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2010年12月 の投稿

スウェーデンはなぜ強いのか

カテゴリー:ヨーロッパ

 著者 北岡 孝義、 PHP新書 出版 
 
 スウェーデンは不思議な国である。国民の幸福感は、日本よりはるかに高い。税金の高い国なのに、国民からの反発は小さい。スウェーデンの国民は勤勉であり、労働生産性も日本より高い。福祉が行き届いた国なら、国民はやる気を起こさないはずなのにそうはなっていない。
 国民の政治への参加意識は高く、4年に一度の国政選挙の投票率は、常に8割を超えている。実にうらやましいですね。日本は良くて6割、下手すると半分以下の4割の投票率という低迷ぶりです。これでは日本は良くなりませんよね。あきらめていたら、いつまでたっても政治はいい方へは変わりません。ところが、今の日本は議員を減らせの大合唱ばかりです。マスコミも大きく唱道しています。国会も地方議会も、どんどん議員を減らせというのです。少数異(意)見の尊重どころじゃありません。そして、公務員の人数を減らせ、その給料が高すぎるというばかりです。いやになってしまいます。大企業の経営者が何億円というべらぼうな報酬をもらっていても、まったく問題にはしないのです。おかしな話です。
オンブズマン制度は、スウェーデンでは国営である。これまた驚きですよね。
 教育や医療サービスの分野で、スウェーデンは市場の機能は使われない。原則として、学校や病院は公立か国立であり、政府が運営している。スウェーデンでは、ながく社会主義政権が政権をにぎってきた。しかし、同時に国王をいただいてもきた。しかも、その国王の先祖はフランス人なのだ。ナポレオン配下のフランス人ベルナドッテ将軍が、時のスウェーデン政府に頼まれ、カール14世としてスウェーデン王国として即位した。いやはや、なんと・・・・。
 スウェーデンは、1995年にEUに加盟したが、ユーロは導入していない。
 スウェーデンの消費税は25%。医療費は、20歳以下なら原則として無料。20歳をこえても年間の医療費は上限で1万2000円。これはタダ同然ですね。教育費も原則として大学はもちろん、大学院まで無料。そのうえ、月額1万3000円の児童手当、託児所の無料化がある。
 スウェーデンの福祉は、育児、教育、医療、老人介護は、原則として個人の負担ではなく、国の負担であるという理念にもとづいている。スウェーデンでは女性が働くことが奨励されている。そのため、ソフトとハードの両面の政策が実行された。ソフト面では、女性が社会で働くことはいいことだという徹底した意識改革をすすめた。ハード面では、女性の就業を支援するための経済支援、環境整備である。なーるほど、そうなんです。日本でも少子化対策が必要だというのですから、この二つが欠かせません。
 現在のスウェーデン社会では、離婚は普通のことであり、男女の同棲、母子家庭、父子家庭、片親の異なる兄弟・姉妹はまったく一般的な現象である。スウェーデンの子どもは、このような家庭環境で育つ。だから、個性が強く、精神的に自立心の強い大人に育つのは、しごく当然のことである。うむうむ、そういうことなんですか、なるほどですね。
 スウェーデンという国を知ることによって、日本社会の変革の方向、目指すべき道も明らかになると思いました。
 
(2010年8月刊。0円+税)

ギリシャ危機の真実

カテゴリー:ヨーロッパ

 著者 藤原 章生、 毎日新聞社 出版 
 
 ギリシャには行ったことがありません。パンテノン神殿とか、一度は行ってみたいと思ってはいるのですが、少しは言葉の分かるフランスにどうしても魅かれてしまいます。
 それでも、先の選挙のとき日本がギリシャのようになってはいけないというキャンペーンが自民党や財界筋から出てきましたので、ギリシャの国の実情を知りたいと思って読んだのでした。この本を読んでギリシャの国の一端が少し分かった気になりました。ギリシャって、日本とはかなり異なった国家と国民性がある。つくづくそう思ったことです。
 まず第一に、ギリシャの公務員の総数を政府も把握しきれていないというのです。これには驚きというより、呆れてしまいました。
 公務員は選挙のたびに増え、2009年は2000年に比べて3割増の114万人になった。これは労働人口の21%、雇用者の3分の1に及ぶ。ところが、これは推計であって、実数は政府もつかめていない。
 新たな政権ができると、閣僚の顧問や局長職は総入れ替えになり、閣僚や次官などの政治化が好きなように身内や友人などをそのポストに就ける。このときに臨時雇用だったはずが、いつのまにか正規雇用になっていて、政権が交代しても解雇されない。
官僚の給料は安いので、副業にいそしむ人は多い。これは民間企業でも同じこと。無税で働く非公式のお金、闇経済の社会がギリシャにはある。
 そして、ギリシャの総計はまったく信用できない。実に怪しい数字をもとに算出されたマクロ経済の総計だけでこの国の実態は語れない。
ギリシャでは、政治すなわち公職を得る手段だと思われてきた。特権層に集中していた悪習を、パパンドレウ父首相は、左派の庶民にまで広げてしまった。ギリシャでは縁故主義が根強い。
ギリシャ共産党の得票数は1割でしかなく、議会政治のなかでは、決して主流になれない。しかし、ギリシャでは共産党員は孤立しておらず、庶民の中にふかく浸透している。
 ギリシャ共産党は、庶民の目から見れば、訳の分からないこと、実現しそうもない理想をうたう人々である。しかし、困ったときに、また自分が国の犠牲になったときには親身に相談に乗ってくれる相手である。
 共産党の古臭いスタイルのデモに、ごく一般の穏健な人々から極左まで参加している。そこには、レジスタンスを率いながら、戦後いい目にあえなかった被害者としての歴史がからんでいる。ギリシャ共産党は、主流のプレーヤーにはなれないが、庶民を動かし、世界に国のイメージを植えつける社会の一つのツールとしては機能している。
ギリシャ人は現状にすぐ慣れる。そして変化には強い。今回の危機など、長い歴史の中でみると大したことはない。周りが騒ぎ過ぎているだけ。
 何を言われようと、どれだけ困ろうと、頑固にギリシャ人は生活スタイルを変えようとしない。ギリシャ人は、したたかで図太い。ギリシャ人は、ドイツ人のようなあくせくした生活を嫌っているようです。でも、決して怠けを好んでいるのではありません。だって、2つも3つも副業して働いているのですからね・・・・。世界はなかなか広いですよね。
 
(2010年8月刊。952円+税)

日本人の階層意識

カテゴリー:社会

 著者 数土 直紀、 講談社選書メチエ 出版 
 
 2000年代になると、男女をふくめて四年制大学への進学率は40%に達し、2009年には50.2%になった。
 高校への進学率は、数十年も前に90%を超えていて、もはや高校への進学は特別なことではなく、まったく普通のことになっている。1985年にもっとも大学への進学率が高かったのは広島県(40.8%)、奈良県(40.5%)、兵庫県(39.6%)と続く。逆に、もっとも低かったのは、青森県(17.8%)、新潟県(19.0%)、岩手県(19.7%)となっている。
 1970年代には学歴には、それほど象徴的価値が見出されていなかった。時代が現代に近づくにつれ、学歴は象徴的価値をますます獲得し、現在は過去数十年間のなかで、もっとも学歴に象徴的な価値が付与されている時代である。
実証的な研究によると、日本人がアメリカ人と比較して、とくに集団主義的であるという証拠が見出されなかったばかりでなく、日本人のほうが個人主義であるとみなしうる研究成果も少なくなかった。つまり、なんとなく、アメリカ人は個人主義的であり、日本人は集団主義的であるというイメージを持っているが、実際には、必ずしもそうとは言いきれない。そして、国民の多くが自分のことを中だと思っていた「総中流」は、なにもとりわけ日本的な現象ではなかった。それは、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、スウェーデンといった先進国にも共通してみられる現象だった・・・・。
 1970年代、1980年代の一億総中流は、人々によって所属階層を判断する基準がバラバラであったことによってもたらされていた現象なのである。
一億総中流と呼ばれた時代の日本人の階層意識が特徴的だったのは、「中」と感じている人々の間に共通する社会的、経済的地位を見出すことが難しく、そのために「中」について明確な階層的輪郭を描き出すことができなかった点にある。
 人は、時間の流れの中にのみ存在する歴史的存在であったように、ある場所の上にのみ存在する空間的存在なのである。だからこそ、人々の参照する情報が空間的に偏って存在しているために、人々の意識も空間的な偏りを持つことになる。
 かつての日本人があたりまえのように考えていた一億総中流論は、今では、はるか昔のことであり、現在は格差社会、富める者はますます富と権力を持ち、貧しき者は家を失い、餓死してしまう存在になっている。
このようなことを少し違った角度で考えさせてくれる本でした。
(2010年7月刊。1600円+税)
 金華山に登ってきました。稲葉山城ともいいます。そうです、岐阜に行ってきたのでした。ロープウェーで頂上近くまで一気に上って、そこから10分ほど石段と急勾配の坂道を登っていくと、コンクリートで再現された岐阜城に辿りつきます。お城からは360度のパノラマ展望です、秋晴れの快晴の日でしたから、遥か遠く名古屋のツインタワーまで眺めることができました。眼下の岐阜市内そしてゆったりと流れている長良川を見おろすと、信長の天下布武の気持ちもちょっぴり実感できます。ふもとの岐阜公園では信長居館の発掘作業がすすんでいました。当時の建物が再建されたら、ぜひ見たいものです。
 見事な紅葉あふれる公園内の喫茶店に腰掛けて、おでん、五平餅、そして甘酒を頂きました。甘いみそだれのおでん、米粒の残る五平餅、昔ながらの素朴な甘酒をいただきながら、秋の柔らかな日差しを浴び、幸せなひとときでした。ただ、左ひざの痛みを覗けば…。
 泊まった都ホテルは、長良川に面していて、部屋からは全山紅葉で映える金華山に屹立する岐阜城の雄姿を眺めることができました。

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