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2011年2月 の投稿

クマチカ昆虫記

カテゴリー:生物

著者 熊田 千佳慕 、 求龍堂  出版 
 
絵本ファーブル昆虫記のための勉強帖というサブ・タイトルのついた楽しい昆虫記です。地道な虫の勉強が支えた驚異的な細密画だと紹介されていましが、単に細かいところまで描けているというのではありません。生命力を感じさせる躍動感が絵から見事に感じ取れるのです。ぜひぜひ、実物を手にとって眺めてみてください。
 それにしても、ここに紹介されている昆虫のさまざまな生態もまた驚異的です。大自然のなせる技は、神秘的としか言いようがありません。それを観察し、文章にした著者も、普ファーブル同様、偉いものです。
 ミツカドセンチコガネ(糞虫)は、春のはじめか秋の終わりころ、メスが場所をえらんで巣づくりをはじめる。ある程度まで巣穴が掘れたころ、オスが訪ねてくる。二匹も三匹も。メスは、その中からオスをえらぶ。そして長いあいだ共に生活する。
 キンイロオサムシは、結婚が終わると、メスがオスを食べる。メスはオスより少し大きい。オスは抵抗もしないでメスに食べられる。ええーっ、なんということでしょう。カマキリのオスはなんとか逃げ出しているようなのですが・・・・。
 ベッコウバチは、クモ狩りがとてもうまい。はじめにクモを怒らせて、その前足をあげさせ、ひらいた毒のキバとキバのあいだにさっと飛び込み、毒針を刺して相手をしとめる。このやり方で、自分の何倍もあるクモをしとめる。いやはや、すごい狩りですね。
 ミツバチハナスガリの母バチは、自分の食事としてはミツバチを殺し、そのミツを吸いとってしまい、ミツバチは捨てる。タマゴは死んだミツバチの胸に産みつける。ミツは幼虫にとって生命とりになる。だから母バチは狩りのとき、ミツバチからミツを全部抜きとってしまう。ハチの仲間はみな花のミツを舐めて生きているが、このハチは、自分の食事のために生き餌を漁る。ミツも舐めるが、生き血も吸う。なんとなんと、こんなところまで観察して明らかにしているとは・・・・。その観察力には脱帽、いえ降参です。
(2010年11月刊。1800円+税)

田舎の日曜日

カテゴリー:人間

著者  佐々木 幹郎、   みすず書房 出版 
 
 浅間山の麓に山小屋を作って週末ごとに生活している著者が、ツリーハウスをこしらえるという話です。森の中の自然あふれる生活が情趣豊かに描かれています。時間(とき)がゆったりと流れていく感じがよく伝わってきて、読んでると、なんとなく心の安まる思いのする本です。
 どんな人が書いた本なのか巻末を見てみると、なんと私と同世代の詩人でした。もっと年長の高齢者だとばかり思って読んでいたのです。東京芸大の音楽研究科で教えているというのですから、私なんかとは違って芸術的センスが大いにあるようで、うらやましい限りです。道理で文章にもゆったりした詩的なリズムが感じられます。
ツリーハウスというから、どんなものかと思うと、要するに、子どものころ木の上につくった秘密基地をもっともらしくしたようなものです。そこで生活できるというわけでもありません。そうなると、こういうものは、結果よりも、つくっていく過程自体が楽しみなのですよね。この本も、つくり上げていく過程がたくさん紹介されていて、そこがまた興味をそそられるのです。
 歌手の小室等が来てギターをひいて歌ってくれるのですが、ほかには、それといった大事件が起きるわけではありません。いえ、宮崎の新燃岳ではありませんが、浅間山が噴火することはありました。そして、可愛らしいムササビが登場します。
 山小屋生活も、たまにならいいのかもしれないと思わせる本でした。でも、一年中そこで生活するとなると、本当は大変なんなんじゃないでしょうか・・・・。いえ、別にケチをつけているわけではありません。こんな環境で週末のんびり骨休みできるなんて、うらやましいと言っているだけです。
(2010年11月刊。2700円+税)
 火曜日、日比谷公園に行ってきました。3月の陽気でしたが、園内にはほとんど花が咲いていません。梅もハナモモもまだつぼみ状態です。
 わが家の庭の梅も今年は咲くのが遅れています。両隣の梅は咲いているのに、うちはツボミばかりです。紅梅のほうはいくらか花を咲かせています。
 夕方6時くらいまでは明るく、庭仕事に精を出しことができるようになりました。それでも、春は花粉症の季節でもあります。ときどき反応して、目から涙、鼻水が出て、くしゃみを連発することがあります。ひどくならなければいいのですが・・・。

戦争と広告

カテゴリー:日本史

著者  馬場マコト、  白水社  出版 
 
 広告クリエーター、山名文夫(やまなあやお)の物語です。
 資生堂の広告をかいていた山名は、戦争に突入してからは、「産業技術は、その技量を今こそ国家のために動員し、民衆を指導し、啓発し、説得し、昂揚させるために、大東亜戦争のもとに集結せよ」と説くことになった。
 山名文夫は、自分の持つ商業美術の技量を総動員し、民衆を緊張させ、結集させ、行進させた。「おねがいです。隊長殿、あの旗を討たせて下さいッ!」という山名のついたポスターは、兵士からの参加性の視点が、きわめてユニークなものにして、衆目を集めた。
 資生堂は、創業以来、商売よりも美を優先してきた。その「百年史」には、メーカーなら第一に語られる商品、流通の歴史よりも、広告の歴史が主体となっている。日本の社史のなかでも珍しい。意匠広告部の社員の入社・退職が細かく記され、広告・商品デザインの担当者の名前をクレジットし、こだわりを見せる。 
資生堂は、陸軍から大量のセッケンを受注し、これをきっかけとして、第二次大戦の軍需に支えられるようになった。女偏の会社が、戦偏の会社に変わったのだ。
 広告というビジネスは、いつも時代におべっかを使いながら、自分自身を時代に変容させて生きるビジネスだ。悲しいかな、自分の思想も何もあったものではない。そうやって、自分が生まれてきた時代を生きてきた。しかし、時代と併走しつづけるのも、これでなかなか大変なのだ。時代の変化を習慣的に読みとり、自分の感性と肉体を反射的に変容させなくてはいけない。時代はなかなかの暴れ馬で、ちょっと油断すると振り落とされてしまう。 
戦争は嫌だと高言している著者です。広告の恐ろしさをまざまざと感じさせる本です。なんといっても、私たちは、あの「小泉劇場」の怖さを体験していますよね。
 どんな世の中になっても、戦争を起こさないこと、これだけを人類は意志しつづけるしかないと著者は強調しています。まったく同感です。日本も核武装しろなんて声が多いというのを聞くと、身震いしてしまいます。核兵器をもて遊んではいけません。核戦争になったら、全地球、全人類が破滅するのですよ・・・。勇ましい掛け声は無責任そのものです。
(2010年9月刊。2400円+税)

ドラゴンフライ(上・下)

カテゴリー:宇宙

著者  ブライアン・バロウ、   筑摩書房 出版 
 
 ドラゴンフライとはトンボのこと。ロシアの宇宙ステーション、ミール。軌道上の巨大なトンボ、それがミールである。ミールとは平和ないし世界を意味するロシア語。
 ソ連がミールを打ち上げたのは1986年のこと。ロシアの宇宙飛行士が滞在した。そして、1992年からミールにアメリカの宇宙飛行士が滞在するようになった。アメリカ人とロシア人が狭い宇宙船で共同生活できたのは、不思議といえば不思議ですね。
 ロシアのミールにアメリカの宇宙飛行士が乗るようになったのは、アメリカの大統領選挙を前にしてクリントン優勢に焦ったブッシュ陣営がマスコミ向けの話題づくりを企図したことからだったようです。動機は不純だったわけですが、結果としては、いいことだったのではないでしょうか・・・・。
1997年に、老朽化した宇宙ステーション・ミールで深刻な事故が発生し、クルー(乗組員)は生命の危機にさらされた。この本は、その実情をつぶさに描き出しています。ぞっとする危機がありましたが、なんとか大事に至らず切り抜けました。この点ではロシア人の粘りとタフさには頭が下がります。
 1996年に重量130トンを超える巨大な宇宙構造物が誕生した。もともとミールの耐用年数は5年。1992年までには、ミール2号が打ち上げられる予定だった。しかし、ソ連の崩壊で、ミール2号の打ち上げは不可能となった。そこで、耐用年数の過ぎたミールを使い続けた。その結果、火災・ドッキングの失敗、酸素発生装置の故障、冷却材の漏出、プログレス輸送船の衝突、停電、メイン・コンピューターの故障などの深刻な事態が1997年にたて続けに起こった。その多くは、ミールの各装置の老朽化や部品の信頼性の低下に起因していた。
これらの難局を切り抜けたことはロシアの宇宙技術の確かさと、ロシア人宇宙飛行士の生存能力の高さを証明している。
以上、この本の末尾にある解説を紹介しました。
衝突事故に対するアメリカとロシアの反応には、両国の有人宇宙飛行計画の違いが顕著にあらわれている。
 ロシア人は真っ暗になったステーションのなかで、落ち着いて仕事に取りかかる。それまでにも異常な状況に陥ったことは何度もあった。そういう状況に置かれたとき、ロシアの宇宙飛行士はアメリカの飛行士よりずっとタフだ。シャトルで機械が故障すると、アメリカのミッションは中止され、修理は地上でなされる。ロシアの宇宙ステーションでは、このような贅沢は許されない。ミールで何か問題が発生したら、ロシア人宇宙飛行士は宇宙空間でその修理をさせられる。だからこそ、ロシア人は経験に頼る修理を20年にわたって積み重ねてこられたのであり、一方、アメリカはそれを書物で読んだことがあるだけということになった。NASAは物事をとことん研究し、ことごとくマニュアルに組み込む傾向があったのに対して、ロシア人は実地でものを修理する技術を発達させた。
今ではシャトルの飛行はしない横断バスに乗るときほどの緊張感しかない、日常のありふれた出来事にすぎない。安全第一に考えるNASAの官僚主義に息苦しいほどがんじがらめに縛られている。
 ケネディ宇宙センターに行くと、宇宙飛行士の仕事は、星を見て、小便をするだけという皮肉たっぷりの言葉が聞かれる。宇宙飛行がこんなにも魅力のないものになったのは、シャトルがシャトル本来の機能を果たしていないから。
ロシアとアメリカでは、ドッキング・システムに違いがあった。これには両国の政治体制の違いが反映していた。NASAでは船長の専門技術と意思決定能力を誇りとしていたので、ドッキングはすべて宇宙飛行士に任せ、手動で行っていた。ロシアでは、一党独裁体制にふさわしく、ドッキング・システムも中央集権的な方法をとり、宇宙船の制御を宇宙飛行士の手から奪いとって、地上管制官の手に握らせた。
ロシアの宇宙飛行士は、ミール内でタバコを吸い、ウォッカを飲んだ。ウォッカは「心理サポート」物資の名目で補給戦プログレスに積み込まれ、ミールに送られた。うひゃあ、ロシア人って宇宙でもウォッカを飲んでいたんですか・・・・。そのため、ロシア人男性の平均寿命は60歳だそうですよ。
ミールに載った宇宙飛行士の半分は宇宙酔いにやられた。激しい頭痛と周期的に襲ってくる吐き気に耐えなければならなかった。無重力状態では、意識を失った者は空中にじっと浮かんでいるだけなので、誰かが一緒にいなければ、その人間が人事不省に陥っていることに気づく者はいない。
ロシア人宇宙飛行士がシャトルを危険だと考えたのは脱出装置がないから。脱出装置のおかげで、長年のあいだに何人ものロシア人宇宙飛行士が命拾いしていた。
 シャトルに自爆装置があるのもロシア人にとっては仰天だった。シャトルがコースをはずれて人口密集地に墜落する怖れがあるという不測の事態が生じたとき、NASAの地上管制官がシャトルを爆破するためのものだ。しかし、ロシアの宇宙船には、そのようなものが組み込まれていたことはない。
宇宙船の実情と宇宙飛行士の大変な実情を知って、改めて驚かされました。すごいものですね。私には、とてもこんな勇気はありません・・・・。
(2000年5月刊。2300円+2400円+税)

池袋チャイナタウン

カテゴリー:社会

著者  山下 清海 、  洋泉社  出版 
 
 今の中国を知りたければ、東京は池袋駅北口に出かけてみてほしい。福岡市生まれの著者は、このように呼びかけています。
 池袋駅北口に広がる町は、1980年代以降に日本へやってきた「新華僑」たちによって形成された新しい町である。池袋チャイナタウンは、観光地化する前の化粧気なしの素顔のチャイナタウンである。
 日本の三大中華街は、横浜中華街、神戸南京街、長崎新地中華街。いずれも観光地であり、日本人が中華を味わうために訪れる場所になっている。
 横浜中華街には、中華料理店が200軒。500メートル4方の広さに600軒ほどの店があって、日本最大のチャイナタウンである。
 私も司法修習生として横浜に1年ほどいましたので、中華街には、よく出かけました。
ところが、池袋駅北口はチャイナタウンらしく見えない。それは、新華僑経営の店の多くが雑居ビルのなかにはいっているから。そして観光客を相手にしているわけではないので、横浜のようなきらびやかな店構えは必要ない。そこで出される料理も、日本人向けにアレンジされていない香辛料は油をたっぷり使ったもの。ここには中国の東北料理店が多い。
 現在の在日中国人は69万人弱。全外国人の3割をこえる。その4分の1が東京に集中している。日本人国籍を取得した元華僑が12万人に近いので、在日中国人は80万人にもなる。
 中国人が日本に渡ってくるときには、親戚縁者を中心とした資金援助を受けている。これには、常に何らかの「見返り」の期待が込められている。単なるカンパというより、投資みたいなものとなっている。もし、義理を欠くと、あとで親戚中から総スカンをくらいかねない。
新華僑は、一定の峻別をくぐった人たちであり、実は中国の農村に色濃く残る強固な地縁血社会を体現している。かつては、日本への航海には、蛇頭などの犯罪組織が介在し、200万円もの大金を要した。今は、そんな危険な橋を要した。今は、そんな危険な橋を渡って出国する人はほとんどいない。そうなんですか・・・・。時代は変わりましたね。
 埼玉県川口市にある川口芝園団地には、2400世帯のうちの3分の1が新華僑世帯となっている。その多くが大学卒以上の学歴で、IT技術者を中心とするエリート層が多い。
 不良中国人グループは、自分たちを実際以上に大きく見せて威嚇しようとした。そこで、警察、マスコミ、犯人グループという三者の思惑が一致し、チンピラ中国人が「中国マフィア」になってしまった。
 うむむ、なるほど、そういう見方もあるのですか・・・・。それにしても、東京都の石原知事なんて、いまだに「第三国人」なんて差別用語を平気でつかい、マスコミもそれを糾弾しないのですから、本当に日本って変な国ですよね。
 日本における中国人の地位と状況の一端を知ることができました。
(2010年11月刊。1400円+税)
 東京は神楽坂の路地にある小さなフランス料理店(ビストロ)で食事して来ました。初めにキールロワイヤルで乾杯します。シャンパンの泡立ちも爽やかで甘い香りが食欲をそそります。初めての店ですから、アラカルトではなく、コース料理を頼みました。フランスだとコース料理は食べ切れないほどのボリュームがありますが、ここは日本ですから、そんな心配はいりません。実際、最初のデザートまでちょうどいいボリュームでした。メインの肉は牛肉の煮込みです。舌にとろける美味しさです。ワインはブルゴーニュの赤です。一級のメルキューレそしてニュイサンジョルジュを選びます。味わいの良い、コクのある赤で食事がすすみました。食べ終って店の外に出たとき、マスターフランス語で少しだけ会話をして、フランスに住んだことがあるのかと尋ねられました。もちろん、お世辞とはいえ、ちょっぴりうれしく思いました。「シェ・ブルゴーニュ」というお店です。

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