キロで降下する。ハヤブサは高速で飛び、目が黒っぽく、開けた空中で活発に狩りをする。
ペレグレンハヤブサは鳥を狙うのに対して、砂漠のハヤブサは哺乳動物やハ虫類、昆虫も獲物にする。どちらのハヤブサも、メスのほうがオスよりも身体が大きい。オスは一般にメスの3分の1ほどしかない。
シロハヤブサは、背中の模様がペン先の形に見えたことから、17世紀のスペインでは弁護士(レトラド)と呼ばれた。
ええっ、ハヤブサは弁護士と呼ばれていたのですか・・・。
ハヤブサは、その感覚系と神経系の働きが高速なため、反応がきわめて速い。ハヤブサの世界は人間よりも10倍の速さで動いている。人間の脳は、1時に20の事象しか処理できないのに対して、ハヤブサは70~80の事象が処理できる。だから、テレビ画面では毎秒25枚が放映されるが、ハヤブサは、これを動画としては認識できない。
一瞬のあいだに、人間よりもたくさんのものをまとめて見られるおかげで、全速力で足を延ばして空中の鳥やトンボをつかむことができる。ハヤブサの仲間のチョウゲンボウは、18メートル離れたところから、体長2ミリの虫を判別できる。
ハヤブサは水はめったに飲まない。必要な水分の大半はエサとなる動物から補給する。
ハヤブサの消化系は短い。生の肉は消化しやすいから。
ハヤブサは、一日のかなりの時間を羽のメンテナンスに費やす。脂肪酸、脂肪ろうの分泌液を出し、羽に塗る。この分泌液には、防水効果のほか、ビタミン前躯体があり、これが陽光を浴びてビタミンDに変わる。
ハヤブサは、だいたい一夫一妻であり、婚外交尾はめったに見られない。
ハヤブサの子は、生後1年目に、およそ60%が飢えに苦しんで死ぬ。
ニューヨークやワシントンのような大都会でもハヤブサが繁栄するようになったとのことです。ハトのようなエサが豊富だからのようです。
ファルコンとも呼ばれるハヤブサについて、いろいろ知ることができる本でした。
(2017年5月刊。2700円+税)

知っているようで知らない鳥の話

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 細川 博昭 、 出版  サイエンス・アイ新書
本のタイトルどおり、驚きいっぱいの知的刺激あふれる本です。
カラスは遊ぶのが大好きで、1つのボールを集団で追いかけて奪いあったりする。証拠写真があり、なるほどと思いました。
カラスのなかには、カレドニアガラスのように、未知の材料から、状況(必要)に応じた道具をつくり出す能力のあるカラスがいる。
オウムも、カラスと同じように自作した棒をつかって、食べ物をたぐり寄せる。
カケスは、エサの少ない冬に備えて、実りの季節(秋)に栄養価の高いドングリを隠して、溜め込んでいく。カケスは、最大4000ケ所にものぼる隠し場所を正確に記憶している。どこに隠したのかを忘れることはない。
大型のインコであるヨウムは、好奇心が強く、安心できる相手と認識した人間を深く信頼する。
ヨウムのアレックスは、色や形などを50以上も正確に理解し、自分の口で名称を言えるようになった。
ブンチョウは、音楽を聞き分けている。クラシック音楽を好み、現代音楽を聞くくらいなら無音のほうがマシと考える。
ニワシ(庭師)ドリのオスは、メスの気を惹く構造物をつくる以外には何もしない。オスのつくった構造物が気に入ったメスは、オスの才能を認め、その場で交尾する。オスのつくる構造物は、完成するまで10ヶ月もかかる。
カモのヒナが卵からかえるのが同時期になるのは、卵の中のヒナが、卵の内側から卵殻を突つき、その音をまわりの卵に伝え、それぞれの出す音を聞いて、自分の成長が周囲より早いか遅いかを知って、成長速度をコントロールしているから。
よくも、こんなことが判明したものですね。観察だけからとは思えませんが・・・。
陸上にすむ哺乳類で、息を止められるのは人間だけ。チンパンジーには、その能力はない。
鳥は、息を止めたり、気管支を通る息の流量をコントロールして歌をつくっている。
インコやオウムは、寝ているときに、寝言として、耳にした声や、覚えている人間の言葉を口にすることがある。
カラスやインコは、人間の視線をたどって、その目が見ている先を知ることができる。
ツバメの赤ちゃんが巣から放り出されているときには、つがいを見つけられなかった若いオスが、カップルを破局させる目的でヒナをつまみ出してしまった可能性がある。
メスは、ヒナが全滅してしまうと、カップルを解消して、新しいパートナーを探そうとする。
いやはや、世の中は奇想天外、知らないことだらけなんですよね・・・。
(2017年3月刊。1000円+税)

水壁

カテゴリー:日本史(平安)

(霧山昴)
著者 高橋 克彦 、 出版 PHP研究所
著者の小説は面白いです。血湧き肉踊る、ワクワクしてくる冒険小説の趣きがあります。
新聞で連載されていたとき、毎週日曜日が楽しみでした。次はどんな展開になるのか・・・。
平安時代、東北にはアテルイという英雄がいたことを著者の先の本で知りました。京の都から派遣されてきた大軍を相手に真向勝負で戦い、戦略的勝利を得たというのですから、たいしたものです。それをまた、見てきたように再現してみせる筆力には恐れいるばかりでした。
今回は、そのアテルイの血を引く若者を中心として、京の都にたてついて、秋田の米代川以北はエミシの自治領とする合意を勝ちとったのです。信じられません。
この本のサブタイトルは「アテルイを継ぐ男」となっています。戦いを有利に導くための戦略、そして戦術が具体的に描かれていて、なるほど、さもありなんと思えます。
戦いを率いるのは、若い力だ。年寄りは、人の死を幾度も間近に見て気弱になっているばかりか、世の中の変わらぬことをつくづくと思い知らされ、あきらめが奥底にある。だが、若い者は先を信じられる。そのためなら死をも恐れない。暗い道に明かりを灯すのは、いつだって若い者だ。
これを読んで、私の若いころのスローガン、未来は青年のもの、を思い出しました。そして、世の中はいつか変わる。明けない夜はないという呼びかけも思い起こしたのでした。
次のようなセリフがあります。
「そなたには人の言葉に白紙で耳を傾ける素直な心と、状況を見きわめる明瞭な判断力が備わっている。さらに、人を動かす気にさせる熱がある。私欲もなければ、こたびのようにいざとなれば皆の先に立って野盗とやりあう度胸まで。それこそが将に求められるすべてだ」
「知恵と威張ったところで、それはただ頭の中に描いた絵でしかない。命を懸けて戦うのは兵たち。きっと勝てると思わせ、自分らとともに戦ってくれる将がいてこそ、兵は何倍もの力を発揮する。そなたがまとめであるなら、存分に策を練ることができ、楽しみだ」
この本が、どこまで歴史を反映しているのか知りませんが、東北の人々の偉大な戦いをまざまざとよみがえらせた功績は、きわめて大きいと思いました。ちょっと疲れたな、という気分のとき、読めば気を奮いたたせてくれること、間違いありません。
(2017年3月刊。1700円+税)

忘れられた人類学者

カテゴリー:日本史(戦前・戦中)

(霧山昴)
著者 田中 一彦 、 出版 忘羊社
『須恵村の女たち』(御茶の水書房)は、日本という国がどんな社会なのかを生き生きと描いた古典的名著だと私は考えています。まだ読んでいない人は、インターネットで注文して買うか、図書館で借り出して、ぜひ読んでみてください。
日本の女性のたくましさについては、戦国時代の日本にやって来た宣教師たちの報告書に何回も驚きとともに報告されていますが、戦前の熊本の農村地帯もまるで同じ状況でした。本書では「困難な中にも奔放に生きる女たち」と評されていますが、そのことをひしひしと実感させられます。
この本は『須恵村の女たち』を書きあげた若いアメリカ人学者夫婦を丹念に紹介しています。
ジョン・フィ・エンブリー、27歳。妻のエラは26歳。2歳の娘クレアを連れて、1935年(昭和10年)11月から1年間、須恵村に住み込んで日本農村調査をした。
須恵村は、現在は町村合併で、球磨郡あさぎり町となっていて、あさぎり駅で降りる。
当時の須恵村は285戸のうち農家が215戸、75%を占めた。昭和10年の須恵村には、自転車は160台、時計は各戸にあり、ラジオは5台、オート三輪車が1台、バスは通っていた。電話は村役場に1台あった。
夫・エンブリーは、アメリカに戻って、42歳のとき交通事故で娘クレアとともに亡くなった。
妻・エラは、2005年に96歳で亡くなった。
エンブリー夫妻は、瓦ぶき2階建ての貸家に生活した。風呂が室内にあった。
エラは、エンブリーと違って日本語が達者で、通訳はいらなかった。娘クレアもアメリカに戻るまで日本語で生活していた。
戦前なので、エンブリー夫妻は警察からスパイ視された。しかし、須恵村の人々はエンブリー夫妻を受け容れた。村人は好奇心に満ち、自由に、何でも話した。
シカゴ大学からエンブリーがもらった調査費は3000ドル(3000万円)。アメリカの大学は偉いです。たいしたものですね。
村人そして女性たちの冗談や猥談は、酒の席だけでなく、つらい労働の気散じんなっていた。須恵村の女たち、とりわけ年寄りの女性は、自由で、開けっ広げで、積極的で、生き生きとしている。酒宴では、いつもエロチックな歌と踊りが披露され、煙草、酒、性に楽しみを見いだしていた。
女性は、おへそを比べあい、性器や陰毛の生え方の形を見せあったりしていた。
須恵村の宴会で、人々は踊り、唄い、食べ、鮭を大量に飲み、ほとんど例外なく、かなりの性的な冗談や戯れがみられた。ついには、みんなが酔っ払って、踊りまくり、下品な歌をうたいまくらない宴会はほとんどない。性交の行為を表すような踊りをおどった。
エンブリーは、性生活の不満を晴らすために、宴会の女の踊りに性的な性質があると分析した。
これだけ開けっ広げだったのに、出産の場にエラがついに立会うことはできなかったというのも不思議なことです。
須恵村では離婚と再婚はひんぱんであり珍しいものではなかった。そして、女性の方から結婚生活に終止符をうつことも少なくなかった。
10回も結婚した女性がいた。結婚式は簡単で、婚礼は5円ですませることが出来た。
須恵村の女性は、しばしば夫とは別の男をもっている。
須恵村では、数人の異性との性愛を不純とみない、むしろ、性が人間としてのやさしさやあたたかさの源であることを確認しあうような素朴なすがたがある。ここでは、家父長的な性道徳や貞操観念は、無縁だ。
女性主導の離婚が多かった背景には、別の夫を見つけることがきわめて容易だということがあった。
まずは『須恵村の女たち』を読んでから、この本を読むことを強くおすすめします。
(2017年3月刊。2000円+税)

弁護士の経営戦略

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者 高井 伸夫 、 出版  民事法研究会
80歳になる著者は、もちろん現役の弁護士です。事務所には、朝8時ころに出勤し、夕方6時まで仕事をしているとのこと。年齢(とし)のせいで耳が遠くなったそうですが、この点は私にも同じ傾向があります。
これまで365日、仕事をしてきたそうですが、オンとオフの切り替えにも気を配っています。
オフが充実しないと、オンは充実しない。
まことに、そのとおりです。趣味に生きるということで、読書(小説を読む)とあわせて、絵を見ることが紹介されています。本を読むのは私も実践してきましたし、映画も大好きです。最近も、東京の岩波ホールで映画を見て楽しんできました。
そして、旅行です。このところ海外へは行っていません。国内旅行も、まだ行っていないところがたくさんあります。
著者は新しい友人を少しずつ増やすといっていますが、なかなか出来ません。というか、あまり開拓意欲が湧きません。若い女性なら、少しずつ増やしたいのですが・・・。
著者は大切なことを指摘していると思いました。たとえば、依頼者自身が社会貢献意識をもつように促すということ。弁護士は依頼者をもうけさせるだけではいけない。うむむ、そうなんですよね。でも、ここは、弱いところです・・・。わたしは、大いに反省しました。社会貢献というのは、いろんなアプローチがあっていいわけですから、この意識をもつように働きかけることも忘れてはいけないということです。私も、これから、改めて気をつけたいと思います。
弁護士は、常に早め早めに準備をし、対処していかなければならない。
仕事は、まずは易しいものから、どんどん片付ける。そして、難しいものについても、1日以内に終わらせるようにする。拙速は巧遅に勝る。
私も、まったく同じ考えです。悩んで、仕事をかかえこんではいけません。
弁護士は、決断力を要する職業である。
自分の発言に責任をとる覚悟が必要だし、決断は実行してこそ意味がある。
リーガルマインドは、論理的思考とバランス感覚の二つの両方が必要。
弁護士を採用するときには、目線が強い人を選ぶ。人間観察力が強い人だ。
弁護士は書くことも大事だし、話をすること、その前に読むことも大事。執筆力、表現力、さらに分析力が求められる。そして、先見性、迅速性、さらには機動力が高いこと。
いやあ、弁護士って、いろんな能力が求められるのですよね・・・。
さすがに、大先輩の言葉には実践に裏づけられた重みがあります。
若手弁護士に限らず、弁護士全般にとって大いに参考になることが満載の本です。
(2017年5月刊。1700円+税)

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