著者 佐々木志穂美 、 出版 角川文庫
私はまだ読んでいませんが、著者は『さんさんさん―障害児3人子育て奮闘記』(新潮文庫)という本を前に刊行しているとのこと。その後編にあたる話だと思います。
我が子が生まれる前、親はいつだって五体満足に生まれてほしいと願うのは、いわば当然のことです。ところが、なんと生まれた子が三人そろって障害児だったのです。へこみますよね・・・。
それなのに、著者の筆力は、その暗さを感じさせません。さすがは母親の底力ですね。女は強し。母は、さらに一段と強い。そのことを実感させる本です。
三人の子は、いずれも先天性の障害があった。高機能自閉症。しかし次男は、私立高校の普通科進学コースに進み、企業に就職した。三男は、さらに重度の自閉症児だった。
自閉症児には、生活において配慮が必要である。長男が重度心身障害、二男が高機能自閉症、三男は知的な遅れもともなう自閉症。洋平は、長男気質で、とことん優しい。動けない。しゃべれない。次男は、愛情の受け方が不器用。三男は、天真爛漫だ。
自閉症というのは、発達障害の一種であり、特定のこだわりがあったり、社会性やコミュニケーション能力が弱かったりする。知的な遅れのほとんどない自閉症を高機能自閉症とい
う。うっかり否定語・禁止語を言うと大変なことになる。たとえば、「ジュース、買って」と言われてとき、「いま、ダメよ」と言ってはいけない。「あと一時間たったら買おうね」と言わなければならない。「困った子」は、その本人こそが「困っている子」なのだ。
次男は小学校の運動会のとき、ピストル型のスターターの音がダメなので、笛か電子音にしてもらっていた。それでも、中学校のときは、耳栓をしてがんばれた。高校では、耳栓もいらなかった。
私は、障害児の親になれて良かった。正確には、障害をもっていても、この子たちが我が子で良かった。この子たちの親になれて、うれしい。障害というものを通して、人が見ていない景色も見ている。うむむ、この境地には、なかなか達することができませんよね・・・。
障害者を障がい者と書くことが多い。「がい」は「碍」と書く。しかし、「害」の字は、この子たちの生きにくさを実感させる。だから、あえて、「がい」ではなく、「害」と書く。
この子たちを障害なく産んでやりたかった。でも、しょうがないじゃん。悩んで解決のつかないことは悩まない。
本当にそうなんですよね。私も下の娘が、突然、弱視になってしまい、進路の大幅変更を迫られてしまいました。まさしく、しょうがないじゃんです。本人のせいでも、親のせいでもないことは明らかなのですから・・・。ありのままを受け容れるしかありません。あとは、本人のがんばりと、親としてそれを支えるのみなのです。
家族、そして母と子を考えさせてくれる本でもありました。いじめにあったりもしますが、周囲にあたたかく見守る人が大勢いて、その心の熱さに、読んでいてうれしくなることも多い本です。
180頁ほどの文庫ですが、目を開かせてくれる思いがしました。
(2014年10月刊。480円+税)
2015年2月23日


