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2011年10月 の投稿

婚活したらすごかった

カテゴリー:社会

著者  石神  賢介    、 出版  新潮新書   
結婚願望があるのに結婚できない男性、そして女性が伴侶を見つけるのがいかに難しいことか、この本を読むと実感として分かります。
 2010年から、50歳未満の男性の8割が年収400万未満。結婚しても夫の収入だけでは子どもを育てるのが難しい時代。夫婦二人で毎日働いて、やっと子ども一人を育てられる。家族をつくることに夢を持ちづらくなり、男性も女性も結婚願望はありながらも、よほど魅力を感じる相手でない限りは結婚に踏み切らない。
 ネット婚活は、インターネットのサイトを通して男女が知り合うサービスだ。サイト上にプロフィールを掲載し、連絡もサイトを経由して行う。このサービスは、忙しい男女に向いている。
 婚活サイトは、どこも人間と会話をせずに申し込みができるので、ネットショッピングで本や雑貨を購入するときに近い感覚で申し込める。婚活パーティーにくらべてプライドが傷つかないというメリットがある。
女性は収入を重視している。男はとにかく年収が高ければ人気がある。
 海外駐在、もしくは海外駐在の可能性がある男性は人気が高い。女性は外国好き。
ほとんどの男性は女性の収入を気にしない。その大切な条件はなにより容姿だ。また、若い女性が好き。
 婚活サイトによっては、写真掲載にはよく考えられたシステムがある。自分が顔写真をのせたら、異性のプロフィールの写真を見れる。自分がのせないと、相手の顔も見れない。
 ネット婚活で会えるところまでたどり着くのは5人に1人くらい。
食事をしたら、自分と会うかどうかはだいたい分かる。チェックポイントは、食べ方が下品ではないか、お金の支払い方がきれいか、一緒にいるときお互い自然に会話がかわせるか、そして婚活サイトで真剣に結婚相手を見つけようとしているか、など。なーるほど、そうですよね。
 婚活パーティーの多くは、2時間の枠がある。ほとんどのパーティー会社は原則として途中帰宅を許さない。まず、一人と話す時間は2分間。ええっ、短すぎでしょ・・・・。
 男はメモをとるスキルが著しく低い。まるで回転寿司のよう。女性は回ってくるネタを選ぶ客。男は選ばれるのを期待してまわるネタ。時間とともに鮮度が失われていく。むふっ・・・・。
 会費が安いパーティーは、安いなりの男女が集まる。タダだから参加しようと言う人は絶対的に真剣度が低い。会費が高いほうが安心感がある。それでも婚活パーティーの質は向上している。それは、婚活パーティーが乱立した90年代から10年たって、質の悪い会社や費用対効果の低い会社は淘汰されたことによる。
 周囲の目を気にせず、婚活ができる世の中になった。切迫した結婚難が、婚活パーティーの現場の充実につながった。
 婚活パーティーは、ネット婚活と比べると幅広い年齢の女性と知り合える。
 著者の体験によると、若い女性のほうが素直で、年齢を重ねるごとに扱いが難しくなる。
 日常のなかの出会いであっても、婚活パーティーであっても、ネットであってもベッドの関係までいかなくては、結婚まで到達できない。そのプロセスを省いて結婚の判断をすると、その後に予想外の何かで苦しい思いをする心配がある。なーるほど、それはそういうこともあるでしょうね。結婚したら、毎日の生活をともにするわけですからね。
婚活パーティーでうまくいくようになると、日常生活での男女の関係のスキルも上がることになる。
 結婚相談所は、たとえば会費は1年目30万円、2年目からも同額だが、2年目からは途中で退会すると、月割りで返還される。ふむふむ、これって合理的なシステムなのでしょうね。
 会員同士で結婚すると、20万円の成婚料が必要だ。
女性会員のほとんどは迷うのに対して、男性は即決することが多い。
 結婚するための三つのポイント。第一に、歩み寄ること。自分の理想とする相手は存在しないという前提で女性と向きあう。第二に、今からでも遅くないことを信じて、自分の商品価値を上げること。たたかえない男に、女性は本能的に興味をもたない。第三に、自分に合った婚活のツールを利用する。
 婚活の実際、その現場の様子がよく分かりました。著者にエールを送りたいと思います。がんばれ、くじけないで・・・・。
 
(2011年9月刊。700円+税)

福島第一原発事故を検証する

カテゴリー:社会

著者   桜井 淳 、 出版   日本評論社
 原子炉建屋の破壊度は尋常ではない。原子炉建屋は、きわめて堅牢につくられている。普通の商業ビルとちがって壁が厚く、鉄筋コンクリートで50センチはある。非常に強固・頑丈なもので、外部から小型ミサイルを撃ち込まれても大丈夫なくらいの強度をもたせている。めったなことでは側壁がすべてきれいに吹き飛ばされるなんて起きるはずがない。それが起きたのは、なぜか?
 周辺のあれだけ厚い壁を全部吹き飛ばす水素の量は、ざっと推定すると、炉心全体でジルカロイと水蒸気の反応が発生してほぼ炉心全体が溶融するような現象が起こらない限りありえない。
 政府首脳は事実を知っていたけれど、国民の様子を見ながら、徐々に情報を出していった。事実を全部いってしまうと社会がパニックに陥ってしまう。そう考えた、きわめて政治的な対応だった。
 日本の原発の第一の特徴は、一つの発電所敷地内に多くの原子炉が設置されていること。なるほど、そうですよね。だから、大きな地震にあうと、連鎖的な大事故に陥る危険性を内包している。
 福島第一原発の事故は天災ではなく、人災である、このように断言する。
 日本では、非常用ディーゼル発電機に絶対的な信頼性をおいている。そして、これを安全性のテーマにすることを意識的に回避してきた。
日本には、個々の機器の信頼性を評価できる専門家は存在するものの、発電所全体の配置や階層別機器などシステム全体の信頼を的確に評価できる専門家が一人もいない。安全審査では、そのような評価が欠落していた。安全審査が的確に実施されていたならば、福島第一原発の事故は、たとえ地震や津波の影響を受けても、発生しなかったと判断できる。福島第一原発の事故は安全審査の欠陥によってもたらされたもの。よって天災ではなく、人災である。
 軽水炉の設計寿命である40年をこえて運転している日本原電。敦賀原発1号機と関西電力・美浜原発1号機は、即刻、運転停止・廃炉にすべきである。
 さらに、1970年代に運転開始した第一世代の軽水炉は、すべて段階的に停止・廃炉にすべきである。まったく同感です。一刻も早く、子どもたちを守り、私たちみんなが安心して住める日本を回復しましょう。「今のところ放射能被害の心配はない」なんて大嘘ついて国民を欺し続けるのは即刻やめてほしいものです。
(2010年7月20日刊。1400円+税)
 このところ相次いで心が震えるほどの素晴らしい歌唱に接することが出来ました。まずは高松でのオペラです。残念ながらイタリア語なので歌詞は聞きとれませんでしたが、その声量に圧倒される思いで聞き入りました。次は、東京で混声合唱です。「わが大地のうた」など、心にしみる歌でした。福島第一原発の事故によって故郷に住めなくなった人々の思いに通じつものでもありました。
 福島から佐賀に避難してきた人の話を聞く機会がありました。「裏切り者」みたいに言われたりしたそうです。でも、5か月の子どものために逃げ出したとのこと。福島では放射能の危険を言うと、風評被害を増やすような受けとめ方もあるということを聞き、本当に世の中は難しいものだと思いました。

ツノゼミ

カテゴリー:生物

著者  丸山  宗利    、 出版  幻冬社   
 ありえない虫。こんなサブタイトルがついています。まさに、ありえない、奇妙奇天列な姿と形、色模様です。こんな虫が私たちの身近にたくさんいるなんて信じられません。でも、実際にたくさんいるというのです。だけど気がつきませんよね。なぜ・・・・?
 その秘密は、体調がわずか数ミリとごく小さいからです。でも、なんという形をしているのでしょう。カブトムシの頭に似ていて、そこから垂直に角が立ち上がったのは分かるとして、そこで4つのこぶがくっつくと、こりゃあ、一体何のため・・・・?不思議です。カサホネツノゼミとなると、丸いこぶの代わりに、日傘の骨みたいなツノが伸びています。
 ウツセミツノゼミは、透明なセミのぬけ殻(空蝉、うつせみ)そのものです。
ツノゼミは名前にセミとつくけれど、セミとは異なるグループの昆虫。大きさは1センチに満たず、だいたい2~25ミリほど。あまりに小さいため、人間の世界では見過ごされやすい。肉眼ではなく、ルーペで拡大してみて、はじめて、そのユニークさが見えてくる。
 正面からみたツノゼミの顔がまたなんとも奇妙な色と形、模様をしています。まるで、戦国武将のヨロイ・カブトのオンパレードです。
ハチマガイツノゼミは、背中のツノがハチそっくりになっている。ツノゼミは、一生を植物の上で過ごす。植物の芽やとげに似せている色や形のものが多い。また、ハチなどの危険な生きものに似せているもの、芋虫のふん、果ては昆虫の脱皮したぬけ殻まで、食べてもおいしくないものになり切っているものも多い。
 ツノゼミは植物の汁を吸って生きている。植物の汁には糖分が多く含まれているので、余った分は水と一緒に対外へ出す。ツノゼミは甘いおしっこをする。アリにとって、このツノゼミが出す甘い露はとても魅力的。1匹のツノゼミに40~50匹のアリが押し寄せてくることもある。
 アリは甘露をもらう代わりにツノゼミの護衛を引き受けている。アリはツノゼミを危険から守ろうと努力する。アリとは持ちつ持たれつの関係にあるのですね。
ツノゼミはオスとメスの交尾時間は長く、数十時間に及ぶことがある。このとき、オスとメスは何らかの交信をしていると考えられている。愛のささやき、ですね。
 そして、子育ては母親の役目です。卵を狙う敵を寄せつけません。ツノゼミの寿命は長くて3ヶ月。
 一読、一見の価値ある写真集ですよ。世界がグーンと広がります。
(2011年6月刊。1300円+税)
 朝、雨戸を開けると一番に目につくのは白っぽいクリーム色で、丸っこい可愛いらしい花を咲かせているシューメイギク(秋明菊)です。そのそばには、紫色の斑入りの不如帰(ほととぎす)の花が、ひっそり咲いています。
 フヨウ(芙蓉)の花は咲き終わって、ある意味のように丸まっています。そのかわりがエンゼルトランペットです。黄色いトランペットの花をたくさんぶら下げています。
 キンモクセイの芳香のなか、モズの甲高い鳴き声を聞きながら、チューリップの球根を植えつけました。

天網恢々

カテゴリー:日本史(江戸)

著者  林 望    、 出版   光文社
 リンボー先生の小説を読むのは、『薩摩スチューデント、西へ』に次いで、これが2冊目です。もちろん、エッセイ集はいくつも読んでいます。私とほとんど同世代のわけですが、エッセイだけでなく、こうやって小説まで立派に書きあげるとは、まことにうらやましい限りです。
 ときは江戸。主人公は江戸町奉行という重職にある根岸肥前守鎮衛(やすもり)。江戸市中に起きる、さまざまな出来事、そして風説を書きつけていったことで史上有名な人物です。
 そして、この鎮衛、150俵扶持(ぶち)の三男から、とんとん拍子に出世していきます。佐渡奉行からついには江戸の南町奉行にまで昇進した。当代きっての出頭人(しゅっとうにん)である。諸国の珍説綺談を話す人々が寄り集まってきて、それを楽しく聞いて記録した。大耳の持ち主から、耳の九郎左衛門、つづめて耳九郎(みみくろう)の旦那と呼ばれて親しまれていた。
 不義密通から主人を毒殺しようとする番頭。中間奉公の身で100両を手にしたときふと魔がさして持ち逃げを考えたが思いとどまったところ、その100両がすりとられてしまった話・・・・。
 落語の世界、人情話を聞かされている気分になって、ついつい作中のワールドに引きずりこまれてしまいました。うん、うまい。リンボー先生に座布団5枚。
(2011年8月刊。1600円+税)

救える死

カテゴリー:社会

著者  天笠  崇       、 出版  新日本出版社 
 日本では自殺者3万人を時代が続いている。あと2年もすれば、累計で45万人となる。これは大都市1個分に相当する人口が消滅したことを意味する。もう少しすると、鳥取県一つが消滅するに等しい人口である。この13年間に、3000人に1人の日本人が自殺で命を落としている。交通事故による死者は年間4812人(2010年)なのでその7倍に近い。これって、本当に大変なことですよね。東京マラソンの参加者は3万人だそうですが、その光景をビデオで見ながら、3万人というのはすごい人数だと思ったことでした。
自殺者3万人の前半は中高年齢層の増加が目立った。最近では、30代を中心とした若年層へシフトしてきている。これは、うつ病をふくむ気分感情障害の患者数の推移と一致している。毎年決算期の3月に自死者数が多い。また、10月も増加している。
男性の自死者数が全体の7割をこえる。20代、30代の男性で上昇しているが、とくに20代の上昇が大きい。65歳以上では、男女とも自死死亡率が減少している。40代、50代の男性の自死の原因は、経済・生活問題がもっとも多い。
 自死は、15~39歳の死因の第一位。20~24歳では死因の半数を占める。場所は自宅が最多。月初や月末。連休明け、月曜日に多い。男性は6時台、5時台が多く、女性は12時台、15時台が多い。
競争、競争をあおる昨今の日本の風潮は自死を促す大きなストレス要因になっていると思います。その意味で大阪の橋下知事の相変わらずの強権的な言動は責任重大です。もっとゆったり、心安らかに生活できるようにするのが政治のつとめではありませんか。競争にうち勝つ教育を子どもたちに押しつけるなんて、最悪・最低の府知事と思います。弱い子、ハンディを持つ子どもは生きる資格がないと橋下知事は考えているのでしょうか。そんな弱者切り捨ての政治こそすぐにやめさせるべきだと思います。
もっと生活にゆとりのある、心やさしい社会を目ざしましようよ。
(2011年8月刊。1500円+税)

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