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2004年5月 の投稿

中国人連続強盗団

カテゴリー:未分類

著者:織川隆、出版社:講談社
 2002年10月31日、柳川の市会議員宅が強盗に襲われました。金融業も営み、資産家として名高い人物です。現金1300万円の入った金庫などが持ち去られました。「カネ、カネ、キンコ」という犯人は言葉づかいから中国人による強盗団とみられていました。この本は、その主犯が日本人であり、いまも捕まらずに中国に潜伏中だということで、ジャーナリストが中国まで面会に出かけた様子を描いています。「30件の犯行で被害総額10億円」とオビに書かれています。強盗ビジネスの実態の一端が紹介されているので関心をもって読みましたが、内容の点は掘り下げが足らず、正直言って不満が残りました。
 強盗に入ったら冷蔵庫をみる。そこに何が入っているかで、家の金銭状況が分かる。ローンの支払いに追われている家は、貧相だ。冷蔵庫が高級ハムなどの良い品で満タンになっている家が裕福だ。
 被害者となった柳川市議が資産家であることは私も知っていましたが、なぜ中国人強盗団が知っていたのか疑問でした。この本を読んで、その謎が解けました。日本の暴力団(みたいな連中)が紹介していたのです。紹介料はなんと40%(成功報酬です)というのです。ええっ、と驚いてしまいました。
 ジャーナリストは中国へ出かける前に会社の顧問弁護士に取材にあたって注意すべき点を尋ねています。いったい、こういうときに弁護士は何と回答するのか気になりました。
 犯人に会うこと自体には何の問題もない。犯人隠避罪に問われることはないし、警察への通報義務もない。ただ、取材に対して謝礼金を出すと、犯人隠避罪を問われる危険がある。会話の内容はすべてテープに録音し、念のため出頭を促しておくこと。
 こういうものでした。なるほど、そのようにアドバイスするものなのか、大変勉強になりました。ちなみに、5月20日、名古屋のトビ職が犯人の1人として逮捕されました。

カナダ・花と氷河のハイキング紀行

カテゴリー:未分類

著者:柳沢純、出版社:千早書房
 カナダへ行ったことはありますが、トロントとナイアガラくらいで、高原地帯を歩いたことはありません。写真たっぷりのガイド・ブックなので、見るだけで、カナダの山々を歩いているような気分になります。
 気をつけなければいけないのは、クマに出会うことが多いということです。クマに出会ったら死んだふりをしたり、あわてて木にのぼってはいけないようです。決して騒がず、静かにクマを見すえながらゆっくり後ずさりして距離をとるのです。こしょうを原料とするベアスプレーも効果があるようです。でも、とっさのときに、本当にやれるものでしょうか・・・?

驚異の耳をもつイルカ

カテゴリー:未分類

著者:森満 保、出版社:岩波科学ライブラリー
 少し前に、下関の水族館でイルカのショーを見ました。イルカって、本当に頭がいい動物ですね。感心しました。イルカは水面から出した頭を、体ごと左右、上下に振る。その仕草がイヤイヤ、ハイハイと返事しているようで、なんとも愛らしい。しかし、その仕草は真正面からの反射音を良く聞き取るために、左右の下顎によく反射音が当たるように左右に振ったりしているだけのこと。人間がイヤイヤとかハイハイと勝手に思いこんでいる。
 著者は、イルカがときどき集団で浜に乗りあげて死んでしまう現象について、次のように謎ときをしています。イルカは泳がない限り溺れる。眠っているときでも泳いでいなければならない。ところが、集団上陸したイルカを調べてみると、みな耳が聞こえない状態だった。得意のエコロケーションによるエサ取りができなくなったイルカたちは、極度の飢餓・脱水状態となり、泳ぐだけの体力を失ってしまう。そして、沖合いでの溺死を避け、憩いを求めて波静かな入り江の砂浜を目ざし、一斉に上陸する。上陸したイルカを調べてみると、胃も腸も完全に空っぽであり、体重も軽くなっている。
 そうだったのか・・・。ナゾがひとつ解けた気がしました。

アフリカの小さな国

カテゴリー:未分類

著者:大林公子、出版社:集英社新書
 団塊の世代の日本人女性のバイタリティーはすごいものです。内乱やクーデターの絶えないアフリカの国々に子どもを連れて(夫とともにですが)出かけるのです。
 この本はコートジヴォワールに1年間住んでいたときの滞在日記のようなものです。コートジヴォワールという国は、比較的に国情も安定している国のようですが、それでもクーデターが起こり、部族同士の殺しあいは起きました。宗教や言語などの違いが部族同士の殺しあいにまで発展するようですが、早く安定してほしいと願うばかりです。
 日記のような本ですから仕方のないことかもしれませんが、詳しい注釈はあっても、もうひとつ、コートジヴォワールという国がどんな国なのか、よく分からなかったのは残念でした。それでも、そこに住んだ庶民が、日本と同じ善良な人々であることを知って安心もします。ただし、フツーの人々がクーデター騒ぎに便乗し、取りつけ騒動のようなことを起こしてしまうことも知りました。

中世寺院と民衆

カテゴリー:未分類

著者:井原今朝男、出版社:臨川書店
 中世民衆を、戦争で被害を受ける哀れな被害者とみる歴史像は虚像である。
 著者はこう断言します。民衆は、もっとしたたかだったというのです。映画『七人の侍』を見ると、なるほど農民のしたたかな強さが実感できます。あの映画は、単なるフィクションではない。私は、確信しています。
 寺院も自ら武装していた。中世の寺院は、むしろ戦争の主体であった側面の方が強い、河原者も自らを守る武装する集団としての実力をもっていた。現代の通説では、中世の国家権力は幕府が掌握し、天皇は政治権力から切り離され、宗教的権威をもつにすぎなかったとする。しかし、前近代において、宗教や儀礼を経済や政治と区別された観念とみるとことは、歴史の実態と相違する。中世の天皇は権威だけの存在とは言えない。その社会的支持基盤は、民衆統合儀礼の社会システムそのものであった。天皇家は将軍家と並ぶ中世社会の公権力であった。
 なるほど、政治と宗教とを明確に区別できたという現代的感覚で割り切るのは間違いのようです。現代社会でも欧米に限らず、日本でも宗教を基盤とする政党は存在するわけですから、よく考えると明確な二分説が成り立たないことは明らかなのですが・・・。
 戦前の天皇は日本国の統治権を掌握し、日本の軍隊を指揮命令する最高司令官であり、大元帥(だいげんすい)と呼ばれていた。この大元帥という言葉は、中世に盛んに行われていた太元帥法(たいげんのほう)という護国法会(ほうえ)によっている。太元帥法は外敵から国土を防衛する法会であった。そうなんだ。私は、ちっとも知りませんでした。中世の日本では、飢饉や戦乱で男たちが減り、女性が男の2倍もいた。夫婦関係が成立しにくい社会では多様な性関係が発達し、性道徳が混乱するのは、いつの時代も変わらない。僧尼同宿の寺院生活が営まれていた。寺などで同宿する尼が妊娠すると、実家に帰って出産し、産後に寺に戻ってまた仏道の生活を続ける。中世の寺院は世俗化の頂点に達していた。
 生きのびるためには何でもあり、の世界になっていたんだな。そう思いました。現代の世界もそうなりつつあるように思いますが、いかがでしょうか・・・。

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