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2004年10月 の投稿

5万年前に人類に何が起きたか?

カテゴリー:未分類

著者:リチャード・G・クライン、出版社:新書館
 5万年前にヒトは初めて解剖学的構造でも行動でも、現生人となった。二足歩行の類人猿のはじめのころは、うっそうとした木々に囲まれて生活していた。日陰の少ないサバンナにヒトが入りこんだのは170万年ほど前にすぎない。
 直立して威嚇することが、暴力を回避することができ、緊張状態を和らげて、死傷のリスクを減らした。
 ネアンデルタール人の脳容量は大きく、平均1520ccで現生人の平均より120ccも上まわる。ネアンデルタール人は、4万年ほど前に出現したアフリカ起源の現生人との競争に敗れて姿を消した。
 いずれにしろ、現代の人類が東アフリカ起源であることは、どの本を読んでも争いがない。白人も、もとをただせば黒人起源なのだから、威張る根拠なんて何もない。

中国ビジネスの法務戦略

カテゴリー:未分類

著者:范云涛、出版社:日本評論社
 京都大学で学び法学博士号をとり、中国の弁護士資格を得て、東京で渉外事務所で働いたこともある上海の弁護士の書いた実践的な本です。
 日本企業は中国で訴えられると、訴訟上の権利をやすやすと取り下げ、戦うことをあきらめてしまう行動パターンがよく見られる。決定時の遅さに引きかえ、紛争やトラブルが発生したときの対応時には、あまりにもあきらめが早く、潔い。このどうしようもない行動様式が、これまで多数の進出事例を決定的な失敗へと落とし入れていった。
 著者はこのように厳しい指摘をしています。なるほど、日本人にありがちな対応です。
 紛争発生時にあわてふためいて、泥縄式に弁護士を使うが、その時点では余分な出費を余儀なくされる。投資事業を始める時点から、現地の法律実務に明るい弁護士を採用し、顧問弁護士契約をかわすことを通じて、中国の最新法制などに関する情報が入手できる。顧問料は月に500〜600米ドルほどだ。
 著者はいくつもの失敗事例を紹介しています。身につまされる話ばかりです。
 これまでの日本企業の対応には次のような特徴がある。すなわち、不祥事が起きたときには、ひたすら紛争をおし隠そうとし、社内のクレーム処理部署のスタッフを利
用して、現地の顧問弁護士は使わない。本社にも報告せず、ひそかに事態をなんとか落ち着かせれば、もみ消せると考える。本社に紛争の詳細を報告せず、速やかな解消方法をとらず、弁護士にも迅速に相談せず、消費者に一定のお詫び金か手切れ金あるいは口止め料を払うという小手先の手段をもって終息させようと目論む。そうこうしているうちに、事件がマスコミ沙汰になって大きく企業イメージを傷つけられそうになった段階ではじめて、「救急車」「消防隊員」としての弁護士を思い出し、あわてて和解調停の労をとるように頼む。これが駆け込み寺方式。しかし、たいていの場合、すでに後の祭り。
 うーん、これはしかし、なにも中国への進出していった日本企業のことばかりではありませんよね。日本国内でも同じパターンでしょ・・・。
 ところで、この本によると、中国の弁護士は今13万人で、2010年までに30万人体制にする目標とのことです。そして、そのとき、国際弁護士を1万人以上確保するといいます。すごい計画です。
 2003年3月の全人代と全国政治協商会議に、弁護士による代表が初めて参加したとのこと。全人代には8人の弁護士、全国政治協商会議には5人の弁護士が参加したといいます。中国でも、やっと弁護士が市民権を得たようです。
 ところで、2003年3月、東北地方の吉林省人民法院の裁判官が中国史上初の弾劾罷免されました。担当している民事事件の当事者から宴会改めを受け、金員を受けとっていた事実が判明したからです。中国の裁判官の給料の低いことも原因のひとつのようです。
 四川省重慶市の高等人民法院では、裁判官の配偶者との間で、「夫の勤務時間外不正行為監督責任の委任に関する契約書」を取りかわしたといいます。裁判官のスキャンダル防止に、妻たちの女性パワーと圧力を借りようというものです。既に裁判官の99%の妻が署名しました。夫の犯罪疑惑を上司の通報すると、報奨金が妻に与えられるのです。
 うーん、そこまでするのか・・・。驚きました。

概説・土地法

カテゴリー:未分類

著者:須田政勝、出版社:明石書店
 宅地から国土開発・自然保護まで、土地をめぐる法律を体系的に概説した本です。500頁近い大作ですが、とても分かりやすい文章なのに感心しながら読みました。
 著者は、日弁連の公害問題対策委員会などで長く活躍してこられた大阪の弁護士です。私も一緒に活動したことがありますが、とても理論的に鋭く、その発言に何度も感心させられました。少し前に病気で入院し、自宅療養していたときに書きはじめたそうです。なかなかどうして、土地をめぐる法律を、全体として、これほど簡にして要を得て解説できるという才能にほとほと感心しました。基本的な用語を簡潔に定義づけ、類似語との違いもきちんとおさえていくあたりは、さすが実務家です。
 日本の農業人口は2800万人を割り、全就業者の4%しかなく、耕地面積も500ヘクタールを割っている。専業農家は43万戸しかおらず、2ヘクタールが専業できるかどうかの境目となっている。このような現状についての基本的なデータも満載され、日本の土地問題をめぐって全体を概観できる本として一読をおすすめします。

拉致と強制収容所

カテゴリー:未分類

著:北朝鮮による拉致被害者の救出にとりくむ法律家の会、出版社:朝日新聞社
 この本で圧巻なのは、なんといっても拉致被害者と目されている200人近い人々の顔写真です。私と同世代、つまり団塊世代が多いのですが、当時は高校生だった人が何人もいることに驚かされますし、かなり年輩の人もふくまれています。
 これらの人の全部が北朝鮮による拉致被害にあったと断定することはできません。しかし、曽我ひとみさんは、それらしき噂があっただけで拉致被害者と認定はされていなかったのです。ですから、300人以上、いや実はもっと多い日本人が拉致されてしまったのではないかというのです。これが人権侵害でないはずはありません。しかし、外交交渉による解決をめざすべきだという意見が人権擁護を最大のモットーとしている法律家団体のなかにあり、動いていません。なるほど、私も大いに反省させられました。
 完全統制区域というのがあるそうです。ここに入ったら、2度と生きては出られない地域です。革命化区域は、生きて出られる可能性が残っているところなので、まったく違います。北朝鮮には、強制収容所(公式には管理所)が5ヶ所か6ヶ所あり、15万から20万人が収容されています。
 まずは事実をきちんと認識すべきだという指摘には、私もまったく同感です。

ほかの誰でもない私をさがして

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著者:志賀こず江、出版社:講談社
 頭が下がりました。私と同世代、つまり団塊の世代の女性弁護士が生いたちから今までの自分を、実にあからさまにさらけ出しています。大変な苦労だったと推察しました。それでも、ジメジメしたタッチで描かれていないところに救いがありました。
 親の経済的な行き詰まりから、大学へ進学できずJALのスチュワーデスになります。しかし、どこか自分にあわないものを感じ、結婚もして退職。親の面倒を見ながら通信教育で学び、慶応大学を卒業。でも、それではあきたりません。一念発起して司法試験をめざします。13回の挑戦で、ついに合格。13年間、主婦業をやりながら司法試験をめざした著者の粘り強い努力にほとほと脱帽しました。しかも、病気の親や夫をかかえ、その面倒をみながらなのです。すごいものです。並みたいていの努力ではありません。同世代でありながら、ぬくぬくと勉強に専念できたことが恥ずかしくなってしまいました。
 著者は横浜での5年間の検事生活のあと、いまは東京で弁護士をしています。犯罪被害者支援活動にも取り組んでいるそうです。大阪の大平光代弁護士の本(『だから、あなたも生き抜いて』)にも心を揺さぶられましたが、この本にも深い感動を覚えました。つくづく、女性は弱い、されど女性は強い。そう思いました。

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