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2005年3月 の投稿

長恨歌、不夜城・完結編

カテゴリー:未分類

著者:馳 星周、出版社:角川書店
 新宿歌舞伎町には私も何回か行ったことがあります。日本人のヤクザだけでなく、中国人暴力団が徘徊しているということです。この本では中国残留孤児が日本に帰ってきて、きちんとした職にありつけないうちに中国人暴力団と結びついていく状況も描かれています。私は知りませんでしたが、恐らく、そのような事実があるのでしょう。残念なことです。
 新宿の裏世界の支配者が台湾出身から中国出身の暴力団へ変わっていくことを背景としたすさまじいバイオレンス小説です。次々に男たちが、そして女性までも殺されていきます。読み手の心を寒からしめる内容でした。

学校に戦争がやってきた

カテゴリー:未分類

著者:佐藤光康、出版社:無明舎出版
 第二次世界大戦で日本が敗戦する直前の1年間の山形の学校の様子を浮かびあがらせた本です。学校誌や作文など貴重な資料を渉猟し、体験者の証言で裏付けをとっていますので、貴重なドキュメントになっています。
 山形中学の生徒たちは学徒の勤労動員でゼロ戦をつくっていた群馬県大田市の隣りの大泉町にあった中島飛行機小泉製作所に行かされ、そこで働きました。ここは、4年間でセロ戦を8900機もつくったところです。ちなみにゼロ戦はデビュー当初こそ最新鋭機として恐れられましたが、やがてグラマン機などから容易に撃墜されるようになってしまいました。技術革新が弱かったのです。被弾防禦が弱く、機銃掃射を浴びると、すぐに火を噴くことからペーパープレーンとまで言われていました。
 勤労動員された生徒たちは、食べるものに事欠いて、フラフラしながら働かされていました。育ちざかりなのにいつも腹ペコだったというのですから、耐えられなかったことと思います。
 それにしても特攻隊は志願ではなく、命令だったとか、予科連の募集が不振で押しつけていたという実情を知らされ、ひどいものだと思いました。青少年の純真な心を大人がもてあそんではいけないのは古今東西変わらない真理です。

凍れる河

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著者:オリヴィェ・フェルミ、出版社:新潮社
 インド最北部。ヒマラヤ山脈の谷間、標高3500メートルのザンスカールに住む兄妹とフランス人との心あたたまる交流が紹介されている。なにしろ1年のうち8ヶ月は雪のため下界と途絶する地方である。冬の気温はマイナス30度。村人は村を出ることもない。町まで出るには危ない山道を2週間以上も歩かなければならない。途中で遭難してしまう危険も大きい。
 登山家をめざしていたフェルミは写真家でもある。夫婦で滞在型の冒険旅行を始め、ロブサン一家と知りあい、その子どもであるモトゥプとディスキット兄妹と知りあった。この兄弟は学校で勉強をはじめると成績優秀で、兄は外交官に、妹は医師になるのを目ざしている。とても故郷の村には帰りそうもない。
 命がけの綱渡りのような壮絶な旅をそのまま実況中継した。そんな写真が素晴らしい。さすがはプロのカメラマンだ。

弁護士活動を問い直す

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著者:和田仁孝、出版社:商事法務
 若手の学者による弁護士への批判(注文)がもりこまれた本です。
 たとえば、弁護士の多くは司法試験の合格者を1500人に増やしたことで「質」が低下したとよく言います。しかし、弁護士の「質」とは一体何でしょうか?
 弁護士業務の「質」とは、法廷で的確かつ効果的に代理人として活動し、依頼者の権利を守るとともに、公共的正義を推進できるような能力にかかわるもの。高度の法的知識を知悉し、かつ、その推論構成能力に長けていることは弁護士としての必須の前提。これを参入制限によって、「縮小均衡」で保護してきた。
 私たち弁護士は「在野」という言葉をよく使います。しかし、本当に弁護士は「野」にあったと言えるのか、厳しい問いかけがなされています。
 利用者である国民の目からみて、弁護士は国民一般にはアクセス不能で不透明な「専門領域」で活躍する縁遠い専門家に過ぎなかったのではないか。弁護士は「野」にあったというより、人々から見れば信頼はできるが遠いエリート専門家であり、アクセス不能な「専門権力」のひとつだったのではないだろうか。
 うーん、そうかもしれません。私にも胸に手をあてて思いあたるフシがあります。
 さっと読める本ですが、反省させられるところも多い内容です。

アメリカの秘密戦争

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著者:セイモア・ハーシュ、出版社:日本経済新聞社
 セイモア・ハーシュと言ったら、アメリカがベトナムに侵略して戦争していた当時、ソンミ村虐殺事件をスクープした記者として有名です。60歳代半ばになってなお、現役の第一線記者として頑張っているそうです。
 イラクのアブグレイブ刑務所でアメリカ軍がイラク人を虐待していたことをスクープしたのも、このセイモア・ハーシュ記者でした。この刑務所を統括していたカルピンスキー准将は女性でした。この司令官の姿勢が兵士たちに何をやってもよいと思わせたとされています。
 この事件が発覚した端緒も紹介されています。イラクから任務を終えて帰国してきた女性兵士が暗い顔をしてふさぎこんでいたので、心配した家族が女性兵士がイラクからもち帰ったコンピューターを見たところ、おぞましい画像が次々に出てきたというのです。例の裸の人間ピラミッドなどの写真です。
 9.11テロ以降、アメリカは、法的手続き抜きでアルカイダのメンバーを1人ずつつけ狙って殺すことをテロとの戦争における新種の軍事行動として正当化している。
 こんなことをしていたら、アメリカは、さらにひどいしっぺ返しを受けるのではないでしょうか。そんなアメリカに追従するばかりの日本だってどうなるのでしょうか。私は本当に心配です。

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