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2017年1月 の投稿

ブータン、これでいいのだ

カテゴリー:アジア

(霧山昴)
著者 御手洗瑞子 、 出版  新潮文庫
ブータン、何だか名前の響きからだけでも惹かれるものがありますよね。
GDPではなく、GNHを打ち出したのはブータンです。GDPは国内総生産。GNHは、国民総幸福量。国は人々の幸せを一番に考えるべきであるという考えです。いまの自民・公明のアベ政権とはまさに真逆の方向です。
そんなブータンで日本人女性が官僚の一員として働くようになった体験談が楽しく語られています。
ブータンンの人たちは、政府で働く官僚をふくめ、ほとんどの人が手帳もカレンダーも持っていない。彼らは頭で記憶できる範囲、せいぜい2日後までしか予定を立てない。うひゃあ、こ、これは大変なカルチャーショックです。
ブータンは、九州と同じくらいの大きさの国で、人口68万人。島根県や大田区と同じほどの人口。
ヒマラヤ山中に位置し、チベット仏教を国教とし、ゾンカ語というブータン独自の言語が国語。立憲君主制。
小学校から、すべての授業は英語でおこなわれる。ブータンでは、生前退位が認められていて、2006年に51歳の国王が退位し、26歳の長男が国王になった。
ブータン人は、いつも自信満々。自信にみちあふれ、物おじせず、しっかりと相手の目を見すえて話す。
ブータンでは人見知りする子どもを見かけたことがない。
ブータン人はプライドが高いから、上から指示されるのを嫌う。失敗しても反省しない。何度でも同じ間違いをする。
ブータン人は、喜怒哀楽を、とても素直に、しっかり表現する。よく笑い、よく怒る。
ブータンでは、仕事のあとに飲みに行くことはしないし、夜に外食する習慣もほとんどない。通常は、夕食前に家族全員が家に帰り、手分けして夕食をつくり、一緒に食事をする。
ということは、ブータンではレストランがあまり繁盛していないのでしょうか・・・。
ブータンは、もともと女系社会。男性が婿入りする。相続するのも息子ではなく娘。基本的に妻のほうが一家の主(あるじ)。若い夫婦は妻のほうの家族と暮らすので、嫁姑問題はほとんどない。男性は、自分を婿にもらってくれる家を探すという習慣。
ところが、ブータンの男性は自他ともに認める浮気性。
結婚しても姓の変更はない。そもそも家族を表す姓がない。一部の金持ち以外は結婚式をあげることもない。重婚も可能。ただし、浮気がバレたら、たいてい即、離婚。家を追い出される。
ブータンでは、夜這いの習慣がまだ残っているらしい・・・。
私も一度はブータンという国に行ってみたくなりました。まさしく、ところ変われば、品変わるですね。
(2016年6月刊。590円+税)
福岡・天神でドイツ映画『アイヒマンを追え』をみてきました。ナチス・ドイツのユダヤ人大量虐殺に深く関与した元ナチス親衛隊中佐アイヒマンの捕獲・裁判について『ハンナ・アーレント』『アイヒマン・ショー』に次ぐ映画です。
ドイツのヘッセン州検事長フリッツ・バウアーは映画『顔のないヒトラーたち』で紹介されましたが、ナチスによるユダヤ人のホロコースト実行犯たちに対するアウシュヴィツ裁判を推進した立役者でもありますが、この映画ではアルゼンチンに潜伏していたアイヒマン捕獲の手がかりをつかんだ重要人物として描かれます。当時、ドイツの官僚システムのなかには、旧ナチ残党がまだまだ幅をきかせていて、ナチスの残党の摘発を躍起となって妨害していたのでした。
ユダヤ人の大量虐殺をはじめとするナチスの蛮行はおぞましいものがあります(この映画では、その点の描写はまたくありません)が、それにドイツが正面から向きあおうとしてきた努力がフランスをふくむ周囲の国々から評価され、今日のEUが成立しているわけです。その点、日本では過去の歴史的事実にきちんと向きあおうとすると「自虐史観」だとかいって足をひっぱる声がかまびすしいのは本当に残念です。
韓国や中国と仲良くしないで、日本の豊かで平和な生活がありえないのに、今の安倍政権はそれと真逆の政治を突っ走るばかりで、許せません。

シマエナガちゃん

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者 小原 玲、 出版  講談社
これは可愛い。まさしく雪の妖精です。北海道でフツーに見られる小さな小鳥の写真集です。
シマエナガは北海道に暮らすエナガの亜種で、真っ白な顔ころんとした小さな体が特徴。
ほんとうに真白い、丸々とした小鳥です。つぶらな黒い目と小さな鼻があるだけ。まるで白いマシュマロです。
体の長さは14センチ。体重8グラム。日本最小の鳥。冬には樹液のつららをなめています。大好きなのです。
飛ぶときにはロケットのように!まさかと思いますが、羽を広げているのではなく、羽を閉じたまま昇ったり、降りたりする姿が写真にとらえられています。もちろん、羽を広げても飛んでいます。
冬のあいだは群れで過ごし、冬が終わるころにつがいになる。
シマエナガは、コケやクモの巣をつかって、木の幹の二又に分岐しているところに大きな卵形の巣をつくる。見た目は草や葉の塊のようになって外敵の目を欺く。
小さな卵を10個ほど産み、2週間でかえってヒナとなる。しかし、1年後まで生き残っているのは一羽か二羽ほど。エサがなかたり、冬の寒さに耐えられなかったり、タカや昆虫に食べられたりする。寿命は長くて3年から5年ほど。
それにしてもヒナたちが木の枝に一列に並んでいる様子は愛らしくてたまりません。
シマエナガは人里に近い環境を好むので、札幌の大通公園など、緑の多い公園や緑地で普通に見られる。
いやあ、こんな可愛い小鳥が身近に見られるなんて、北海道の人は幸せです。
今朝(12月28日)、この冬一番にジョウビタキを見かけました。御用納めの日に出勤する寸前の我が家の庭です。このジョウビタキも愛嬌たっぷりの小鳥で、可愛いですよ。
(2016年12月刊。1300円+税)

正倉院 宝物

カテゴリー:日本史(奈良)

(霧山昴)
著者 杉本 一樹 、 出版  新潮社
 校倉造(あぜくらづくり)の巨大な高床式(たかゆかしき)の倉庫として有名です。
 奈良・平安の当時、日本文化が生みだした宝物をたくさん収蔵していますが、そのなかには遠くペルシアなどから渡来してきたものもふくまれています。国際色豊かな8世紀の文物が当時の姿で残っている、まさに宝庫です。
 バンジョーのような形の楽器があり、古琵琶もあります。いずれも見事な装飾です。
 奈良時代は、囲碁と双六が大流行していた。双六は、賭博に傾きやすいとして、持統天皇は禁止令を出し、何度も取締の対象となった。
 先の国会で自民・公明・維新が多数の横暴でカジノ法を成立させてしまいました。人の不幸で金儲けしようという亡者集団だというほかありません。こんな政権が子どもたちに学校で道徳教育を押しつけているのですから、世の中に間違いが多くなるのも当然です。
 軽業をしている人や、大道芸人を描いた絵もあります。みんな楽しそうですよ。
 その微細きわまりない細工には声が出ないほどです。昔の人は偉かったとしか言いようがありません。ぜひ、一度、実物を手にとって(というのは無理でしょうが・・・)じっくりと拝んでみたいと思いました。
(2016年12月刊。2000円+税)

アマゾンと物流大戦争

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 角井 亮一 、 出版  NHK出版新書
 宅配便の便利さは捨てがたいものがあります。旅行のときには、行く先々で宅配便を利用して、読み終わった本を自宅へ送ります。そのとき、その地方の土産品も一緒に送るのです。すると、カバンの中は軽くなり、新しい本を求めることも出来るのです。
 日本の宅配サービスのレベルは非常に高い。全国どこでも、ほぼ翌日配送にすることができる。しかも、配達時間帯の指定ができる。アメリカでは時間指定はできないし、土日祝日もダメ。さらに、日本では、日時指定の再配達も可能。ただし、宅配便の現場では、再配達に泣かされているようです。
宅配便はヤマト運輸が突出した力をもっている。かつて40社もあった宅配便の会社が、現在では21社。そしてヤマト運輸(45%)、佐川急便(33%)、日本郵便(14%)で、上位3社で92%を占める。
トラック運転手の給料が低下したことから、トラック運転手の確保が難しくなっている。
アマゾンは、全品送料無料をやめた。アマゾンにとって、配達費の増加は悩みのタネ。
アメリカでは、アメリカの通常配送は注文してから3~5営業日以内というのが標準。
 アマゾンは、単なるネット通販企業から、巨大なグローバル企業に代わった。アマゾンは、あらゆる手段を用いて物流を効率化し、それを低コストでの運用につなげている。アマゾンは、新車や中古車といった自動車まで売り始めている。
ネット通販では、お客が選んだ商品を販売している側が倉庫から取り出し、丁寧に梱包し、お客の自宅へ宅配する手続きをしなければいけない。誰が1220万もの膨大な品目の中から注文された商品をピッキングし、大きさも材質もさまざまな商品を梱包し、配送するのか。もちろん、それをするのはアマゾンであり、ネット通販会社である。
ロジスティクスでビジネスを制している企業として、著者は、ヨドバシカメラ、アスクル、カクヤスなどをあげています。
 私の事務所でも、アスクルは頻繁に利用しています。やはり便利さにはかないませんから・・・。
(2016年11月刊。740円+税)

進化しすぎた脳

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者 池谷 裕二 、 出版  講談社ブルーバックス
 脳学者が、ニューヨークで日本人の高校生を相手に講義した内容が本になっていますので、とても分かりやすく、知的刺激にみちています。実は、私も高校生のころ、一瞬でしたが大脳生理学を研究してみたいなと思ったことがありました。その直後に、理数系の頭をもっていないことを自覚して、たちまち断念したのですが・・・。
 脳は、場所によって役割が異なる。同じ聴覚野でも、内部では、漠然と音に反応しているのではなくて、ヘルツ数順にきれいに並んでいる。たとえば、5番目の視覚野は、動きを認知する場所。ここが壊れると、動いている物が見えなくなってしまう。
網膜から出て、脳に向かう視神経は100万本ある。多いようだけど、デジカメで100万画素というと、今では少ない。100万本は多いとは言えず、それだけなら、ザラザラ、ガクガクしているはず。テレビやDVDは1秒間に30コマ。映画は、もっとコマ数が少なくて、1秒間に24コマ。
 人間の脳は10ミリ秒というのが時間解像度だ。人間にとって、100分の1秒より小さい桁には意味がない。10ミリ秒で、もう十分に「同時」ということになる。
テレビ画面を虫めがねで拡大してみると、「赤・緑・青」の画素がびっしり並んでいるのが見える。人間が識別できる色の数は数百万色。
 世界を脳が見ているというより、脳が人間に固有な世界をつくりあげているというほうが正しい。
視神経のなかで、上丘で見ているものは、意識には現れない。上丘は、処理の仕方が原始的で単純だから、判断が速くて正確だ。
 サルは、人間が意図的に言葉を教えなければ、絶対に言葉を覚えない。サルは、自分たちのコミュニケーションの中でシグナル(信号)は使うけれど、もっと高度な言葉を自分たちで産み出したりはしない。人間に教えられた、ある意味で不自由な状態にならないと、サルは言葉を覚えない。
下等な動物ほど、正確な記憶をもち、ひとたび覚えた記憶は、なかなか消えない。
人間の身体の細胞は60兆あるが、速いスピードで入替わっている。身体の細胞は3日もたったら、乗り物としての自分は変わっている。脳は、そんなことにならないように、つまり自分がいつまでも自分であり続けるために神経細胞は増殖しない。
神経細胞にとって、もっとも重要なイオンは、ナトリウムだ。恐らく生命が誕生したときに、ナトリウムイオンがまわりにたくさんあった。海だ。生命は海で誕生したと言われている。そこで、もっとも利用しやすかったのがナトリウムイオンだったのだろう。
 神経線維と神経線維が接近しているが、間にすきまがある。その極端に狭い特殊な場所で、神経細胞同士が情報をやりとりしている。その場所をシナプスと呼ぶ。シナプスは、ひとつの神経細胞あたり1万もある。シナプスのすき間はすごく狭い。1ミリmの5万分の1。つまり、20ナノメートルしかない。神経伝達物質が一つの袋のなかに数千個から1万個もぎっしりと詰まっている。人間の記憶や思考があいまいなのは、シナプスに理由がある。
脳の神秘が、こうやってひとつずつ明らかにされています。そうは行っても脳の働きが完全に究明されるのは、まだまだ遠い未来の話のように思えます。
 大脳生理学の到達点について、高校生と一緒に学ぶことができました。
 
(2016年2月刊。1000円+税)

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