弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2023年11月 5日

人生はチャンバラ劇

人間


(霧山昴)
著者 飯野 和好 、 出版 パイ・インターナショナル

 私の知らない絵本の作家です。私と同じ団塊世代ですが、恥ずかしながら、『ねぎぼうずのあさたろう』も『ハのハの小天狗』も知りませんでした。この本のタイトルどおり、時代劇、つまり子ども向けのチャンバラ劇の絵本の著者なのです。
 これは幼いころに著者がチャンバラごっこをして遊んだ体験が生きています。私も小学3年生のころ、隣の「失対小屋」に燃料として置いてあったハゼの木を剣にみたててチャンバラごっこをして、ひどいハゼ負けになり、顔中がはれあがり、1週間も休んだことを思い出しました。学校を休んで寝ていると、学校帰りのクラスメイトが給食のコッペパンを届けにきてくてました。コッペパンは大好きでしたし、脱脂粉乳のミルクも私は美味しいと思って飲んでいました。大人になって、あの脱脂粉乳のミルクは評判が悪く、鼻をつまみながら飲んだり、飲み干さずに捨てる人が少なくなかったことを知り、私には意外でした。
 夜、お寺の境内(けいだい)で野外映画会が開かれ、『鞍馬天狗』や『笛吹童子』をみたとのこと。同世代ですから、もちろん私もみています。私のほうは歩いて10分ほどの映画館(「宇宙館」といいました)でした。
 鞍馬天狗が「杉作(すぎさく)少年」を悪漢たちから救け出そうと黒馬を疾走させる場面になると、場内はまさしく総立ちで、こぞって声援を送り、興奮のるつぼと化しました。今でも、その騒然とした雰囲気を身体で覚えています。
 著者は「中卒」です。勉強しなかったので高校に進めず、企業の養成高校には合格したものの、行かないまま高崎市内のデパートで働くようになりました。
 この本の良いところは、著者の子どものころから折々の仕事ぶりまで、写真がよく残っていて、ずっとずっと紹介されていることです。写真があると、話に具体的なイメージがつかめます。
 そして、上京。東京はお茶の水にある東京デザイナー学院に入ったようです。18歳のときです。イラストレーターとして活動しはじめたころに訪れたのは...。
 「イイノさんの絵は不気味で、気持ちが悪いし、使いにくいんだよなあ」
 1991年、絵本『ハのハの小天狗』を刊行した。好きなチャンバラ映画と、空想をゴチャまぜにしてつくった。好評だったので、ものすごく自信になった。
 1999年に出版した『ねぎぼうずのあさたろう』は痛快時代劇絵本。これが、人形劇となり、テレビで早朝の連載アニメにもなった。
 いやあ、元気、元気。「てくてく座」の座長として、山鹿市にある有名な芝居小屋「八千代座」で公演までしているのです。すごいパワーです。楽しい本でした。
 喫茶店で、サンドイッチのランチを食べながら、読みふけってしまいました。
(2023年4月刊。1800円+税)

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