弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2023年9月14日

年間4万人を銃で殺す国、アメリカ

アメリカ


(霧山昴)
著者 矢部 武 、 出版 花伝社

日本では銃による死者は2021年は1人、多い年(2019、2020年)で4人です。負傷者数も多くて8人。100人あたりの銃所有率は0.3丁、10万人あたりの銃による殺人発生率は0.02人。
イギリスは、100人あたり4.6丁、10万人あたりの殺人事件は0.04。これに対して、アメリカは、100人あたり120.5丁、10万人あたりの殺人事件は4.12。
イギリスの警察官は銃を所持していない。日本の警察官は銃を持っていますし、毎年のように拳銃を使った警察官の自殺が報道されていますよね...。
アメリカの総人口は3億3千万人超。もっている銃は4億3千万丁と、1億も多い。こんな国はアメリカだけ銃によって死んだ人は、殺人、自殺、誤射をふくめて4万5千人をこえる(2020年)。2005年に年3万人をこえ、2015年から急増して、2019年に4万人近くとなって、さらに飛躍的に増えた。
ベトナム戦争によって死亡したアメリカ人兵士は5万5千人で、アフガニスタンとイラク戦争で死亡したアメリカ人の7千人をはるかに上回っている。まるで、内戦が起きているような状況。ウクライナでロシアとの戦争で死んだ兵士に匹敵する。
アメリカでは国民の銃所持の権利を優先させ、銃規制の強化を怠ったことから、銃による暴力がまん延し、人々は安心して外出したり、楽しく暮らす自由を失ってしまった。
 市民が助けを必要としているときに警察官はすぐに来てくれない。だから、自分の身は自分で守るしかない。そのためには銃が必要だ。そう考えているアメリカ人が少なくない。しかし、家に銃を置くと、安全にならないだけでなく、本人や家族が銃で命を失うリスクを大きく高めてしまう。
 アメリカ人が護身用に銃を持とうとするのは、心の中に強い不安や恐怖をかかえている人が多いから。銃を持っていると、「自分は強くなった」と勘違いしてしまう人が出てくる。
 そして、巨大ビジネスとしての銃産業がある。コルト、スミス&ウェッソン、ウィンチェスター、レミントンなど...。
 アメリカで銃規制を反対しているのは、全米ライフル協会(NRA)。500万人の会員をもち、強力なロビー活動をし、銃規制を強化しようとする議員については激しい落選運動を展開する。
 銃規制を強化しようとする政治家はバイデン・民主党の政治家に多く、有権者もそれを望んでいる。ところが、トランプ前大統領の支持者は銃規制の緩和を求め、規制強化を妨げようとする。民主党と共和党の支持者は、規制強化と緩和に直結している。
 銃撃戦のとばっちりから半身不随になった若者の話も紹介されていますが、なぜカナダやイギリスで銃が厳しく規制されているのにアメリカで出来ないのか、不思議でなりません。
(2023年6月刊。1650円)

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