弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2023年8月27日

スペイン市民戦争とアジア

ヨーロッパ


(霧山昴)
著者 石川 捷治・中村 直樹 、 出版 九州大学出版会

 スペイン内戦は、1936年7月に始まった。フランコ将軍らが人民戦線政府に対して軍部クーデターを起こしたことによる。このとき、陸軍の半分、空軍と海軍の多くは政府を支持していた。この内戦は、人々の予想に反して長期化した。
 1939年1月にバルセローナが陥落し、4月1日、フランコは内戦終結を宣言した。それから1975年までフランコ独裁体制が続いた。
2年8ヶ月に及んだ内戦のなかで、フランコの反乱軍側はドイツ・イタリアのナチ・ファシスト政権から強力な支援を受けた。アメリカ・イギリス・フランスが「中立」と称して不干渉政策をとって政権側を支援しないなか、世界55ヶ国から4万人をこえる人々が「国際義勇兵」として政権側を支援した。
 スターリンのソ連軍も政権側を支援したが、アナキストたちと内部で衝突するなど、反乱軍に対抗する陣営は一枚岩ではなかった。
 この本で、著者は、スペイン内戦は、市民戦争に該当すると定義づけています。
そして、アジアからもかなりの人々がスペイン市民戦争に参戦したのです。日本人としては、北海道出身のジャック白井が有名です。アメリカに渡ってレストランで働いた経験を生かしてスペインではコックとして活躍していましたが、激戦の最中に戦死してしまいました。
 このジャック白井と同じマシンガン部隊にいたというジミー・ムーンさんに著者はロンドンで出会って話を聞いています。そして、スペインに渡ったイギリスの元義勇兵とパブで話し込んだ実感から、彼らは特別の人ではなく、ごく普通の人、正義感の強い、率直な市民・労働者だということを確信しました。ただし、一緒にスペインに渡った仲間の3分の1は戦死したし、イギリスに戻ってからは政治上、職業上の差別待遇を受けたということも判明したとのこと。なーるほど、ですね。
 国際義勇兵は、国際旅団を結成して、フランコ側の反乱軍と戦った。アメリカのヘミングウェイ、イギリスのジョージ・オーウェル、フランスのアンドレ・マルローやシモーヌ・ヴェイユなど、あまりに著名な文化人が参加した。幸い、これらの人々は全員、死ぬことはなかった。ただ、写真家キャパの恋人ゲルダは事故死した。
 スペイン市民戦争のなかで、共和国側の人々は70万人が死亡した。戦死したのは30万人で、残る40万人はフランコ派に捕えられて、処刑された。フランコ派による逮捕・処刑の続く日々を描いたスペイン映画をみたことがあります。朝鮮戦争の最中に起きたような同胞同士の殺し合いに似た、寒々とした状況です。
 日本政府は1937(昭和12)年12月1日、フランコ政権を正式に承認した。翌2日、フランコ政権は「満州国」を承認した。
フランコが死んだのは1975年11月。それから、すでに48年たち、スペイン社会も大きく変わった(らしい)。でも、いったいファシスト政権との戦いの意義を再確認しなくてよいのか、考えなおす必要があるように思えてなりません。
著者の石川先生から、最近、贈呈を受けました。ありがとうございます。
(2020年8月刊。1800円+税)

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