「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2012年12月1日

自己破産は再出発の機会

▼Q 借金の返済を続けることが難しくなってしまいました。自己破産を考えていますが、何か不利益があるのでしょうか。

▼A 借金問題で法律相談に来られる方の話をお聞きしていると「自己破産を申し立てると、さまざまな不利益がある」と誤解されているケースが少なくありません。

特に多いのが「戸籍や住民票に破産したことが記載されるのでは」という誤解です。実際の相談で「親の私が破産したことが戸籍に載ると、子どもの結婚に影響してしまうから踏み切れない」と言われたことがありますが、そんな心配は無用です。破産した事実が戸籍や住民票に記載されることはありません。

破産すると裁判所の人が自宅にやって来て、家財道具をはじめ身ぐるみ持っていかれてしまうのではといった誤解も多いです。もちろん、相応の価値のあるものはお金に換え、債権者への配当に充てなければならないケースもあります。ただし、売却しても大した金額にならないものや、家財道具など通常の生活に必要なものは、取り上げられたり、売却されたりすることはありません。

破産手続きは、債権者の利益を考慮しつつ、経済的に行き詰まってしまった人に再出発の機会を与えることを目的とするものです。家財道具を含めた財産すべてを手放し、裸一貫でやり直しなさい-ということまでは要求されません。

「選挙権を失う」「近所や勤務先に知れ渡ってしまう」ということもありません。そうした心配や悩みも含めて、弁護士に気軽にご相談ください。

◆福岡県弁護士会の相談窓口案内=(0570)783552(なやみここに)。

西日本新聞 12月1日分掲載(松田真禎)

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