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2016年2月 の投稿

からだの不思議

カテゴリー:人間

(霧山昴)
著者  奈良 信雄 、 出版  中経文庫
人間のからだって、宇宙の仕組みと同じほど不思議だと思います。
新生児の骨は350以上ある。成長していくにつれ、骨は長く強固になり、くっついて一つの骨となるため、全体の骨の数は減る。
背骨は、横からみると直線ではなく、ゆるやかなS字カーブを描いている。このカーブのおかげで、人間は重たい頭を支え、重量を分散させながら上手にバランスをとって、まっすぐに立つことができる。
血液は骨のなかでつくられている。骨髄で血液の生成に関わる造血幹細胞がつくられている。骨が血液をつくっているなんて、不思議ですよね・・・。
成人では、1年で20%の骨が新しく入れ替わっている。つまり、5年で全身の骨が新しくなっている。これって年齢(とし)をとっても同じなんでしょうか。
顔の表情をつくるのは、表情筋。表情筋は、自分の意思で動かせる髄意筋だが、すべてが顔面神経の制御下にある。表情筋は筋肉なので、使えば使うだけ発達する。
表情の乏しい人がいますよね。子どものころ、大人からたくさん笑わされることがなかったんですよね。気の毒な幼年時代を過ごしたのだろうと、いつも私は同情しています。5人兄弟の末っ子である私は、姉や兄たちにたくさん面倒をみてもらって可愛がられたことを(記憶としては、まったくありませんが・・・)、いま、心から感謝しています。
左利きの人は、9人に1人。
鼻は、両方の孔(あな)を交互につかい、片方を休ませながら、効率よく呼吸している。
うひゃあ、知りませんでした・・・。
太っている人は舌が肥え、首がかたくなっているため気道を圧迫しやすく、大きないびきが出やすい。
胃の容量は、空腹時には50ミリリットル以下だが、食後には1.5リットル、詰め込むと2リットルにもなる。胃には栄養を吸収する機能はない。貯蔵し、消化し、殺菌するだけ。
胃に「別腹」があるというのは、脳内にオレキシンというホルモン物質が出ると、胃や腸の働きが活発になり、胃を満たしていた食べ物が腸に押し出されて、胃の中に少し隙間ができるということ。なーるほど、そういうことだったんですね・・・。
母親と胎児は血管がつながっているのではないので、血液型が異なっていても問題はない。胎盤が大きな役割を果たしているのです。
肝臓は、全体の80%を切除しても、数日中に再生が始まり、数ヶ月から1年で元の大きさに回復する。アルコールの過剰摂取は肝臓を弱めるようです。私がビールを飲むのをやめて久しいのは、もう酔っ払って時間をムダにしないためです。
身体のなかで「薬」をつくり出すとか、体内で発電するとか、身体の不思議はたくさんありますよね・・・。
  
(2014年2月刊。650円+税)

「14歳の兵士、ザザ」

カテゴリー:アフリカ

(霧山昴)
著者  大石 賢一、石川 森彦 、 出版  学研
 あまりマンガは読みませんが、これは考えさせてくれるマンガです。日本でマンガ原作者として生活している若者が飽き足らない思いをしているとき、アフリカへ赤十字の活動を見学に行って、現地ですさまじく悲惨な戦場を体験してしまうというストーリーです。
 基本的にはマンガを主体とした本なのですが、最後の2頁に、アフリカでの取材状況を撮った写真があり、マンガに描かれた状況が事実だということが確認できます。
 アフリカはコンゴ民主共和国が舞台です。昔々、アフリカの諸国が植民地から独立するとき、コンゴのルムンバ大統領がその一番手でした。ところが、アメリカのCIAに虐殺されたのでした。アフリカの利権をめぐっては、アメリカやヨーロッパの旧「宗主国」たちが依然として介入しているのが現実です。
 最近、リビアの内戦状況のニュースを読みましたが、外国軍の下手な介入が内戦を複雑化させて、平和の回復をかえって難しくしているとのことでした。国連の平和部隊と赤十字のような地道のような活動こそが今のアフリカには必要なのではないでしょうか・・・。
 それにしても、この本で焦点を当てているのは14歳の少年兵です。本当に残酷な現実です。少女はレイプされ、連行される。少年は幼いころからカラシニコフを持たされ、戦場で先頭に立たされるというのです。
 10代前半で人を殺すのを何とも思わない状況に置かれたら、その後の人生はどうなるでしょうか・・・。考えるだけでも、背筋がぞくぞくしてきて、震えが止まりません。
 今、私たちは現実から目をそらさないこと、武力に武力で対応しても何の解決にもならないことを自覚することではないかと思います。ご一読をおすすめします。
(2015年10月刊。1200円+税)

インカの世界を知る

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者  木村 秀雄・高野 潤 、 出版  岩波ジュニア新書
  日本人にとってマチュピチュは、フランスのモンサンミッシェルと同じく、一度は行ってみたいところですよね。私はモンサンミッシェルは行きましたが、マチュピチュはあきらめています。
インカには文字がない。インカの人々がどんな言葉を話していたのかも分かっていない
インカの王は、そのすべての領域に直接的な支配を及ぼしたわけではない。インカ王は、全土の多くの部分を間接的に支配したにすぎない。
インカは、敵対せずに服属することを約束した敵については、武力によって征服することはしなかった。しかし、あくまで抵抗した敵については、武力によって残酷に征服した。
 インカ時代の基礎的な原理は、力を中心に集中させ、その力を再び分配するというもの。それは、儀礼にも受け継がれている。
 インカは、乾燥寒冷地と言える高地のクスコに帝国の都を築いた。同意に、高峰に囲まれながらも湿潤で温暖な気候に包まれ、雲霧林が茂る峡谷の入り乱れる1000メートル級のビルカバンバ山中に、マチュピチュ、ビトコス、エスピリトウ、パンパ、チョケキラウという四つの「隠れ城」とも言える都市を築いていた。
 インカ道は、ジグザグに何度も折り曲げることによって勾配度をやわらげ、可能な限り階段を少なくしていた。
200頁もない新書版なのですが、豊富な写真によってインカ文明の素晴らしさ、すごさを味わうことが出来る本です。
(2015年11月刊。960円+税)

貧困大国ニッポンの課題

カテゴリー:社会

(霧山昴)
著者  橘 木  俊 詔 、 出版  人文書院
 アベノミクスだとか、一億総活躍社会だとか、上のほう(首相官邸)では浮かれたように言いつのる人たちがいます。でも、現実には、子ども食堂が、日本各地に必要になっています。子どもたちが、朝から満足に食事が出来ない、甘いお菓子で空きっ腹をごまかすなんて、苛酷な現実です。
 この本は、日本もアメリカと同じで、福祉国家なんて、とても言えない。貧困大国ニッポンという現実があり、貧富の格差はますます拡大しつつあることを実証しています。
 ただ、その解決策として消費税の増税に頼るという提言は素直にうなずけません。軍事優先の国家体制をそのままにしておいて消費税の税率をアップさせても、福祉にお金がまわってくるはずがないからです。
 日本は、アメリカと並んで非福祉国家とみなしてよい。
 二つの選択肢がある。一つは個人の自助を中心としたアメリカ流の自立主義。もう一つは国家が担い手としての役割を果たすヨーロッパ流の福祉国家。
 私は、もちろんヨーロッパ流が断然よいと思うのですが、日本人は、経営者層、指導者層、富裕層を先頭として一般市民においても自立主義を好む人が多い。うむむ、たしかにそうなんですよね。客観的には生活保護を受けたほうがいいレベルの人が保護を受けずに、保護を受けている人々を口汚く攻撃するという現実があります。
日本は、韓国と同じく、児童家族関係の給付が極端に低い。
 ヨーロッパで出生率が増加したのは、子ども手当としてかなりの額が支給されているから。日本でも、ぜひ実現したいものです。
 日本の貧困率は、ここ30年のあいだに12%から16%に増加している。貧困者が増えている。日本の相対的貧困率はアメリカに次いで高く、ヨーロッパやオーストラリアに比べて、かなり高い。65歳を過ぎた高齢者において、女性の貧困率が男性より5~10ポイントも高くなっている。母子世帯の60%が貧困家庭。
 生活保護を必要とする人に適切な支給がなされていないのが現実。受けるべき人の20%しか受けていない。
貧困で苦しむ地方や中小企業で働く人には、アベノミクスの恩恵は及んでいない。
フランスやイギリスの最低賃金は1200円ほどになっている。日本では、最低賃金の額でフルタイムで働いても、1ヶ月の生活費をまかなえるだけの月収にはならない。日本の最低賃金は低すぎる。これって、ホント、おかしいですよね・・・。
若者が結婚できないのは、若年層の低所得に大きな原因がある。
アメリカは特異な国である。公的な医療保険制度がなく、公的年金制度も発展していない。アメリカの貧困階級は病気になっても満足に医療を受けられないので、早死にしている。 
 日本がこれからも安定して生活できる国であるためには、まず教育にお金をかけ、教育費を無料にし、さらに医療・福祉にお金をつかうべきです。反対に、自衛隊などの軍事予算やアメリカ軍への「思いやり」支出をバッサリ削減すべきだと思います。
 「国を守る」だなんて言っても、なにより守るべきは国民生活なのです。
(2015年12月刊。1700円+税)

ナチスの楽園

カテゴリー:アメリカ

(霧山昴)
著者  エリック・リヒトブラウ 、 出版  新潮社
 アメリカって異常な国だと前から思っています。トランプの偏狭な思想に熱狂する人々があんなにいるなんて、正気の沙汰ではありません。
 この本は、第二次世界大戦のあと、ヒトラー・ドイツの高官だった連中が次々にアメリカに渡っていき、アメリカは反共の闘士として厚遇していたことを暴いています。
 強制収容所で囚人たちをさんざん苦しめたナチス党の関係者が風に乗ったタンポポの綿毛のように四方八方へと散らばっていった。そして、ヒトラーの手先となって、おぞましい犯罪を重ねていた連中が何千人も、何者にも邪魔されることなく、アメリカへ向かった。
 ナチスの協力者どころかヒトラー親衛隊SSの正式メンバーでさえも「戦時難民」としてアメリカに入国できた。アメリカの入管制度の裏をかいて偲び込むようにしてアメリカ入国を果たした元ナチスは数千人に及んだ。同時に、国防総省(ペンタゴン)やCIAなどの情報機関の高官たちの手引きによって入国した元ナチスが数百人もいた。彼らは、アメリカがソ連という脅威と対決するうえで役に立つと信じられていた。
パットンは、ユダヤ人は動物以下の存在であると高言していた。トルーマン大統領はユダヤ人を自宅に客として迎えることはなく、「ユダヤの餓鬼ども」とか「ユダ公」と言って愚弄していた。かの有名なパットン将軍がユダヤ人を人とも思っていなかったことを本書を読んで知り、がっかりしてしましました。
 元ナチスの連中は、ナチスの犠牲者になりすました。難民あるいは反ナチスのふりをした。イタリアで元ナチスの逃亡者たちを助けたのは、カトリック教会と赤十字だった。
FBIのフーバー長官にとっては、ナチスとしての過去よりも、現在の反共のほうが重要だった。
アメリカの暗い歴史を垣間見る思いがしました。今のトランプにつながる動きなのでしょうね・・・。
(2015年11月刊。2400円+税)

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