著者 紺野 仲右工門 、 出版 日本経済新聞出版社
死刑囚を収容するのは刑務所ではなく拘置所。拘置所の職員が死刑執行を担当する。死刑を宣告される被告人だから何も本人に言い分がないかというと、そうとは限らない。そして、確定した死刑囚となったとしても、親兄弟そして妻や子などの関係者はいる。
この本は、刑務所・拘置所の現場を知った人(元職員)によるものだけに、臨場感にあふれています。
それにしても、熊本や福岡が舞台になっているのには、驚かされました。
たしかに、熊本県北部を舞台として凶悪な殺人事件が起きたことがあり、犯人は死刑が宣告されて確定したと思います。
そして、大牟田市が登場し、福岡拘置所が舞台となるのです。博多拘置所として登場します。
大牟田弁、博多弁が出て来ますので、私にはとてもなじみやすい本でもありました。福岡県南部の暴力団抗争事件も背景事情として描かれていますが、実際、少なくとも十数人が抗争によって殺されたと思います。
拘置所や刑務所の職員の派閥抗争も問題となってますし、名古屋であったような刑務官による被収容者(囚人)暴行事件も登場します。
そして、職員が被収容者の秘密通信を手伝う行為があることも描かれています。このハト行為は、結局、発覚してしまうのですが・・・。
私も20年以上も前、福岡刑務所内で銃の密造事件が発覚したとき、刑務所内でひそかにタバコを吸っていたことがあるという体験を聞かされ、驚いたことがあります。
ともかく、とりわけ弁護士には読んでほしい本だと思いました。
(2015年2月刊。1600円+税)
2015年4月5日