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2005年7月 の投稿

談合しました

カテゴリー:未分類

著者:加藤正夫、出版社:彩図社
 談合で入札者を決めるのを調整と呼ばれ、ふつうは密室で行われる。調整というと聞こえがいいが、実際にはそれぞれ勝手な理由を言いあっているだけであり、最終的にはほとんど力関係で決まる。業者の規模や役人とのつながり、実績によって発言力が大きく変わってくる。
 契約担当の公務員には2種類いる。一つは、賄賂はとらないし談合に協力もしないが、とりたてて不正を暴こうとはせず、「談合するなら勝手にやってくれ、ただし、うちの入札で間違いだけは起こさないでくれ」という態度をとる。
 もう一つは、よこすものは遠慮なく受けとり、なにかと業者の都合を聞き入れてくれる。しかし、自らすすんで賄賂を求める役人はごく少ない。
 談合なしで入札があると、毎年のように請負業者が切り替わるので、心配事が増える。談合で既存になった業者とは長いつきあいになるので、あうんの呼吸で仕事ができる。役人にしてみれば、たとえ経費が高くなったとしても、自分の仕事が楽になればいいのだ。
 役人の協力あるいは黙認がなければ談合は成り立たないし、鶴の一声の存在こそ、談合事件の肝である。談合とは一件一件が孤立した犯罪ではない。グループによって連綿と行われる性質をもった犯罪である。
 既存権というものがある。談合によって落札を約束されている権利のこと。この既存権は貸し出されることもある。
 私もオンブズマン運動にかかわって、談合を裁判で追及したことがあります。しかし、刑事事件になっていないときに談合の成立を裁判所で立証することは不可能に等しいのが現実です。裁判官が認めようとしないからです。
 日本経団連は高級官僚が大企業へ天下りするのが談合の原因のひとつだと認めて、天下りを受けいれないと高らかに宣言しました。ところが、その宣言はわずか数日で取り消されてしまいました。鶴の一声を求める企業の黒い体質は、それほど根深いものがあります。
 この本は談合することを仕事のひとつとしていた担当者が匿名ながら、自分の体験を赤裸々に暴いたものです。日本での談合が横行しており、まさに日常茶飯事であること、その根絶はやる気になればそう難しいことではないことが明らかにされています。

誰がダニエル・パールを殺したか?

カテゴリー:未分類

著者:ベルナール・アンリ・レヴィ、出版社:NHK出版
 アメリカの「ウォールストリート・ジャーナル」紙の記者がパキスタンのカラチで誘拐され首を切断されました(2002年1月31日)。殺されたダニエル・パールはユダヤ系アメリカ人。この事件の真相をフランス人が現地に飛んで追いかけました。
 そのジャーナリストはボディガードをなぜつけなかったのかと問う人がいる。しかし、ガンマンに護衛されて出歩くジャーナリストとはいったい何者なのか。第一、そんな用心をしたら、かえって目立ち、自分の存在を悪意ある人々に知らせるだけ。第二に、護衛は1日10ドルで雇われた退役警官だ。本当に危なくなったとき、彼らは自分の身を盾にしてまで守ってくれるだろうか。誘拐にあったら、決して逃げようとしてはいけない。これが絶対の規則だ。
 首謀者として捕まったオマル・シェイクは実は1973年にロンドンで生まれた。ロンドン大学を優秀な成績で卒業している。だからパキスタン人というより、イギリス人なのだ。それなのに、なぜ、熱烈なジハード戦士になったのか・・・。つい先日、ロンドンで列車・バスの同時爆破テロが起きました。自爆犯人たちはいずれもイギリス生まれのパキスタン人だと報道されています。本件とまったく同じです。
 カラチに来たジャーナリストが守るべき規則。ホテルの正面の部屋には泊まらない。道でタクシーを拾わない。核開発計画とイスラム教については絶対に話をしない。市場、映画館、雑踏、一般的な公共の場所へ出かけるときは細心の注意を払う。出かけるときには、信頼のおける人物にどこへ行くか何時にどうやって帰るかを知らせておく。公園は麻薬中毒者と犯罪者のたまり場になっている。
 アルカイダには現代的で教養のある若者がたくさんいる。彼らは西洋の金融システムの利用の仕方も弱点もよく知っている。9.11の前にアメリカン航空の株を空売りし、値が下がったところで買い戻して利益をあげるなんて朝飯前のこと。アルカイダとは、もうずいぶん前から自分たちだけの家族経営の小企業ではない。れっきとした巨大企業、いやマフィアである。世界中にひろがった資金強奪の巨大組織網なのだ。
 サウジアラビアの進歩的な弁護士は、イスラム主義はビジネスになっているという。アッラーとは無関係に、富と権力への近道だから、みんながイスラム主義に走る。
 アルカイダの活動報酬は、1回の作戦について2500〜3000ルピー(1ルピーは1.8円)。手榴弾を投げる報酬は1個につき150ルピー(結果がよければ、別に特別手当がつく)。インド軍将校へのテロ行為なら相手の階級に応じて1万から33万ルピー。自爆テロ実行犯にも報酬がある。家族にまずまずの生活環境を保障できるようにする。とりあえず5000ルピー、ときに1万ルピーが渡され、あとは契約にもとづいた生活環境が終身保障される。
 いかにもフランス人の書いたものという感じの思索的な文体でしたが、内容はテロの温床には根深いものがあることを明らかにするものです。

スペースシャトルの落日

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著者:松浦晋也、出版社:エクスナレッジ
 スペースシャトルがはじめて飛んだのは今から24年前、1981年4月12日でした。あのころは、近い将来、宇宙にどんどん人間が出ていき、宇宙ステーションでは野菜の栽培もできるようになるだろうと思っていました。
 たしかに、今、フツーの大金持ちが宇宙旅行を楽しめるようにはなりました。秋山さんのときにはTBSが何億円払ったのでしたっけ・・・。アメリカと南アフリカの実業家が最近、それぞれ21億円支払って宇宙観光を楽しみました。でも、それはアメリカのスペースシャトルではなく、ロシアのソユーズ宇宙船です。今、地球をまわる軌道上にいるのはロシアのソユーズだけです。
 では、スペースシャトルの方は・・・。近く日本人の3人目の飛行士が乗ることになっていますが、もう5年以上も待たされています。
 スペースシャトルは全部で6機つくられ、1機は既に博物館入りし、事故を起こしたコロンビアとチャレンジャーは機体がありません。現役で運用可能なのは3機ですが、スペースシャトルの製造ラインは1992年に既に閉鎖されています。本当は、スペースシャトルは年間50回うち上げる計画だったのです・・・。
 著者はスペースシャトルは宇宙船として巨大な失敗作であると断言しています。設計コンセプトがそもそも間違っていたのに、アメリカは間違いと無理を重ねました。そのあおりを日本はくらっているといいます。同じように、宇宙ステーション計画も、アメリカは既に投げ出しているのに、日本はまだそれにしがみつこうとしているのです。
 たとえば、スペースシャトルには翼がついていますが、この翼も有害無益だったとして、その誤りを論証しています。もちろん、科学的なことは私にはよく分かりませんが、なるほどと思わせる内容です。
 アメリカのニクソン大統領がスペースシャトルを採用したとき、重要な理由として、ソ連の軍事衛星を捕獲できることがあったそうです。とんだ目的です。24年間も宇宙開発に遅れをもたらしたアメリカの責任は重大だという指摘には納得できるものがあります。
 ところで、アポロ13号は本当に月面に降りたったのでしょうか。あれもアメリカの大ペテンだったという本を読んで、なるほどおかしな写真がたくさんあると私も思いました。その後、どうなっているのか、この論争は決着ついたのか、誰かトラックバックで教えてください。
 ペテンといえば、9.11のペンタゴンへの衝突映像にジャンボ飛行機の残骸がひとつも映っていないのはおかしいというアメリカのテレビ番組をビデオで見ました。こちらも本当に奇妙な映像です。世の中はペテンだらけのようで、何を信じていいのか分からなくなります。

代官の日常生活

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著者:西沢淳男、出版社:講談社選書メチエ
 代官というと、すぐ水戸黄門に出てくる強欲な悪代官というイメージを連想します。たしかに、そのような悪代官もいなかったわけではないようですが、多くは旗本のなかでも最低ランクの官僚として真面目に仕事をしていました。いえ、それどころか地元民から神様のようにあがめられ顕彰碑を建ててもらった代官も多かったのです。
 代官採用試験で、そろばんをつかった割り算の計算問題が出されたというのが紹介されています。57万3000石を1俵13斗7升入りに換算すると何万何千俵になるかという問題です。今の電卓なら簡単ですが、これをそろばんでやると、ちょっと面倒です。
 代官職のほとんどは世襲ではなかったとのことです。本人のみというのが81%もあります。それはうまみがなかったどころか、出費が大変だったということです。代官になるには2000両もかかり、部下に悪い者がいたら、借金をかかえてしまい、下手すると、島流しになってしまうというのです。ですから、それなりの能力が求められるので、世襲は無理でした。
 江戸時代の中間管理職としての代官の日常生活を垣間見る事のできる本です。

肉弾

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著者:櫻井忠温、出版社:明元社
 1904年(ひとつくれよと露にゲンコと覚えました。絶対に忘れられません)の日露戦争から100年がたち、その記念出版として、明治39年に出版されてベストセラーとなった戦記を復刊した本です。
 日本軍が旅順の周辺に難攻不落の要塞をかまえていたロシア軍に果敢に攻めこんでいきますが、日本軍にないロシアの最新式機関砲にバタバタと日本兵がなぎ倒されていく悲惨な様子が描かれています。士気高揚の戦記文学といっても、戦場の悲惨がかなり描かれているところに特徴があります。木口小平は死んでもラッパを離しませんでした、というだけではありません。どんなに肉弾を費やしても、ロシア軍の堅牢無比を誇る敵塁に対しては効果を奏せないで終わったのです。また、ロシア軍の兵士が頑強に敢然として戦い、日本軍にしぶとく抵抗したことも紹介されています。
 このところ母の伝記を調べている関係もあって、日露戦争について調べているのです。

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