弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2023年10月16日

都会の鳥の生態学

生物


(霧山昴)
著者 唐沢 孝一 、 出版 中公新書

 身近な小鳥たちの生態を教えてくれる新書です。ツバメ、スズメ、そしてカラスなど、ごくごくありふれた鳥たちですが、意外なほど私たちは詳しい生態を知りませんよね。
 まず一番にツバメ。九州や四国で越冬するツバメが増えているとのこと。私は冬にツバメを見たことはありません。そして、ツバメの飛来時期が23年間で1ヶ月も早まったとのこと。そうなんですか・・・。私の住む地域では、3月中旬です(と思います)。
 ツバメのオスは早く飛来して営巣場所を確保してメスを迎えたい。しかし、早い時期だと、途中で寒波襲来に出会ったり、天気が大荒れになったりする。すると、餓死したりして途中で脱落してしまう危険がある。
先に来たオスは辛抱強くメスを待つが、メスが先に帰還したときは、いつまでもオスを待つことはない。ツバメの寿命は平均1年半しかないので、いつまでも生死不明の前夫を待っていられない。
ただし、ツバメも、5年、10年、ついには16年も生きた長寿記録があるとのこと。信じられませんね。
 ツバメの子育てで最大の天敵は人とカラス、そしてネコ。人はそのフンを嫌っての巣落とし。カラスに対してはツバメが集団的に対抗しようとする。
 ツバメはスズメと、対カラスでは共闘するが、普段は営巣場所をめぐって対立関係にある。ツバメの親子の家族生活は2週間ほどで終わり、幼鳥たちは、ほかの幼鳥と合流して行動するようになる。
 ツバメは一夫一妻であり、オスとメスが共同して子育てする。ところが、牛舎などで集団繁殖することの多いヨーロッパのツバメはDNA検査すると、30%は婚外子だった。これに対して、各家に分散して繁殖する日本のツバメでは婚外子は3%しかない。
 次は、スズメ。「特徴がない」のがスズメの最大の特徴。スズメは飛翔昆虫しか食べないツバメと違って、何でも食べる雑食性。そして、体長14.5センチと小さいので、1回に食べるエサは少量。これによって、スズメは都市でも生きていける。
 スズメの寿命は平均1.8年。ところが、最長8年というのもいる。スズメは、カモやムクドリなどと「混群(こんぐん)」をつくって生活することが多い。混群によって、食物を発見しやすく、また天敵に対する安全性も高まる。
 スズメの一日は、太陽のもとで始まり、終わる。これは、まるで江戸時代の人々と同じだ。
 スズメは、ハタオリドリ科の鳥であり、そのルーツは、アフリカのサバンナにある。
 スズメは雑木林のオオタカやサシバの巣の近くで繁殖することがある。しかし、スズメを食べるツミの巣の周辺は避けている。
スズメは人の住む人家のない限界集落は姿を消していくが、キャベツ畑の集荷場で営巣している。これは、アフリカのサバンナをスズメが起源することによるようだ。
 ハシブトガラスとハシボソガラスの共通点の一つは、雑食性。何でも食べる。もう一つの共通点は、足技(あしわざ)。カラスの爪は長くて頑丈であり、「爪さばき」もまた絶妙。
 カラスは遊ぶ。そして、その多くは、人間の子どもの遊びに似ている。子どもは、遊びを通して、身体能力や仲間とのコミュニケーション能力を高める。
 さすがによく調べてあると驚嘆しながら読みすすめていきました。
(2023年6月刊。1050円+税)

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