「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2010年9月17日

生きる権利を守る国際条約

国家間の合意は「条約」と呼ばれ、国際条約を結んだ国が集まる会議をCOP(Conference Of Parties)といいます。

今年10月、名古屋市で「生物多様性条約」の10回目のCOP(COP10)が開催されます。

生物多様性が法律・人権とどんな関係があるの?そう不思議に思う人もいるでしょう。

みなさんが今朝食べた卵を産んだニワトリの餌は穀物です。 昨晩食べた魚はカニやエビを、カニやエビはプランクトンを餌にします。 私たちが吸う空気は植物が作り、汚した水は微生物がきれいにしてくれます。 医薬品や工業製品にも生物に由来するものがたくさんあります。

このように、人類を含む生物は、すべてつながり合って生きています。 これが生物多様性です。 条約は、生物や生息環境を守り、その恵みを将来にわたって利用するために締結されました。 未来の子どもたちの人権を守ることにもつながるのです。

逆にいえば、生物多様性の危機は人類の生活基盤を失わせ、生きる権利を根本から破壊します。 そこでCOP10では、弁護士が取り組んできた環境破壊に対する差し止め請求、環境再生を目指した裁判、行政への提言などを踏まえアピールします。

身近なところでは、法律事務所でバイオマス発電によるグリーン電力を使うといった実践に取り組む弁護士もいます。 エコも人権擁護と密接に関係しているのですよ。

◆天神弁護士センター=092(741)3208。

西日本新聞 9月17日分掲載(後藤富和)

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