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2003年8月 の投稿

ニッポン監獄事情

カテゴリー:未分類

出版社:平凡社新書
 こうだん(交談)、がんせん(願箋)、ふきしん(拭き身)、べんすい(便水)。塀の内側にのみ通用する業界用語です。
 日本の留置場は全国に1288ヶ所、年間のべ43万人、1日平均1100人が収容されています。刑務所は64、拘置所117、少年刑務所8、合計189の刑事拘禁施設があります。そこに1万5千人の刑務官が働いています。人員不足のため、いつも募集中です。
 これらの矯正施設は、年間110億円(うち刑務所は99億円)の作業収入を得ているのに、それをうみだした被収容者に支払った作業賞与金は、わずかに15億円でしかありません。搾取というより、まるで奴隷労働です。この本と『パリ・サンテ刑務所』(集英社)と比較してみてください。。

なぜ、あれが思い出せなくなるのか

カテゴリー:未分類

出版社:日経新聞社
 もっとも度忘れが起こりやすいのは人名である。それは人名がもたらす情報が名前だけだから。たとえば職業名だと、既存の関連情報や知識を使ってコード化しやすく、記憶しやすいのに大して、概念的な情報のない人名は思い出しにくいのである。
 人名の度忘れがもっとも起こりやすいのは、よく知ってはいるが少なくとも数ヶ月のあいだは会ったり思い出すことのなかった人の名前である。頻繁に会う人物を見ると、概念的、語彙的表象がともに活性化され、それらの間のつながりが強まる。
 デジャ・ヴェとは、現在の状況が引き金となって、恐らく予想しやすい言葉のときと同様に、その状況が過去に経験したと勘違いしてしまう現象。全米記憶チャンピオンは、日常生活において、物忘れしないように付箋紙(ポストイット)に頼っている。
 記憶は情報をそのまま記録するカメラではない。記憶は、その内容をさまざまなプロセスによって要約して保存する。後で思い出すときには、過去の経験をコピーして取り出すのではなく、経験したことを新に組み立て直す。この作業に、その経験の後で身につけた感情、信念、知識などが入りこむことがある。つまり、過去の出来事を現在の感情や知識に従わせることで、記憶を編集しているのである。
 人間の記憶があてにならないこと、客観的な事実に反することを本人は真実と確信して証言することは弁護士なら誰でも経験するところです。記憶と脳の7つの謎を解明している面白い本です。

東大講義録

カテゴリー:未分類

著者:堺屋太一、出版社:講談社
 なるほど勉強になったところもありました。しかし、全般的に堺屋太一の自慢話と独自の歴史観が強すぎて、客観性に乏しい気がしました。
 長篠の戦いで、織田信長の軍隊が3000丁の鉄砲を横一列に並べて発射したため、武田軍が崩壊したという話は初耳です。通説は3000丁を1000丁ずつ3段に構えて武田の騎馬隊を打ち破ったことになっています。
 ところが、この通説は間違っていると解説した本が最近出ています。『鉄砲隊と騎馬軍団』(洋泉社新書)です。この本を読むと、横一列はおろか3段構えも事実に反するということが論証されています。何事によらず通説(常識)は疑ってかかった方がいいということです。その意味で堺屋太一は、もっと学生に対して、何事も既成の概念は疑ってかかれとていう点をもっと強調すべきだったように思います。

帝国以後

カテゴリー:未分類

著者:エマニュエル・トッド、出版社:藤原書店
 フランスの学者による知的刺激にみちた本です。
 世界の進歩は大衆の識字化の進行と受胎調整の普及の2つによると著者は主張しています。なるほど、そうかもしれません。アメリカの貿易収支の赤字は年々大きくなっていくばかりで、アメリカ経済は日本とドイツが支えているのに、アメリカは日本を軽蔑している。アメリカの労働者は相対的貧困化だけでなく、ときに絶対的貧困化にも直面している。私は、久しぶりに「絶対的貧困化」という言葉に出会い、30年前の大学生時代を思い出しました。
 アメリカは至るところで悪を告発するが、それはアメリカが思わしからぬ行動をしているからだ。「悪の枢軸」というのは、アメリカの悪への強迫観念を表現している。その悪は国外に対して告発されるが、現実には、アメリカの内部から生まれている。アメリカ国内では、至るところに悪の脅威が潜んでいる。平等の放棄、責任を負わない寡頭支配集団の勢力伸長、消費者と国そのものの借金性格、ますます頻繁な死刑、人種の強迫観念の復帰。今のところ、ドイツと日本はもちこたえている。そのきわめて強力な経済がつい最近まで労働者と民衆を保護してきたから。社会的団結性の強い両国で、アメリカ流規制廃止をすすめるなら、極右の抬頭をひきおこすことになるのは確実だ。もし、ドイツと日本がアメリカ型の貿易収支の赤字を出すようになったら、世界経済はどうなるのか?
 アメリカ帝国の反映も今のままでは長くはないと大胆に予測しています。そうなってしまうのではないか・・・、私も、いろんな意味で大変心配しています。

ピアフ、愛の手紙

カテゴリー:未分類

出版社:平凡社
 エディット・ピアフの「愛の讃歌」は有名なシャンソン。この本はピアフが妻子ある男性で、プロ・ボクサーのマルセル・セルダンとかわしたラブレターを集めたもの。いわば不倫の男女の恋文集。
 あたし幸せよ。あたし日に日にだんだんと身が清まっていく感じだもの。汚れない身になるの。あなたがあたしにしてくれたことは、もうひとりの別のあたしに変えてくれたこと・・・。ありがとう、モナムール。だってあたしは今、怖がらずに人生を真正面から見つめているもの。あたし心の底から女になるって感じてるのよ。生まれて初めてよ。それもあなたのお陰ね。あたしの恋心はあなたを待っていて、あなたを愛したその日から人生が始まったの。とってもシンプルなことよ。
 弁護士として不倫事件を扱い、男女間のラブレターを読まされることは多い。しかし、本にできるほど読む人の心をあたたかくする手紙は少ない。ピアフの手紙は心のときめきがまっすぐ伝わってくる。最近のメールはたいていは赤面してしまうだけのものが多い気がする。

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