弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2023年10月 3日

維新政治の内幕

社会


(霧山昴)
著者 小西 禎一 、 出版 花伝社

 なんで「ホラ吹き」連中の政党がこんなに受けているのか、不思議でなりません。コロナ禍「対策」と称して高言した「イソジン・吉村」そして「雨合羽・松井」が真面目に謝罪したとは聞いていません。大阪府と市を一体化させるという「都構想」だって、「二重行政の解消」と称して、現実にはコロナ禍のなかでの保健所の縮小・廃止でした。しかも2回も住民投票で否決されたというのに、まだあきらめていないなんて、往生際が悪すぎます。
 諸悪の根源は橋下徹にあります。最近、「憲法の壁」とか言って憲法を敵視する発言をして、顰蹙を買いましたが、橋下の眼というか、頭の中には基本的人権の擁護とか弱者保護という政治家がもつべき理念はカケラもないようです。こんな人物をマスコミが関西方面にかぎらずいつまでももてはやすなんて、日本のマスコミも堕落してしまったと嘆くばかりです。
 この本の著者は長く大阪府の副知事をつとめた人です。6代もの府知事の下で働き、ついには維新候補と対決して府知事選挙にも出馬したのでした。惜しくも当選には至りませんでしたが...。
 いま、維新は大阪では自民党と対抗して張りあっていますが、維新のルーツは自民党そのもの。なので、維新の馬場代表が「第2自民党」と自称したのはホンネを言ってしまっただけのこと。
 維新が大阪で選挙に強いのは、政党幼成金などの資金を大阪に集中させ、「どぶ板」やビッグデータを駆使した選挙戦術、府知事・市長として圧倒的なメディア露出量、そして芸能界との強いつながりによる。
 維新のポピュリズムは、行政改革の名の下に、市場原理にそって公的事業の民営化や規制緩和を進める新自由主義的なポピュリズムだ。
 維新の「都構想」挫折後のビッグ目玉は、大阪万博と夢州のIR(カジノ)です。ところが、今ではこの二つとも赤信号が灯っています。大阪万博では大阪府民の負担はない(少ない)はずでしたが、今やそれどころではありません。国にすがって国の税金を大量に投入して失敗の現実化を回避しようと必死です。でも、結局は失敗し、大々的な借金を残すこと必至です。もうひとつのカジノだって、もしオープンしても中国の金持ちが呼び込めるのか大いに疑問ですし、結局、日本の零細な年寄りがスロットマシーンにすがる程度のものでしょう。
 橋下徹は、テレビ界出身のタレントとして、拍手喝采(かっさい)がいつまでも続かないことを身に沁みて感じている人間。
 橋下徹は民間企業と地方自治体を単純に比べる発想に終始するけれど、そもそも行政は民間の営利企業と違って利益を上げることを目的とはしていない。
 橋下徹の政治手法の本質は、次々に「大騒動」をつくり出し、世間の注目を集め、自己の賞味期限を維持していくことにある。
 橋下徹は、「特別顧問」「特別参与」という制度をフル活用した。特別顧問12人、特別参与は12人。この特別顧問たちが、あたかも職員の上司であるかのように職員に命令したり「知事に言うぞ」と恐喝まがいのことをやった。そして、これらの特別顧問参与に支払われた給与は何回も引き上げられてきた。維新は身内には甘い。
 維新の言う「成長」は、万博そしてIR(カジノ)であり、カンフル注射的に大阪を元気にするだけのことで、市民生活の向上を意味するものではなかった。
 最後まで、大変興味深い本でした。
(2023年6月刊。1800円+税)

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