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2013年12月 の投稿

宇宙になぜ我々が存在するのか

カテゴリー:宇宙

著者  村山 斉 、 出版  講談社ブルーバックス新書
この世のはじまり、広大・無限の宇宙が実は原始よりもはるかに小さかったというのです。信じられません・・・。
誕生した直後の宇宙は原子よりも17桁も小さかった。それをインフレーションで大きく引き伸ばして30桁以上も大きさになり、やっと3ミリの大きさになった。そこでビッグバンが起こり、宇宙のもっていたエネルギーが熱や光に変化し、宇宙は一気にあつくなり、ゆっくり大きくなっていった。宇宙は137億年もかけて少しずつ大きくなっていった。
宇宙が3キロメートルぐらいの大きさになったとき、粒子と反粒子のバランスが崩れた。宇宙に同じ数だけ出来ていた粒子と反粒子は、どこかで反粒子が粒子に変化したと考えられる。何ものかが10億分の1個だけ反粒子を粒子に変えたことで9億9999個の粒子は反粒子とぶつかって消滅しても、粒子は2個生き残り、星や銀河、そして人類へとつながっていくことになる。
さらに宇宙が1億キロメートルまで大きくなったところで、ビッグス粒子が凍りつく.宇宙がギュッと凍りついたおかげで、素粒子の世界に秩序が生まれ、多くの素粒子に質量が与えられるようになった。
このようにして始まった宇宙はゆっくりと膨張しているので、だんだん冷えていく。
 宇宙が100億キロメートルになると、消滅が止まり、生き残る数が決まる。これが今残っている暗黒物質だと考えられている。さらに宇宙が3000億キロメートルになると、クオークが強い力で閉じ込められて、陽子や中性子になる。中性子はすべてヘリウムの原子核に組み込まれている。宇宙が誕生して38万年後になると、落ち着き、1000万年光年ほどの大きさに落ち着く。まだ3000度Cあるが、原子核と電子がくっついている原子ができるようになる。
 暗黒物質の重力に引き寄せられて、原子が集まり、これが星になり、星がたくさん集まって銀河をつくる。宇宙で最初にできた元素は水素とヘリウム。星は人類の体のもとになる元素の製造マシーン。ただ、星の核融合によって出来るのは鉄まで。
 超新星爆発が鉄より重い元素をつくる原動力になる。超新星爆発は、新しい星の材料となるガスやチリを宇宙空間にばらまく。このばらまかれたガスやチリは、重力の重い場所に集まり、新しい星をつくる。地球は太陽をつくるために集まってきたガスやチリの一部でつくられている。その地球上で誕生した人類の体は、星のなかでつくられたものだから、まさしく人間の体は星屑でつくられていることになる。
 物質には反物質があり、両者が出会うと消滅するというのは、かつて私が読んだ、SF小説にありました。サイエンス・フィクションと思っていたら、こうやって学説として生きているのですね。そして、その小さな差が宇宙をつくっているというのです。そのとき、ニュートリノという小さな粒子が立派な働きをしています。
 ヒッグス粒子というのは、角砂糖ほどの空間に、10の50乗兆個もあるというのですから、なんのことやら想像を絶します。
 生まれたばかりの宇宙が原子よりはるかに小さいものだったというとき、その前は無だったというわけです。では、この広大無限の宇宙は無限に存在するというのでしょうか。
 地球も太陽も、そして銀河系宇宙も有限だということです。しかし、無限の存在があるのか・・・。気宇壮大なことがぎっしり詰まった、小さな新書でした。たまには宇宙の話を読んで気晴らししましょう。
(2013年1月刊。800円+税)

ノチョとヘイリ

カテゴリー:生物

著者  水口 博也 、 出版  シータス
北アメリカはバハマの海に暮らすイルカの母と娘をとらえた素晴らしい写真集です。
 天草に行くとイルカの群れに出会えるようですが、残念ながらまだ行っていません。でも、先日、鹿児島に行ったとき、水族館そばのイルカ運河で豪快なイルカ・ジャンプを目撃することができました。これは、私の個人ブログに写真を紹介していますので、ぜひ、ご覧ください。
 イルカって、本当に賢く、また、親子愛の強い、情愛たっぷりの哺乳類なんですよね。
  母イルカは、赤ちゃんイルカに向けてピュウピュウと澄んだ声で話しかけ、口やひれの先で赤ちゃんイルカをあやす。
 そして、この写真集によってイルカは成長するにつれて、体表面が変化してくることを知りました。身体の表面を見るだけで、およその年齢が分かるのです。
 赤ちゃんイルカの腹側は白い。そして、3歳をすぎるころから、おなかに小さな黒いまだら模様が少しずつ浮かびあがりはじめる。さらに成長すると、お腹の黒いまだらが増え、そして黒い背には白いまだら模様が浮かんできて、複雑な模様をつくり出す。
 だから、イルカの身体をみると、赤ん坊なのか、子どもなのか、また大人なのかがすぐに見分けられるのです。ちっとも知りませんでした。
海中をのびのびと泳いでいるイルカ、仲間同士で楽しく遊んでいるイルカの写真を見ていると、なんだか気持ちがほんわか、ゆったりした気分になってきます。
 とても素晴らしい水中写真をながめていて、うれしい気分に浸ることができました。撮影、お疲れさまです
(2013年5月刊。900円+税)

「裁判官の品格」

カテゴリー:司法

著者  池添 徳明 、 出版  現代人文社
裁判官13人が実名、似顔絵つきで紹介されている本です。
 私はこんな本がもっとあっていいと思います。裁判官については、三権分立の担い手として身分保障は必要ですが、もっともっと国民から厳しく批判されるべき存在だと思うからです。私も、弁護士生活40年になりますが、尊敬すべき裁判官が少なくないことを認めたうえで、すぐに辞めてほしいと思った裁判官が、その何倍もいる(いた)ことを隠すつもりもありません。威張りちらすばかりの裁判官、まったく当事者の主張に耳を傾けようとしない裁判官、こまかいことばかり気にして、大局観を忘れてしまっているとしか思えない裁判官が、世の中になんと多いことでしょうか。裁判官の6割は優柔不断で右顧左眄型だという元裁判官の指摘がありますが、私の実感もそのとおりです。
 二人目に登場してくる川口宰護判事は、今、福岡地裁の所長ですが、最高裁調査官もつとめたエリート・コースを歩んできた人です。
 福岡の弁護士のなかで、川口裁判長の評判は「意外なまでにとてもいい」。エリートにもかかわらず、きちんとした裁判をする。エリート裁判官にしては意外なくらい賢くて、事実認定もしっかりしている。情に流されたりしないけれど、かといって冷たくもない。
 強権的な訴訟指揮をすることはないし、ていねいで説得力のある判決を書くと評価されている。
大渕敏和判事(25期)については、厳しい評価が加えられています。
 東電OL殺人事件の公判中、居眠りが目立っていた。「この裁判長は、いつも居眠りしていた」と本に書かれている。
 小倉正三・元裁判官については、いつも威丈高で、横柄な言葉づかいと態度で被告人に接していたと評されています。この小倉裁判長の法廷にかかったら、もうダメだと、名前を聞いただけで、弁護士はみなあきらめてしまう。そう思わせる裁判官だった。
 そうそう。そんな裁判官が少なくないのが現実です。そして、当の裁判官本人は、少なくとも外見上は自信満々なのです・・・。
 優秀な裁判官ほど柔軟な訴訟指揮をする。できの悪い裁判官ほど強権的だ。強権的な裁判官は、実のところ自信がなくて気が弱い。
 とても面白い本です。裁判所の内情を知ることができます。
(2013年11月刊。1700円+税)
  今日は私の誕生日です。赤穂浪士の打ち入りの日と同じです。年金支給の通知が来ました。まだ頭の中は30代の気分ですが、頭髪は白っぽくなりましたし、肉体的にはやっぱり60代なのかなあと思わせます。
 でも毎朝NHKのラジオ講座を聴いてフランス語を勉強していると、大学生の気分に一瞬戻ることができます。また、学生生活、寮生活、セツルメント活動を素材とした小説に再挑戦してみたいなという思いもあって、まだまだ学生気分も脱けきれません。というか、その気分にいつまでも浸っていたいという思いが募ります。
 まあ、これが私の若さの秘訣だと思います。
 今年はヒミツ保護法やら国防軍構想などで忙しく飛びまわっていましたので、読んだ本も例年より多く、600冊をこえました。引き続き、この書評を続けていくつもりです。ぜひ、今後ともお読みください。

憲法が変わっても戦争にならない?

カテゴリー:司法

著者  高橋 哲哉・斎藤 貴男 、 出版  ちくま文庫
アメリカは世界中で支出されている軍事費の半分(年に50兆円)をたった一国で支出している、異常なまでの超軍事大国である。
 日本の自衛隊は、人員でも、艦艇・航空機でも、ヨーロッパ軍事大国に比べて小さいどころか、ずいぶん大きな存在である。
 今でも十分に自衛隊をコントロールできていないのに、憲法を改正してしまったら、ますますコントロールできなくなる。
 自衛隊が軍隊(国防軍)になったら、自主性が増すどころか、ますますアメリカの手駒として、アメリカ軍の負担軽減のために、どんな任務につかされるか分からない。
 日本の安全にとっては、いかに「脅威」をつくらないか、いかにして日本に攻めてくる国をつくらないか、逆に、その国にとって日本が大切な存在になるかが大切で、そのための外交努力こそが求められている。
北朝鮮をやぶれかぶれに追い込まない。もし北朝鮮が爆発してしまったら、北朝鮮だけでなく、韓国も日本も破滅に陥ってしまう。
 デンマークの陸軍大将だった人が「戦争絶滅うけあい法案」というのを20世紀の初めに発表した。戦争が始まったら、10時間以内に、まず次の者を最下級の兵卒として召集し、最前線に送り込む。
 第1に、国家の元首。
 第2に、国家元首の男性親族で、16歳以上の者
 第3に、総理大臣以下の大臣。そして官僚のトップ。
 第4に、国会議員。ただし、戦争に反対した者は除く。
 そうですよね。いいアイデアです。戦争になったら、国家元首をはじめとする権力者、支配者は戦場に行かず、うしろの安全なところにいて、国全体に命令を発する。
 「愛する人のために戦う」といっても、実は、国家が発動した戦争にただ動員されていくしかない状況になってしまう。
 そして、戦争に行けば、また、その人を銃後で支えると、愛する人とともに、自分が加害者になってしまう。
 憲法改正というのは、戦争をしかける国にするということです。そんな怖い話に、うかう乗せられないようにしたいものです。
(2013年7月刊。740円+税)

「無罪」を見抜く

カテゴリー:司法

著者  木谷 明 、 出版  岩波書店
目の覚めるほどの面白さです。読み出したら止まりません。いやあ、よくぞ、ここまで裁判所の内情を思う存分に語ってくれたものです。その勇気に心から敬意を表します。
 無罪を見抜く極意は?
 被告人に十分、弁解させることが大事だ。弁解を一笑に付さないで、「本当は被告人の言っているとおりなのではないか」という観点から検事の提出した証拠を厳しく見て、疑問があれば徹底的に事実を調べること。これに尽きる。
 そうやって、著者は、いくつもの事件で無罪判決を書き、そのほとんどが検事控訴されることなく確定しています。これって、とてもすごいことです。
私の同期である金井清吉弁護士(東京)の書いた上告趣意書がよく書かれていて、驚いたという話も出てきます。
まだ弁護士になって数年目。国選弁護人として書いたものだが、問題点が鋭く指摘され、大変な説得力があった。
鹿児島の夫婦殺し事件で無罪になった事件です。最高裁の調査官として著者が担当したのでした。
 最高裁のなかの合議の実情も、かなり具体的に紹介されていて、興味深いものがあります。著者の書いた報告書を上席調査官が頭越しに批判して、結果がねじ曲げられたことも暴露しています。やっぱり、そういうことがあるのですね。
弁護士出身の裁判官については、とても批判的です。
 審議でほとんど発言しない。弁護士なのに、被告人に利益な方向で意見を述べることがない。ただし、最近の弁護士出身の判事は、昔と比べると、しっかり発言している。
 最高裁の裁判官のなかにも、全然重みがなく、ともかく威張っていて、他の裁判官の口を封じてしまう人もいた。これは、地裁も高裁も同じです。
 最高裁の調査官になる前、札幌時代には平賀書簡問題に直面しています。
 平賀所長が福島裁判長に担当事件の記録を読んでないように干渉しようとしたという事件です。著者は、所長を厳重注意するという結論を出した裁判官会議で相当がんばったようです。ところが、国会は平賀所長はとがめず、書簡を公表した福島裁判官の方をむしろとがめたのでした。本当におかしな話です。まるでアベコベです。
 この事件は「青法協いじめ」の幕開けになった。そして、裁判所にあった自由闊達な雰囲気が萎縮していくことになった・・・。
 著者は取調の全過程を録画するのに賛成です。
これまで取調は、英語でインテロゲーション(尋問)と言っていたけれど、今やインタビューだとされている。
 これは、私は恥ずかしながら知りませんでした。
 無罪判決を次々に出していると、警察がなんだかんだと言ってきた。
 これは、たまりませんよね。警察官が裁判官室に面会を求めてくる。表面的には強談ではなく、丁寧な態度だけれど、魂胆は見え見えだ。面倒くさくなるし、こんなことで軋轢を起こさないでおこうという気にさせる。
 裁判官には三つのタイプがいる。3割は迷信型。捜査官はウソをつかない、被告人はウソをつくと頭からそういう考えにこり固まっていて、そう思い込んでいる。6割強は、優柔不断・右顧左眄型。こんな判決をしたら物笑いになるのではないか。上級審の評判が悪くなるのではないか。警察・検察官からひどいことを言われるのではないかと気にして、決断できずに検察官のいう通りにしてしまう。残る1割が、熟慮断行型。「疑わしきは罰せず」の原則に忠実に、そして自分の考えでやる。
 冤罪は本当に数限りなくあると考えられる。刑務所の中には冤罪者がいっぱいいると思わないといけない。
やっぱり、ここまで内情を書いてくれる人がいないといけません。裁判所改革が遅れていることを実感させてくれる本でもありました。
(2013年11月刊。2900円+税)

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