法律相談センター検索 弁護士検索
2004年8月 の投稿

ペイチェック

カテゴリー:未分類

著者:フィリップ・K・ディック、出版社:ハヤカワ文庫
 アメリカ映画『ペイチェック』の原作小説です。映画の方が分かりやすいと思いました。アメリカ映画には現在そして近未来社会の問題状況を映像で分かりやすく伝えるものがあり、いろいろ考えさせられます。
 この『ペイチェック』では、2年間の記憶を消される代わりに高額の報酬を受けとる科学者(技術職)が登場します。たしかに、脳の一部を手術すれば、記憶を消去できるようになるのでしょう。人間の身体を、脳をふくめて改造する技術が、このところ一段と進化しているようです。でも、悪用されてしまったら本当に怖いと思いました。

蟻の革命

カテゴリー:未分類

著者:ベルナール・ウェルベル、出版社:角川文庫
 いかにもフランス的な小説だと思いました。高校生たちが自由を求めて校舎にたてこもり、警察隊が包囲していく状況が描かれています。35年前のカルチェ・ラタンそして日本の学園封鎖の状況を思い出させてくれます。もはや日本ならありないけれど、フランスでは今もありうるかもしれない、そんな気がします。
 アリたちに思考があり、人間とも交信できる。そんな状況で物語は進行していきます。800頁もある文庫本ですが、アリの世界そして人間の世界にぐいぐいと引きこまれてしまいます。白アリの祖先はゴキブリで、アリの祖先はスズメバチだそうです。
 ユダヤの書タルムードによると、人は2つの口をもつ。上の口と下の口だ。下の口は性器である。性器によって、人は体の問題を時間の流れの中で解決していく。性、つまり快楽と生殖を通して、人は自由な空間を得る。下の口である性器を通じて、人はこれまでの血統とは別の新たな道をつくることができる。上の口は下の口に影響力をもつ。相手を口説いて性交に誘うには言葉が必要だ。下の口は上の口に影響力をもつ。性を通して人は自分が誰であるかを認識し、言葉を見つける。なるほど、そうだ、と思いました。人間にとっては、下の口も上の口と同じほど重要な意義を有している、つくづくそう思います。自分がだれてあるかは、なかなか分からない難問です。でも、言葉なしに分かりえないことは自明でしょう。ユダヤ教のタルムードって、読んだことはありませんが、どんなことが書かれているのか、はじめて関心を持ちました。

監視カメラ社会

カテゴリー:未分類

著者:江下雅之、出版社:講談社α新書
 このところNシステムが本当に目立ちます。私の10分足らずの通勤途中に2ヶ所もあります。全国で24時間連続監視しているのですから、その容量は天文学的な大きさでしょうし、維持・運営のため莫大な費用(もちろん税金です)を投入していることと思います。Nシステムは年間の国家予算だけで28億円にのぼりますが、このほか県警も独自に運用しています。最近では「人間Nシステム」も完成して運用されているそうです。人間の顔の一部をマスクなどで隠していても、同一性を識別できるといいます。恐ろしい機械(システム)です。
 この本によると、アルカイダはテロの標的に関する写真・地図そして指令をポルノサイトの画像やスポーツ関係のチャットルームの発言に埋めこんでいたそうです。目立たないようにしてやりとりされていたわけです。
 駅もコンビニも道路も、あらゆるところに監視カメラが設置されています。「もうプライバシーは存在しない」というサブタイトルは決して大ゲサではありません。本当にこんなことで私たちの自由は守られるのでしょうか。

トンデモ科学の見破りかた

カテゴリー:未分類

著者:ロバート・アーリック、出版社:草思社
 真面目な本です。9つのトッピな説について、どれほど信用してよいものなのか、ひとつひとつを検討しています。
 肛門性交は、エイズをうつす可能性がもっとも高い性行為だ。なぜなら、しっかりコンドームを装着していないと、わずかでも組織に傷がつき、精液のなかのHIVが血液に入りこんでしまうから。アメリカでは、女性にもエイズ感染が広がりつつある。最近の新たな感染者の30%が女性。エイズとHIVは男女ほど同数で、大部分が異性愛者である。
 石炭・石油・天然ガスは生物を起源とするものではなく、地球に最初から存在する構成部分の一部である。『未知なる地底高熱生物圏──  命起源説をぬりかえる』(トーマス・ゴールド、大月書店)は読んだときに、ええっと驚きました。いま世界のエネルギーは大半を「化石燃料」に頼っています。その「化石燃料」が有限だとして奪いあいが戦争にもなっているわけですが、実は、それらは非生物起源のものであって、無尽蔵のものかもしれないというのです。石油会社(メジャー)は、その正しさを知って自己の利益を図るために口をつぐんでいると言います。
 世の中には、本当に知らないことだらけです。ときに、ぞっと身震いするほどです。

花の谷の人びと

カテゴリー:未分類

著者:土本亜理子、出版社:シービーアール
 房総半島の南東にある小さな海辺の町に実在するホスピスのある診療所のお話です。
 院長をふくめて医師は3人、看護師11人、介護スタッフ3人、事務3人、栄養士1人、調理スタッフ5人、それに庭師1人。診療所にはホスピスが10室、14ベッド。
 読んでいるだけで自然に心がなごんでくる、患者を人間として大切にする小さな診療所です。食事ひとつとっても、あたたかいご飯を食べられるように工夫されています。
 こんなんで経営が成りたつのだろうかと他人事(ひとごと)ながら心配させられます。 でも、こんな診療所がオープンできたのも地方の多くの人々の善意に支えられた、奇蹟みたいなものでした。人生の最期をゆったりと過ごせる環境をつくりあげるには、いま猛烈に生きている人々が、少し歩みを緩めるしかないように思います。どうでしょうか。お互いの足のひっぱりあいしかない社会では、心にゆとりが生まれるはずもありませんよね。

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.