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2005年1月 の投稿

芥川龍之介の歴史認識

カテゴリー:未分類

著者:関口安義、出版社:新日本出版社
 芥川龍之介は私も好きな作家です。今年度から、高校生向けの国語の教科書に『羅生門』が一斉に載っているそうです。
 芥川龍之介が社会主義者の久板卯之助から社会主義の信条を教わっていたことを初めて知りました。そして、社会主義の文献もかなり読んだようです。ところが、関東大震災のときには、自警団の一員として街頭に立ったりもしています。しかし、そのとき朝鮮人への虐待を目撃したことが、芥川龍之介の社会を見る眼をさらに深めたようです。
 この本の大きなテーマとなっているのは、芥川龍之介が一高に入学してまもなく(1911年、明治44年、2月1日)、徳富蘆花が一高の講堂で行った演説を聞いたかどうかということです。ひとつの演説を芥川が聞いたかどうかがなぜテーマになるかというと、やはり、演説の内容がすごかったことにあります。このときの蘆花の演説は謀叛論と言われ、ときの一高校長であった新渡戸稲造が文部省から戒告処分を受けたほどです。幸徳秋水らの大逆事件の処理に関して、蘆花は政府をきびしく弾劾しています。
 パラドックスのようであるが、負けるが勝ちである。死ぬるが生きるのである。政府は12名を殺すことで多くの無政府主義者の種をまくことになった。当局者はよく記憶しなければならない。強制的な一致は自由を殺す。すなわち生命を殺すのである。幸徳君たちは時の政府に謀叛人とみなされて殺された。が、謀叛を恐れてはならない。自ら謀叛人となるを恐れてはならない。新しいものは常に謀叛なのであるから。我らは生きねばならない。生きるためには謀叛しなければならない。停滞すれば墓となる。人生は解脱の連続である。幸徳らは政治上に謀叛して死んだ。死んで、もはや復活したのだ・・・。
 たしかに、芥川龍之介は、この蘆花の演説を聞いて大いに発奮したのだと思います。ところで、芥川龍之介は夏目漱石に『鼻』をほめられ、文壇に順調に登場したものと私は思っていました。しかし、とんでもありません。若い学生の分際でわけのわからん文章を書いている、そのように酷評されていたのです。もちろん、若い才能へのやっかみです。
 芥川龍之介は、それにめげることなく見返そうと必死の努力を作品にそそぎこみ、いくつもの傑作をものにしたのです。芥川龍之介を一層身近に感じることのできる本でした。

内側から見た富士通

カテゴリー:未分類

著者:城 繁幸、出版社:光文社ペーパーバックス
 富士通はいち早くアメリカ型の成果主義をとりいれました。そして見事に「失敗」しました。なぜか。その実情をインサイド・レポートした本です。
 秋草社長(01年10月当時)の発言には驚かされます。業績不振の原因について記者から質問されたとき、次のように答えたというのです。
 くだらない質問だ。従業員が働かないからいけない。毎年、事業計画をたて、そのとおりにやりますといって、やらないからおかしなことになる。計画を達成できなければビジネスユニットを替えればよい。それが成果主義というものだ。
 秋草社長は、従業員に対して憎しみ、怒りを隠しません。しかし、こんな人がトップの会社で、人は気持ちよく働けるものなのでしょうか・・・。
 裁量労働制の目標を人件費のカット。しかし、現実は、2極化の進行。高い評価のもらえそうな社員はすすんで裁量労働制を選択し、実際にも高い評価と高い賞与を得る。しかし、高い評価なんて得られないと自覚している社員は自主的に裁量労働制をやめ、あきらめる代わりに残業時間をヤケクソになって延ばすことに専念する。すると、できる社員とできない社員の賃金はあまり差がつかないうえ、人件費は全体として2割もアップした。
 社員評価はインフレーションを起こした。これまでのSAはAに、AはBに実質的になってしまった。波風の立つのを嫌う上司は、危なげないA評価を選ぶからだ。
 降格制度がないため、中高年社員は無気力化し、仕事以外のことに生きがいを求めはじめた。成果主義の恩恵を受けるはずの若い層もやる気を失い、結果として、世代間の対立を深刻化させてしまった。
 転職率は高く、採用時の評価上位1割が、3年以内に全員退職してしまった・・・。
 富士通労組は従業員の味方ではなく、第2人事部、つまり完全な敵。
 従業員は、働いてよかったという充足感がほしいのだ。毎日毎日がむなしければ、働く気なんか起きない。未来に希望がありさえすれば、多少のことは我慢できる。辛い労働だって、ちゃんとこなす。成果主義への幻想を捨てるときだ・・・。
 著者は、きっと私と同じ団塊世代だと思い、共感しながら最後まで読み通しました。すると、なんと驚くべきことに、まだ31歳の東大法学部卒の人でした。うーん、今どきの若い人(失礼!)にも鋭い人はいるんだ、改めてそう感服してしまいました。

働きながら書く人の文章教室

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著者:小関智弘、出版社:岩波新書
 自宅の書斎とバーの止まり木を往復するだけのもの書きが、いくら技巧を凝らしてところで、人の心を打つものは書けない。
 グサリとくる言葉です。
 どんな仕事であれ、人は労働を通してさまざまな人生を学ぶことができる。そこで学んで深めた感性が、豊かな表現を生むのである。
 わたしも長く弁護士をしていて、いろんな人のさまざまな人生に触れあい、そこで少なくないものを学ぶことができました。あとは、深めたはずの感性で豊かに表現するだけなんです・・・。大田区内の町工場で旋盤工として51年間はたらいてきた著者の作品は、どれをとっても読み手の心にいつのまにか深くしみこんでいく語り口です。ああ、そんな情景を昔たしかに見た覚えがある。そう思わせます。
 『春は鉄までが匂った』というのは、題名から素敵です。本を手にとる前から旋盤して出てくる鉄の切れ端が目に浮かび、同時に、その湿ったような匂いが漂ってくる感じです。
 著者は、いまも2百字詰原稿用紙にB1の鉛筆で原稿を書いています。コンピュータープログラムを自分でつくってNC旋盤で鉄を削っていたのに、マス目に一字一字書いては消し、書いては消しで原稿を書くというのです。思考というのは書く手の速さと同じですすむといいますが本当だと思います。ちなみに私も手書き派です。ただしエンピツではありません。青色の水性ペン(0.7)が私のお気に入りです。エンピツよりなめらかな感触なのです。

まぶた

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小川洋子
幻想的なストーリー・・・ちょっと不思議な形の袋に入った想像もつかない贈り物・・・・そんな感じがしました。

みるなの木

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椎名誠
椎名的表現語録で摩訶不思議な話が詰まっている。シーナさんの文体はまさに「男」であり、隊長なのである。

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