弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2023年9月23日

江戸の実用書

日本史(江戸)

(霧山昴)
著者 近衛 典子 ・ 福田 安典 ・ 宮本 裕規子 、 出版 ペリカン社

 江戸時代は寺子屋が繁盛していたことで知られるように識字率はとても高かった。なので、人々はたくさんの本を読んでいた(買う人より借りて読む人のほうが多かった)。
江戸時代を代表する百科辞典は『和漢三才図会(さんさいずえ)』(寺島吉安、1712年)。中国の『三才図会』にならって漢文の解説文で図解されていて、105巻もある。
江戸時代の国語辞書は『節用集』といい、室町時代に成立したものが、増補されていった。日常語を「いろは」に分け、さらに部門別に言葉を配列し、用字や語義、由来を説明している。
驚くべきことに、江戸時代はパロディ本がブームだったのです。「仁勢物語」(伊勢物語)、「尤之双紙(もっとものそうし)」(枕草子)、「偽紫田舎源氏(にせむらさきいなかげんじ)」(源氏物語)が有名...。
江戸時代はガーデニング(園芸)が大人気でした。なかでも朝顔は、3回もピークを迎えるほど人気を博しました。その朝顔は、変化(へんげ)朝顔を主としています。花や葉や蔓(つる)が変化したものです。今や、まったく見かけません。私も毎年、朝顔のタネを店で買ってきて、植えています(夏の日の毎朝の楽しみです)。でも、昔ながらの鮮やかな赤い朝顔が一番です。
 浮世絵にも、変化朝顔が描かれています。たとえば、1本の苗から赤色と青色の花が咲いているというものです。
 江戸時代の男子が身につけるべき教養として、読み書き学問は当然として、謡(うたい)、漢詩、和歌、連歌、俳諧、茶の湯、生け花、囲碁将棋があった。茶の湯や生け花は、江戸時代には、しかるべき家柄の男性に求められた必須の教養だった。
 江戸時代の女性が使用する文字と男性の使用する文字は異なっていた。女性は大部分が「かな」で、一部に漢字が混ざった「和文体」を用いる。男性は主に漢字による「準漢文体」を使用した。なので、往来物には女性を対象とした女子用往来物がある。
世の中には、いかに知らないことが多いものか...。呆れるほどです。
(2023年7月刊。3300円)

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