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2006年11月 の投稿

萌えるアメリカ

カテゴリー:未分類

著者:堀淵清治、出版社:日経BP社
 米国人は、いかにしてMANGAを読むようになったか、というのがサブ・タイトルです。アメリカで日本のマンガを読む人が増えていて、オタク族であることを自慢気に高言する人がいて、ついにやおい系マンガ愛好者までいるというのです。そして、いまや「少年ジャンプ」がそのまま「SHONEN JYUMP」としてアメリカで発売されているというのですから、ビックリします。なんと、毎月20万部も売れているそうです。まあ、たしかに日本のマンガはストーリーがよく出来ていると私も思います。
 私はマンガは大学生で卒業した気分です。大学生のときは、少年マガジン、少年サンデーを毎週欠かさず読んでいましたし、「ガロ」のカムイ外伝なんて、歴史書物を読むような気分でじっくり読んでいました。その後は、手塚治虫のマンガを読んだくらいで、電車のなかで大人が少年ジャンプを読みふけっているのには、ちょっと異和感を感じたものです。
 2005年のアメリカ、カナダにおける日本マンガの単行本市場は210億円、北米における日本アニメのDVD売上総額300億円に急速に近づきつつある。しかも、このところ売上総額が横ばい傾向にあるアニメに対して、マンガのほうは、2002年に売上総額が1億ドルに達してから、2003年に1億2500万ドル、2004年に1億4000万ドルと、その市場規模は順調に拡大してきた。
 日本とアメリカの本の違いがある。日本は右開き、アメリカは左開き。だから印刷は反転印刷した。そして、翻訳も難しかった。
 苦難のときを迎えて、それをなんとか乗り切り、ヨーロッパにも進出しました。ところがドイツでは90年代末に爆発的に広がったものの、イギリスではもうひとつ。ふむむ、やはり、国民性の違いなんでしょうかね。
 やおい系というのは、男性キャラクターの同性愛をテーマにした女性向けのマンガやアニメ・小説のこと。女性が読者なので、男性同士の同性愛の実態とはかけ離れた幻想にもとづいている。そこでは、マッチョな肉体美とかギリシャ彫刻のような精悍さではなく、あくまでも女性たちが創り出した中性的な美しさがある。
 海外の日本マンガ・ファンは自分たちのことをOTAKUと誇らし気に呼んでいる。
 うむむ、アメリカで日本マンガがそんなに健闘しているのか。初めて知りました。著者は団塊世代より少し下の年代です。アメリカに渡ってヒッピー文化に触れながら日本文化をアメリカに伝えようと苦闘してきたようです。
 たかがマンガ。されど、マンガ。そんな気にさせる本でした。

滅びゆくアメリカ帝国

カテゴリー:未分類

著者:高野 孟、出版社:にんげん出版
 イラク戦争の失敗に気がついたアメリカ国民はブッシュ共和党を敗退させました。武力一辺倒のネオコン一派は総退場で、残るは親王ブッシュのみとなりました。でも、ブッシュの言いなりだった小泉首相と、その後継者である安倍の方はまだ何の教訓も引き出さず、開き直って逃げ切ろうとしています。そして、それを許してしまうマスコミの不甲斐なさに歯がみする思いです。
 石油屋出身のチェイニー副大統領と、軍産複合体マフィアの戦争好きラムズフェルド国防長官の強硬派コンビをユダヤ系中心の実権派スタッフが支え、それが在米ユダヤ人ロビーを経由してイスラエル右派につながっているというネオコン支配の病的な構造がある。裏を返せば、イスラエル右派がネオコンを通じてホワイトハウス中枢にまで浸食して暗愚の大統領(もちろん、ブッシュのこと)を操作する仕掛けは不変である。
 2003年のアメリカの経常収支赤字は5400億ドルで、80年代末の4倍、対GDP比で5%をこえた。国全体の消費と投資を貯蓄ではとうていまかなえず、2004年度で5000億ドル近い空前の財政赤字を出してもまだ足りず、1日あたり15億ドルずつ外国から借り入れしている有り様だ。今後10年間の財政赤字は5兆ドルに達すると見込まれている。
 アメリカの国債残高は、過去4年間に7860億ドル増えて1兆8400億ドルに達した。その増加分の半分以上の4040億ドルを日本が引き受けた。その結果、外国のもつアメリカ国債の4割にあたる80兆円は日本がもっている。それが単なる紙切れと化すリスクについて、日本政府は国民に説明していない。これって恐ろしいことですよね。
 絶対君主制のサウジアラビア、国家テロの常習者であるイスラエル、強権政治のパキスタンやウズベキスタンは、アメリカのいう「ならず者国家」のリストには入っていない。それは対テロ戦争でアメリカに協力しているからだ。
 アフガニスタンとイラクに対する派手な戦争は、アメリカの強さではなく、弱さの表れだ。経済的にみて、アメリカはモノもカネも全世界に依存して生きるほかなくなっている。それを維持できなくなる不安から、ことさら好戦的な姿勢をアメリカはとり、自国が世界に必要不可欠な存在であることを証明しようとしている。
 著者はこの指摘に同感だとしています。私も、なるほど、と思います。
 ある統計によると、イラクの夫婦650万組のうち、200万組がスンニ派とシーア派の組みあわせだ。また、それらのどちらかとクルド人の取りあわせも少なくない。彼らは、もちろん殺しあいを望んでいない。ひゃあー、そうだったんですか。ちっとも知りませんでした。どこでも戦争を挑戦したがる好戦的な人間はいるものなんですよね。
 大多数のアメリカ人は、なぜ自分の国アメリカがイスラム世界で、これほど憎まれているのか、まったく理解できていないし、しようとしていない。しかし、日本人はそれを笑うことはできない。東南アジアで日本がどう見られているか、について日本国内にいる日本人も同じく無知なのである。アメリカ人とまったく同じこと。日本人に自覚がなくても、日本は世界第4位の軍事大国なのである。だから、安倍内閣は防衛省へ昇格させようとしているのです。
 アメリカは世界最大の武器輸出国である。いわば最大の死の商人なのである。あー、やだ、やだ。こんなアメリカに追随して一緒に滅びるなんて、まっぴらごめんです。

逃亡、くそたわけ

カテゴリー:未分類

著者:絲山秋子、出版社:中央公論新社
 精神病院から若い患者2人が逃亡します。別に恋愛関係にあるわけではない男女のカップルです。開放病棟に入院中でしたから、逃亡するのは簡単でした。
 女性は躁鬱病の患者で、躁状態にあります。2人は男性の車に乗って逃避行の旅に出ます。もちろん、行くあてなんかありません。ただ何となく、九州をぐるっとまわる旅です。
 秋月〜甘木〜大分〜国東半島〜阿蘇。そのうち、どうにも薬が欲しくなり、途中で見つけた精神科にかけこみます。薬をもらって一息つくと、再び旅に出かけるのです。鹿児島の長崎鼻にたどり着きました。九州を縦貫したわけです。九州各地の名所案内を読んでいる気分にさせてくれます。
 2人の若者の微妙な心のゆれを描いている不思議な小説です。福岡の岩本洋一弁護士が、とても面白いから読んでみたらと教えてくれて読みました。
 九州弁をつかっても、実は名古屋弁も少し顔を出しますが、小説はできるんだなと思い知らされました。

藤沢周平 父の周辺

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著者:遠藤展子、出版社:文藝春秋
 藤沢周平の一人娘である著者が父のことを語っています。ほのぼのとした味わいの語りなので、ゆっくり舌に文章をころがしながら味わいました。
 藤沢周平を私が読みはじめたのは、比較的最近のことです。山田洋次監督の映画「たそがれ清兵衛」「隠し剣・鬼の爪」を見たころからでしょう。今度の「武士の一分」もぜひ見たいと思っています。封建社会のしがらみのなかで、必死に生きている人間の姿が、胸にぐっときます。そして、見終わったあと(本の方は、読み終えたとき)、なんとなく爽やかなのです。といっても、テーマは、案外、重たいものばかりなのですが・・・。
 今から30年前、弁護士になるころは山本周五郎を愛読していました。いま石巻で開業している庄司捷彦弁護士から勧められて読みはじめて、止まらなくなってしまったのです。周五郎の江戸下町人情話は実にいいですよね。なんか、こう、しっとりとした情緒があります。胸にじわっと沁みてきます。
 藤沢周平の本名は小菅留治(こすげとめじ)。山形県鶴岡市の生まれです。周平は省内方言でいうカタムチョ(頑固)でした。若いころ結核で療養生活を余儀なくされました。
 周平はギターもピアノも上手に弾けたそうです。教員時代に身につけたのです。
 著者の生みの母親は病死して、周平は後妻を迎えます。幸い娘とはうまくいったようです。周平の妻は秘書その他もろもろの用をこなしました。
 妻は仕事の進み具合を体重で分かるというのです。締め切り間際になると、体重が2キロから3キロは減ってしまうのです。妻は夫・周平の仕事をきちんとしているかどうか訊くため、「体重はいま何キロ?」と訊いたのだそうです。体重が減っていたら仕事をきちんとした証拠で、変わっていなければ仕事をしていないことになるというのです。まさに作家の仕事というのは、心身をすり減らすものなのですね。
 周平は自律神経失調症であり、閉所恐怖症でした。やっぱりそうなんですね。あんなにこまやかな性格描写ができるということは、自分の心身の状態にどこか不安がなければ無理だと私は思います。健康そのものの人に人間のゆれ動く心理描写がどれだけ出来るのか、私には疑問があります。
 著者の母、すなわち周平の妻の趣味は周平でした。冗談ではなく、本人が言っていたそうです。他に何の趣味も持たず、ひたすら周平のために尽くしてきました。たとえば、周平が原稿を書き上げると、誤字脱字のチェックをします。それも、周平の原稿用紙に直接書き込むのではなく、別の紙に何頁の何行目などと書いて編集の担当者に渡していたそうです。周平の原稿は直しの手が入ってない完成版だったそうです。よほど推敲していたのでしょう。
 周平の一日はとても規則正しかった。朝7時に起床。7時半に朝食。白いご飯と味噌汁。納豆、のり、チーズは毎日欠かさない。朝食のあと2階へ周平は上がり、妻が周平の仕事場に入ることはない。周平は2階に上がると、横になって新聞を読む。肝炎のため必要なことだった。
 午前10時、散歩に出かける。途中で喫茶店に立ち寄りコーヒーを飲む。
 午前11時に帰宅して、自分あての郵便物を受けとり2階へ上がる。1時間ほど仕事する。昼食は12時ちょうど。そのあと、また2時間は横になり、CDを聴きながら昼寝する。その後、夕方6時まで、みっちり仕事をする。夕食はきっちり6時にとる。7時半に風呂に入り、夜9時から10まで仕事をする。11時に寝る。
 作家は自由気ままな生活をしているより、規則正しい生活をしている方が偉大な仕事が出来ると誰か有名な人が言っていました。藤沢周平も同じだったんですね。私も、毎日、同じように過ごしています。大作家を夢見て・・・。
 土曜日(18日)から一泊で鹿児島に行ってきました。桜島が雨に煙っていました。

真相、イラク報道とBBC

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著者:グレッグ・ダイク、出版社:NHK出版
 イギリスはアメリカのイラク戦争に加担し、今も続けています。そのイギリスのBBCは大量破壊兵器の有無をめぐってブレア政府と対立し、ついにBBCのダイク会長は辞任させられてしまいました。そのダイク前会長が、その内幕を暴露した本です。日本でも、NHKがこれほどの気骨を示してくれたら、私も受信料を払うのですが・・・。
 ダイクは1947年、ロンドン近郊の庶民の町で、保険外交員の子として生まれました。私と同じ団塊世代です。
 仕事以外のことはすべて放り出し、編集室の床の上で寝ないと一人前のプロデューサーとはみなされないという時代が、かつでのテレビの世界にあった。しかし、今や、その考え方はまったく意味がない。ダイクは、休暇をしっかり取るべきだと言い続けた。休暇は家族の問題だから。
 資本が労働を商品のように売ったり買ったりするやり方は、ますます通用しなくなっていた。企業の経営を成功させたいのであれば、企業で働く人々をまともに使わなければならない。現代の資本主義の下では、企業が成功したいと願うなら、そこで必要なのは、熱心な労働者であり、満ち足りた労働者である。もっとも効率的に人間が働くのは、恐怖心によってではなく、物事を決めるプロセスに参加させ、組織が目ざす目標の設定に参加させ、達成をともに祝うことによってである。
 ダイクは2000年1月にBBCの第13代会長に就任した。ダイクはパブリックスクールにもオックスフォードもケンブリッジも通ったことのない初めてのBBC会長だった。しかも、BBC勤務の経験もなかった。
 放送メディアが中心にもつ役割のひとつが、時の政府に対して疑問を投げかけ、いかなる圧力に対しても抵抗に立ちあがるというもの。ダイクは政府がBBCに圧力をかけてこようとすれば、抵抗してたたかうという姿勢を明快にうち出した。
 官庁街で働く人間の多くはイラクに大量破壊兵器があるかのような新聞報道が間違っていることを知っていた。しかし、危機を強調する報道内容を正しいものにしようとはしなかった。ブレア首相の官邸が、そのような新聞の見出しを求めていたから、イラクに大量破壊兵器があることを前提として、「攻撃(終末)まで45分」という大見出しをうっていた。しかし、本当にそれでよいのか。
 ダイクは結局、追放されてしまいました。逆に、大きなウソをついてイギリス国民をだましたブレアは、今もなおイギリス首相であり続けています。本当に不思議な世の中です。
 イラクで日本の航空自衛隊がいま何をしているのか、NHKは60分の特集番組を組んで放映して国民に知らせるべきではないでしょうか。イラク戦争に日本はアメリカ軍と一緒になって加担しているという現実を・・・。日本人はイラク戦争の傍観者ではありえないのです。
 日曜日に仏検(一級)を受けてきました。手元に残してある答案用紙を見ると、なんと一回目に受けたのは1996年でした。それから毎年あきもせず受けてきたのです。我ながら感心します。というのも、一級に合格できるような実力はまるでないことを認めざるをえないからです。1問目の動詞を名詞に換えて文章を書きかえるのは全滅、2問目の最適の動詞を入れるのも全滅。3問目あたりからようやくヒットするのがあり、長文読解になるとまあまあ、書き取りはぐっとよくなる。そんな感じです。やっと6割とれたかなという成績です。でも、さすがにフランス語の文章に怖さはなくなりました。これが長くやってきた取り柄です。

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