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2006年2月 の投稿

皮膚は考える

カテゴリー:未分類

著者:傳田光洋、出版社:岩波科学ライブラリー
 皮膚は、それ自体が独自に、感じ、考え、判断し、行動する。皮膚は単に環境と生体の境界をつくるだけでなく、環境の変化に応じて、さまざまな信号を発信している。その表皮からの信号は免疫系や中枢神経系などと密接な関係をもっている。
 成人の皮膚の面積は1.6平方メートル、たたみ一畳分の大きさ。重さはおよそ3キログラム。表皮はパワフルな電池でもある。表皮は裏側を基準にすると100ミリボルトに近いマイナスの電圧をもっている。表皮の裏と表とに電位差がある。つまり表皮そのものが電池なのである。細胞の内外にイオンの濃度差ができるので、電位差が発生する。皮膚の表面電位は、生きている表皮細胞がエネルギーをつかって起こしているものだ。老人のカサカサ肌の原因は、この電池切れによって起きている。
 皮膚は他の臓器と違って他人のものを移植することはできない。皮膚には自分のものではない物質を見分ける機能がある。
 皮膚は光を感じて、その情報を内分泌系、神経系に伝えている可能性がある。
 皮膚は興奮しっぱなしだと肌荒れがおきる。その興奮を鎮めてやることが肌荒れを改善し、皮膚のバリア機能を健康に保つ。
 環境からのさまざまな心的ストレスは皮膚機能に影響を及ぼす。逆に、リラクゼーションによって、その影響を緩和できる。
 皮膚の健康は身体全体の健康をもたらす。ヤリイカも弱ってくるときは、まず皮膚がダメになってくる。
 私は、十数年来、ほとんど風邪をひきません。毎週のようにプールで30分かけて1キロ泳ぎ、毎朝、冷水シャワーをあび、毎晩、お風呂あがりに冷水シャワーをあびているおかげです。若いときにはお風呂でタワシをつかって皮膚を鍛えていました(少なくとも、そのつもりでした)。ところが、背中の皮膚がカサカサになって痒いので、皮膚科の医師(私の小学校の同級生です)に診てもらったところ、年とったら、そんなことをしてはいけない。大切な表皮をはぎとるようなもので、良くない、もう年齢(とし)を考えなさいと戒められました。それからは、手にせっけんを塗って身体をなでまわすだけにしています。この本は表皮の大切さを強調しています。
 ところで、1960年生まれの著者はうつ病にかかりましたが、気功で治ったといいます。気功と同じようなものとして鍼灸があります。経絡という「気」の伝達経路が知られています。著者は、その経絡についても皮膚の科学が発達すれば、解明されていくだろうと予測しています。なーるほど、皮膚の果たしている役割を知ると、そうかもしれないなと私は思いました。

アマゾン・ドット・コム

カテゴリー:未分類

著者:横田増生、出版社:情報センター出版局
 アマゾン・ドット・コムの物流センターに2003年11月から2004年3月までの半年間、作業員として潜入して働いた体験をもとにした本です。
 アマゾンの顧客1人あたりの平均単価は3000円。2003年の売上げは500億円をこえたという。
 アマゾンは1500円以上の注文については送料をタダにしている。しかも、24時間以内に発送できる。その仕組みは何かを追跡した本でもあります。
 物流センターは、日通の子会社が運営している。アマゾンが1500円の本を業界平均の78%で仕入れたとすると、粗利は330円。送料300円を負担しても、まだ30円が残る。ちなみに、ヤマト運輸の宅急便は1個あたりの平均単価は700円。アマゾンは、その半分以下。物流センターで働くアルバイトの時給は900円。1分間に3冊の本を抜き出す作業を広大な倉庫のなかで手作業ですすめる。本の大きさが一つ一つ違うために、自動化できず、人海戦術をとらざるをえない。アルバイトをしているのは意外にも50代の男性が多い。もちろん、主婦も多い。
 アマゾンで本が売れるのは、読者の好みをコンピューターが把握し、それによって同じジャンルの本をすすめてくれるから。つまり、アマゾンンのサイトを訪れたら、欲しい本が簡単に手に入るだけでなく、さらにお金をつかおうという気にさせる仕掛けが満載されているからだ。
 ちなみに私はアマゾンを利用したことは一度もありません。今のところ、利用する気もまったくありません。インターネットの世界にこれ以上かかわりあいをもちたくないからです。でも、いまやパソコンの前に坐ってインターネットで本を注文するのが常識なのですね。私の本も買ってくださーい。えっ、何の本かって・・・。それはヒミツです。(なんだか矛盾していますね。ゴメンナサイ)

心で知る韓国

カテゴリー:未分類

著者:小倉紀蔵、出版社:岩波書店
 この著者の本はいくつも読みましたが、毎回、なるほどなるほど、とつい感心してしまいます。さすが哲学専攻の教授だけはあります。
 韓国のドラマでは、恋愛ものであろうが社会ものであろうが何であろうが、最初の数回は主人公の子ども時代の話をするのが定番だ。これがないとドラマが始まらない。そこでは、主人公とその周囲の人物がいかなる不幸を背負わされたのかという説明過多の描写がなされる。
 恨はハンと読む。日本語のうらみとは意味が違う。うらみは相手に対して抱くものだが、ハンは自己のなかで醸(かも)すもの。ハンは、特定の相手に対する復讐によって解消されるというよりは、いつの日にか解消されるもの。
 韓国ドラマはハッピーエンドで終わる。そうでないと視聴者がいっせいに抗議してくる。スポーツ選手も歌手も俳優も、自分たちの技術のみによっては評価されない。その人がいかに道徳的であるかということによって評価される。それは、社会的に俳優という職業の地位が低く、そのため社会から道徳的なふるまいを要求される圧力が日本よりずっと強いからだ。つまり、そのようなふるまいをしなければ社会的に葬られてしまう危険性を常にともなっている。
 韓国人は、人の容姿に非常に強い関心を示す。また、人の容姿を評価するのにいたって積極的で、遠慮がない。小さいものは欠陥のひとつ。とにかく嫌われる。
 若い世代は男性が多く、女性をゲットするのに必死だ。10回切って倒れない木はないというのが彼らの信条だから、とにかく猪突猛進する。たとえば、公衆の面前で女性に花束をあげたり、友だちとの集まりで自分の恋人を徹底的にほめあげる。日本の女性なら恥ずかしいからやめてというところ、韓国女性は意外にこういうのを喜ぶ。自尊心が満足されるから。
 うーん、本当でしょうか。もし本当だとしたら、やっぱりお国柄はかなり違いますね。日本では自宅に来客があったとき、出前の寿司をとってもてなすことがあり、それは失礼にあたらない。ところが韓国では絶対にありえないこと。韓国人は、自分が著しく蔑視されているか、存在を軽視されていると思う。その悔しさと怒りを一生忘れないだろう。
 えーっ、そうなんですかー・・・。寿司の出前って、日本ではそこそこのおもてなしですよね。
 韓国では詩集がよく売れる。書店で日本人はマンガを立ち読みするが、韓国人は詩集を立ち読みする。しかし、だからといって韓国社会が浪漫あふれるポエジーの世界かといえば、その正反対で、弱肉強食のドロドロの世界でもある。だからこそ、人々は厳しく苦しく現実から目をそらすために純粋な叙情性を求める傾向がある。そうなんですか・・・。
 大統領になった年齢は、朴正熈 46歳、全斗煥 49歳、盧泰愚55歳、金泳三65歳、金大中72歳。そして、今の盧武鉉大統領は・・・。商業高校卒業から弁護士となり、国会議員、大統領とのぼりつめ、コリアン・ドリームを体現している。
 韓国社会ははげしい上昇志向の渦巻く社会である。
 近くて遠い国。似ているようで違う国。つい、そんな気になってしまう本でした。

陸軍尋問官

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著者:クリス・マッケイ、出版社:扶桑社
 アフガニスタンで、アメリカ軍がつかまえた捕虜を尋問する役目を担った軍人の体験記です。
 アフガニスタン戦争をアメリカが始めたとき、アメリカ陸軍は510人の尋問官をかかえていた。このうち108人がアラビア語を話せた。アメリカ陸軍は、1971年、南部アリゾナ州のフォートチュカに情報官養成施設をつくり、毎年ここから数百人の尋問官が巣立っている。
 そこでは、尋問の目的は捕虜に話をさせることではなく、真実を語らせることだという教育を受ける。捕虜の口を割らせる技術は基本的には心理的な駆け引きである。
 軍隊はさまざまな人間が寄り集まる人種のるつぼだが、情報部門は違う。圧倒的に白人が多く、教育水準も高い。だから、戦闘要員よりも考え方はリベラルだ。
 尋問で注目すべきは、普通の会話と同じように、目である。悪智恵にたけた容疑者は、尋問官から目をそむければ嘘をついている証拠とみなされることが分かっているので、その逆、つまり普通以上に長くアイコンタクトを続けようとする。
 心の動揺が激しいときには、とくに手の動きが活発になる。だから、手足の動きを細かく観察するのが大切。自分が弱く無防備と感じたときには、性器の前に手を置いたり、内臓を守ろうとするかのように腹部の前で腕を組んだりする。肩をそびやかすのは、服従拒否、挑戦のしるしだ。
 収容所の場所は捕虜には明かさない。捕虜を半信半疑の状態に置き、その不安感を利用して、尋問を有利に展開する。捕虜を震えあがらせる。
 奴らをモンスター、つまり化け物扱いするんだ。人間じゃないと思え。
 捕虜か尋問官のどっちかが倒れるまで、ぶっ通しで取り調べをする。連続15時間ということもある。
 あるときにはアラブの将官やイギリス将校に変装する。衛星写真を改ざんし、新聞を偽造することも平気だ。
 アフガニスタンで尋問した結果、もっと調べたいと思った人間は、キューバにある米軍のグアンタナモ基地内の収容所へ移送する。
 付録として、16の尋問テクニックが紹介されています。プライドと自尊心を鼓舞したり、くじいたり、恐怖を煽ったり鎮めたり、さまざまのテクニックが駆使されています。
 イラクのアブグレイブ刑務所での捕虜虐待は考えられないこととされています。でも、実のところ、日常茶飯事だったのではないでしょうか。
 アメリカ軍の言い分はこうです。フセイン政権の方がもっと残虐なことをしていたじゃないか・・・。たしかに、そうなのかもしれません。でも、かといってイラクやアフガニスタンへ侵攻したアメリカ軍が同じように残虐な行為を捕虜にしてよいことにはなりませんよね。

君の星は輝いているか

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著者:伊藤千尋、出版社:シネ・フロント社
 私と同じ団塊世代です(正確には私の一歳下)。東大法学部を卒業して朝日新聞社に入り、世界各地に特派員として赴任しています。ブラジルのサンパウロ、スペインのバルセロナ、アメリカのロサンゼルスの、それぞれ支局長をつとめています。南アメリカ特派員の体験にもとづく「太陽の汗、月の涙」(すずさわ書店)を読んだのが、この著者との出会いでした。すごく爽やかで、深い感銘を受けたことを覚えています。
 驚いたことに、著者は大学時代にキューバに出かけて、半年間も砂糖キビ刈り国際ボランティアをしたというのです。すごいですね。1971年のことです。東大闘争も終わり、私が司法試験を受けている年のことです。著者も裕福ではなかったようですが、貧乏学生だった私には海外へ出かけるなどと考えたこともありませんでした。セツルメント活動という地をはいまわるような活動をしていたせいもありますが・・・。
 この本で、著者は海外で体験したことを、みた映画と結びつけて紹介しています。味わい深い内容です。ついつい感心しながら読みすすめていきました。私も見た映画がいくつもあり、うれしく思いました。
 「華氏911」、「フリーダ」、「JSA」、「二重スパイ」、「ボウリング・フォー・コロンバイ」、「 蝶の舌」、「レセ・パセ」、「戦場のピアニスト」、「この素晴らしき世界」です。でも、この本を読むと、たくさんのいい映画を私は見損なっているようです。
 民主主義とは、すでにあるものではない。日々、つくり出すものである。
 世界はバラ色ではないが、しかし、前に比べるとよくなっている。身近な問題から達成しよう。教育や組織化によって社会は変えられる。意思さえあれば何でもできる。権力を倒すために正しい運動をすべきだ。一人一人が声を上げることだ。
 私も、まったく同感です。
 マイアミでは日本製の時計が異様なほど大量に売れる。これは、麻薬組織が麻薬の売上金でいったん日本製の時計を大量に買い、その時計をメキシコや南米のコロンビアなどにいる麻薬マフィアに「輸出」する。受けとった麻薬組織は現地で時計を売る。こうすると正当な時計の売り上げとなって記録され、麻薬売買の跡形が残らない。汚い金が、こうやって洗浄される。
 アメリカでは年間に銃で殺された人は1万1127人。カナダでは165人。日本は 39人。
 ダスティン・ホフマンは、中学生のとき、背が低くてコンプレックスの塊だった。高校生のときは、成績が悪くて退学寸前だった。俳優を目ざしたのは、俳優の多くは成功しない。成功しなくても、俳優として尊敬される。尊厳を保てるし、失うものがない。チビだ、無能だと蔑まれながら、誇りだけは失わないのが彼の青春時代だった。ホフマンは言う。人生で大切なのは、自分が情熱を持てることをやることだ。成功することより、そっちの方が大切だ。
 いい言葉ですよね。たくさん本を読んでいると、素晴らしい言葉にめぐりあうことができます。

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