弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2023年8月26日

やまと尼寺精進日記(3)

社会


(霧山昴)
著者 NHK制作班 、 出版 NHK出版

 「やまと尼寺、精進日記」は私の大好きな番組でした。録画してもらって、日曜日の夜に、寝る前みて楽しんでいました。ともかく紹介される精進料理がどれもこれも、とても美味しそうなのです。
 しかも、素材はみな地元産のとれとれのものばかり。それを住職と副住職、それにお手伝いのまっちゃんという女性3人が笑いながらも真剣に料理をこしらえていきます。さすがにNHKの撮影も見事でした。
この番組は2016年に始まり、2020年3月に撮影終了。4年間でした。今は、住職ひとり、そして別なお手伝いの人が来ているようです。
お寺は奈良県桜井市にある音羽(おとば)山の中腹にある音羽山観音寺(融通念仏宗)。創建は奈良時代で、かつては山岳修行の場だったというのです。車でお寺に乗り入れることはできません。歩いて50分もかかります。
 住職の後藤密榮さんは、30年もこの寺を守り続けてきました。ほとんどものを買わず、山の恵みと里から届けられる食材を知恵と工夫でおいしくしてしまう料理名人。よく笑い、よく食べる。一人暮らしの山中の尼寺で単調な生活...。いえ、全然違うのです。
 住職はきのうと違う今日を生み出す達人なのです。たとえば、夏には香草ごまだれそうめんです。金ごまを鍋で煎(い)る。香りが出るまで中火でゆっくり、焦がさないように注意しながら。そして、すり鉢(ばち)に入れてする。すれてきたら、刻んだバジル、エゴマ、青じそ、しその実を加え、そしてする。いやあ、おいしそうなそうめんですよね...。食べてみたいです。白菜を千切りにして、納豆をからめたサラダもおいしそうです。
住職は、年齢や職業を訊くことなく、ただ「お寺に集う仲間」として迎え入れる。お互い、ありのまま付きあいましょうということ。なんとも心地が良い。
お寺の庭は、季節ごとの草花と樹木の花で彩られる。そして、室内にも季節の花を活けて飾ります。わが家の庭は、少し前までアガパンサスの花が咲いていました。そして、ブルーベリーも収穫できました。今は、アサガオが咲きはじめていて、サツマイモを待っています。ヒマワリのタネを植えたのですが、大雨のせいか芽が出ていません。苗を買うしかないかもしれません。
高菜の油炒めに住職が初挑戦。これは筑後地方で定番の郷土料理です。子どものころは、これをおかずにして白メシのお代わりをしていました。
粉吹きいもには、少し砂糖を入れたら、さらに美味しくなるそうです。
 4年間の番組を担当したプロデューサーのコトバもいいですよ。ひとりだけど、孤独じゃない。そうなんですよね。人間、みんなどこかで支えあって生きているのです。また、生かされているのです。
 こんないい番組があったなんて知らない人がいて、お気の毒に...と、つい思ったりしました。
(2022年11月刊。1600円+税)

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