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2016年2月 の投稿

奇跡の村

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 相川 俊英 、 出版  集英社新書
 「限界集落」が必ずしも自然消滅するわけではないということを再確認させられる新書でした。知恵と工夫によって、若者を呼び込んで、それなりに復活することがあるのです。だって、人間は、目標さえ具体的で確であれば、80歳をこえても楽しく働いていけるし、それが村(町)おこしにもなっていくのですから・・・。
 この新書では、全国いくつかの実例を紹介していて、大変参考になります。
 長野県の南端にある下條村は人口4千人足らず。ところが、子育て支援が効を奏し、全国有数の高い出生率を誇っている。この村は若者定住促進住宅を建設している。マンション風の村営集合住宅が村内に10棟(124戸)建てられている。家賃は2LDKで3万4千円ほど、これには車2台分の駐車スペースが付いている。ただし、二つの入居条件が付いている。一つは、子どもがいるか、これから結婚する若者であること。二つは、祭りなど、村の行事への参加と消防団への加入。この住宅は家賃の安さと暮らしやすさから絶えず満室状態。
 医療費は高校卒業まで無料。給食費は半額補助。保育料も半減。第三子は無料。出産祝い金は、第二子に5万円、第三子以上に20万円。入学祝金は小学生に3万円、中学生に6万円。ただ、悩みも大きい。その悩みは、村内に高校が一つもないこと。下條村は、「平成の大合併」を拒否して、自律した村として独自の歩みを続けてきたのでした。
 群馬県南牧村は人口2千人あまり。ここでは、小学校の運動会は村民参加型となった。小学生が少なくなり、また村民が高齢化して村民体育祭ができなくなったことから、一緒にしたのだ。ここでは古民家バンクという取り組みが進んでいる。人が住まなくなった古い民家を1ヶ月3万円で貸し出す。その結果、3年間で14世帯26人が村に転入してきた。ここでも二つの条件がある。きちんと近所づきあいをすること。地域の伝統行事に必ず参加すること。移住者は地元の人と一緒になって花を栽培して出荷している。
 いずれ地方は消滅すると単純に決めつけていはいけませんね。かの大東京にしても、いつ大震災で破滅するか分りませんし、あの3.11のときには危機に直面したわけです。やはり、日本が生き残るためには地方を守り育てておく必要があると改めて思いました。
                           (2015年10月刊。740円+税)

弁護士 21のルール

カテゴリー:司法

(霧山昴)
著者 東弁、親和全期会 、 出版  第一法規
 若手弁護士が、こんなところでつまずかないようにという先輩弁護士からの具体的なアドバイスが満載の本です。
 エレベーターで依頼者と一緒になったとき、ボタンを押すなというのは、あまり私にはピンと来ませんでしたが、服装には気をつけたほうがいいというのは同感です。ジーパンにTシャツで高額の着手金はいただけません。やはり背広(スーツ)でびしっと決めてこそ、何十万円、何百万円という大金をいただけるのです。
 そして、「先生」と呼ばれて「安住」するのも良くはありません。飲みにケーションは大切ですが、私のように60歳すぎたら、それもほどほどにしたくなります(私は50歳になってから二次会に行くのは止めました)。
 事務所に和やかな雰囲気が流れるような配慮は大切です。ああ、行きたくないなと思うのは最悪です。ブルーマンデーはありませんが、そんなのはストレスの源です。私は幸いにして、この40年間、「今日は事務所に行きたくないな」と思ったことが一度もありません。
 弁護士同士では、適度な距離感を保つ必要があるというのは、まったく同感です。一緒にいて、くたびれない関係こそが長続きする秘訣のように思います。
 事務局にとって、弁護士との食事は、残業代のつかない仕事の延長と考えている可能性があることを弁護士は自覚すべきだ。これには、なるほどだと思いました。
 事務局とのコミュニケーションが円滑かどうかは、弁護士にとって死活的に重要です。弁護士が判断して仕事を事務局に依頼することが大切です。そして、迎合してはいけません。人間としては対等ですが、仕事上は事務局はあくまでも補助者なのです。
 依頼者は友達ではないので、気を許して、内緒話などなんでも話していいわけではない。
そうなんですよね。あとで裏切られることもないわけではありませんので・・・。
弁護士とはなるべく交流すること、幹事は自らすすんでなること、というのは大切なことです。弁護士からの事件紹介って、意外にも多いものなんです・・・。
 本は買って読むこと。私は、持てるだけ(買って帰るときに、重たくなりすぎないように)本は買うようにしています。本を買うだけの収入は得ているからです。本を買うのに、お金の点でケチケチはしないようにしています。
 そして、新しい人間関係を今さら開拓する気は薄くなりました。それより、これまでの人間関係を大切にしたいと思います。
 2500円ですので、安くはありませんが、決して高いことはない本として、若手弁護士には一読を強くおすすめします。
(2016年1月刊。2500円+税)

昆虫のハテナ

カテゴリー:生物

(霧山昴)
著者  盛口 満 、 出版  山と渓谷社
  教えてゲッチョ先生、というサブタイトルがついています。今は沖縄の大学で教えている著者は前に埼玉県にある自由の森学園高校で15年のあいだ教えていて、私の長男も教えてもらっていました。
ゲッチョとは、カマキリとトカゲをさす方言とのことです。
フユシャクガは成虫になると口が退化して、何も食べない。幼虫時代にたくわえた栄養だけで、2週間ほどの成虫期間を終える。成虫は、交尾し、卵を産むだけ。食べて歩いてという、まっとうな生活は、数ヶ月の幼虫期間のみ。
 アシナガバチもスズメバチも、営巣の初めには、越冬した1匹の女王バチしかいない。この1匹の女王で子を育てているときには、近づいてもめったに襲ってこない。ハチに人が刺されるのは、夏過ぎ、巣が大きくなって多数の働きバチが活動しているころ、ハチの巣を刺激してしまったことによる事故が多い。
 ハチの毒針は、産卵管に使っていたものを変化させたものなので、メスのハチしか刺さない。
 ハチは黒いものや動くものを攻撃する習慣がある。だから、髪の毛や眼が要注意。
 ゴキブリを食べるアシダカグモがいる。
 オナガグモという、クモ専門食のクモがいる。ヤマトゴキブリは産卵から成虫になるまで丸2年かかる。
 原ゴキブリ類は3億年前に出現している。
 カマキリは、ゴキブリの親戚筋の昆虫。
 日本には、50種のホタルの仲間がいるが、幼虫が水中生活を営むのは、わずか3種。残りのホタルは、陸生。陸のホタルは、もっぱらカタツムリを食べている。なかにはミミズ食というものもいる。そして、ホタルの成虫は必ず光るわけでもない。
 昆虫にもいろんなものがいるのですね。楽し昆虫の話が満載です。
(2016年2月刊。880円+税)
 仏検(準一級)に合格しました。
金曜日に帰宅したら、大型封筒が届いていました。これは開封するまでもなく合格したことを意味しています。大型封筒の中にはA4サイズの合格証書が入っているのです。これで5枚目になりました(何回受験してもいいのです)。
 口頭試問は最低合格点が23点のところ26点でした。きわどいところです。自分でも不出来でしたが、年齢に負じてゲタをはかせてくれたのでしょう。それでも合格したというのはうれしいものです。
 今でも毎日毎朝、NHKラジオ講座を聴いて、今はニュースの書き取りに挑戦しています。ボケ防止には語学が一番だからです。

泣くのはいやだ、笑っちゃおう

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者 武 井  博 、 出版  アルテスパブリッシング
 昔なつかしいHHKの人形劇「ひょっこりひょうたん島」について、担当ディレクターだった著者が裏話をたっぷりふくめて書いています。
 『ひょうたん島』が始まったのは1964年4月のこと。私が高校に入学した年です。それから5年間続いて1969年4月に最終回をむかえました。私がまだ大学2年生、本当は3年生に進級するはずでしたが、例の安田講堂攻防戦が1月にあり、ほぼ1年ぶりに授業が再開されましたので、4月進級はありませんでした。
 高校生のときですから『ひょうたん島』をじっくり見た記憶はありません。でも、そのパンチのきいた人形劇はとても印象に残っています。
 博士、ダンディ、ガバチョ、トラヒゲ、サンデー先生という個性的な人形と声優、そしてセリフがすごく印象に残っています。
 毎年1回、かつての弁護士会役員仲間が奥様同伴で全国を旅行してまわっていますが、そのグループの名前が『ひょうたん島』なのです。そして、博士とガバチョがメンバーにいます。私は、そこではモノカキと称しています。
『ひょうたん島』は東京オリンピックそして東海道新幹線と同じ年にスタートしたのだそうです。ええっ、そうだったっけか・・・。
 テーマソングを歌ったのは、なんと当時はまだ中学1年生だった前川陽子。これはすごいですね。そして、テーマソングの歌詞をつくる生みの苦しみが紹介されています。丸2日間、なんのアイデアも出ずに苦しみ、ついにNHKへ戻っていく列車の中で、井上ひさしが、「まるい地球の水平線」という言葉を思いついた。「丸くて水平」。実に非凡な夢ふくらむ発想だった。そして、列車のなかで歌詞が完成したのです。
 泣くのはいやだ。笑っちゃおう。井上ひさしにとっても、これはこれからも生きていくうえでの、人生のモットーだった。
 5年間の番組の脚本を書いたのは井上ひさしと山元護久。どちらも同時はまだ20代。二人がケンカすることなく共同執筆を続けたというのも、すごいです。遅筆堂で有名な井上ひさしですが、5年間、一度も空白をつくらなかったというのもすごいですね。井上ひさしは、実は大変な速読ができたようです。私も本を読むのは早いほうですが、はるかに上回る量と内容です。とてもかないません。
 そして、この二人には、どちらもカトリック施設育ちという共通項があったのでした。
 二人は、人形劇に対する不信感から、その限界を乗りこえようと、「せりふ」で勝負した。
 NHKで、この50年間でもっとも良かった番組の人気投票をしたら、『ひょうたん島』は『おしん』に次いで堂々の第二位だった。これまた、すごいですね。それほど、私たちの心に残っているのです。
 惜しむらくは、その放送がほとんど残っていないことです。当時はテープが高価だったため、上書きされていて保存されていないのです。本当に残念なことです。この本は、その良さを再確認する手がかりとなっています。
                           (2015年12月刊。1800円+税)

頂上決戦

カテゴリー:警察

(霧山昴)
著者  濱 嘉之 、 出版  文春文庫
  大学時代に過激派に所属していて、今では経済ヤクザをしているという人物が登場します。ありうる設定です。
ZⅡとは、元反社会的勢力の構成員を意味する符号。Zは反社会的勢力で、Ⅱがつくと「元」になる。
中国人がもっとも心配する中国国内の三大安全問題の第一が食品、第二が医療、第三が環境。
一般的な秘密文書はマル秘。角秘とは、秘密文書に押印される印の形が丸ではなく、正方形の中に「秘」の字が記されており、マル秘以上に秘密が求められる。
公安部にはキャリアとノンキャリアの二つの参事官がいる。公安部長は警視監、二人の参事官はその下の警視長。
警察庁のチヨダの研修とは、情報専科を意味する。1か月間の専科講習には、全国から30人が選抜され、全員が偽名で受講する。そのなかで行われる行動確認訓練(要するに尾行訓練)は、5人一組で1人のマル対(対象者)に対して行う。このマル対象は、警視庁公安部出身の警部が就くのが慣例。行確時間は6時間。
岡広組(山口組をさす?)は、世界のあらゆる犯罪組織のなかで最大の収益力を有する。麻薬密売や賭博などの非合法ビジネスだけでも、総収入は800億ドル9兆8000億円に達する。
Nシステム対策は進んでいる。レンタカーを一日契約で乗り回す。Nシステムは当日限りになってしまっている。そして、Nシステムのある道路と高速道路はなるべく使わないようにしている。
今や、警察もIT機器をかなり活用しているようです。当然のこととは思いますが、行き過ぎて、プライバシーの保護を侵害しないようにしてもらいたいものです。暴力団(たとえば山口組)が中国での市場開放策の実情を知って、そこに乗り出しているようです。それに反比例して、若者の海外留学が減っています。残念でなりません。山口組の分裂、中国人の爆買いの実態をも生々しく描いた警察小説でした。
(2016年1月刊。660円+税)

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