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2010年7月 の投稿

戦場からスクープ!

カテゴリー:ヨーロッパ

 著者 マーティン・フレッチャー、  出版 白水社 
 私と同じ世代のイギリス人記者の半世紀です。よくぞ危険な戦場を生き延びたものだと思います。私には、とてもこんな勇気はありません。
 地雷には、対人と対車両の2種類がある。地雷は地面の下2インチの深さに埋められる。対人地雷を爆発させるには、ほんの10~40ポンドの重さがあればいい。対車両なら350ポンドだ。
 対人地雷は、地表で爆発し、兵隊の足に損傷を与える。1人の兵隊が片足を失えば、その男を安全な場所にまで運ぶのに兵隊が別に2人必要となる。合計で3人の兵隊が戦闘から排除される。いやはや、とんだ計算がなされています。
 アフガン人は、尻を拭くのに左手を、食べるのに右手を使う。だから、盗人の右手を切るのは、きわめて厳しい罰になる。盗人は右手だけでなく、友人たちと食事をする能力をも失う。なぜなら、男の左手が使った碗から食べる人間はいないから。つまり、男はアウトカーストになってしまうのだ。これって、辛いことですよね。
 ボスニアにNATOが介入したのは、2年間で20万人が死亡したから。だが、ルワンダでは4週間で20万人が死亡した。にもかかわらず、世界はそっぽを向いていた。なぜか?
ルワンダには、戦略的重要性もなく、語るべき資源もなかったからだ。
 キャンプにいる難民25万人のほとんどが、ジェノサイドを逃れてきたツチ族ではなく、ツチ族の報復を逃れてきたフツ族だった。つまり、キャンプで救援機関が助けていた人々のほとんどは、フツ族の殺人犯とその家族だった。フツ族は逃げ、ツチ族は死んでいた。
 歴史は、欧米のメディアにとって、アフリカの血の価値がヨーロッパの血の価値ほど重くないことを示している。メディアには、たとえば10年間にわたってバルカン半島を重点的に取材する余裕はあったが、ルワンダのことは手遅れになるまで無視した。
 戦争ジャーナリストのすさまじい日常生活が描かれています。いやはや、世界にはかくも悲惨かつ過酷な戦場があるのですね。平和を守りたいとつくづく思ったことでした。今こそ日本国憲法9条2項を守り抜きましょう。暴力と戦争の連鎖は御免です。これを平和ボケなんて言わないでくださいね。
(2010年1月刊。2600円+税)
 先日新聞の訃報欄で、後藤竜二氏が亡くなられたことを知りました。私が司法試験の受験勉強をしていたとき、友人から「面白い本があるよ、読んでみたら」と勧められたのが、『天使で大地はいっぱいだ』と言う本でした。
 難しい法律議論の世界で頭を悩まし、失語症になったかと思うほど日常会話をしなくなったなかで、生き生きと躍動する子どもたちの世界は、まさに一服以上の清涼剤とでもいうべきものでした。苦しかった受験生活とともに思いだされる本です。
 昨日の新聞に、法人税率の引き下げを管首相が前倒しで実施すると報じられていました。日本の大企業の実効税率は、20%もないところがいくつもあるようです。それをさらに引き下げるつもりのようですが、それではいったい、消費税率の引き上げは何のためなのでしょうか。疑問だらけです。

ルポ戦場出稼ぎ労働者

カテゴリー:アラブ

 著者 安田 純平、集英社新書出版 
 
 あのイラクへ出稼ぎ労働者として潜り込んだ日本人記者の体験記です。すごい勇気ですね。とても真似できるものではありません。
ペルシャ湾岸の国々では、労働者のほとんどを出稼ぎ労働者が担っている。クウェートに在住する300万人のうち、7割はアジアからの出稼ぎ労働者である。
 たとえば、公園掃除は、食事・宿泊費を別に月給8千円。電気技師でも食事・宿泊込みで月給2万8千円。イラクで働けると、未熟練労働者でも相対的にかなりの高給となる。
 イラクにある数千人、数万人規模のアメリカ軍の兵士を食べさせるアメリカ軍基地の食堂はメニューのほとんどは調理済みのレトルトパック食品を温めるだけ。著者の場合は30人ほどを相手にするので、レトルト食品は使わず、基本的に一から作った。
 そうなんです。日本人記者である著者は、コック見習いとして基地の一つに何とか潜り込めたのでした。
ネパール人警備員の月給は1250ドル。監督は1700ドル。護送部隊のイギリス人コマンダーは2万4000ドル、イギリス人司令官は5万ドル。このほか、1ヶ月に100ドルの生活費、40ドル分の携帯電話プリペイドカードが支給される。
 人質にとらわれたとき、身代金はネパール人は6千ドル、日本人なら1万5千ドル。アメリカ人は2万ドルという相場がある。
 「イラク人は、昼間は労働者として基地内で働き、警備状況や人数、武器などを調べ、夜は民兵として活動している」
 こんな話も聞かされたのでした。
2007年5月の時点で、イラクには15万人のアメリカ兵をふくめ、36ヶ国から集まった労働者12万人がペンタゴン(アメリカ国防総省)関連で仕事をしていた。民間人労働者の死者は、その時点までに少なくとも917人、負傷者は1万2千人以上だった。
 イラクが混乱したのは、生活が改善されないことから自暴自棄になった人々が無数にいるから。アメリカ軍が、これを武器で抑えつけようとして、ますます強い反発をうけた。イラクの人々に対して柔軟に対応できない硬直化した体制が、占領の「失敗」につながった。アメリカ軍の基地内の掃除や通訳などで、10万人以上のイラク人がアメリカ関連の業務についているが、「アメリカの協力者」として民兵に襲われる事件が絶えない。
 イラクの復興事業費のうち、アメリカ政府の試算によると22%、国連関係の調査では40%が警備関連に費やされている。そして、アメリカのべクテル社は、発電所復旧事業について20億ドルを手にしながら、戦前の水準にまで戻すことすら出来ないうちに2006年に撤退した。
 戦場労働者は、自らの労働が戦争を動かしていると実感することはない。無意識のまま心身ともに戦争の歯車となっていく。
 よくぞイラクの戦場労働の現場に潜り込めたものです。その勇気を讃えるとともに、苛酷なイラクの現実を知らせていただいたことに感謝します。 
(2010年3月刊。720円+税)
 消費税を10%に値上げする理由として、日本がギリシャのようになったら大変だということがあげられています。でも、本当にそうでしょうか。ギリシャは消費税を引き上げると同時に法人税を大幅に引き下げたので、国の税収が大きく減ったことから財政危機に陥ったという指摘もありますよね。ギリシャに行ったことはありませんが、一国の首相が見てきたようなウソを言っているのではないのかという気がしてなりません。
 しかも、国の財政が危機だというのなら、フランスやドイツでもすすめられているようですが、今の5兆円の軍事費を1兆円減らしたらどうなんでしょう。それに、アメリカ軍の基地がグアムに移転するのに、総額で3兆円も日本が負担するという話もありますよね。アメリカ軍への思いやり予算だって毎年3千億円でしょう。これんあか真っ先になくしてしまうべきではないのでしょうか。選挙の時こそ、みんなで考えたいものですよね。

中国・抗日軍事史

カテゴリー:中国

著者:菊池一隆、出版社:有志舎
 日本軍がなぜ中国大陸で敗北し去ったのかについて、八路軍など中共軍だけでなく、むしろ国民党軍の戦いぶりを正面から論じている画期的な軍事史です。
 著者は私と同じ団塊世代ですが、さすが学者です。よくぞ、ここまで調べて、体系的な軍事史になっていると感嘆しながら一心不乱に読みふけりました。
 日本軍の敵であった弱い中国軍を強化するのに、実はドイツの軍事顧問団が大きな役割を果たしたこと、同じくイタリアも中国軍に寄与・貢献していたことなど、日独伊防共協定を結んだ三国なのに、ええっ、何、これは・・・、と驚く記述もありました。もちろんアメリカ軍も中国軍と共同作戦しているのですが、ソ連も武器・弾薬だけでなく、飛行機隊をはじめとして人的にもかなり中国軍を支えて頑張っていたようです。
 また、あまりの日本軍の残虐さに中国民衆が怒って立ち上がって軍事行動をしていたこと、それが国共合作につながって、結局のところ日本軍の敗退につながっていったことなども、総合的にとらえることのできる本でした。
 日中戦争について、軍事的な観点で詳しく知りたいという人には一読をおすすめします。百団大戦など、もっと詳しく知りたいと思うところが簡略化されているという気はしましたが、そこまで求めると、この本の10冊シリーズにはなるのでしょうね・・・。
 日本は開戦当初、軍事力は質量ともに圧倒的に優位に立っていた。兵員が非常に多く、かつ訓練も行き届いていた。軍需工業も発達し、装備も優良であった。日本側の総兵力は448万人。陸軍は17師団、飛行機1480機(陸軍)、と2700機(海軍)。
 それに対して中国側は、陸軍170万人、飛行機は、わずかに314機。
 制空権は、日本が完全に握っていた。
 日本は、中国が軍備力脆弱で、長期に抵抗するのは不可能と考え、3ヶ月で打倒できると考えていた。
 しかし、1937年8月の上海事変のとき、上海周辺にはドイツ軍事顧問団に組織され、ドイツ製武器で装備した最精鋭6個師団3万人が配置され、上海防衛体制は強化されていた。つまり、日本軍はドイツ製の武器を戦うことになり、上海では激烈な市街戦が展開された。中国軍の頑強な抵抗により、日本軍は、10キロ進軍するのに1ヶ月もかかってしまった。そして、このとき、上海の民衆も、積極的に抗戦に参加して、中国軍を支援した。中国軍が初めて見せた奮戦は、上海視界の外国人を驚かせ、中国の国際的地位を高めた。
 1937年9月に第二次国共合作が成立し、中共軍も蒋介石軍とともに戦うことになった。このころ、ドイツは、政治的には日本との関係が強かったが、経済的には中国との関係が密接だった。1938年5月、ヒトラーは、軍事顧問団の引きあげを命令した。
 ソ連は日本に脅威を感じ、1937年8月に中ソ不可侵条約を結んで、軍事的にも援助を強めた。
 日本軍は、首都南京の陥落を喜び、提灯行列がおこなわれたが、日本の予想に反して、国民政府は敗戦を認めるどころか、首都を南京から武漢さらに重慶へ移して抗戦継続の姿勢を明白にした。
 日本は、次々と首都を移動させながら戦えるという中国の広大さを実感として十分認識していなかった。日本は、中国の広大さ、懐の深さを見誤った。
 国民政府の戦略は、空間を時間に換え、持久消耗戦を実施し、日本軍の「速戦速結」政策を粉砕した。抗戦初期、たしかに日本軍が武力面で圧倒的に優勢であった。そこで、可能な限り、正規戦を避けた。蒋介石の指示で、多戦区は遊撃部隊を組織した。遊撃戦をもって正規戦を補強し、日本軍を牽制した。
 日本軍の残虐行為は、中国の民衆を畏縮させるどころか、普遍的な怒りを巻き起こし、反日の実際行動に立ち上がる国共両軍の戦闘を支援しただけでなく、自らも戦闘に参加した。
 太原会戦では大局的には日本軍が勝利したが、台児荘戦闘での局部的勝利は、中国軍兵士と中国民衆を鼓舞した。中国人に、日本に勝てるという意識を植えつけ、日本不敗の神話を打ち破った。その自信は、その後の抗戦に強い影響を及ぼした。
 この本の冒頭に、日本軍は孫子の兵法から外れているので、1939年の時点で日本必敗を予測した中国人の本が紹介されています。なるほど、という指摘がなされています。
 孫子は、「不知彼、不知己、毎戦必敗」と言っている。日本は自己の力量が分からず、中国のことが分からず、どうして勝利できるのか、これが日本必敗の根本的要因である。
 なーるほど、日本軍は孫子の兵法に学んだようで、実はまったく学んでいなかったのですね・・・。大変勉強になりました。
(2009年3月刊。2800円+税)
 先日の日曜日にいつものように庭の手入れをした翌日から、腕のあたりが赤く腫れ、かゆみがあります。これはきっとハゼマケだと思って皮膚科で診てもらったら、案の定でした。
 庭に植えたわけでもないハゼの木があります。ぐんぐん大きく伸びて実もつけます。隣の田んぼに出っ張って邪魔な枝を切り落としたのです。そのとき、汁が腕についてしまったのでしょう。
 小学生のとき、ハゼの枝を手にしてチャンバラごっこをして、顔中が腫れあがって1週間、学校を休みました。なにしろ顔がお岩さんのようにかさぶただらけになったのです。おかげで一枚すっかり顔の皮がむけて、それ以来、美男子になりました。

おへそはなぜ一生消えないか

カテゴリー:人間

 著者 武村 政春、  出版 新潮新書 
 
 人間の身体の不思議さに驚かされる本です。
 男の胸にも乳を出す乳腺組織は、わずかながらにも残っているので、「母乳」が出るのは科学的にも確かなこと。うへーっ、男も赤ちゃんにおっぱいを与えられるのでしょうか……。
 なぜ、男にも乳首が存在するのか。その答えは、男とは「複製された女」だから。人の原型は「女」であり、男は、その変形なのである。なんとなんと、男本位の世界ではないのですね。
 人は本来、女になるべくして発生を始めるが、途中の分岐点において男性化遺伝子の作用を受けることにより、脇道のほうへ曲がって行ってしまったものが男なのである。
 人間は、一生の間に全身で1017回の細胞分裂(DNA複製)を経験する。細胞一個にふくまれるDNAは60億塩基対(6×109)なので、一生の間に全身で6×1026個の塩基が複製される。すると、10-11の割合で複製エラーが起きるとして、6×1015個、つまり6千兆個もの複製エラーが一生のあいだに生じる計算になる。この6千兆個というと、ものすごくたくさんの複製エラーが蓄積していると心配するかもしれない。しかし、人体の細胞数60兆個で割ると、1個の細胞につき100個程度。100個の細胞あたり3個の複製エラーが生じた程度なので、パニックになるほどのものではない。
 ええっ、そうなんですか。100個の細胞あたり3個の複製エラーというのは、すごく多いような気もするのですが……。
 この本の途中に、フランス料理のリ・ド・ヴォーが登場します。私の大好物なのですが、残念なことに食べさせてくれるレストランはあまりありません。それくらい贅沢で高級な料理です。それというのも、胸腺が子牛からしかとれない貴重な器官だからです。まだ食べたことのない人は、ぜひ食べてみてください、少しばかりねっとりしていますが、とても美味しい味ですよ。
 ヒトの赤血球には「核」がない。赤血球が成長する過程で、核が抜け落ちてしまう「脱核」が起きるため。これは、哺乳類に共通している。脱核して表面がくぼむことによって表面積が広がる。これによって、むしろガス交換をするうえでは好都合なのである。赤血球は一日に1011個、つまり1000億個も作られ続けている。しかも、酸素という、ややもすれば細胞を障害する危険な分子と付き合うのを最大の使命としている。核があると、がん化する危険度が高まるので、脱核しているのではないか……。
 へその緒がつないでいるのは、正確には、胎児と胎盤である。胎盤は母親ではなく胎児の一部であるので、「へその緒」は胎児の一部にすぎない。母親は、その身の危険を冒してまで、子宮の壁から胎盤に向かって噴きつける。その母親の貴重な血液を受け止め、しっかりと受け取った栄養分を胎盤から胎児本体に供給するパイプラインこそ、へその緒なのである。
 おへそが消えないのは、かつて血管だった残骸が消えることなく残ってしまうことにある。
 人間の身体の不思議に思いいたります。もっともっと我が身を大切にしないといけないとつくづく思いました。
 
(2010年2月刊。680円+税)
 取締役報酬が1億円をこえる人が300人ほどいるというニュースを見て、月収1000万円の人たちにとって、消費税が10%になったら月3万円の負担になると言っても、なんともないことなんでしょうね。
 でも、私の周りの人々は月10万円から20万円という人が大半です。そんな人にとっては大変な増税です。
 年俸1億円もらっている取締役の会社が、実は赤字だというところもあるそうです。きっと人減らしをしたりしているのでしょう。派遣切りをすればいいのですから、簡単です。労働者を遣い捨てにしながら、自分だけは1億円以上もらう、そんな経営者の集まりが日本経団連なんですね。ですから、消費税の引き上げとあわせて法人税率の大幅引き下げを民主党にさせようとしています。とんでもないことです。

パプアニューギニア

カテゴリー:アジア

 著者 田中 辰夫 、 花伝社 出版 
 
  パプアニューギニアって、どこにあるのか知らん・・・・、と思っていると、あのラバウルが含まれているのでした。いまテレビで放映中の、「ゲゲゲ」の水木さんのいた島です。また、山本五十六元帥が、アメリカ軍に暗号を解読されて所在がつかまれ、撃墜されたところでもあります。
 そのパプアニューギニアが、戦後の日本とは平和的な結びつきを強めていることを、この本を読んで初めて知りました。パプアニューギニアを知る入門編にあたる本です。
 パプアニューギニアには、700以上の多言語と、それにもとづく民多族集団が存在する。自然環境や生活様式における地域的多様性は著しい。
 首都はポートモレスビーは人口25万人。面積でいうと大阪市に等しい。しかし、人口は10分の1でしかない。
 パプアニューギニアの都市は犯罪が多く、治安が悪い。人々が町を自由に歩けるのは日中だけ。夜になると、歩行者はまったくなく、ゴーストタウン化する。
 パプアニューギニアでは米が生産されている。日本の農業技術が生かされている。また、良質のコーヒーも生産している。ユーカリを植林し、成長した木材を日本に輸入している。ユーカリは、植えたあと1年で千メートルも伸びる。
そして、LNG。パプアニューギニアの山地に年間660万トンの液化天然ガス(LNG)がとれる。その半分の330万トンを日本へ輸出される計画がすすんでいる。
一度は行ってみたい、自然豊かな南の島です。でも、治安の悪さが気にはなりますね・・・・。 
(2010年3月刊。1500円+税)
 沖縄の普天間基地の移転先と目されていたグアム島のなかにも、基地受け入れについては賛否両論あるようですね。
 そして、目理化軍のなかにも海兵隊と陸海軍との内部抗争があるという記事も読みました
 いずれにせよ、平和な沖縄にいつまでも沖縄軍の基地があっていいものでしょうか。これって、選挙の重大争点のはずなんですよね……。日本人って、忘れるのが早すぎませんか?

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