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2005年4月 の投稿

アメリカは正気を取り戻せるか

カテゴリー:未分類

著者:ロバート・B・ライシュ、出版社:東洋経済新報社
 著者はクリントン政権時代に労働長官をつとめていました。私と同じ団塊の世代です。
 ネオコンという言葉は最近ようやく日本人にも定着していますが、この本ではラドコンという言葉が登場しています。耳慣れないのですが、過激保守派ということです(ラジカル・コンサーバティブ)。ラドコンは強い信念をもっている。それが強さになっている。自分たちは悪との戦いにおける善の力を代表していると確信している。
 ラドコンに同意しない人々は政治に幻滅し、意気阻喪しており、反撃しても仕方がないと思っている。公共の場ではリベラルの思想や理想が語られなくなっている。
 ラドコン版の繁栄は、金持ちに報い、中産階級にはほとんど何も与えず、貧困者は不利な状況に追いやる。トップ経営者が巨額の報酬をさらに増額させている一方で、中間レベルの経営者や時給で働く労働者は仕事を失ったり、定年のための貯えを年金給付もカットされている。
 トップ経営者の所得は1980年に平均的労働者の賃金の42倍だったが、1990年にはそれが85倍となり、今は280倍にもなっている。それも会社の業績自体は悪化しているのに・・・。昔は限度というものがあったが、今はない。
 アメリカの高額所得者の所得税率は、第一次大戦中は77%、第二次大戦中は90%。それが、1980年に70%だったのが、レーガンが28%にまで大幅に下げてしまった。健康保険の民営化は金持ちにとっては良いアイデアだが、そうでなければ悲惨な目にあう可能性がある。
 ラドコンのすすめる武力行使は無責任だ。その結果、テロ行為を増やしてしまうからだ。
 アメリカは、イランのシャー、コンゴのモブツ、ニカラグアのソモサ、ギリシャや韓国の将軍、チリのピノチェト、フィリピンのマルコス、アフガニスタンのムジャヒディンを援助してきた。アドバイスを与え、暗殺団や拷問の専門家を訓練し、設備を提供し、さらに独裁者が蓄えた巨大な富を隠すのに手伝ってきた。ラドコンは世界から危険を取り除くどころか、一段と世界を危険なものとしている。
 リベラル派が勝利するのには、熱意つまり情熱が必要だ。リベラル派は今こそたたかいを開始しなければならない。多くの真面目な有権者が政治に幻滅を感じて棄権している。そんな有権者は、腐敗したシステムを変えるのには上品なだけではダメだということを知っている。やはり、真の改革者であるという熱情をもって訴えなければいけないのだ。しかも、それを楽しくやらなければならない。希望とユーモアの気持ちをもって政治を実践しなければならない。
 この最後の訴えかけに私もそうだ、そうだと心が震えました。今は状況に負けて、愚痴をこぼしているときではないのです。9条改悪なんて許さないぞ。さあ、明日から、もうひとがんばり楽しくたたかおう。この本に勇気をもらって、ますます元気になりました。

悪魔のマーケティング

カテゴリー:未分類

著者:ASH、出版社:日経BP社
 タバコを吸うと、ひとは快感を得る。ただし、30分程度しか快感は続かない。30分過ぎると、ニコチン切れの状態に陥り、イライラするなど不愉快な禁断症状が出てきて、タバコが吸いたくてたまらなくなる。ニコチン依存症だ。喫煙者の大半は本人の意思ではなく、ニコチン依存症のせいで、タバコを吸わされている。ニコチンは脳のドーパミン系に作用して、ヘロインやコカインなどの麻薬と似た働きをする。
 紙巻タバコには、ニコチンの体内吸収を促進する添加物が含まれている。紙巻タバコは、ニコチンを注入する注射器なのだ。タバコの煙には、4000以上の化学物質が含まれている。その多くは、発癌性物質であり、変異原性物質であり、有害なもの。タバコを原因として死亡する人は日本で年に9万5000人と厚労省は推定している(1995年)。
 24歳をすぎてタバコを吸いはじめるのは5%以下。だからタバコ産業のターゲットは18歳。18歳でタバコを吸いはじめると、その銘柄を忠実に吸い続け、年をとっても銘柄を変えることはない。もし、ヤングアダルト・スモーカーがタバコを吸い続けなければ、タバコ産業は衰退していく。
 紙巻タバコからニコチンを全部とり除くことは実は可能。しかし、ニコチンが少なすぎると、人気を失ってしまう。ニコチン中毒者が生まれないとタバコ産業もなりたたない。低タールタバコは、喫煙者が禁煙するのを遅らせたり、断念させたりするための戦略の一部である。
 女性は男性に比べると、タバコによる健康影響が出やすい。乳癌で亡くなった女性は1万人足らず。子宮癌は5千人ほど。ところが、肺癌は1万5千人もいる。女性はホルモンや体格のうえで、タバコ依存症にもなりやすい。タバコはダイエットに良いどころか、逆に美容の大敵。肌荒れ、しみ、歯と歯茎の病気、しわが増加する。ところが、第三世界で女性の喫煙率は急スピードで上昇している。
 タバコを吸うのが経済発展の象徴であるかのような幻想が第三世界に広がっている。世界で生産される7%のタバコが輸出にまわされ、そのうち3%が密輸されている。
 もちろん、俺たちはそんなもの(shit)は吸わない。ただ売るだけ。タバコを吸う権利なんざ、ガキや貧乏人、黒人そのほかのおバカな方々に謹んでさしあげる。
 こんなに馬鹿にされて、それでもあなたはタバコを吸い続けますか・・・?

東大で教えた社会人学

カテゴリー:未分類

著者:草間俊介、出版社:文芸春秋
 私と同じ団塊の世代が東大工学部で学生に対して、知っておくべき社会の「暗黙知」を教えた授業が本になっています。うんうん、なるほど、そうだよな。つい我れ知らず頭を上下にふりふりさせながら面白く読みました。
 日本の土地神話は銀行の担保主義に支えられてきた。土地の資産価値は下がらない。つまり、地価は上がり続けるという幻想があったから、銀行は土地を担保に取ってきた。そして、銀行が担保にとるから土地の値段がついてきた。しかし、その銀行も今では、その土地がどれだけ収益を生むのかという評価に変わってきている。これからは収益の上がらない土地の地価上昇はないと考えるべきだ。
 対米追従は従来型システムの典型。自国の正義を声高に主張するアメリカには自分の醜さが見えていない。それがアメリカの浅はかさであり、恐ろしさだ。そんなアメリカに依存して生きなければいけない日本は危うい。
 日本の政治家や官僚には、アメリカを怒らせたくないという恐怖心が根底にある。アメリカが守ってくれるという対米従属の体質が骨の髄まで染みついている。アメリカから文句を言われると、「はい、そうですか」とすぐに言うことを聞いてしまう。こんな思考停止状態を続けていたら、日本はいつまでも国家ビジョンをもちえない。
 日本の製造業が強くなったのは、人材の有能さだけでなく、しっかりした人材育成をしていたから。誰にでも潜在能力がある。これは、トレーニングによる日々の鍛錬と本人のやる気のうえに、チャンスが重なって初めて発現する。開拓せずに放っておくと潜在能力はいつのまにか消失してしまう。だから、フリーターが潜在能力を開花させるのは至難の技だ。どこの会社でも、給与は自分の稼いだ額の3分の1しかもらえないもの。つまり、会社としては給料の3倍は働いてもらわないと人件費がペイできない。立派な戦力として評価されるには5倍は働かないといけないものだ。
 トップと同じような考え方をする人間ばかりの会社は居心地がいいかもしれないが、周囲の状況変化への対応力は極端に低い。変化の激しい今の時代で生き残るには、同じような考え方の人ばかりではダメ。
 30年前、「会社の命は永遠。その永遠のために奉仕すべき」という遺書をのこして自殺した大商社の常務がいた。しかし、会社は決して永遠ではない。昔からそうなのだ。会社に殉ずる人生など、自己満足にすぎない。まず個人として独立した考えと価値観をもつ。会社の論理や都合なんて、その次でいい。
 年齢(とし)をとると判断が早くなる。これは頭のなかでパターン認識ができるということ。だけど、パターン認識だけで仕事をしていると、いつのまにか思考の柔軟性がなくなってしまう。新しいことを経験しないと頭が固くなる。
 人は能動的に頭をつかって何かアクションをしようとする思考回路ができる。受け身のときにはできない。この思考回路を何度もつかっていると、脳内で前より200倍も早く信号が流れ、超高速で思考できるようになる。一度この思考回路ができると、別のことを思考するときにも超高速でできるようになる。
 うーん、いろいろ勉強になりました。大学時代というのは生涯の友人をつくるのに最適の時期だという指摘がなされています。私も4年間も学生セツルメントにうちこんで生涯の友人を得ることができ、人生の宝だと今も瞳のように大切にしています。

回想のドストエフスキー

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著者:アンナ・ドストエフスカヤ、出版社:みすず書房
 ドストエフスキーの奥さんが速記者だったというのを初めて知りました。「罪と罰」の作者としてすでに有名だったドストエフスキーは、大変な借金をかかえて、短期間のうちに小説を書きあげなければいけませんでした。自分で書いているヒマなんかありません。そこで、周囲の誰かが速記者を雇ったらいいと入れ知恵をしたのです。呼ばれたのは20歳になったばかりの若い女性でした。ドストエフスキーのかかえていた借金は3000ルーブル。これが払えないときには債務監獄に入れられてしまうのです。そのとき、ある出版社が3000ルーブルで全集の版権を買ってもよいと申し出ました。もちろん、ドストエフスキーはすぐに応諾。ただし、あらたに小説を一篇書き足すことが同時に条件となっていたのです。
 ドストエフスキーは、たちまちうら若い乙女の速記者に魅せられてしまいました。大作家から結婚の申し入れを受けたときの様子が本人の口から本当にういういしく語られています。その場で目撃しているかのように、読んでいるこちらの胸までドキドキときめきを感じたほどでした。
 ドストエフスキーは、たとえ話で彼女に迫りました。年をとって、借金に苦しめられている病身の画家が若くて健康で快活な娘さんに何を与えることができるでしょうか。これほど性格も年齢も違っている若い娘が、この画家のような男を好きになることがあるものでしょうか。
 彼女のこたえはこうでした。どうしてありえないわけがあるでしょう。やさしい思いやりのある人でしたら、その画家を好きにならない理由などありませんわ。その人が病気で貧しいことなど、いったい何でしょう。外見やお金だけで人を愛するということができるものでしょうか。その人が好きでありさえすれば、自分でも幸せにちがいありません。
 そこで、ドストエフスキーは、彼女にこうたずねました。その画家がわたしで、わたしがあなたに恋をうちあけ、妻になってほしいと頼んでいるとします。聞かせてください。なんと答えますか。
 彼女は、わたしだったらこう答えますわ。あなたが好きで、一生ずっと愛しつづけますわ、と。
 心をうつやりとりです。こんなことも紹介されています。
 1867年の冬。そのころできたばかりの陪審員の役割にドストエフスキーは非常な興味をいだいていました。彼らの公平で理性的な答申に感服し、感動していました。新聞を読みながら、法の生命にも関係するすぐれた実例を妻に絶えず話してきかせていたのです。
 ドストエフスキーを久しぶりに読んでみたくなりました。

日本のお金持ち研究

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橘木俊詔・森剛志/著、日本経済新聞社
 「全国規模のアンケート調査とデータから現代日本の富裕層とは誰かを浮き彫りにし、金持ちになった背景や社会制度の実態に迫る興味深い1冊」とネットで紹介されているとおり、社会学の学者による日本の金持研究です。
 目次をぱらぱらと見たところ、医師・弁護士・経営者などアンケートを踏まえて、お金持ちに関する分析がされていましたので、弁護士の欄と医者の欄を本屋で立ち読みで対比しました。
 「弁護士はなるまでのリスクやその労働時間に比べると、医師やほかの仕事に比べて経済的に報われていない。ロースクールができても、現状程度の収入であれば、優秀な人間はますます他業種に流れてしまう」「裁判官と弁護士は有名になればなるほど忙しくなるが、検事は逆にヒマになる」等等フムフムと自分と対比して納得できる部分もあれば、ええっ弁護士はこんなに他業種に比べ(金銭的に)報われていないの?と驚かされる部分もあり、買う気が失せました(TT)。高額所得弁護士の4タイプの中身は忘れましたが、自分はそののどれにも当てはまりませんでした(ガックシ)。
 眼科の業界で、白内障バブルなんて事象があったことも知りませんでした。弁護士業界の倒産バブル(東京で高額納税弁護士の相応の割合を倒産関係の弁護士が占める)のようなものなんでしょう。目次だけでも学者の論文にしては目を引くものです。読んだ上で買えたアナタの性根は強いですよ、マジ。

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