著者:熊谷秀夫、出版社:キネマ旬報社
これまで150本以上の映画の照明を手がけてきた超ベテラン照明技師にインタビューした内容が本にまとまっています。映画の照明って、こんなに苦労し、工夫してるのか・・・、映画好きの私は感心しながら読みました。
カラーだと白黒の1.5倍から2倍ほどのライトを使う。長谷川一夫のアップを撮るときには、ライトが8台必要だった。きれいにとるためだ。夜中になると俳優が急にやつれてくるから、撮らないようにする。お客をがっかりさせてはいけない。
吉永小百合の顔に影が出ることは一切ない。顔というのは、どこからライティングしてもいいわけじゃなくて、その人を撮るのにいい角度というのがある。「あたしは右の方がいいからよろしくね」なんて言う人は、俳優としてはあまり大したことはない。吉永小百合はそんなことを言わない。言うより先に上手に坐る。言わなくって技術パートがちゃんと見抜いている。だから、渡辺えり子が「私も吉永さんのように当ててほしい」と頼んだ。そんなエピソードも紹介されています。
リアルな光の中に、嘘の光がある。映画にはきれいに写さなくてはいけないことがあるから、嘘のライトが入ってくる。しかし、嘘の光が真実の光に勝てればいいのであって、その嘘をいかに、どこでつくか、ということが肝心なのだ。それは理屈ではない。映画には、嘘を重ねてリアルをつくるということがあるから・・・。ナルホド、ナルホド。
2005年3月25日