法律相談センター検索 弁護士検索
2004年4月 の投稿

終わりなきアメリカ帝国の戦争

カテゴリー:未分類

著者:デイナ・プリースト、出版社:アスペクト
 少しばかり重い気分になって最後まで読みとおしたところ、著者がアメリカの女性ジャーナリストだというのを知って、目を見開かされました。それまで、てっきりボブ・ウッドのような男性ジャーナリストだと思いこんでいたからです。アメリカの支配層、とくに将軍たちの思考パターンがよく描けていると感心しながら読みました。
 シンク・タンクの予測によると、これから予想される戦争はローテクの武器による無差別な戦争だ。自爆テロや有毒ガス・殺人ウィルスが武器となり、ドラッグやダイヤモンド、ダーティーマネーが世界的なテロ組織の資金源となる。
 それを予防するには、多国籍の近隣住民による警戒と密告グループが地域的国家連合を結成して、悪いやつがさまよいこんできて愚かなことをしでかさないように警戒するしかない。それは軍事というより、民政・外交の分野だ。
 かつてアメリカが絶縁しようとした独裁者たちが今やアメリカの支援を受け、かつては狂人として排除した反徒や軍閥たちを、今度は味方として取りこんでいる。
 パウエル・ドクトリンとは、敵に対しては最初から決定的で圧倒的な兵力であたること、それができなければ、何もしないこと、というもの。
 アメリカの街頭で売られるコカインは、2002年には、ほとんどすべてがコロンビアから密輸されたもの。アメリカは麻薬戦争に何百万ドルもつぎ込んだが、効果はなかった。コカイン生産量は増加する一方。除草剤を散布して20万エーカーのコカの木を除去したが、たちまち植え直された。コロンビアのコカイン生産量は、2001年まで増加の一途で、年間800トンに達している。
 アメリカがいくら軍隊を置くって外国を支配しようとしても、その国に本当に必要なものとは違う。真に求められているのは武器ではなく、ミシンであり、水と食料である。そして、民間のNGOだということが改めてよく分かる本です。

シェイクスピアの妻

カテゴリー:未分類

著者:熊井明子、出版社:春秋社
 すこし前に『恋に落ちたシェイクスピア』という映画を見ました。ワラ屋根のグローブ座が主な舞台となっていましたが、なかなか見ごたえのあるいい映画でした。
 シェイクスピアが恋におちるのですから、てっきり独身かと思うと、さにあらず。郷里に年上の妻がいて、3人の子どもまでいたのです。
 この本は、その妻が主人公です。文才のあるシェイクスピアをロンドンに送り出しながら、主のいない一家を切り盛りしていく苦労など、身につまされる場面があります。それはともかく、この本が読みごたえのあるのは、シェイクスピアの作品の裏話が妻との会話を通じて「明らかに」されていくところです。逆に言うと、シェイクスピアの作品をもとに、家庭での「会話」を創作していったのでしょう。作家の創造力ときめこまやかな描写に感嘆してしまいました。
 参考文献をみると、シェイクスピアを本当によく知り抜いているからこそ書ける小説だと改めて敬服した次第です。

博徒の幕末維新

カテゴリー:未分類

著者:高橋敏、出版社:ちくま新書
 この著者の本は面白い。前の『江戸村方騒動顛末記』(ちくま新書)も大いに知的好奇心をかきたてられた。古文書を縦横無尽に読み解いていくさまは、下手な推理小説よりよほどワクワクしてしまう。草書体で書かれた古文書をスラスラ読みこなせたら、すばらしい新発見に出会える気がしてならない。でも、実際には、同一人物がいろんな名前で登場してくるので、そこまでよく分かっていないと、文書のもつ意義を理解できないだろう。
 この本は、伊豆七島に島流しにあっていた無宿人の安五郎が島抜けするところから始まる。七人の無宿者が船頭を引き立てて、伊豆半島に渡り、そこで散りじりになるが、主犯の安五郎は無事に故郷の甲州へたどり着く。なぜ、そんなことが可能だったのか・・・。そこに黒船到来の当時の世相が語られる。
 甲州は紛争が多いところだった。入会権をめぐり、水の分配をめぐり、紛議は絶えなかった。あまりの裁判の多さに奉行所はパンク寸前だった。
 日本人が昔からいかに裁判を好んでいたか。農村地帯でも裁判に訴えることは日常茶飯事だった。無宿人・安五郎も立派な文書を残している。文盲ではなかった。
 水滸伝のように、幕末期の関東地方では無宿人たちが暴れていた。勢力富五郎(28歳)も徒党を組んで荒らしまわった。石原村無宿・幸次郎一味の悪党21人を捕まえるため、総勢3000人にのぼる捕者隊が組織された。なにしろ幸次郎一味は鉄砲まで所持している。幕末の混乱する世相が博徒に焦点をあて、よく描かれている。江戸時代のもう一つの側面を知る格好の本だ。

ザ・メイン・エネミー

カテゴリー:未分類

著者:ミルト・ベアデン、出版社:ランダムハウス講談社
 3月11日の夕刊に、アメリカ人の連邦議会で働いていた人が、サダム・フセインのスパイをしていたとして逮捕されたことが載っていました。冷戦構造がなくなっても、相変わらずスパイの活躍する余地の大きいことを改めて実感しました。
 この本は、CIAとKGBのスパイ合戦について、「勝者」CIAの立場から取りあげられています。双方ともスパイを送り出し、また、スパイを獲得しようと必死でせめぎあっていました。なかには、CIAとKGBの係官同士が固い友情関係を結んだケースもあったようです。やはり、それぞれの当局からは、あいつは敵に買収されてしまった、そう疑われたようですが・・・。 スパイ活動は何のためにやるものなのか。使命感かお金か。それとも処遇不満への腹いせなのか。いろんなケースがあったようです。必ずしもお金だけが理由ではないようです。
 2重スパイがいて、スパイ志願者がいて、いったん敵に亡命したものの、もう一度、本国に帰ってしまったエージェントもいたり、この世界も複雑怪奇です。
 よく日本はスパイ天国だと馬鹿にされますが、お互いに他人(ヒト)を信じられなくなったら、お終いですよね・・・。

財閥と帝国主義

カテゴリー:未分類

著者:坂本雅子、出版社:ミネルヴァ書房
 三井物産と戦前の中国との関わりをテーマとしています。三井物産は軍部と結びついて中国でのアヘン販売に関わっていました。日本軍が大量のアヘンを中国で販売したのは、アヘン販売が手っとり早い資金獲得の方法であったからです。これによって得た資金は、傀儡政権の財源や日本軍の謀略工作の費用に用いられていました。
 三井物産は三井財閥の中枢にあり、資本金1億円という日本一の巨大私企業でした。また、三井財閥は他財閥に群を抜く巨大財閥であり、国家政策への影響力も格別に大きいものがありました。
 中国は、日本にとって武器輸出の中心的な市場でもありました。中国軍に日本製の武器を売り込み、日本製の武器で統一させ、中国市場を恒久的なものにしようとしたのです。ちょうど、今の日本の自衛隊とアメリカとの関係です。アメリカはアメリカ軍の規格にあわない自衛隊の装備を日本に認めていません。
 中国東北部(満州)にあった日本の経済界は、張作霖が商売の邪魔をしているとして、その排除を強硬に要求しました。関東軍による張作霖爆殺事件も、それを背景にしたものだったのです。
 著者は、日本の中国進出について、独占が形成されて過剰資本となったはけ口としてなされたというレーニン型の見解を否定しています。独占の形成される前から三井物産は中国へ進出していったからです。三井物産という財閥会社と中国侵略について、改めて考えさせられました。

福岡県弁護士会 〒810-0044 福岡市中央区六本松4丁目2番5号 TEL:092-741-6416

Copyright©2011-2025 FukuokakenBengoshikai. All rights reserved.