弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2023年12月20日

「核兵器廃絶」と憲法9条

司法

(霧山昴)
著者 大久保 賢一 、 出版 日本評論社

 いま、世界に1万2500発の核兵器があり、そのほとんどはアメリカとロシアが保有している。しかも、1800発は、いつでも発射できる警戒即発射態勢にある。
 さらに、アメリカもロシアも、自分の国や同盟国が危なくなったと思ったら核兵器を使用することを公言している。先制不使用ではない。やられる前にやっつけてやろうという政策。
 いったい、これほど大量にある核兵器を全廃させることは可能なのか...。
 核兵器廃絶なんて夢みたいな話で、全然、実現可能性のない話だよね。少なくない人が、こう考えている。でも、夢なんかじゃないし、必ず、しかも一刻も早く実現しなくてはいけない緊急の課題なんだと、著者は力を込めて強調しています。
 まず、第一に、最高時(1986年)に核兵器は7万発あった。なので、6万発近くがすでに減っているのです。残り1万発余りだって、その気になれば「核兵器ゼロ」は決して夢物語ではありません。
 核兵器を地球上からなくそうと取り組むと必ず出てくるのは、「抑止力」として核兵器は必要だという「核抑止論」です。「使うかもしれない」と思わせて危機を盛り上げ、交渉の決定打にしようという考え。しかし、1発でも使えば、戦場だけでなく、アメリカとロシアとの間の全面核戦争になる可能性がある。
 殲滅(せんめつ)戦争に、こちらは耐えるが、おまえは耐えられないだろうというところに抑止の本質がある。しかし、それは単なる幻想でしかない。ロシアのプーチン大統領の発言によって、はしなくも核による抑止が幻想だということが明らかになった。核の脅しで外国を制御できるなんて、考えてるほうが実は馬鹿げています。
 核兵器を保有する9ヶ国が、2022年に核兵器の開発や維持のために使ったお金は11兆5500億円という巨額。これって、まったく無駄なお金の使い方の典型ですよね。こんな大金を教育や福祉予算にいくらかでもまわしたら、ずいぶん世界は住みやすい優しい社会に変わると私は思います。
 著者は「核」のボタンが間違えて押されそうになったことが過去に何回もあることも指摘しています。恐ろしいことです。しかも、それは古い話ばかりではありません。
 2018年1月18日、ハワイ当局が「弾道ミサイルがハワイに向かっている。近くのシェルターを探せ。これは訓練ではない」と市民に告知した。まったくの誤報です。本当にヒヤヒヤものですよね...。本当に核兵器だったら、シェルターに入って、どうなるものでもありません。
 オバマ大統領が広島に来たときも、すぐそばに「核のボタン」が入ったカバン持ちを同行させていた。トランプみたいな狂信的な大統領の下で、いったい歯止めがあるのかまるで心配です。
 さて、日本政府です。日本政府は、いつだってアメリカ政府の言いなり。オスプレイが堕落しても、まともに抗議もしませんでした。アメリカの「核の傘」の中に入って守られているという、ありえない幻想に浸ったまま、何ら独自の行動をとろうともしません。情けない限りです。
 今や、「終末時計」では「残り90秒」だとされています。ロシアのウクライナ侵攻戦争、ガザ地区に対するイスラエル軍の大々的な戦争が依然として進行中です。いつ、どこで、誰によって核兵器が使われるか、まったく予断を許しません。
核兵器はなくせる。核兵器に頼ってはいけない。核兵器は今すぐ全廃すべき。そんな声を高らかに上げましょう。
 核兵器は人類を破滅させるものなのです。
 日本政府は、アメリカによる原爆投下を「罪悪」ではあるが、「違法ではない」としているというのには驚きました。歴代の自民党政府の公式見解です。また、アメリカ政府も原爆投下について、今に至るまで反省も謝罪もしていません。オバマ大統領も同じなのです。
 著者は喜寿(77歳)を迎えたようです。ところが、この7年間に5冊もの著書を刊行したとのことです。相変わらず意気軒高です。今後ますますの活躍と健筆を期待します。
(2023年12月刊。1800円+税)

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