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2005年3月 の投稿

お家相続、大名家の苦闘

カテゴリー:未分類

著者:大森映子、出版社:角川選書
 実に面白い本です。大名家の相続って、現代日本の大企業において社長を世襲させるか、それとも有能な人間を導入するのか、いつも話題になっているようなことをずっとやっていたんですね・・・。
 お隣の韓国では、養子といっても、血のつながりのない人は考えられないということですが、日本は昔も今も融通無碍です。それがどうしてなのか、この本を読むとよく分かります。
 大名の当主が17歳未満で亡くなったときには、原則として相続が認められず、お家断絶となる危険がありました。幕府が建物上からは一貫して17歳にこだわり続けましたが、それは一人前の大名として、将軍にお目見えを果たし、一人前の大名として将軍への奉公を約束する。そういう奉公を前提として将軍は大名に相続を認め、領知支配を認可するという関係を維持したかったからです。
 現実に問題を複雑にしたのは、大名の子女が早死することが多かったという事情があります。たとえば、岡山藩の池田綱政の実子は40人いました。ところが、10歳をこえたのは、男子5人、女子7人のみでした。そこで、家督相続させるつもりでいた子どもが急死したときに、問題が発生します。たとえば、跡継ぎの確定していない大名が、参勤交代で郷里に帰るとき、帰国の途中で死亡したときに備えて幕府老中に仮養子願書を預けておくという制度がありました。
 さらに急養子(末期養子)という制度もありました。大名や旗本が臨終間際の病床から養子を指名し、幕府に相続を願うことのできる制度です。
 実際には、大名が死亡し、それを秘して、あたかも生きているように見せかけて急養子を指名するということが横行していたというのです。もちろん、幕府老中も承知のうえです。急養子願の大半は、実際には大名が死んでしまってからのものだろうということです。これを「公辺内分」と呼んでいました。公辺とは内緒のことです。つまり、幕府へは無届けの形で、内々に亡くなった当主の身代わりを立てるという手段です。このため、つじつまあわせが必要となってきます。年齢をごまかしたり、兄弟をいれかえたり、さまざまな苦労・工夫がなされました。
 肥後人吉藩相良家では当主が次々に若死にして、10年間のあいだに4代も替わるということがおきました。このとき、養子は、まったく相良家とは無縁の人たちでした。お家断絶の危険が迫っているとき、血縁かどうかはどうでもよかったのです。
 養子を迎えいれるとき、3500両の持参金を条件としていた話も紹介されています。経済的に苦しかったので、それなりの持参金を要求したというのです。
 将軍の息子を養子としてもらってほしいという話があっても、大名側から断ることは可能でした。それ自体は不敬にあたらないというのです。老中水野忠成が将軍家斉の子女の養子問題に関わっての発言です。
 大名の子女の公的年齢や死亡月日の操作は日常茶飯事でした。
 なんだか、今日の日本の大会社で内紛が起きたときの話のようですよね・・・。

私たちは暗黒宇宙から生まれた

カテゴリー:未分類

著者:福井康雄、出版社:日本評論社
 私は宇宙と星の話も大好きです。しばし、俗世間の憂さを忘れることができるからです。100億光年の彼方なんて、いったいどうなっているんでしょうか。宇宙に果てがあるのか、ないのか。宇宙人(生物)はいるのか・・・など、興味は尽きません。
 宇宙の年齢はざっと137億年。アインシュタインの宇宙項は、宇宙が永久不変だと彼が信じていたから、そのつじつまあわせのために考え出されたもの。宇宙が膨張していることを知って、アインシュタインは宇宙項の導入を「生涯最大の失敗」だと悔やみました。ところが、今、宇宙にはダークエネルギーがあり、それはアインシュタインの宇宙項と同じ働きをしている。だから、宇宙項を入れたアインシュタインは正しかった。そういう学説があるそうです。なんだかよく分からない話ですが、興味をそそられます。
 宇宙には普通の物質が4%、ダークマターが23%、そして残る73%はダークエネルギーで構成されている。ダークマターとは質量をもっているが、光を出さないために見えない物質をいう。渦巻銀河の回転速度は星がたくさんある内側の方が外側よりも速いはず。ところが、内側と外側とで回転速度にほとんど差がない。ということは、渦巻銀河の外側に光で見えない物質(ダークマター)が存在しているからである。うーん、分かったような分からないような・・・。
 そして今、ダークエネルギーの量と正体を明らかにするための超高精度アンテナからなるALMAプロジェクトが進行中で、日本も重要な役割を担っている。
 銀河系には2000億個の星があり、宇宙全体には2000億個の星からなる銀河が1000億個以上もある。うーむ、宇宙に星がぎっしり、ということか・・・な。でも、現実の夜空は暗い。どうしてなんだろう・・・。
 最近、太陽系以外の星に惑星が次々に見つかっているそうです。といっても、これらの惑星を人間が直接に姿を見たというものではありません。惑星よりはるかに明るく輝く恒星がすぐ近くにあるため、惑星と見分けることはできません。恒星を観測していて、定期的にふらつく姿を見て、惑星の存在を割り出したのです。
 うーん、科学の力って、すごいですよね。

『噂の真相』25年戦記

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著者:岡留安則、出版社:集英社新書
 「噂の真相」が総合月刊誌で「文芸春秋」に次ぐ発行部数だというのは知りませんでした。マイナーなブラック・ジャーナリズムとばかり思っていました。私の友人(東京の弁護士)が、「オレも例の一行情報にのっちゃったよ・・・」とこぼすのを聞いたことがあります。そのとき、彼も、そんなに有名人になったのか・・・、と正直なところ、ちょっぴりジェラシーも感じてしまいました。
 「噂の真相」は何度も世間を動かしたことで有名です。法曹界でいうと、検事総長コースに乗っていた則定衛・東京高検検事長は、その椅子からこけてしまいました。銀座のクラブで働いていたA子さんから告発され、「噂の真相」の記事になるという予告記事が朝日新聞の一面トップを飾って大騒動になりました。やはり中味がひどいのです。パチンコ業界の接待で銀座の高級クラブを飲み歩くだけでなく、A子さんの中絶費用までパチンコ業者に払わせた。公務で関西出張していたときもA子さんを同伴し、その旅費まで公費で負担させていたというのです。呆れてモノが言えません。
 東京地検の特捜部長だった宗像紀夫教授(最後は名古屋高検検事長)との角逐もありました。気に入った女性記者に情報をリークしていた、というのです。女性記者と宗像とのツーショット写真がとられました。
 国松孝次・元警視庁長官が狙撃された事件の犯人は依然として検挙されていませんが、国松長官が、あの高級マンションを抵抗権もつけずに現金で買った事実も追及しています。これは、例の警察裏金事件に関連するものなんでしょう。しかし、さすがはキャリア警察官の総元締めにのぼりつめた人物だけあって、シッポをつかませず、逃げ切りました。残念です。森喜朗総理大臣(当時)が、早稲田大学の学生時代に売春等取締条例違反で検挙されたことを記事にしたとき、裁判所が助け舟を出して和解で終わらせてしまいました。これも、前歴カードまで入手していたというから、たいしたものです。
 田原総一郎は小泉の個人的な相談役も買って出ている。今の田原は小泉政権の露払い役にしか見えない。リーダーとしての資質を欠く倫理なき政治家たちの人間性を正面切って批判しない田原総一郎は、もはやジャーナリストとは言えない。このように厳しく批判しています。まったく同感です。
 著者は私の1歳年長ですが、法政大学で新左翼の活動家でした。運動に挫折してマスコミ界に入ったわけですが、日本の深くて黒い闇の世界を暴くうえで、それなりに大きな役割を果たしてきたんだ、そう思いました。「噂の真相」が休刊となって、今の組織ジャーナリズムの不甲斐なさに歯がみしている私はそう思いました。

海峡の光

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著者:辻 仁成、出版社:新潮文庫
 刑務所を舞台とした一風変わった小説です。いま、私は毎週のように刑務所通いをしています。そこは山の奥の方にあります。下界から3度は気温も低いそうで、なかは凍えるほど寒いとのことです。
 刑務所はいまどこも満杯です。ここにも高齢化現象が現れているというのです。なんだか寂しくなります。面会のとき、奥の方から、「オイッチニ」の大きなかけ声が聞こえてきました。収容者が工場から帰ってくるときには一列に並べさせ、大きなかけ声とあわせて軍隊式の行進をさせられるのです。これは昔から日本の刑務所でやっていたのかと思うと、そうでもなく、30年ほど前からのことにすぎないそうです。がんじがらめの規則のなかで生活するうちに、社会での自由な生活への適応力を喪ってしまう人もいるということです。
 刑務所の職員に対して、「あんたたちも大変だね。一生、ここから出られないんだから・・・」と言ったというセリフが出てきます。本当に看守の気苦労は並大抵のものではないと思います。なにしろ定年までずっと何十年と続くのですから・・・。
 刑務所のなかで拳銃が密造されていたことが発覚したのは20年以上も前のことだったと思います。そのとき、刑務所から出てきたばかりの人に実情をきいたことがありました。そりゃ、ありえますよ。わたしなんかも房内でタバコを隠れて吸ってましたしね・・・、という答えだったので、ア然とした記憶があります。
 偽善者をキーワードとした小説でもあります。

オランダの教育

カテゴリー:未分類

著者:リヒトレルズ直子、出版社:平凡社
 オランダの小学校は校区制がない。歩いて買い物に行けるほどの距離のところに3つや4つの小学校があるのがあたり前で、自転車通学可能な範囲を含めると10校前後の小学校があって、そのなかから選ぶことになる。小学校は全校生徒が平均250人。1学年せいぜい2クラス。
 先生も校長先生も本人の希望か学校の理事会が決議しない限り異動しない。学校の教職員は安定性が高く、いわば校長先生を代表とする一つのコミュニティのようなもの。教師は威厳のある権威的な存在ではなく、子どもの自主的な学習を補佐する友好的な大人だとみられている。
 オランダの義務教育は5歳からだが、たいてい4歳から小学校に通いはじめる。小学校低学年のあいだは、父親か母親が学校に送り迎えするのが普通。
 オランダの小学校には宿題がない。午後3時ころに学校から帰ると自由時間を楽しめる。高校も大学も、入学試験がない。学校に課外活動はなく、塾もない。
 日本でも「ゆとり教育」と言う前に、学校で教師も生徒も、もっと伸び伸びと過ごせる社会環境をつくりだすべきだと痛感しました。学力が世界レベルで低下したことを嘆くより前に・・・。

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