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2013年12月 の投稿

甲斐姫物語

カテゴリー:日本史(戦国)

著者  山名 美和子 、 出版  鳳書院
今から5年前、『のぼうの城』(和田竜。小学館)を読んだとき、これって完全にフィクションだと思いました。話が面白すぎたからです。ところが、実は、歴史的に有名な攻防戦のフィクションとして再現したものだと知って腰が抜けるほど、驚いてしまいました。
 『のぼうの城』の巻末の参考文献として、『行田市史』や『成田記』など、たくさんの本が並んでいることからも、単なるフィクションではなく、一定の史実にもとづいた本だということが分かります。そして、この本は、『のぼうの城』よりも、ぐっと味わい深いものがあります。
 なにしろ、主人公は、城主の娘、そして、その跡取りとして武芸にも優れている若き女性なのです。これで話が面白くないわけがありません。
 忍(おし)城をわずか300人ほどで守る。敵は秀吉軍。石田三成を大将とする3万人の軍勢。守れるはずがありません。ところが、地の利を得て、城下の百姓のたすけもあって、ついに守り通すのです。
 ここらは『のぼうの城』と同じで、知略を尽くすのです。ちょっと違うのは籠城する将兵の仲間割れをいかに防ぐかという難局を乗り切ったところです。戦国時代の戦いで活用されたのが、この仲間割れ作戦でした。武将同士に不和があることを聞きつけると、そこに乗じて餌をちらつかせて寝返りを誘うのです。常套手段でした。それにしても、小田原城に立てこもった北条勢が陥落したあとまで、ちっぽけな忍城を守り抜いたのですから、すごいものです。これは史実なのです。
 石田三成の「水攻め」にあっても陥落しなかったのでした。そして、甲斐姫は落城後、蒲生(がもう)氏郷(うじさと)の配下になります。そして、ついには秀吉の下に召されていくのでした。
歴史的な事実と、どの程度あっているのかは、恥ずかしながら知りませんが、物語としてとてもよくできていると感嘆しつつ、二日間で読み通しました。著者略歴によると、たくさん歴史書をものにしておられることを知りました。
 軽やかで、巧みな心理描写に、感情移入がスムーズに出来て、すっと読み通すことができました。ありがとうございます。
(2013年10月刊。1600円+税)

ガガーリン

カテゴリー:ヨーロッパ

著者  ジェイミー・ドーラン、ピアーズ・ビゾニー 、 出版  河出書房新社
1961年3月12日、ソ連の宇宙飛行士ガガーリン少佐は初めて地球の大気圏を離れ、無事に地球に帰還しました。
 私は小学生だったでしょうか・・・。ともかく、ガガーリン少佐の名前は、はっきり記憶しています。なにしろ、アメリカより早かったのです。ケネディ大統領はソ連に先をこされた悔しさで、この日は眠れなかったとのことです。
この本は、ガガーリンの生い立ち、そして宇宙飛行に成功し、その後、34歳の若さで飛行機事故で亡くなるまでを明らかにしています。とても読みごたえのある本でした。
 ガガーリンは、戦前の1934年3月生まれ。ドイツ軍のバルバロッサ作戦でソ連が攻めこまれたとき、ガガーリンの住む村もドイツ軍に占領されたのでした。スターリンの致命的な誤りによる悲劇です。
 農民の子、ガガーリンは、戦争が終わったあと、技術学校に入り、飛行訓練学校に入った。そして、秘密のうちに面接試験を受け、1960年1月に設立された宇宙飛行士訓練センターに入ったのです。
 大変な試練のときでした。たとえば、隔離部屋に入れられて監視者のほか会話ができず、本も雑誌もない生活を過ごすのです。目的を告げられずに、そんな生活を10日もしたら、頭が変になってしまうでしょう。
 この実験(テスト)の目的は、宇宙船での退屈で寂しい生活にどれだけ耐えられるかというのを見るものでした。ええーっ・・・、ひどい実験(テスト)ですね。
 宇宙船は、常に地球上空の同じ場所を飛ぶわけではない。だから、地球に帰還したとき、カプセルが船に落ちたり、外国領内に落下する恐れが十分にある。
このころの宇宙飛行士は、脱出シートのサイズの都合上、身長の低いほうが有利だった。
 宇宙服を明るい色にしたのは、雪原に降りたったときにも、見つけられやすいようにしたため。
ケネディ大統領は、ソ連が宇宙飛行士を打ち上げるのを知らないふりをしていたが、実はよく知っていた。しかし、宇宙への打ち上げが成功したあとのアメリカ政府スポークスマンは、次のように叫んだ。
 「いま、みんな寝てるんだよ。まったく、いったいなんだ!」
 ケネディ大統領は、宇宙分野を重視していなかったが、世界の反応をみて、考え直した。
 この3日後、ケネディは、キューバのピッグス湾への侵攻作戦の失敗も聞かされた。
 ソ連の宇宙ロケットの誕生いきさつとガガーリン少佐の個人的体験記の双方がミックスされて、大変読みやすくなっていると思いました。
(2013年7月刊。2400円+税)

スズメ

カテゴリー:生物

著者  三上 修 、 出版  岩波科学ライブラリー
わが家にもスズメが住みついていますが、前より少なくなった気がします。日本全体でスズメが減っているという記事を読むと、なんだか不安になります。
 スズメは身近でいて、よく知られていない鳥だと思います。
スズメは人のそばが好き。人のいるところでばかり子育てをする。過疎化で人がいなくなると、スズメも姿を消してしまう。タカ、ヘビ、イタチなどの天敵を避けるため・・・。
 スズメは人が嫌い。スズメは人を警戒し、一定の距離をとろうとする。スズメは人に巣を見られることを極端に嫌う。
 スズメは、とても高い密度で繁殖する。スズメは、縄張りをもたない。
 スズメは1日に1卵ずつ産んでいくが、最後に産んだ卵は薄い色をしている。止め卵と呼ぶスズメの祖先は恐竜の仲間。そして、スズメの祖先はアフリカに生まれた。
 スズメの幼鳥は長距離移動する。新潟から岡山まで600キロも移動したスズメが発見された。
 スズメの寿命は自然の下で最長6年。飼育下で15年。
こんなに身近なスズメですが、分かっていないことだらけの不思議な鳥なのです。
(2013年11月刊。1500円+税)

死ぬまでに行きたい、世界の絶景

カテゴリー:社会

著者  詩歩 、 出版  三才ブックス
世界には、こんなに不思議な場所があるんですね。思わずため息の出る写真が満載の本でした。
 きわめつけを三つ紹介します。まずは、なんといってもイタリアのランペドゥーザ島です。なにしろ、なんとも不思議な写真です。水のなかに、というか、船が空中に浮いているとしか見えない写真があります。
 地中海に浮かぶ、小さなリゾート島。海水の透明度が高いため、海面を走るボートが空中に浮いているようにしか見えない。これは、どう見ても不思議です。
 その二は、トルクメニスタンのダルヴァザ、地獄の門。40年以上も燃え続けている巨大な洞窟。地下に豊富な天然ガスがあるため、消火することができない。
 不思議な写真です。40年も燃え続けているなんて、信じられませんよね。
 三つ目は、ノルウェーのトロルの舌。1000メートルの高さに、薄い岩盤がペロリと伸びて突き出しています。今にも折れてしまいそうな岩場の上で、人間が飛び跳ねているのです。怖いです。
 行ってみたいところには、日本もいくつか紹介されていて、北九州にもあるのです。河内藤園です。北海道の雲海もすごいです。
 あちこち、元気なうちに見てまわりたいものですよね。
(2013年11月刊。1300円+税)

天、共に在り

カテゴリー:ヨーロッパ

著者  中村 哲 、 出版  NHK出版
アフガニスタンで30年がんばっている著者の話を読むと、心が震える思いがします。
 日本の自衛隊をアフガニスタンへ派遣するなんて有害無益だ。
 著者が国会でこのように述べたとき、自民党の議員たちは野次を飛ばし、著者に対して発言の撤回を求めたそうです。とんでもない議員たちです。なんでも軍事力で解決できると思い込んでいるのですから怖いです。
 中村哲氏は医師としてアフガニスタンへ渡り、医療を施しているうちに、まずは清潔な水が必要。それさえあれば病気の子どもたちの多くは助かると気づいたのでした。そして、大人たちが村を出ていくのは、農業が出来ないから。それでは、井戸を掘り、また用水路をひっぱってこよう。すごいですね。発想しただけでなく、行動に移したのです。写真がありますので、井戸そして用水路のある前と現在の比較が出来ます。
 荒涼たる砂漠が、緑したたる平野に変わっているのを見ると、つい涙が出てしまいます。もらい涙というか、うれし涙です・・・。
 アフガニスタンの人口は2000万人とも2400万人とも言われるが、正確な数字は不明。農民が8割以上、遊牧民が1割。
 幼児が餓死していく。空腹で死ぬのではない。食べ物不足で栄養失調となり、抵抗力が落ちる。そこに汚水を口にして下痢症などの腸感染症にかかり、簡単に落命する。病気のほとんどが十分な食糧と清潔な飲料水さえあれば防げるものだった。
 マルワリード用水路の総工費14億円は、すべてペルシャワール会に寄せられた会費と募金によってまかなわれた。すごいですね。日本人の善意がアフガニスタンの荒野を緑したたる平野にして、農業そして生活と健康をもたらしているのです。
 なにしろ長さ5キロメートルに砂防林だけで20万本の木を植林したといいます。
 写真が壮観です。
ドクター・サブ(お医者様)として、著者の安全は地元住民が最大限の保護をしています。それでも、アメリカ軍の「誤爆」など、危ない目にもあわれたことでしょう。本当に応援したい活動です。著者の自宅は大牟田市にあります。筑後川の堰づくりが活かされているのを知って、うれしくなります。
(2013年11月刊。1600円+税)
 今年は激動の年でした。日本国憲法が本当に危うい状況です。なりふりかまわず戦争する国へ変えようとする安倍政権の執念は恐ろしいばかりです。でも、それに抗する力も大きくなっているように思います。
 日弁連でも憲法問題対策本部をたちあげて本腰を入れて取り組む体制がつくられようとしています。私も及ばずながら全力を挙げるつもりです。
 この1年のご愛読に感謝しつつ、新年も引き続きお読みいただくようお願いします。
 新年がよい年であることを願っています。

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