著者 小田島 雄志 、 出版 新日本出版社
井上ひさしの本は、それなりに読んでいますが、残念ながら劇はみたことがありません。
遅筆堂と自称していた井上ひさしの劇の台本は、きわめて完成度が高いことに定評があります。
著者は、井上ひさしの劇の初日に必ず行って、終了後にコメントするのが常だったそうです。すごいものです。
井上ひさしの劇は、ことばがコントロールされず勝手に飛び出してくる。その多彩さに、自由でムダな部分が面白い。
井上ひさしのことばのもつ遠心力のエネルギーには、ものすごいものがある。
ことばは、真実を掘り出すツルハシ。
ことばは、ボディーブローのように効く。
ことばは、常識を覆す。
ことばは、肩すかしを食らわせることができる。
ことばは、同音異義語で駄洒落ることがある。
ことばは、「死」と「笑い」を同居させることがある。
ことばは、ドラマティック・アイロニーを生むことがある。
ことばは、人間世界を俯瞰することができる。
ことばは、造語することができる。
ことばは、願い、誓い、呪いを短く強く発することができる。
ことばは、あらゆるものを対比・総合することができる。
井上ひさしは、思い切って「ことばの自由化」をやった。自由にことばの枠を広げたところから始め、近代劇の論理にとらわれないで、ことばが自由に飛び出た。
誰が演じても観るものを泣かせる芝居。それがすばらしい劇曲の証拠だ。
井上ひさしの本や劇をもっと読みたかった、観てみたかったと思いました。
井上ひさしも偉いけれど、この著者もすごいと思ったことでした。
(2014年5月刊。760円+税)
2014年11月30日


