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2009年10月 の投稿

先生、子リスたちがイタチを攻撃しています!

カテゴリー:生物

著者 小林 朋道、 出版 築地書館
 大好評の先生シリーズです。毎回、私も楽しく読ませていただいています。
 私も、動物を飼育してみたいという気持ちはあるのですが、あちこち旅行もしたいし、両立できませんので、あきらめています。本当は犬を飼って、毎日散歩したいのです。
 といっても、我が家の庭にはモグラがいますし、ヘビもいます。そして、夜になるとヤモリが窓に貼りつきます。小鳥はキジバトそしてヒヨドリは常連です。もちろん、スズメ軍団もいます。春にはメジロ、そしてウグイス、さらにはカワラヒラなどもやって来ます。山のふもとの近くに住んでいますから、それなりに豊かな自然に恵まれています。ただし、モグラは生きた姿では見たことがありません。見るのは、地上の死骸となっているときです。庭のあちこちに土が盛り上がりますので、何頭ものモグラがいることは間違いありません。
 ヘビの姿の方は、幸いにして最近は見かけません。ただし、庭に出るときには、思わぬ遭遇ということにならないように用心しています。
 先生シリーズは、鳥取環境大学で動物行動学と人間比較行動学を専門にする小林先生の日常生活が愉快なタッチで紹介されています。微笑みながら、動物と人間の行動科学が学べるという勝れものの本です。
 イタチ科の動物であるフェレットを飼育したときの顛末は面白いのですが、その顔写真がなんとも可愛らしいのです。いやあ、これはぜひ飼ってみたいと思いました。実際に飼うと大変なんでしょうね……。
 シマリスの子どもたちがカタカタカタという音を一斉に立てて、イタチ(フェレット)を撃退するのは実証する実験は面白いものです。やはり、学者になるには、少し奇抜な発想のできることが必要なんですね。ということは、やっぱり学者は変人に限る、ということでしょうか…(おっと、失礼しました)。
 ヤモリは家守り。イモリは井守り。ヤモリは爬虫類、イモリは両生類。ヤモリの尿は、白色のねっとりとした半固体状、イモリの尿は液体。
 アカハライモリの生態を探求するためには川岸のアシを夜中に鎌で刈りつくす作業が必要となる。その作業のため、小林先生は、ついに腱鞘炎となり、両手首にサポーターを巻かざるをえなくなりました。学者って、それほど大変な職業なんですね。いやはや、学者なんてならなくて良かったと私は思ったことです。本を読むだけなら、私も出来ますから…。
 モグラはミミズだけでなく、セミも食べる。私は、初めて知りました。そういえば、うちの庭にも、もちろんセミの幼虫はいます。7年ほども地中にいて、地上ではわずか1週間の生命というはかなさです。
 面白いシリーズの本です。どうか、引き続き、がんばって面白い本を書いてくださいね。
(2009年8月刊。1600円+税)

ハッブル望遠鏡で見る宇宙の驚異

カテゴリー:宇宙

著者 ビバマンボ・小野夏子、 出版 講談社ブルーバックス新書
 毎年、夏の終わりには、寝る前、2階のベランダに出て望遠鏡で月面を観察することにしています。ところが、今年は例年になく、月面を観察することができませんでした。
 天候不順だったとしか言いようがありません。それでも、望遠鏡から覗く月世界は、いつものように「平和の海」をゆくりなく、さらけ出して見せてくれました。寝る前に心の落ち着くひとときです。
 ハッブル望遠鏡で宇宙をのぞいたら、どんな世界が見えるのか楽しみですよね。この本は、見事なカラー写真で、宇宙の果てまでの素晴らしさを味わわせてくれます。
 ハッブル望遠鏡は地上にはない。それは、スペースシャトル・ディスカバリー号で宇宙に打ち上げられた、口径2.4メートルの望遠鏡である。
 地上から天体観測すると、大気の揺らぎの影響が避けられない。それは、川底から空を眺めるようなもの。ところが宇宙へ飛び出したハッブル宇宙望遠鏡は、大気の揺らぎから解放された、初めての望遠鏡である。
 ともかく素晴らしいのです。カラー写真で、この宇宙のさまざまな銀河、星団そして大小さまざまな星がとらえられています。ちっぽけな自分という存在を、しばし忘れさせてくれるのがこの宇宙の星々です。すごいですよね。だって、120~130億光年のかなたの光をとらえたとか言うんです。これって、宇宙の創世記のころの話です。
宇宙に始まりはあるのか、また、終末はあるのか……。考えさせられます。無から有が生じたのか。それとも、ふくらんだりしぼんだりして際限のない世界のなかで生命は翻弄されているのか。いやあ、知りたいものです。
 人間の一生はせいぜい100年。ところが、万年単位ではなく、億年単位で物事を考えようとする人がいるのです。いやはや、無限の宇宙には脱帽です。
 
(2009年7月刊。1429円+税)

縞模様のパジャマの少年

カテゴリー:ヨーロッパ

著者 ジョン・ボイン、 出版 岩波書店
 映画を見損なったので、せめて本を読もうと思ったのでした。ナチスがつくったユダヤ人の強制収容所には、いくつかの種類があったようです。選別して殺すだけの絶滅収容所。働かせられる労働者を選別して働かせていた強制労働所です。
 この本は、恐らく絶滅収容所を舞台にしているのでしょうか、実際にはあり得ない、収容所内外の子どもの交流を描いています。収容所の責任者として家族連れで着任してきたナチス親衛隊の高官には、9歳の息子と12歳の娘がいたのです。その9歳の男の子が、友達ほしさに収容所周辺をうろうろしているうちに、縞(しま)模様のパジャマを着た少年と仲良くなってしまうのです。
 実際、収容所の周辺にいた人々との交流が皆無ではなかったようです。でも、子どもが1対1で話し込む状況というのは、いくらなんでもありえなかったのではないでしょうか……。
 しかし、あり得ないことを本の中では可能として、それを通じていろんなことを考えさせるのが作家の腕前です。この本を書いた著者は、なんと1971年にイギリスで生まれています。やはり、想像力が豊かなのです。
 ありえないことを、ありえることとして、ナチス高官の息子が収容所に入れられて死を待つユダヤ人の子どもと交流したらどういう展開になるのか、それを考えさせてくれるのです。やはり、映画そのものを見たかったものだと思ったことでした。
 
(2009年5月刊。1800円+税)

ルポ・資源大陸アフリカ

カテゴリー:アフリカ

著者 白戸 圭一、 出版 東洋経済新報社
 南アフリカの2006年度の人口10万人あたりの殺人発生率は40.5件。これは日本の40倍。イギリスの28倍。あのアメリカと比べても7倍である。
 そんな南アフリカでサッカーW杯があるのですが、大丈夫でしょうか。ブラジルでオリンピックが開催されることになりましたが、犯罪の撲滅はよろしくお願いします。それのためには、なんといっても格差のこれ以上の拡大を食い止めることですよね。南アフリカも同じことですが、日本だって他人事(ひとごと)ではありません。
 日本では、このところ年に5000件の強盗事件が発生している。南アでは20万件。南アの人口は日本の3分の1にすぎないから、発生率は120倍となる。南アフリカでは、よほど社会的に注目される事件でもない限り、日常発生する強盗事件について、捜査自体がされない。うへーっ、これは恐ろしいことです。
 南アフリカでは、芝生の庭とかプールのある暮らしというのは、半ば要塞化した警備体制の上にかろうじて成り立っていることを意味している。南アのプロの強盗団にとって、警備会社による厳戒体制というのは、赤子の手をひねるようなもの。番犬にしても、毒をまぜた肉を庭に投げ込まれたら、おしまい。
南アフリカでは、アパルトヘイト時代以上の、いびつな格差社会になっている。富裕層上位20%の総所得は、貧困層下位20%の35%に達する。今の南アフリカでは、国民の11人に1人が1日1ドル以下で暮らしている。
 南アフリカの外国人犯罪者には、大まかなすみわけがある。ナイジェリア人は麻薬密売と旅券偽造・詐欺。ジンバブエ人は自動車強盗。エチオピア人とモザンビーク人は住宅襲撃。アフリカ系以外の犯罪組織として、中国人・ロシア人・パキスタン人のものがある。
 使用人の黒人は、みんな安い給料で働かされているから、お金を払うと主人を裏切ってこっそり情報を流してくれる人が少なくない。金持ちは貧乏人のことを何も知らないが、貧乏人は金持ちの生活のすべてを見ている。
 アフリカに日本のマスコミは記者を置いていない。毎日・朝日・読売の3社と共同通信は、特派員を各1人おいている。つまり、広大なアフリカに日本人記者は4人しかいないのである。
 アフリカに居住する日本人は7千人ほど。ニューヨークに5万人以上、上海に5万人近く住んでいるのと、すごく違う。
ヨハネスブルグ中心部のビル街には、黒人でない者が外を歩くのは、昼間でも事実上、不可能である。世界中をめぐってきた日本人のバックパッカーも、ここでは身ぐるみはがされ、泣いてしまう。
 南アフリカにナイジェリア人が10万人も滞在していて、犯罪組織が活発に動いている。ナイジェリアは、2004年から2006年まで、3年も連続して「最も危険な国」とされた。
 独立後のほとんどの期間を軍事政権に支配されたナイジェリアでは、石油産業によって国庫に入る多額の収入の行方をチェックする民主的制度の欠落により、政治腐敗が世界でも最悪に近い水準まですすんだ。石油は、ナイジェリアを不幸な国にした。
 コンゴでは、住民に恐怖心を植え付ける残虐行為は、混乱を持続させる重要な戦術の一つになっている。そのコンゴにはコルタンがある。埋蔵量では、コンゴが世界一。コルタンは鉱石の一種で、精錬すると、携帯電話やゲーム機のコンデンサに使われている粉末状タンネルを得ることができる。1980年代はじめ、日本のタンネル消費量は年間100トンに満たなかったが、今やハイテク製品の普及で、237トンにまで増えた。
 スーダンから日本は石油を輸入している。スーダンの輸出総額の82%は中国向けで、日本は8.4%であり、スーダンにとって第2の輸出国である。
 ソマリアでは、市街地の信号機が動いていない。そして、中央銀行がないのに通貨が運用されていて、アメリカドルとの交換レートも存在する。ソマリアの紙幣は、民間人が印刷している。中央銀行が「民営化」しているのだ。
 このところ、中国のアフリカ進出には目を見張るものがある。無政府国家のもっとも危険な町でも、ケータイ電話企業の技術指導を担当している。
 日本の記者が、アフリカで生命の危機にさらされながら書いた体当たりルポです。
 アフリカって、こんなに豊富な鉱物資源があるのですね。そして、悲しいことに、戦争・暴力・テロが日常化し過ぎています。そのとき、軍隊なんて、まったくあてにならないのですね。日本とアフリカの遠さと案外な近さを感じさせるいい本でした。
(2009年8月刊。1900円+税)

司馬遼太郎の歴史観

カテゴリー:日本史(戦後)

著者 中塚 明、 出版 高文研
 司馬遼太郎の『坂の上の雲』は、1968年4月から1972年8月まで、足かけ5年にわたってサンケイ新聞の夕刊に連載されました。私が大学2年のときに連載はスタートしたのですね。もちろん、私は読んでいませんでした。いえ、もちろん『坂の上の雲』は、その後弁護士になってから読んでいます。明治日本の成功物語と言ってよい本です。そして、ここに登場する秋山好古は、私の母の異母姉の夫が副官として仕えていたということを最近知りました。先祖を調べて行くと、歴史が身近になることを実感したことです。
 それはともかくとして、NHKはこの11月から、この『坂の上の雲』を3年かけて放映するそうです。ところが司馬遼太郎は、これを禁止していたのです。
 「なるべく、映画とかテレビとかそういう視覚的なものに翻訳されたくない作品である。うかつに翻訳すると、ミリタリズム(軍国主義)を鼓舞しているように誤解されたりする恐れがあるから……」
 これは、司馬遼太郎自身が戦地に戦車兵として動員されていた経験もふまえての言葉であろう。司馬遼太郎は、日本は日露戦争のあとにおかしくなったという。しかし、それは決して事実ではない。
 司馬遼太郎は、『坂の上の雲』で、日本が明治維新で自立の道を選択したとき、朝鮮の運命は、その「地理的位置」と「主体的無能力」によって、日本に従属し、その支配下に置かれることは決まっていたという。
 そして、この司馬流の「朝鮮論」に従うと、明治以降、
・日本が朝鮮に何をしたのかを語る必要はない
・朝鮮でどんな動きがあったのか、それにも頭をわずらわせる必要がないことになる。
それでよいのか……?著者は、このように問題提起しています。
 日清戦争は、日本軍がソウルの景福宮の占領から始まった。日本軍は中国の清国軍と砲火を交える前に、朝鮮の王宮を占領し、国王を事実上とりこにした。
 この点について、日本政府は、突発的衝突から始まり、日本軍はやむをえず交戦し、王宮に入って国王を保護した、と公式に説明した。しかし、実は日本軍が意図的に朝鮮王宮に攻め込んだことが、日本側の記録として残っていた。うへーっ、そうなんですね……。
 東学党の乱(東学農民運動の反乱)についても、日本軍は、今後はことごとく殺戮すべしという命令を発した。このジェノサイド作戦によって、抗日民族闘争は鎮圧された。このときの犠牲者は3万人をこえ、総数5万人にも達するとみられている。
 そして、日清戦争が終わった年の秋、日本軍は朝鮮王宮に侵入し、王妃を殺害した。これは、日本軍参謀本部の川上操六次長の指揮によるものが判明している。
 いやはや、なんということでしょう。日本は、朝鮮半島を侵略し、占領していたのです。
 朝鮮王宮占領、それに抗議しておこった朝鮮農民軍の再蜂起と日本軍によるその皆殺し作戦、さらに戦後の朝鮮王妃殺害事件、この3つの出来事は鎖でつながっているかのように相互に関連している。そして、この3つとも、日本政府はことの真相を内外に公表することがなかった。そうなんですね。まさしく日本史の重大な汚点です。
 さらに、日露戦争をはじめる前から、大山巖をトップとする参謀本部は、朝鮮を日本の支配下におくことを自明の方針としていた。ロシアは韓国(朝鮮半島)侵略の意図をまったく持たず、むしろ南満州から全面撤退してでも日本との戦争を回避したかった。なぜなら、当時、ヨーロッパ情勢が緊迫していたからである。
 つまり、日露戦争は、ロシアの南下政策が引き起こしたものではなく、日本の支配層の朝鮮半島を日本の領土にしたいという願望から始まったものなのである。いやはや、歴史の事実から目を背けるわけにはいきません。
 テレビを見て、間違った戦前の歴史観が定着してしまうのを私も恐れます。その意味で、この200頁ほどの本が一人でも多くの歴史好きの人にまず読まれることを願います。大変わかりやすく、読みやすい本です。
 
(2009年10月刊。1700円+税)

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