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2004年3月 の投稿

めざせロースクール、めざせ弁護士

カテゴリー:未分類

著者:宮澤節生、出版社:阪急コミュニケーションズ
 私が受けた30年前の司法試験受験生は2万人でした。うち500人が合格。2003年は出願者が5万人をこえました。2002年の受験者は4万1459人。合格者は1183人です。今年の合格者は1500人ですから、私のときの3倍です。それでも、5万人の受験生ですから、合格率はともかくとして、実質的には昔より難しくなっていると思います。受験者が多いということは、それだけ優秀な人が受けるようになったことを意味しているからです。
 金もうけがしたかったら弁護士はやるべきでない。有名な久保利英明弁護士がこう言っています。日本有数の高額所得者である弁護士が言うのですから、間違いありません。私もそう思います。ビジネスと割り切る人にとって、弁護士は手間ヒマのみを考えたら決して割のある仕事ではないのです。
 この本には、ニューヨークにある500億円もする高層ビルの売買や1機200億円のジャンボジェット機のリースを扱う弁護士の話も出てきます。九州の片田舎で仕事をしている私のような弁護士にとってはまるで別世界の話です。でも、そんな巨額の事件を扱わなくても、人それぞれです。やり甲斐のある事件は片田舎にもたくさんあります。私は、地道に人権と民主主義を大切にする弁護士として活動していくつもりです。

フセイン・イラク政権の支配構造

カテゴリー:未分類

著者:酒井啓子、出版社:岩波書店
 アメリカ軍によってアッという間に見事に瓦解させられたフセイン政権の実体を歴史を追って丹念に探っていった本です。いろいろ学ばされました。
 サダム・フセインがイラクのクーデター(1968年)で革命指導評議会(RCC)の副議長になったのは32歳のとき。それ以来35年間もイラクを支配し続けたわけです。
 イラクでは内閣の占める政治的意味はそれほど大きくなかった。重要な政治決定は大統領やバース党の幹部によってなされていた。
 人口の7割以上を占めるシーア派が疎外されていたのは、オスマン帝国がスンニー派を国教としていたことに起因する。軍におけるスンニー派三角地帯からの登用は、いわば王政期以来の伝統である。スンニー派三角地帯の出身者は軍への登用を通じて政治進出を強めていったのである。
 フセイン政権下では、地方行政関係(とりわけ南部と北部)の職歴をもつ人間と、大統領と個人的にパトロン・クライアント的な関係を取り結んだ人物の登用が増えた。
 イラク国民議会の選挙権は18歳以上の成年男女であるが、立候補は25歳以上となっている。しかも、立候補資格として、1968年革命への支持に加えて、読み書き可能およびイラン・イラク戦争の意義を確信することが求められている。そのうえ、立候補者のプロフィールとして、本人、祖父という人の名前とともに一族名(ラカブ)を記載することになっている(その前はラカブの使用は禁止されていた)。
 現代イラクの社会構造の特徴のひとつは、人口の多くが都市に集中していること。総人口の70%以上が都市部に集中している。たとえば、バクダットは、19世紀の前半にはわずか人口2万7000人でしかなかった。1947年に人口50万人だった。ところが1977年には260万人。それが1992年に400万人、今では500万人と言われている。この3分の1はシーア派とみられている。
 バース党は、国家と個人の中間にある「社会」を解体し、既存の共同体を国家や党の支配機構と入れ替えようと試みた。しかし、実際には、党や国家はそうした代替物を社会に布置することに成功したわけではない。党の大衆組織や末端組織は、既存の共同体の崩壊から放出された「個化」された個人を吸収することができなかった。そこで重要となったのが、フセインと「個化」された個人との間に直接結ばれる関係性である。「大統領の朋友」という制度が1984年に始まった。対イラン戦争に貢献し、武勲賞を3回以上得た国民に対して称号を与え、進学や昇進などで特権を付与する。いわば権力と富の源泉であるフセインという存在にいかに直接アクセスできるかという点に力点をおいて、社会ネットワークの再編が図られた。バース党政権は、イスラムや部族紐帯にもとづく伝統的社会意識の形骸を、国家統治の一部に取りこみ、フセインを核においた忠誠ネットワークを補完するために利用していった。
 サマーワに自衛隊が基地をつくっていますが、頼りにしている部族にどれだけの力が本当にあるのか。もしあるとして、それは法外な金銭的要求をもたらすものではないかとの指摘がなされています。果たして日本政府はイラクの地方における支配構造の実体をどれほど把握しているのでしょうか・・・。私は、大いに心配です。

空っ風

カテゴリー:未分類

著者:諸岡玲子、出版社:講談社文庫
 浪曲の世界を読みものにした雰囲気なんですが、時代についていけない小政の心情を心憎いばかりに描いていますから、また一味ちがう印象も受けます。
 子どものころ、ラジオから流れてくる広沢虎造の浪曲を聴いていました。清水の次郎長親分の話もあったように思いますが、それは湿っぽいムードの話ではなく、江戸っ子のカラっとした雰囲気で語られていたように思います。
 清水次郎長一家の大政・小政といえば知らない人はいません(いえ、今どきの若い人の大半は知らないのでしょうか・・・?)。その小政が次郎長親分にいわば拾われ、ヤクザに身を投じたものの、江戸から明治へ変わろうとする時代の波に抵抗感があり、流れに乗ってお上(おかみ)の下でヤクザ稼業から市中取締りへ華麗なる転身を遂げようとする次郎長を逆恨みしていく状況が刻明に描かれています。まるで小政本人の聞き語りを読んでいるかのような筆力に感嘆させられました。

民主帝国アメリカの実像に迫る

カテゴリー:未分類

著:毎日新聞取材班、出版社:毎日新聞社
 日本はいつまでもアメリカの言いなりでいて、本当にいいのでしょうか?
 アメリカの実像について、この本はさまざまなデータをあげています。ユダヤ系市民はアメリカの総人口の2〜3%にすぎないが、アメリカの政治に大きな影響力をもっている。
 アメリカの知識人やリベラル派がイラク戦争に沈黙したのは、自分の地位が危うくなるのではないか、個人攻撃を受けるのではないかと、反動を恐れて自己規制したから。
 アフガニスタンのカルザイ大統領の護衛は、現在、国務省から委託を受けた民間軍事企業(PMC)がアメリカ軍の特殊部隊「デルタフォース」の元隊員を雇って任務にあたらせている。PMC業界の市場規模は現在1000億ドルで、2010年には2020億ドルにまで倍増する見込み。
 アメリカ軍の優越性の絶対化を目ざし、アメリカは1時間あたり52億円を軍事費につぎこみ、1世帯あたり年間軍事費負担は45万円。世界の総軍事費の3分の1を占める。 アメリカのホームレス人口の3分の1(25万人)を元軍人が占めている。ホームレスの収容施設の平均年齢は45歳で、人種としては黒人、そして陸軍出身者が圧倒的に多い。PTSDや薬物常用が背景にある。
 60年代のアメリカでビジネス化した政治コンサルタントは当初100人程度だったが、今や1万人をこえる。売れっ子は何億円もの年収を稼ぎ、一大産業となった。
 アメリカの大学に世界から集まる留学生は、1991年に42万人。10年間に38%も増えて、2001年度は58万人になった。
 アメリカの破産者は1年で153万人(2002年度)。
 アメリカが敵として戦った相手は、すべて、かつてはアメリカの友人だった。
 いやー、本当にひどいものです。これがアメリカ流民主主義の現実です。日本人も顔を洗って目をさますべきではないでしょうか・・・。

宇宙96%の謎

カテゴリー:未分類

著者:佐藤勝彦、出版社:実業之日本社
 最新宇宙学が平易な語り言葉でビジュアルに紹介されています。なんとなく分かった気分になりました。もちろん、本当のところが理解できたはずもありません。
 月が地球を回るのは、お互いの間に万有引力が働いて、「引き合う力」と月がぐるぐる回ることによって生じる遠心力がうまく釣りあっているから。だから、月は遠くに飛んでいかないし、地球に落ちてこない。これがニュートンの古典力学の説明。ところが、アインシュタインの相対論によると、大きな質量をもった地球があることによって、地球のまわりの空間がゆがめられ、その空間の曲がりに沿って月がすすむので、月は地球のまわりを回っていると説明する。うーん、どういうことなんだろう・・・。
 現代の宇宙には「真空のエネルギー」が満ちており、それに働く斥力によって、宇宙には、加速度的に膨張している。真空は、量子論的真空では、電子と電子の反物質である陽電子がペアでポッと生まれては、また消えてしまう、対生成と対消滅をくり返す、激しくゆらいでいる状態なのだ。真空とは何もないのではなく、物質がもっともない状態、エネルギーが最小の状態なのである。
 宇宙空間にある暗黒物質(ダークマター)の量は26%、普通の物質と量をつくっている物質は4%、残り70%はダークエネルギーとなっている。では、ダークマターとかダークエネルギーの正体は何か?
 このあたりになると、さっぱり理解不能となってしまいます。それでも、たまには、こんな気宇壮大なことも考えて、日頃の対依頼者との悩みが、いかにちっぽけなものかに思いを至し、ウサを晴らしてみたいものです。

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