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2004年7月 の投稿

グローバリゼーションから軍事的帝国主義へ

カテゴリー:未分類

著者:大西広、出版社:大月書店
 大変知的刺激を受けた本でした。
 イラク戦争において、アメリカは実は敗戦した。著者は、このように断言しています。戦争に勝ったと言えるためには、その戦争を支えるだけの国力をもっていなければならない。しかし、アメリカは、財政赤字を3000億ドルから4500億ドルへとふくらませてしまった。
 とどまるところを知らないアメリカの貿易赤字は1.5兆ドルをこえている。これは金利を年率5%として毎年750億ドルの金利返済ができなければ、債務が無限に膨張することを意味している。根元的な資金不足国家が長期に国際金融の中心を担うことはできない。
 世界の資金をアメリカに流入させるために、アメリカは無理してドル高政策をとっている。ドル高政策は、アメリカの製造業に打撃を与え、ただでさえアジアの急追に悩むアメリカの基礎的な工業基盤の弱体化を加速させた。アメリカにとって、世界の「ドル離れ」を阻止できるかどうかがアメリカの生死を決める。アメリカは「国際通貨ドル」を絶対に守らなければならない。イラク原油がユーロ建てになっては困るのである。中東原油に依存する日本や中国などの東アジア諸国の決済通貨がユーロ化してしまえば、「ドル体制」の終焉を意味する。 原油のユーロ建てを企てたベネズエラのチャベス大統領がクーデターによって追放されようとしたのも、アメリカの意図が反映されていた。イラクのフセイン攻撃も同じ脈絡でとらえられる。なるほど・・・。
 このほか、北朝鮮や中国についての分析も興味深いものがありました。

欲望の植物誌

カテゴリー:未分類

著者:マイケル・ポーラン、出版社:八坂書房
 マックのアイダホ・ポテトのつくり方はこうだ。
 早春、土にくんじょう処理をほどこす。ネマトーダや土中の病原菌を抑えるため、ジャガイモを植えるまえに、そのなかの微生物をすべて殺せるくらいの化学薬品を土に浴びせておく。ついで除草剤をまく。レクサン、セルコン、エプタムをつかって雑草を根こそぎにし、畑をクリーンにする。ジャガイモを植えたあとは、ティメットのような組織性殺虫剤をまいておく。これは若い芽に吸収され、数週間のあいだ。その葉を食べようとする虫すべてを殺してしまう。さらに、その苗が6インチほどに育ったころ、雑草を抑えるため、再び畑に除草剤をまく。
 ジャガイモ畑は大きな円の形をしていて、中心にかんがい装置がある。農薬も肥料も、この装置によって水と一緒にまくことができる。週に10回、化学肥料のスプレーをする。葉が茂ったころ、ブラボーという殺菌剤をスプレーする。2週間おきにアブラムシを抑える農薬をまく。モニターと呼ばれる有機リン化合物もまく。だから、生産農家は、自分で食べるジャガイモは別につくっている。もちろん、無農薬の有機栽培だ。
 ええーっ、そんな薬づけのジャガイモを食べさせられているの・・・?うーん。恐ろしい・・・。
 ジョニー・アップルシードと呼ばれた男はアメリカ中をリンゴのタネをまきながら歩いた。しかし、リンゴをタネから育てても、美味しいリンゴはできない。食用リンゴは接ぎ木からしかできない。では、どうしてジョニー・アップルシードが歓迎されたのか。それは、リンゴ酒をもたらすからだった。初めて知りました・・・。
 チューリップも、リンゴと同じく、タネからは同じものができない。タネから育てられた子孫は親とほとんど似ていない。
 自然の営みに素直に耳を傾けて、人類の生存の可能性を探っていく時期だとつくづく思いました。

走る!漫画家

カテゴリー:未分類

著者:渡辺やよい、出版社:創出版
 漫画家が出版社に渡した原画が、出版社が倒産してヤフーオークションにかかり、「まんだらけ」で投げ売りされていたことに気がついた母ちゃん漫画家の奮闘日記です。最後まで面白く読ませます。母ちゃん漫画家が、子どもの面倒をみながら、車椅子の老愛犬や大きくなった金魚の世話までする日常生活のドタバタぶりに身をつまされます。ところが、なんと、そのドタバタの合い間に、ここで引用をはばかられるような表現の官能小説をモノにし、さらに過激な性描写を特徴とするレディース・コミックも描きあげるというのです。その日常性との落差には唖然としてしまいます。そうなんです。流出した漫画原稿は過激な絵のオンパレードだったのです。それが1作品1000円程度で売られていたというのにも著者は腹をたてます。
 自称二流三流のエロ漫画家がバロン弘兼先生たちを巻きこんで「漫画家原稿を守る会」を結成し、社会的な運動の流れをおこすのです。それなりに成果をあげることができました。しかし、「まんだらけ」との裁判は今なお継続中。
 漫画家のおかれている状況を正しく認識できる本として、おすすめします。

徹底解剖100円ショップ

カテゴリー:未分類

著者:アジア太平洋資料センター、出版社:コモンズ
 100円ショップ主要5社の売上合計は3836億円(2002年度)。赤ちゃんから寝たきり老人まで、すべての日本人が年間1人30個を買ったことになる。97年度は660億円だったので、5年間で5.8倍になった。なかでもダイソーは68%のシェア率を誇り、一人勝ちしている。
 ダイソーの矢野博丈社長は、ダイソーを株式上場しない理由を次のように述べている。上場すると、数字をオープンにさらけ出して、丸裸になる。お客様が、ダイソーは損して売っているのかと思っていたのに、利益も出ていると思ってしまったら、買い物の楽しさが減ってしまう。気の毒に、こんなもの100円で売って、かなり損しているんだねと思われる方がいいんだ・・・。しかし、実は、100円ショップの粗利益は平均32%で、これは一般専門小売店の27%に比べて明らかに高いのです。100円ショップで売っている商品の仕入原価は1円から120円まで。それでも、衝動買いが多いから十分に成り立ちます。大量仕入れ・大量販売。たとえば賞味期限が残り1ヶ月のものを仕入れる。100円ショップ用に製造した商品を直接仕入れる。10万から100万個単位を現金仕入れするから安くなるのも当然。仕入れの基本は10万個で、これを3ヶ月で売りさばくのを原則とする。広告・宣伝費はゼロに近い。
 ダイソーの従業員は1万人いるが、正社員は、わずか400人。パートの比率は94%。店長以外はパート・アルバイト職員。
 海外に続々「100円ショップ」を展開中だが、実態は在庫処分ではないか。日本の倉庫費用はばかにならないので、家賃の安い途上国にもっていって売りさばこうというもの。常に新製品をうみ出し、お客さんあきられないようにする。原産国は中国46%、台湾10%、韓国12%そして日本は15%。東南アジアから安く仕入れているが、「搾取」という概念では割り切れない現実がある。
 「100円ショップ」が街角の目立つところにある現在、その背景についていろいろ考えさせられる本でした。

垂直の記憶

カテゴリー:未分類

著者:山野井泰史、出版社:山と渓谷社
 山で手と足をあわせて10本の指をなくしてしまった登山家の話。まだ40歳にもならない。
 山での死は決して美しいものではないし、ロマンという言葉の意味を抹消してしまうほど。だからといって、アルパイン・クライマーは死を完全に取り去ることはできないし、その必要もない。世の中では安全登山ばかりを叫ぶが、本当に死にたくないのなら登らない方がよい。登るという行為は、厳しい自然に立ち向かい挑戦することなのだから、常に死の香りが漂うのだ。
 かりに僕が山で、どんな悲惨な死に方をしても、決して悲しんでほしくないし、また非難してもらいたくもない。登山家は、山で死んではいけないような風潮があるが、山で死んでもよい人間もいる。そのうちの一人が、多分、僕だと思う。これは、僕に許された最高の贅沢かもしれない。
 無酸素登頂したクライマーの半数が下山中に死亡した。人間は活動しているときには酸素をたくさん取りこめるが、睡眠中は呼吸が浅くなり、酸素はあまり入らなくなる。高所での睡眠はなるべく避けた方がよい。
 著者はヒマラヤの単独登頂に成功したあと、猛烈な嵐におそわれ、危うく遭難しかかったが、奇跡的に生還した。登山家のまさに生命がけの様子が実に生々しく描かれていて、手に汗を握る。なぜ、どうして、そんなにまで危険な目にあいに山に登るのか・・・。不思議というか、私の理解をはるかに超える。それでも、なぜか心を魅きつけるものがある。男の冒険ロマン心か・・・?

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