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2003年11月 の投稿

トラウマの心理学

カテゴリー:未分類

著者:小西聖子、出版社:NHKライブラリー
 PTSDとかトラウマという言葉がやっと分かりかけてきました。殺人事件の遺族について、他人(ひと)と話す気になれるまで早くて半年から1年ほどかかるそうです。本当にそうだろうな、と思います。
 幽体離脱ということが紹介されています。たとえば強姦されている被害者が強姦されている自分を上から見ている体験をするというのです。上から見ている自分は強姦されている自分の苦痛を感じることはありません。そういう「感覚」が起き、苦痛を回避するのです。自分では対処できないような苦痛を強いられたとき、そのような事態を変えることができないのなら、自分の側を変えて精神を守ろうという、人間が自分を守る働きのひとつなのです。
 PTSDには薬物治療も有効で、SSRIという、脳内のセロトニンの再吸収を抑制する薬があり、副作用も少ないそうです。精神療法(セラピー)のひとつにEMDRという眼球を左右にリズミカルに動かすことで感情の処理過程を促進し、トラウマティックな記憶に伴う苦痛な感情を脱感作させるものがあることを初めて知りました。
 また、セラピストは、意欲的にやろうとする人ほどバーンアウト(燃えつき症候群)しやすく、3年ないし5年のうちに大半がバーンアウトを体験するそうです。それだけ加害者を社会復帰させる仕事は難しいというわけです。

クライマーズ・ハイ

カテゴリー:未分類

著者:横山秀夫、出版社:文芸春秋
 面白い。これぞ小説の醍醐味だ。読みはじめるや否や、すぐ地方紙の社会部記者になったかのように、日航機墜落事故を追う重苦しい雰囲気に浸ることができた。
 1985年8月。いったい、あのとき自分は何をしていたのか、今ではもう思い出せない。もちろん福岡で弁護士をしていて、ときどき飛行機で上京していた。だから、大阪行きの飛行機が落ちたことを知って、ヒヤッとしたことを覚えている。でも、相変わらず飛行機には乗っている・・・。
 地方新聞の内部の葛藤が描かれ、スクープ合戦と販売部門との対立抗争が見事なまでに生々しく暴かれる。日航機事故という大惨事を売りものにしようとするジャーナリズムの限界を知り、苦悩する記者魂にぐいぐいひきこまれていく。記者の生き甲斐とは何なのか。

シンポジウム・三角縁神獣鏡

カテゴリー:未分類

出版社:学生社
 景初3年6月に卑弥呼の使いが魏の帯方郡に到着して朝見を願い出た。帯方郡では役人を同行させて都の洛陽に出かける。景初4年、卑弥呼は朝貢し、親魏倭王に封ぜられ、銅鏡百枚を授けられる。いま 日本各地に出土し、中国本土には出土しない三角縁神獣鏡が、その「銅鏡百枚」なのか、長年論争されている。中国でつくられた、いや日本でつくられた、中国の工人が日本でつくったもの、いくつもの説があり、まだ決着がついていない。
 この本は、鏡の部分を拡大して、その違いを説明しながら、論点を整理していて、大変勉強になった。

ベトナム症候群

カテゴリー:未分類

著者:松岡完、出版社:中公新書
 アメリカは1975年のベトナム撤退に至るベトナム戦争での苦い敗戦(戦死者5万8千人)の後遺症を今に引きずっていると言われています。
 クリントンもブッシュも団塊の世代ですが、いずれもベトナム戦争をうまく逃れています。このこと自体がアメリカでは強く批判されてきました。
 アメリカで軍隊は大衆の支持を受けている。しかし、同時に反軍感情もアメリカの伝統である。アメリカ軍将校に対する国民の評価は銀行強盗よりましという程度だった。この本にはそう書かれています。うひゃー、そうだったのか・・・。
 ベトナム戦争への徴兵に従わなかった者は57万人、うち起訴された者は2万5000人、有罪判決を受けた者は9000人。実際に処罰されたのは3000人。そんなに徴兵逃れした者がいたのか・・・。豊かな家庭の子どもほど戦場に行かずにすんだんだ・・・。
 戦争体験のない者ほど好戦的だというのは本当のように思います。イラク戦争のときもそうでした。日本でも、自民党の主戦論者は40代の若手に多く、かえって戦争体験のある後藤田氏や野中氏は平和憲法を忘れるなと叫んでいます。
 イラクに自衛隊を派遣して、イラクの人々を殺したり、日本人が殺されたりする危険が迫っています。なんとかしてやめさせたいと歯ぎしりする思いです。

江戸の旗本事典

カテゴリー:未分類

著者:小川恭一、出版社:講談社文庫
 著者は有名な江戸研究家の三田村鳶魚の最後の弟子です。ですから、江戸時代の実相がことこまかに紹介されています。なるほど、なるほど、とうなずくほかありません。
 「丈夫届」というものを初めて知りました。出生届のようなものですが、江戸時代は、幼児の死亡率が高かったので、すぐには幕府に出生を届けず、何年かたって丈夫に生長しているということで届けたというのです。しかも、そのとき「公年」といって、本当の年齢(とし)よりも5歳ほど年長に届け出ていたのです。それは、当主が17歳未満で死ぬと養子が許されずに絶家となるから、その危険を避けるためでした。
 もうひとつ。武家社会のいじめにあった被害者が殿中で刀を抜いて3人を殺し、2人に傷を負わせました。ところが、いじめの張本人は無傷で逃げおおせてしまいました(あとで、御役ご免の処分は受けています)。旗本8万騎といっても、実数は5千人ほどだったことなど、江戸時代の一面をよく知ることのできる便利な本です。

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